北欧スウェーデン の生き方情報 スウェーデン報

北欧スウェーデンの日常を生活者目線でお伝えします。
幸せの国、北欧スウェーデンのなるほど〜な生き方をお伝えします。

ザリガニパーティ

2020-08-24 12:34:32 | スウェーデン

北欧スウェーデンの生き方、習慣、ことわざ・・・面白くつたえられたらいいな

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8月の第一週、スウェーデンのザリガニ漁は解禁になる。

 

このあと、わずか3週間だけ、ザリガニを獲っていいのだ。

 

 

ザリガニって?そう、あのザリガニである。

 

スウェーデンではkräftaという。 もちろん、外国産の冷凍物なら、一年中スーパーで購入することができる。 しかし、スウェーデン人は、ザリガニの解禁になると、それを祝って「ザリガニパーティー」を開く。

 

ザリガニはディルと一緒に塩茹でにする。

 

それを、小山に盛り上げる。

ナイフとフォークで食事をするスウェーデン人が、

手掴みで食べていいのは、

このザリガニとイースターの頃のセムラというお菓子だけなのだそうだ。

 

れっきとした?ザリガニパーティは紙の満月(kräfta moon)を飾る。

そして、テーブルクロスから、ナプキンまで、ザリガニ柄で統一する。

 

パーティを演出するためのザリガニ柄のグッズが店頭に並ぶ。

紙の帽子をかぶって、

胸の前には、焼肉屋で出されるようなよだれかけ的エプロンをして、

さあ、準備万端。

 

手掴みでザリガニを割って、チューチューと味噌を吸い、身を食べるのだ。

 

ザリガニって、ご存知?

 

食べるところは、尻尾の部分の身だけ。

 

だから、たちまち殻が山盛りになる。

 

 

日本では夏休み真っ盛りのこの時期。

 

スウェーデンでは、すでに夏の終わりである。

 

そして、人々は、終わりゆく、夏の最後を味わうように、

陽気な儀式のようにザリガニを食べる。

 

シャイで行儀の良いスウェーデン人のイメージが一新するようなパーティだ。

 

 

なぜ、ザリガニを食べることが、こんな盛大な儀式になったか?

 

お役所がザリガニ漁を禁止したからだ。

 

スウェーデンのザリガニは、おいしいということで、

ヨーロッパの他の国々で高級レストランの食材として、輸出されていた。

 

ザリガニは、スウェーデンでは庶民の食べ物ではなく、

少し高級な食材だったようだ。

 

というより、中産階級のもの好きの食べ物だったらしい。

 

ところが、輸出向けの乱獲がたたって、スウェーデンのザリガニは絶滅の危機!

 

そこで、政府は、夏の特定の期間(たった1日だけだった時もあったのだそうだ)

をのぞいて、ザリガニ漁を禁止した。

 

ね、禁止すると、食べたくなるのが人の常。

 

と言うわけで、解禁日になると、今まで食べなかった一般の人まで、

解禁を祝って盛大に食べるようになった。

 

というわけで、スウェーデンの昔からの伝統的な行事というわけではない。

 

 

さて、最初の夏は、スウェーデン人に勧められて、

スーパーの冷凍ザリガニを茹でて食べた。

生臭かった。

結局、家族は、1匹づつ食べただけで、

残りは、買ってきた夫が責任を取って食べた。

 

それ以来、食べようなどと言う恐ろしい気持ちには、なれず、一年が過ぎた。

 

 

翌年、スウェーデン人の知人に、ザリガニ漁に誘われた。

 

ルンドでは、自治体が管理している池をザリガニ漁に解禁する。

シーズンのたった2回の金曜日だけ。

 

食べるのはともかく、ザリガニ漁は面白そう。

 

早速、予約をしてもらった。

 

聞けば、国産ザリガニは、冷凍外国産より数段おいしいらしい。

 

 

初回はすでに、予約でいっぱい。

 

二回目が辛うじて取れた。

 

やった〜〜〜ぁ

 

さらに、直前に、キャンセルがでたということで、

初回も参加できると言う連絡が入った。

 

 

予約してくれたスウェーデン人家族と共に、ザリガニ漁にのぞむ。

 

時間は夕方5時から、夜中の1時まで。夜釣りなのだ。

 

冷えるから、暖かい格好で来い。という。

 

さらに、夕食と懐中電灯は必携。

 

蚊がすごいだろうから、蚊除けも、椅子も毛布もいるね・・・・。

 

 

なんだか、すごいことらしい。

 

 

「ザリガニを撮るのに、夜中の一時まで??!!

我が家はそこそこで帰ろうね」

 

ということで、合意して出かける。

 

受付に行って、名前を言うと、場所を指定される。

 

この場所が重要なのだ。

 

カニ漁のように、筒型になった網の中央にシャケの頭やイワシの開きを仕掛ける。

 

それを、池に投げ込む。

 

しばらくして、引き上げると、餌に釣られて網の中に入り込んだザリガニが

網から出られずに捕らえられている・・・・ただし、運が良ければ。

 

引き上げるたびに数匹のザリガニが入っている場所もあれば、

虚しく水藻だけが、絡んでいる場所もある。

 

 

我々の場所は、平均的。

 

「あ、入っていた」「あ、空だった」

と、一喜一憂しながら、網を上げる。

知人の用意してくれた網は5個。

 

それらを順番に上げたり投げたり。

 

その合間に、バーベキューの用意をする。

 

周囲のスウェーデン人たちもそれぞれ、野外宴会の支度をしている。

 

 

な〜るほど。ザリガニが好きで釣りに来るんじゃなくて、

ザリガニ釣りと言うイベントを家族で楽しむために来るのかあ。

 

だんだん日が暮れてくる中で、ワイワイと騒ぎながら、

ルンド郊外の池の周りには数十家族が、ザリガニを話題に

残り少ない夏の夜を楽しむ。

 

見知らぬ隣近所のグループを回っては、お互いの収穫を確認しあったりする。

 

引き揚げた網の中に8匹も入ってきたときは、

周囲のグループの人まで、一緒に歓声を上げてくれる。

 

取材に来ていたローカル新聞の記者まで、駆け寄ってくる。

 

なんとも、素朴で、楽しい時間。

 

 

日が暮れると、それぞれ、野外用のろうそくを灯す。

 

池の周囲がろうそくの点々とした灯でみたされて、きれい。

 

この池は、普段は、管理釣り場で、ニジマスが釣れる。

 

それなのに、外灯は一つもない。

 

日没1時間もすると、完全な闇になる。

でも、誰も帰ろうとしないで、ろうそくの明かりの中で、

じっと、闇の中の網に目をこらすのだ。

 

 

この頃、少し、スウェーデン人の楽しみ方がわかってきた。

 

刺激が少ない退屈な国であることは事実だが、季節ごとの行事に

積極的に関わって、自らを楽しくすることができる。

 

今の日本人のどれだけが、闇世の中で、ただザリガニを釣るだけで

夕方5時から夜中の1時まで楽しめるだろうか。

 

すぐに飽きて「つまんな〜い」「べつに〜」と

しらけた様子になってしまう若者たち、闇夜で一緒にザリガニ獲ろうよ。

 

楽しむ気さえあれば、8時間があっという間にたってしまうよ。

 

そこそこで帰ろうね、なんて言っていた我が家も、気がついたら12時過ぎだった。

 

もしかして、感性が、すでにスウェーデン人になってしまったのだろうか。

 

ちょっと、こわい。

 

 

特筆しておきたいことがある。

 

実は、このザリガニ漁、禁漁期間を作ったあとも、

絶滅の危機に瀕したことがある。

 

ザリガニの伝染病にやられたのだ。

 

そのため、今いるザリガニはアメリカから輸入したものが主流のようだ。

 

つまり、アメリカザリガニね。

 

私はこどものころ、煮干しに糸をつけて、観音様の池で釣りました。

 

もちろん食べませんでしたが、皆さんはいかが?

 

 

あ、特筆したいのは、そのことではない。

 

その伝染病以来、スウェーデン人は、水質の汚染にすごく気を配るようになった。

 

餌の、シャケやニシンから菌が繁殖しないように、

餌は、必ず一晩冷凍してから、使うのだ。

 

冷凍しても死なない菌もありそうだが、それでも、

人々がそう言う細かいところまで気を配ってザリガニ釣りを楽しんでいるというのは、

心温まる。

 

 

「来週も来るから」とその日の収獲(50匹ぐらいかな)は、

世話してくれたスウェーデン人の友達に持ち帰ってもらった。

 

そして、翌週。

 

今度は、すべて自分たちで準備して、再挑戦。

 

 

どう考えても好物になっているとは思えないので、

獲ったザリガニの行方を先に考えておかなくてはならない。

 

何人かのスウェーデン人に、もらってもらえる約束をして、一安心。

 

 

シャケの頭を魚屋で売ってもらうことができなかったため、豪華な切り身で代用。

 

イワシと合わせて餌代250クローネ。それに場所代250クローネ。

 

 

そして・・・・・数時間の格闘の末・・・・われらが網にかかったのは

 

・・・・・わずか2匹。

 

1匹約3000円の貴重な国産ザリガニ。

 

ロブスター並。

 

 

ところが、そのザリガニも「家の中に入れると臭いかも」と

普段使わない気を使った息子が、バケツごと外に出しておいたおかげで

朝になったら、近所の猫のえさになってしまっていた。

 

 

あ〜、幻の国産ザリガニ。

 

 

もらってもらう約束をしたスウェーデン人たちには、

いまだに、連絡をとれずにいる。

 

鍋に塩とディルを入れて準備して待っていたらどうしよう。

 

 

それに、あれ以来、近所の猫をみる目が険しくなってしまった私。

 

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