音盤工房

活字中毒&ベルボトムガール音楽漂流記

ブルースは糞溜めに棄てろ!

2008年09月23日 | Rolling Stones

Rolling_stones

 若い頃、僕は胃潰瘍が悪化し、便所で嘔吐した。吐瀉物で白い便器が汚れ、その中に血が混ざっていた。その時僕は死ぬのかと思った。腹部に激痛が走る。半身を屈めないと激痛に耐えられない痛さ。それでも夜勤を終えると車を運転して近くの診療所に駆け込む。蒼褪めた僕の顔をみた看護婦が只ならぬものを感じて即、診察室へ連れて行く。そこで下された病名は、「胃潰瘍」もしくは「十二指腸潰瘍」。早速簡易ベットに寝かされ点滴の準備。右腕に針を刺され、袋に入った黄濁の液体が体内に入っていく。冷たい液体が体の中を巡回するのがわかった。

 「どうしてこんなになるまで放置していたんですか」と診察医は眉間に皺を寄せて訊いた。

 「でも仕事が…」

 「仕事と体とどっちが大事なんですか? もう少し処置が遅れていたら大変な事になっていたんですよ!」と恫喝された。

 結局しばらく通院する事になり、ほとぼりが冷めた頃に内視鏡検査を受ける事になった。その時貰ったいくつかの錠剤は勿論もう飲んではいないが、今でも数種類の錠剤を別の病気の為飲んでいる。子供の頃は至って健康体で、高校の頃は陸上競技で二百メートル走の選手だった。中学時代にバレーボールをやっていたお陰で瞬発力が良くなり、高校に入学してすぐ陸上部に入部した。持久力ではいつも学年上位。よもや社会人になってこのような病気をするなど想定外のことだった。幸い、何度か再発はしたものの、今年になってピロリ菌の除菌により、胃潰瘍は完治した。

 こんな経験があって以来、僕の中で心境的な微妙な変化が起きた。確かに僕の場合は若い頃にこのような病気の経験をしているので、余り無理をしなくなった。偏頭痛持ちだが、薬を飲んで傷みが治まらないようなら、迷わず休みを貰った。中性脂肪が人一倍多いので、油物やドカ喰い、飲酒はなるべく避けた。運動もするようになった。

 体重が50キロを切って腰骨と肋骨が浮き出た身体は無残なものだ。セックスにも張りがない。張りがあるのは女の円いお尻だけ。女は、ベットの上で腹這いになってお尻だけを掲げてみせる。当時付き合っていた女は肌が白かった。尻の蕾も丸見えで、なぜかそこだけは褐色だった。尻の隆起を摑んで後背位の姿勢。微妙な間合い。結局、中には出せず、女の髪を鷲摑みにして、無理矢理アレを捻じ込む。勃ってくる。泣きながら腰を使った。女も泣いていた。ショートカットの毛先が僕の腿に触れ、僕のアレは堪え切れずに爆ぜた。泣きながら舌で精液を絡め取るその女とはもう別れたけれど、もうあんな酷い事はしないと誓った。胃潰瘍で吐瀉物に血を混ぜた僕の口は、紙で拭う時、汚物と一緒に僅かながら赤い血が附着していた。その時泣きながら口を拭き、それでも仕事をしていた僕は、数日たって、女の口腔に白濁を射精していた。どちらも汚物だ。一方は便器で一方が女の口という違いはあれど…。

 気を取り直して、きょうは『ベガーズ・バンケット』を聴く。LPではジャケットデザインが物議を醸し、真っ白なアルバムジャケットに変更させられた曰く付きのアルバム。CD化になり始めて当初のデザインが復活! まさしくこれは僕が苦渋を飲まされた便所のデザイン。卑猥な落書きともろブルースを体感できる楽曲。アルバムの顔ともいえる「悪魔を憐れむ歌」は当時も今もべストトラックだ。でも僕はあの頃、糞溜めにブルースを棄ててきた。この意味がわかるかい? だから僕は『ロックンロール・サーカス』の「悪魔を憐れむ歌」を観るまでこの曲を封印してきたのさ。

ベガーズ・バンケット ベガーズ・バンケット
価格:¥ 2,800(税込)
発売日:2008-08-02

―収録曲―

  1. SYMPATHY FOR THE DEVIL
  2. NO EXPECTATIONS
  3. DEAR DOCTOR
  4. PARACHUTE WOMAN
  5. JIG-SAW PUZZLE
  6. STREET FIGHTING MAN
  7. PRODIGAL SON
  8. STRAY CAT BLUES
  9. FACTORY GIRL
  10. SALT OF THE EARTH

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