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2024.10.1.第290号
「生き生きくらぶ」事務局
なでしこが咲く季節となりました!
秋の七草の一つでもある撫子(なでしこ)は多年草で、日本各地の山野や河
原に自生する美しい花です。赤やピンク、白、黄色などの花を咲かせます。花
びらが糸状に細かく分かれたり、繊細な切れ込みが入っているのが特徴です。
わが国最古の歌集である万葉集にも撫子の花は登場します。「大和撫子」は
淑(しと)やかで美しい日本人女性を指す言葉です。古くから日本で女性に求め
られてきた美徳を表します。
最近の話題として「自民党再生」を取り上げます。9月27日、自民党総裁選
で新総裁に石破氏が選出されました。最大の課題は安倍長期政権によってゆが
められた政治を清算し、新しい時代をどう切り開くかです。
■ 民主主義をゆがめた安倍政権
党内政治
・選挙に勝つため、カルト集団統一教会と手を組み、幾多の家庭崩壊を招く
・安倍氏の考えが唯一正しく、異論や批判に耳を傾けず、独裁政治を貫く
・官邸への権力集中と派閥政治の仕組みが独裁を支えた
失敗だったアベノミクス
・財政出動の続いた2018年までは景気は拡大したが、その後は景気低迷
・赤字国債を財源とするバラマキを拡大し、国債残高は1100兆円に上る
・市場が値引き合戦に走り、賃金も物価も上がらず、経済成長はストップ
■ スピード改革を進めた菅政権
重点施策推進:時代の流れで必須のことは先駆けでやっていこう
・2050年のカーボンニュートラル ・原発処理水の海洋放出決定
・東京オリンピック開催 ・デジタル庁創設
行政の迅速化:省庁間の縦割りや官僚の抵抗打破
・携帯料金の大幅値下げ ・不妊治療の保険適用
・行政の脱ハンコ ・40年ぶり35人学級の実現
・ワクチン1日100万回実施 ・ダムの事前放流で洪水防止
■ 安倍政治の清算と経済再生を進めた岸田政権
党内政治改革
・統一教会との決別、統一教会の解散命令を東京地裁に請求
・派閥の解散 ⇒ 政治資金、閣僚人事は党が一括管理することになり、
派閥集団は政策グループ化し、党内議論が活発化し、党全体が活性化
経済再生
・市場モデルを付加価値競争型とし、賃上げと物価上昇が好循環を始める、
30年ぶりに賃金と物価が上昇し、経済規模の拡大、金利の復活、財政の健
全化等が進む
・資産所得倍増プランの実現 個人のお金を貯蓄から投資信託へ向けさせる
■ 総裁選における論点
論点1: 裏金問題の処分はこのままとするのか、追加処分をするのか
裏金とは自民党議員が政治資金パーティ券を売りさばいて稼いだ金額を、正
しく報告せず、ちょろまかしていたお金のことです。対象者は安倍派と二階派
の88人で一人当たりの裏金は100万円~4200万円で、総額は約6億円です。
自民党本部は8月、党紀委員会を開いて39人の処分を決定しました。処分内
容は幹部10人のうち、2人は離党勧告、3人は半年~1年間の党員資格停止、5人
は1年間の党の役職停止です。裏金が500万円~1000万円の人は戒告です。
これに対し、国民から「処分が甘すぎる」という怒りの声が広がり、岸田総
理も退陣せざるを得なくなりました。新たな追加処分として裏金の使途明示、
裏金の国庫納付、裏金議員全員の公認取り消しを求める声が強まっています。
論点2: 皇位継承者を男系男子とするのか、女性天皇を認めるのか
参考:日本国憲法の関係条文
第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この
地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第2条 皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定める
ところにより、これを継承する。
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、
・・・・において、差別されない。 ⇒ 男女同権を規定
男系男子派は現行の皇室典範の規定を維持すべきと主張しています。皇室典
範は不磨の大典ではありません。国会が男女同権に反する現行皇室典範の改正
に合意すれば、憲法第2条により改正できます。
現在、皇位継承有識者会議では女性天皇容認論が広がりつつあります。第一
の理由は男系男子継承では皇統断絶の確率が高いからです。女性天皇容認、女
性宮家創設で皇族数確保に努めるべきです。
第二は世論調査で愛子天皇支持率は90%であり、国民の総意は女性天皇容認で
す。憲法第1条に従うべきです。
■ 新総裁に期待する三大改革
新総裁に日本再生に向けた三大改革を期待するものです。
<政治改革>
・選挙制度を改正し、候補者は小選挙区か比例代表のどちらかを選ぶ方式とす
べきです。小選挙区で落選した人を比例区で当選させるのは憲法違反です。
・女性の国会議員比率は日本が10%で、欧米は30%~50%です。日本が女性国会
議員比率をあげるには比例区で女性比率をあげるのが手っ取り早いです。
・選挙方式を街頭演説とSNS選挙にすれば、選挙に金はかかりません。国会議
員向け助成金は「調査研究広報滞在費」のみとし、政党交付金やパーテイ券
は廃止すべきです。
<外国人の受け入れ拡大>
・人口減・人手不足が進んでいます。今後20年間で全国1741の自治体のうち、
744の自治体が消滅する見込みです。殆どの産業で人手不足が深刻です。
・政府はこれまで出生率向上に37兆円を投じてきましたが、人口は減る一方で
す。欧米のように移民け入れ拡大を進めることが正道と考えます。
・移民政策を成功させるには移民の社会的統合が不可欠です。公平な雇用、夢
を与える自由、住宅の計画・建設、リスキングと教育が重要です。幸い、日
本には900万戸の空き家と北海道規模の空き地があり、利用できそうです。
<生産性の向上>
・賃上げを定着させるためには生産性の向上が不可欠です。第一弾はデジタル化
や省力化に向け積極投資すべきです。
・第二弾は働き方改革です。定時退社励行と在宅勤務を拡大し、男女が協力して
子育てをすべきです。北欧で実証済です。長時間労働を廃止する時です。
・第三弾は労働市場の整備です。同一労働・同一賃金、専門職人材の育成、労働
市場の流動性を高め、成長分野に労働者を移りやすくすることです。
・第四弾は企業の新陳代謝です。日本では雇用を守ることを重視し、生産性の低
い企業にゼロゼロ融資してきました。今後は融資を生産性の高い企業に絞り、
国全体の生産性向上を期すべきです。
第290号の目次
■1 科学は暴走する
■2 海外出張の思い出 エルサルバドル
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◆ 1 科学は暴走する
( 千葉県流山市 中楯健二 )
いま、地球上で自然破壊による気候変動が進んでいる。地球温暖化、海洋汚
染、大気汚染など、取り上げたらきりがない。なかでも、地球温暖化は際立っ
て我々の生活に影響を与えている。
今年7月以降の猛暑は観測史上最高だと気象庁が発表している。このままで
いけば日本の四季は失われ、春と秋が短くなって二季になると言われている。
温暖化の影響は日本だけではない。
世界のいたるところで、豪雨・洪水・干ばつなどの異常気候が観測されてい
る。そこで、地球温暖化対策として、気候現象を人工的に操作しようという研
究が世界的に進められているという。
その一つが、「人工降雨」の研究だ。その仕組みは、飛行機で雲の上にドラ
イアイスなどの小さな粉をまき、水分を集めた粉を核とする氷を作り落下させ
ると、氷は地上で雨や雪に変わる。
すでに、欧米や中東など50カ国以上で研究が行われている。日本も、塩の微
粒子をヘリコプターで雲に撒き、雨の元になる水滴を成長させる実験をしてい
る。世界で人工降雨に一番力を入れているのが、観測史上最悪の熱波に見舞わ
れている中国だ。
中でも最も深刻な打撃を受けているのが中部と南部を流れる長江流域だ。そ
の地域は、中国最大の穀倉地帯である。
その実験の先鞭をつけたのが四川省で、例年に比べ50%以上も降水量が減っ
た昨年8月に、大型ドローン2機を使ってヨウ化銀を雨雲の中に散布した。とこ
ろが、「恵みの雨」は降ったが、皮肉なことに今度は連日の豪雨で洪水が発生
し、自然は人間の思い通りにならないことを証明した。
国連の予測によると、2025年までに世界人口の3分の2が水不足に陥る危険性
があるという。そのため、人工降雨技術はますます注目の的になっている。
しかし、この技術はトータルの降水量を変えることはできないことから、あ
る地域に人工的に雨を降らせると、それによって周辺地域で降水量が減るとい
う問題が発生する。
実際、中国の大規模な気象制御計画にインドが反発し、イランはイスラエル
の人工降雨計画に対して「雨雲を盗んでいる」と非難した。日本も近い将来、
中国非難の輪に加わることになるかも知れない。
もう一つの試みは、「海上の雲の白色化」と呼ばれるプロジェクトだ。米国
ワシトン大学とゼロックスのパロアルト研究所が進めている。ノズルの先から
噴き出す白い霧を使って地球温暖化の予防をしようとするものだ。
地上20キロほどの成層圏に微粒子をまき、太陽光を反射して気温上昇を食い
止めようとする構想だ。これは英国の研究者が初めて1990年代に発想し、提唱
した理論だという。
火山の噴火後に放出される微粒子で気温が下がるのと同じ状況を作り出す技
術だ。要するに地球に「日傘」をさす効果を狙っているのだ。21世紀に入り、
世界で異常気象が多発しているが、その共通の原因は偏西風 (北半球の上空
を西から東へ吹くジェット気流)の蛇行だ。
高気圧や低気圧の移動に大きな影響を与える偏西風が大きく蛇行することで
世界各地に異常気象が発生している。偏西風の蛇行の原因は解明されていない
が、中国の気候改変技術が影響している可能性があると指摘されている。
その導入の規模があまりにも巨大だからだ。中国政府は2012年から大量の資
金を投入して気候改変プログラムの開発に取り組み、「2025年までに対象地域
を550万平方キロメートルに拡大する」との方針を明らかにしている。
550万平方キメートルという規模は中国の国土面積の5割以上に当たる。こう
した人間による気象介入について、気候や宇宙の専門家ら約6万人の会員を抱
えるアメリカ地球物理学連合(AGU)は、昨年6月「緊急を要する事態」だとし
て、倫理面での議論を促し、「危険性への理解が不十分なまま技術を導入する
動き」に最大限の懸念を示した。
それにしても、大変な時代になったものである。これまで、こうした気候改
変プログラムはマスコミであまり議論されたことがなかっただけに驚きを禁じ
得ない。
地球温暖化が背景にあるとは言え、自然のバランスを崩す恐れのある気象現
象にまで、人間が人工的に介入するとは素人考えでも恐ろしい。異常気象の根
本原因が人間の営みにあることを考えれば、まず最初に取り組むべきは身の回
りの生活環境の改善ではないだろうか。
それなくしていきなり「人工降雨」や「雲作り」に向かうのは、神の領域を
犯す「禁じ手」だと言わざるを得ない。自分の興味の対象をどこまでも追求し
ようとする習性を持つ科学者は、暴走することがあるから、外部の批判に対し
て謙虚に耳を傾けなければならない。
我々はすでに「核」という凶器を持っている。それも人類を30回以上滅亡さ
せることができるだけの量を保有している。日本はその被害国である。
いま起きているウクライナ戦争でも、それを脅しの対象にしている「人物」
がロシアを指揮している。人間の無謀な行動に自然が牙をむいて怒れば、人間
などひとたまりもない。
それだけに、気象への介入は人類に不幸をもたらす危険性をはらんでいるこ
とを十分肝に銘じるべきである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆ 2 海外出張の思い出 エルサルバドル
( 神奈川県横浜市 山尾 正斌 )
私の人生にとって得がたい貴重な見聞と体験になった海外出張、これまでフィリ
ピンとイタリアを紹介したが、今回からエルサルバドルでの体験を語ろうと思う。
多くの日本人にとってエルサルバドルは必ずしも馴染み深い国とは言えない。位
置的には日本からみてほぼ地球のま裏にあたり、グアテマラとオンドゥラス(ホン
ジュラス)とに国境を接し、太平洋に面している。
環太平洋火山帯に沿う火山国で面積は四国を一回り大きくした程度だが、そこに
20を超える火山がある。各所に自噴する温泉があり、地震も多い。気候的には熱帯
モンスーン地域に属し、一年が乾期と雨期とに分かれている。
赤道に近い割に過ごしやすいのは、国土の大半が標高500~1000mのテラス状の
台地にあるから。ちなみに、海抜の低い太平洋岸の港町アカフトラでは、10月・11
月でも海水浴ができるほど暑い。
人口およそ650万、人種的には肌の色からだけ観察すると陽焼け色のインディオ
ィオ系1割、色白のスペイン系1割、大半は両者の混血と思われる。人種的分け隔て
は感じなかったが、富裕層やインテリには肌の白い人が多いように思えた。
言語はスペイン語、カトリック信者が多い。主な産業は繊維関連の軽工業とコー
ヒー・砂糖などの農産物・・・と言ったところである。
このエルサルバドルに、私が現役時代の我が社が地熱発電所を建設することにな
った。顧客はエルサルバドル国営電力公社Comision Ejectiva Hidroelectrica del
Rio Lempa(CEL=レンパ川水力発電実行委員会)。
創業時は水力発電による電力供給機構であったが、私が関わった当時同社の電源
構成は他国同様、典型的な火力依存型であった。しかし、貿易収支上の理由や地質
的特性から、純国産エネルギーである豊富な地熱を活用することへの注目・注力度
が年々高まっていた。
建設地点はエルサルバドル西部のアウアチャパン、グアテマラとの国境に近い高
原地帯で、山肌や川筋では随所に温泉が自噴し、辺りにはコーヒー農園とそれを製
品化するための工場が散在する。
そこに当時の地熱としては規模の大きい発電所があり、日本のM社が納入した30,
000kW二機が稼働中、この時我が社が受注したのは増設の3号機35,000kWであった。
受注までの経緯(いきさつ)を語ると二回分以上のページを要するから、さわりだ
け紹介すると・・・私が「初めての海外出張」として紹介したフィリピンバターン
火力発電所に遡る。
フィリッピンの時の顧客側コンサルタントがイタリアのE社だったことはイタリ
ア出張を紹介した前稿にも述べたが、アウアチャパン地熱発電所建設の顧客側コン
サルタントがこのE社だったのである。
当時イタリアは世界的に地熱発電の先進国であったから、地熱発電に経験豊かな
E社が顧客の眼鏡に適ったのであろう。
競争入札に於いて一番札の要件を満たしていたことに併せて、フィリッピンの火
力発電所建設過程で当社が示した誠意を多として、E社が今回の契約に一も二もなく
当社を推薦してくれた、とはこの地熱発電所が完成し顧客へ引き渡した後で聞かさ
れた話である。
当時、日本国内の本格的地熱発電(特に事業用発電)の建設は、九州を中心とし
たM社、東北を中心としたT社が先進企業で、当社は二社の後塵を拝していた。我が
社の地熱発電実績は箱根温泉K苑向け30kW自家発電設備など小規模設備が多かった。
アウアチャパン地熱発電所35,000kWは当社にとって事業用地熱発電への橋頭堡(き
ょうとうほ)であり、幾多の新規開発技術を必要とする一大プロジェクトであった。
地熱発電は再生可能エネルギー源のなかで、大規模な設備を実現できるSDG’sの
ベストソリューションと言える発電方式である。当時はまだ脱炭素という目的意識
は現在ほど高くなかったが、発電の新しい分野として国内でも海外でも注目されは
じめていた。
だから、私たちは、新規開発設計は勿論、材料の耐久試験や設計の実証実験を何
度も行って試行錯誤を繰り返した。当時、会社の組織をあげての昼夜を分かたぬ努
力を積み重ねた思い出はその一端を担った私にとって、生涯忘れ得ぬ経験である。
今日、当社が地熱発電で世界のトップシェアを握るまでに成長したことは、その
黎明期に関与した私としては「技術屋冥利に尽きる」経験であり、その機会を得た
ことを心から有り難く感じている。
ともあれ、社内での一連の開発や設計審査と実証試験を経て実機設計・製造が終
り、1979年には現地での据え付け・試運転・性能試験の段階を迎えた。
試運転期間中には新規開発した機器の現地実機試験を予定していたので、事前に半
年ほど、隔週に一回終業後に東京まで出向き、スペイン語の日常会話と簡単な文章
の解読ができる程度の講習を受講したりもした。
私自身が開発設計した機器が幾つかあり、社内での実証試験で安定性や性能は検
証できていたが、実機での再現性を確認するため自ら現地へ出張することになった
のが1979年10月中旬のことである。
当時のエルサルバドルには甚(はなは)だしい貧富の差があり、国土の農地のうち
約半分をスペイン系富豪14家族が独占所有し、コーヒー園や工場をはじめとして、
銀行や不動産など国の経済全般をも牛耳っていた。
そんな富の偏りを不満とする複数の左翼ゲリラ組織が各地 でテロ行為を繰り返し
ており、またそれに対抗する極右系団体のテロもあって、国内情勢は騒然としてい
た。
前年の1978年5月には首都サンサルバドルで日系企業インシンカ社の松本不二雄
社長が誘拐される事件が発生していた。誘拐目的は、逮捕拘留されていた多数の左
翼ゲリラの同志を釈放させるための人質だったとされる。
現実には松本さんは誘拐直後に殺害されていた。これ以外にも身代金目的などを
含めて、殊に外国人を誘拐する事件が頻発し、私も出発に際して外務省から、入国
・滞在には厳重に注意するよう助言を受けた。
組織的なテロ活動だけでなく、所謂(いわゆる)群盗・追剥ぎも多発して犠牲者も
多く、治安は最悪であった。エルサルバドルだけでなく、当時は隣国のグアテマラ
やニカラグアでも程度の差はあったがしばしばテロが発生して治安が憂慮すべき状
態にあった。
どこかで何か起これば、その騒擾(そうじょう)が連鎖反応的に隣接する国々に伝
播(でんぱ)する心配があった。まさに一触即発の状況であった。
サンサルバドルの日本大使館では大使はじめ日本人幹部はコスタリカに一時退避
しており、大使館には現地人女性を妻とする日本人職員一人のほかは現地人職員し
か残っていないという惨状だった。
担当商社のS商事とて状況は同様であった。幹部の日本人スタッフは同じくコス
タリカに退避していて、商談など所用がある時だけ戻ってくる状況にあり、サンサ
ルバドル支店事務所に常駐しているのは現地人スタッフだけだった。
エルサルバドル入国に際し、私は、グアテマラのS商事所長の推奨に従って、サ
ンサルバドル郊外のイロパンゴ国際空港ではなく、隣国のグアテマラ・シティまで
空路を利用し、そこから陸路アウアチャパンに向かう行程を採用することにした。
エルサルバドルでは全土の幹線道路で高級車を狙う追剥ぎ被害が多発していた。
イロパンゴ空港は首都サンサルバドル市街地を外れた辺鄙(へんぴ)な場所にあり、
ことに空港周辺道路の往来は、平素から安全が危惧される状態にあった。
アウアチャパンはサンサルバドルからよりも、グアテマラからの方がエルサルバ
ドル国内の移動距離・時間が短くて済み、リスクが少ないと判断した結果である。
前置きが長くなったが、日本からアウアチャパンまでの道程(みちのり)と現地で
の様子は、次回以降順次ご紹介することにする。
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