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Ash Again:ガウル・グラが遺した唄

2025-04-21 11:54:39 | Vtuber関連

 

 

 

クリエイターやアーティストのような、いわゆる表現者のモチベーションについて、「わざわざ表現者たることを選ぶワケだから、その自己顕示欲でもっていくらでも表現したいものだし、承認されチヤホヤされたいのではないか」と一般化するのは、端的に言って間違っている。

 

例えば漫画家で言えば、もちろん手塚治虫のような、完全にその手の理解が当てはまる人間もいるが、富樫義博のような存在もいる(まああれだけ身体的に厳しい状況に追い込まれながら、それでも表現自体は止めないこと自体を表現欲と評価することもできるだろうが)。そこまで両極端でなくても、週刊連載という形で継続的に表現を強いられ続けた結果、書くことそのものが不可能になった『忍空』の作者のような事例を挙げることもできるだろう。

 

このように考えてみると、Vtuberという存在はYouTube上でもSNS上でも常にその評価が周囲の活動者を含め可視化(あるいは過視化)されているわけで、そこで常に期待を元に急かされたり、あるいはそれとのギャップにあること無い事を書かれるばかりか、嫉妬や誹謗中傷も溢れる中、プレッシャーやストレスで精神的に疲弊し、あるいは燃え尽き症候群のような状態になるのは、さして不思議なことではないように思われる(これは以前紹介した春雨麗女が話すVtuber活動の実態・モチベーションの話が参考になる)。

 

もちろん、どんな仕事であれそういう面は持ち合わせているものだ、と言いたくなる人もいるだろう。しかし、

 

 

 

 

 

 

ここでときのそらも述べているように、守秘義務はもちろん、身バレ防止などのための何重ものフィルタリングもある中で、隙間をぬって配信すれば、準備に十分な時間が取れず、クオリティに厳しい批判がくる。この原因は前述の春雨麗女の言にもあるように、リスナーがVtuber活動に抱くイメージの中心が配信である一方、実態としては配信外での様々な活動、すなわち案件や折衝で時間が大きく制約されているという認識ギャップによるところも大きいだろう(まあ特に認知度が低かった初期は、案件とかで忙しいんだろうとは全く思われてもいなかっただろう)。表面に出ているものでしか評価されないことの厳しさ・ストレスはどの仕事でも起こりうるものだが(バックヤードのことは当該の仕事をしてない顧客にはあずかり知らない話だし)、中でもそのギャップが大きく、かつそれへの反応(批判・中傷など)が常に見えてしまうのがVtuberという業態の過酷さだと言えるのではないだろうか。

 

もちろん、このような状況の中で、休養も含め何とか帳尻を合わせながら各ライバーは活動していく訳だが、とはいえそこで案件や渉外などの対人交流・交渉がストレスになりやすいタイプは、それ自体が精神的疲労を加速させることになる(この逆の事例としては、三者三様ではあるが、白神フブキ、大空スバル、鷹嶺ルイなどを挙げるとわかりやすいか)。これが自分事として理解できない人は「飲み二ケーション」や接待ゴルフなどでプライベートの時間や体力・気力が削られていく状況を想起してもよいだろう。そこでは個人事業主であることでのオンとオフがシームレスになりがちな点も影響を及ぼしやすいだろう。

 

そこで大きくリソースを割かれた上に、自分がVtuberとしてやりかった活動が制限され、かつそれが「怠慢」であるかのごとき反応が常に過視化された状態であるならば、むしろ休養・引退という選択をしない方が、奇跡なのではないかと思えてくるほどである(例えば桃鈴ねねが休養した際、彼女にSNS禁止令=デジタルデトックスの指示が出されていたことなどを想起したい)。

 

これは前に述べた紫咲シオンと尾丸ポルカの対談から見たシオンの卒業理由の話とつながるが、そもそも対人関係による疲労やストレスを強く感じる前者が、レッスンであったり、様々な企業との案件などで配信以外の対人交流にリソースを割かれることが、大きなストレスとなっていたことが述べられている(優れた表現者が対人関係を得意とするとは限らないのは、ミケランジェロやセザンヌなど枚挙に暇がない)。そこでも触れたが、グラもかなり人見知りな性格であることが随所で述べられており、しかもVtuberとしてトップの登録者数を持ち、成長を続けるホロライブの一種象徴的存在でもあったから、それ以上の負担と苦闘し続けていたものと思われる。

 

 

 

 

 

 

というわけで、1ファンとしては「これまで本当にお疲れ様でした」と言いたい。


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