北欧スウェーデン の生き方情報 スウェーデン報

北欧スウェーデンの日常を生活者目線でお伝えします。
幸せの国、北欧スウェーデンのなるほど〜な生き方をお伝えします。

おもちゃや

2009-05-01 10:57:12 | エッセイ
おもちゃ屋関連エッセイの最後です。

我が家の生活圏に古い小さなおもちゃ屋さんがあります。
80歳ぐらいのおばあちゃんが、ひとりでやっています。

何しろ、昭和の時代のおもちゃの売れ残ったものが商品ですから
2坪程度のお店の中には、至る所に懐かしさがつまっています。
かのブリキのおもちゃの館長北原さんがやってきて
ごっそり買い占めていったという話をおばあちゃんがちょっと
自慢げに話してくれました。もちろん定価だったそうです。
北原さんにはお宝の山に見えたでしょうね。

おばあちゃんの伴侶が始めた店だそうです。
薬剤師だったご主人が、
「薬を買いに来る人はみんなつらそうな顔をしているが
おもちゃを買いに来る人はみんなにこにこしている。
おもちゃ屋をやろう」
と、急に方向転換して始めたお店だとか。

新しいおもちゃが地方都市に届くにはタイムラグがあります。
テレビで宣伝しているおもちゃが欲しくて店にやってくる子どもたちは
がっかりしなければなりません。

ご主人は、東京まで出ていっては、仕入れてきたのだそうです。

そんなことを一見の客の私におばあちゃんはとうとうと語ります。
そのご主人もかなり前に亡くなって、今ではおばあちゃんひとりに
なってしまいました。

「でも、最近は、子供がおもちゃをもらっても喜ばなくなったのよね。
昔は、大事に大事にしてくれたのに、今はもらった時だけ喜んで
あとは、テレビゲームで遊んでいる。」

物がふんだんにあることの貧困がここにもありました。

ほこりをかぶった昔のおもちゃが、昔の定価で売られています。
マニアに買いあさられたあとですから、ほとんどがもう見向きもされない
売れ残ったおもちゃです。

でも、店を閉める積極的な理由もないのでしょう。

いえ、いえ、もしかしたら店を開け続けることが
敬愛していたご主人への愛と思い出の証なのかもしれません。

おばあさんは、今日も店を開けています。