我々は自然の季節をよしとするのに、
経済の季節には耐えようとしません
――J・コジンスキー(作家・脚本家)
好きなシャーリー・マクレーンが登場するので、DVDで映画『チャンス』を見た。主人公チャンスは幼い頃から舘に住みつく庭師。TVを観るだけで読み書きもできない。よくいえば純真無垢、悪くいえば知恵遅れのこの紳士を巡って、世俗の人々が揺れ動く。
偶然、館の主人のつてで、チャンスは大統領に会う機会があった。景気の低迷に助言を求められる。「根が切られない限り、常に庭では心配いりません……春がくれば芽が出ます」と答える。こんな素朴なひとことが、政界からジャーナリズムまで、神のお告げのように駆け巡る。
映画は、俗世界の愚かさ、政治や経済や管理社会のばかさかげんを声高に批判しない。無垢の人間のすばらしさをことあげもしない。映像は静けさに満ち、残酷な死も熱い恋も坦々と過ぎる。まるで春の陽だまりのように心がゆるむ。庭木の根を切ってしまうことのおおい日本のリーダーたちに向けた鬱積を忘れ、ひとときをのどかに過ごすことができる。
経済の季節には耐えようとしません
――J・コジンスキー(作家・脚本家)
好きなシャーリー・マクレーンが登場するので、DVDで映画『チャンス』を見た。主人公チャンスは幼い頃から舘に住みつく庭師。TVを観るだけで読み書きもできない。よくいえば純真無垢、悪くいえば知恵遅れのこの紳士を巡って、世俗の人々が揺れ動く。
偶然、館の主人のつてで、チャンスは大統領に会う機会があった。景気の低迷に助言を求められる。「根が切られない限り、常に庭では心配いりません……春がくれば芽が出ます」と答える。こんな素朴なひとことが、政界からジャーナリズムまで、神のお告げのように駆け巡る。
映画は、俗世界の愚かさ、政治や経済や管理社会のばかさかげんを声高に批判しない。無垢の人間のすばらしさをことあげもしない。映像は静けさに満ち、残酷な死も熱い恋も坦々と過ぎる。まるで春の陽だまりのように心がゆるむ。庭木の根を切ってしまうことのおおい日本のリーダーたちに向けた鬱積を忘れ、ひとときをのどかに過ごすことができる。