以下は木曜日に発売された週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
本論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである事を証明している。
メディアは死んだ
朝日新聞の社論を決めているのは論説主幹の根本清樹という男だ。
彼はそのポストに就く前、天声人語を交代で3年ほど執筆したという。
考え方を知るためにその頃の切り抜きを捲(めく)ってみたら4編見つかった。
他は切り抜くまでもなかったようで、見方がすごく偏っている。
例えば、ウクライナでマレーシア機が撃墜された事件で書き出された一文だ。
「大韓機がサハリン沖でソ連機に撃墜された事件を思い出す」と続いて「東西冷戦下、お互い兵器を並べて張り合う緊張の中の悲劇」と持っていく。
尤もらしいけれど、それは真実ではない。
大韓機はアンカレジからソウルに向けて飛んでいた。
離陸前には慣性航法装置(INS)にルートを打ち込むが、乗員は誤った座標を入れていた。
ために機は400㌔も北にずれてソ連領空を大きく侵犯した。
驚いたことに乗員は飛行中、自機・の位置確認もしていなかった。
操縦室も留守がちだったのか、ソ連機からの数度の警告射撃にすら気づいていなかった。
撃墜された理由の半分は乗員の怠慢だった。
しかも大韓航空では別の機も同じ理由でソ連領空を侵犯、ミサイル攻撃を受けてムルマンスクの氷の湖に不時着している。
この事件でも日本人乗客が死んだ。
大韓機は日本人には鬼門なのだ。
それをマレーシア機と並べて何の過失もなく撃墜されたかのように書く。
韓国人に忖度する卑屈さだけが目につく。
対して日本人にはまるで韓国人か支那人の目線で侮り見下しているかのように見える。
論説主幹になったらコロナがやってきた。
このとき根本は即座に支那擁護に走った。
第1号患者は解熱剤で検疫を誤魔化した支那人だったのに「帰国した日本人」と書かせ、支那人入国禁止を故意に遅らせた。
根本が目下、執着するのが脱原発だ。
日本はエネルギー資源に事欠く。
先の戦争もそこを衝かれて開戦した。
安価で安定したエネルギー供給は戦後日本の最大の課題で、それに応えられるのが原子力発電だった。
核燃料は再処理すればまた燃やせる。C0₂も出さない。
高速増殖炉を組み合わせた核燃料サイクルは資源小国日本の救世主だった。
それが朝日には不愉快極まりなかった。
東電福島での事故を契機に朝日は反原発に舵を切った。
舵取りの根本は反原発の趣旨に合いさえすれば多少の嘘やデマを社説に載せることも許した。
その一つが核燃料サイクルを否定する社説(20年5月14日)で「いま日本が持つプルトニウムは、6千発の原爆になる」と書かせた。
日本が再処理して保有するプルトニウムはそのまま核爆弾になると社説で明言した。
真っ赤な嘘だ。
軽水炉から取れるプルトニウムには核爆弾にはならない質量数240が多いからだ。
その嘘を根本は社説でも一般記事でも繰り返させた。
彼はまた原子炉40年寿命説の嘘もかます。
同じ炉を使う米国では80年を認めている。
根本はそれを隠して40年超の美浜原発を標的に社説で繰り返し「老朽炉」と呼んで暴走間近風に言う。
論調は高齢者の暴走事故論と同じ。
加齢が暴走を生むと言いたいらしい。
東電福島のトリチウム放出が決まると根本は即座にデマを流させた。
「福島の汚染水を海へ。どの原発もやっているというが、他はメルトダウンしてないし」(素粒子)
なまじの汚染水じゃないとは真っ赤な嘘。
もはや犯罪行為だ。
各国は今、原発増設に向かっている。
中で日本だけは朝日に従い、原発を停め、支那が儲かるだけの太陽光発電に切り替えている。
悪意の塊みたいな根本が産経新聞も含めた各社の推挙を受けて日本記者クラブの理事長に就任した。
メディアに良識を求める方が無理なのか。