最近はインターネットの利用頻度が増えて専らCDはAmazonで購入している。値段が安い事とAmazonのギフト券が使える事でさらにお得になっている。こんなふうに値段がリーズナブルなのも理由のひとつなんだけれど、確実にしかも逸早く欲しいものが買えるシステムは見逃せない最大の魅力のひとつといっていいだろう。それでもたまに行くお店で予想だにしない出会いがあったり、偶然に好きなシンガーの新譜が発売されているのをそこで知ったりするので、おいそれと馴染みのお店も軽視できない存在ではある。販売店のメリットは、実際現物を手に取って買うので「買った」という実感がある。インターネットだと未だにアナログ的な思考回路をしている僕は便利な事はわかっていても手に届くまでは「買った」という実感がいまひとつ湧かないのだ。
レイ・イット・ダウン-愛の詩 価格:¥ 2,500(税込) 発売日:2008-06-18 |
―収録曲―
- LAY IT DOWN
- JUST FOR ME
- YOU'VE GOT THE LOVE I NEED
- NO ONE LIKE YOU
- WHAT MORE DO YOU WANT FROM ME
- TAKE YOUR TIME
- TOO MUCH
- STAY WITH ME(BY THE SEA)
- ALL I NEED
- I'M WILD ABOUT YOU
- STANDING IN THE RAIN
- PERFECT TO ME(LIVE)
そんな訳で今夜は少し前にお店で購入した愛すべきソウルの巨人の新譜を紹介しよう思っている。アル・グリーンの『レイ・イット・ダウン-愛の歌』。これはブルーノート移籍後のサードアルバムだ。お店で見つけたときはなんともハイペースなリリースに少し眼を疑ったけれど、手にしたときは思わず胸にこみあげてくるものがあった。さっそくレジで清算を済ませて、それから家に帰り着くなり聴こうと思っていたのだが、すぐに聴くのは何か惜しいような気もしてしばらく棚に入れておいたのだ。僕の場合こんな事はしばしばあって最長で半年くらい置いてから聴くこともあるので少しも不思議ではない。それよりもこういったものは気持ちの熟成期間というものが必要な時もあって、なかなかすぐには聴けない場合がある。すこし誤魔化し気味に書いてはいるけど、実際のところ、期待度が余りに大きいと、落胆した時の心境はというとこれがまたそれに輪をかけて大きくなる訳だ。だからその時の僕の気持ちもややそれに近い半ば手探りな期待感が強かったのだろうと思う。全くこの辺は巧く表現しがたい。それにしてもアル・グリーンがブルーノートレーベルに移籍した当時は物凄く驚いたけれど、発表されたアルバムにかつてのハイサウンドが甦っていることにも随分驚かされたものだ。でもこれ以上のサプライズは最早ないだろう。そんなふうに考えると後は出来るだけハイサウンドを壊さない程度の音楽的な進歩をファンとしては願うばかりなのだ。
The Dana Owens Album 価格:¥ 1,567(税込) 発売日:2004-09-28 |
そんなこんなでついレビューが遅くなったけれど、この『レイ・イット・ダウン-愛の歌』は予想に反して聴き応えがあるアルバムとなってます。いきなり変な感想を述べさせて貰ったけど、ここにはいつものアル・グリーン節というかハイサウンドが影を潜めており、もっとブラックテイストなR&Bに仕上がっているんです。「なんだこれは!」とまずは驚き、次に来る思いは「こんなのが聴きたかったんだよなぁ」という渇望感と渇きを癒された時の満ち足りた感情。そしてついには「こういうアルバムがきっと後世に残っていくんだろうなぁ」という確信となって根付いていく。今回のアルバムではゲスト陣も眼を瞠る。コリーヌ・ベイリー・レイ、ジョン・レジェンド、アンソニー・ハミルトンなど今やR&B やHIP-HOPを代表するアーティストが参加してまさしく和気藹々とした雰囲気の中で作り上げたという感じのアルバムになっている。アル・グリーンがブルーノートで復活する際にも手を貸した旧知の間柄のウィリー・ミッチェルが今回は彼の許を離れ、代わりにエリカ・バドゥを手懸けたジェイムス・ポイザーがプロデューサーに抜擢されている。この辺りが前作『Everything's OK 』との大きな違い、大きな進歩であろう。そういえば僕が最近気に入って良く聴いているクイーン・ラティファのサウンドに良く似ているなぁと思ったりして…。彼女の『The Dana Owens Album』というアルバムにはアル・グリーンが参加していて、クイーン・ラティファと素晴らしいデュエットソング「Simply Beautiful」を歌っている。こういう出会いが音楽の方向性を少しずつ変えていくんだろうなぁと微笑ましく、嬉しい。彼女は歌も巧いし、ソウルは勿論、ブルースからポップスまで歌いこなす幅広い音楽性を兼ね備えたシンガーだ。その歌の実力と音楽センスはアル・グリーンと拮抗した確かなものだ。こんなふうに考えると、これからの黒人音楽が豊穣とし、ますますこの音楽ジャンルから眼が離せなくなる。
♪Queen Latifah (Feat. Al Green) - Simply Beautiful
*アル・グリーンは70年代にハイ・レコードで一世を風靡したソウルの貴公子。彼は80年代の低迷期にゴスペルを歌っていたこともあるんだけど、90年代の終わりにソウル界に復帰している。しかし事実上はハイサウンドを導入したブルーノート移籍第一弾の『I Can't Stop 』で完全復帰したといわれている。このアルバムは素晴らしい。サム・クックやボビー・ウーマックが好きな方は是非おさえておきたいシンガーである。