以下は昨日の産経新聞に、過剰生産は習近平政権のブーメラン、と題して掲載された田村秀男の定期連載コラムからである。
マスメディアの経済関係論説委員、所謂経済学者等、日本で経済に関して発言している人間たちの大半が財務省や日銀の受け売りの情報で発言している事は歴然たる事実である。
彼らが1990年4月に発令した総量規制が、今なお続く、日本を苦しめ続けているデフレの端緒となった事は歴然たる事実である。
彼らの経済政策の大失政の結果として、30年間、日本の労働者の賃金が上がっていない事、日本のGDPが1990年から下がり続けていた事は歴然たる事実である。
下がり続けていたGDPを上げ、とにもかくにも、1990年当時のGDPを超える水準まで日本国の経済を回復させたのが安倍晋三のアベノミクスだった事は歴然たる事実である。
安倍晋三が行ったデフレを脱却するための政策が世界の経済史上でも偉大な政策だった事も歴然たる事実である。
彼の政策の正しさを、ノーベル経済学賞受賞者であるポール・クルーグマン、ジョン・スティグリッツの両名が激賞した事も歴然たる事実である。
後者は、来日し、首相官邸で安倍首相と会談、激励、称賛した事も歴然たる事実である。
安倍首相の至極正しい経済政策を理解できなかっただけではなく、あろうことか、批判、攻撃を繰り返し続けたのが、東大法学部を卒業した数学音痴、経済音痴の、財務省や日銀、彼らの情報の受けもちでしかないマスメディアの経済関係論説委員、所謂経済学者等だった事も歴然たる事実である。
一方、米国のGDPは、この30年間に3倍超となっている事も歴然たる事実である。
経済について正しい論説ができる頭脳と知識を持っているのは高橋洋一氏と田村秀男の両名しかいないと言っても過言ではない。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。
中国の習近平政権は、国有企業を軸にサプライチェ-ン(供給網)を増強し、安値輸出攻勢を強める。
西側各国には重要原材料の供給力を武器に脅すが、長続きはしない。
生産偏重路線はブーメランのごとく舞い戻り、習氏の足元を直撃するからだ。
グラフは、サプライチェーンの要となる原材料の黒鉛、レアアース(希土類)、レアメタル(希少金属)と、電気自動車(EV)、太陽電池の輸出単価の推移である。
いずれも中国が高い生産シェアを持ち、日米欧を圧倒している。
習共産党総書記・国家主席は、2021年末から始まった不動産バブル崩壊不況の底が見えない中、EV、EV搭載用リチウムイオン電池、太陽光パネルや半導体などハイテク産業を「新質」と呼び、巨額の政府補助金など奨励策を打ち出し、生産能力増強路線を推進してきた。
生産過剰の帰結は輸出価格の下落で、グラフが示す通りだ。
ところが、習氏の決意は揺るぎない。
中国共産党が5年に1度、経済の基本路線を決める第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)は7月18日に閉幕したが、決議したのは国有企業を軸にしたサプライチェーンと生産能力の増強だ。
強気になれるのはサプライチェーンを押さえているからだ。
西側各国には重要原材料の供給制限をちらつかせ、威嚇、恫喝し、ときには懐柔する。
世界を分断させる元凶は、対中高関税を適用する米国ではなく、中国なのである。
黒鉛はEV、ハイブリッド車(HV)の核心である車載リチウムイオン電池の電極材料であり、中国は世界生産の8割近くを占める。
習政権は、23年12月に黒鉛輸出を許可制にした。
同年8月には先端半導体の材料で、レアメタルに分類されるガリウムやゲルマニウムの輸出規制を導入した。
同年10月末からはEVのモーターや航空機エンジンなどに使うレアアースの輸出管理を強化した。
世界での中国生産シェアはガリウムが9割を優に超え、レアアースは7割近い。
日本企業の多くはとりわけ対中依存度が高い。
黒鉛の場合、自動車メーカー各社はほぼ全面的に中国に供給を頼ってきた。
手に入らないと、車載用電池ばかりでなく、それを搭載するクルマ全体の全製造工程が止まってしまうというチョークポイント(急所)を中国側は突くわけである。
自動車業界の要請を受け、経団連は今年1月に総勢200人を超える訪中団を派遣し、中国の李強首相らに対日供給の継続を陳情する始末だったが、習政権は許可制を撤廃しない。
中国が重要原材料の供給力を武器にする効用はいくつかある。
ひとつは米国などの対中制裁関税やハイテク輸出規制封じ、2つ目は西側企業に最先端の技術を提供させるための手段にすることだ。
米バイデン政権は先端半導体技術の対中禁輸に踏み出し、日欧の半導体製造装置メーカーに同調を求めている。
それに従わない日欧企業には米国の技術を使わせないと通告する。
中国側は日欧に重要原材料供給をやめると言いかねない。
対中交渉力が弱い日本は習政権にとって御しやすい。
自動車、電子機器など主要産業で中国がめきめきと競争力を高めることができたのは、現地の国有企業との合弁を通じて、日本の高度な製造技術を習得できたからである。
さらに、黒鉛やレアアース、レアメタルの供給制限をちらつかせれば、リチウムイオン電池に代わる新型車載電池の技術取得も容易になる。
先端半導体技術も、水面下での日本人技術者派遣を通じて入手の道が開けるだろう。
そんな中国側の思惑に乘ってもろくなことにはならない。
習政権はさらにかさにかかって、次から次へと要求してくるだろう。
これまでの「日中友好」の歴史はまさにそうだった。
ここでグラフをもう一度見よう。
EVの中国国内販売は頭打ちになりつつあるし、主力海外市場の米欧は対中高関税で中国製を締め出そうとする。
EV用電池も黒鉛を使わない技術革新が進行中だ。
値崩れのために、もはやレアアース、レアメタルもレア(希少)の名に値しない。
太陽光パネル用太陽電池も主力市場の日本では今や大量の有害廃棄物の山と化している。
生産過剰の膨張は、中国の産業の損失を拡大させ、疲弊させる。
中国側統計でも、昨年末、自動車メーカーの31%が赤字だ。
不動産に続き、EVバブルも崩壊危機である。
政府もトヨタも慌てず習政権の自滅を待てばよい。
(編集委員)
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