先日、宮崎駿監督が久々に制作した作品「君たちはどう生きるか」を鑑賞しました。宮崎駿監督は数年前にもうアニメ作品は作らないと宣言したものですから、どんな映画が出来上がったのかと興味深く観させていただきました。前宣伝もなく、ただ分かっているのは、アオサギを書いた宣材写真とアニメ作品の題名が昭和12年(1937)7月に発行された『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著)の題名をお借りしたものと言うだけです。正直なところ、現在82歳の宮崎監督があれだけのエネルギーを費やし、この作品を制作したのか意図が分かりませんでした。たぶん私に題名になった『君たちはどう生きるか』を読んだ記憶がなかったせいかと思い、早速読んでみました。60年近く前に親が読めと言ったかもしれませんが、全く記憶にありません。ただ小中学生の頃に中途半端な正義感を持った生意気な子供だったことから、読んでいたような気もします。
映画の始まりは、時代設定とか主人公がイジメにあったりするところから、吉野源三郎の本の影響を受けているようですが、途中からは全く違う世界に入って行きます。美しい画像の宮崎ワールドがこれでもかと広がりますが、風の谷のナウシカとか天空の城ラピュタにあった観る人の想像力を超えたワクワクするようなシーンの展開はありません。宮崎監督も年齢を重ねているから、ある意味、当然のことかと思います。それでも何故にこの映画を世に送り出したのでしょうか? 宮崎監督は我々に何を伝えたかったのでしょうか? 擬人化されたアオサギに案内され地下世界に入って行く少年はどう成長したのでしょうか? どうも小中学生を相手にした映画ではないようですし、映画を観て?は広がるばかりでした。
そこで『君たちはどう生きるか』を読んでみました。この本は90年近く前に書かれた本ですが、内容は実に新鮮です。人間としてどう生きていくかの指南書で、児童文学ではなく今の大人に読んでもらいたい名著かと思いました。特に連日報道されている大手中古車販売会社の経営者の道徳観のなさには愕然としました。せっかく一代で5000億円企業まで育てあげたのに、一瞬で信用を失ってしまうのですから、恐ろしいことです。まして私とほぼ同い年ですから、残念でなりません。誰のおかげで5000億円も売り上げたのか?それは新車を買えずに中古車で我慢しようと、某会社を信用して購入したお客様です。それを見失った企業には未来はないでしょうね。最近、こういう道徳観のない事象が政治家や経営者などに多く見られます。それを危惧した宮崎監督が、老体にムチ打ってこのアニメ作品を制作したと妄想しています。
その目的は吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』を読んで欲しく、そして「君たちはどう生きたか」を考えて欲しいとう宮崎駿氏の願いではないでしょうか?読んでみて、特にナポレオンの行が印象的でした。その歴史観に共感しました。