バイアス[bias：偏見、先入観]

事象、思想、演出意図といったいかなる対象も、また歴史書、エッセイ、エロゲーといったいかなる階層の媒体も、受け取り手のバイアスがかかるという点で変わりはない。

そのバイアスは無知より起こることもあるが、一方知識を積んだ人間もバイアスから自由ではありえない。いやむしろ、後者のほうが強いバイアスを持ってしまうことがしばしばある。その一つは、時代性や文脈よりも先に自己の知識や思考の枠組みを当てはめてしまうからである。これには、「Scenceへの拘泥」で示したような人間の思考形態とも密接に関係しているのではあるが…詳しく言うと、よくわからないものに対して「わからない」で済ませるべきところを、見栄によるもの(知ったかぶり)か無意識的にかはともかく、既存の知識を強引に当てはめて納得してしまうという思考形態が、知識を持っている人あるいは知識を持っていると自認している人により根付きやすいということである。

かように、バイアスはあらゆる人間が逃れることのできないものだ。だから最低限、それに対して自覚的であろうとする態度が必要とされているのである。