負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

素朴な灯火用具とともに古い日本の美しさは消えた

2005年03月21日 | 詞花日暦
軟らかい明かりに心が和み、炎の
息をする音や波動が伝わってくる
――金箱正美(日本のあかり博物館館長)

 一般の人々が使ってきた灯火用具を金箱正美が収集し始めたのは、敗戦直後だった。「新しいものがつくられると、古いもの、効率の悪いものが徐々に忘れられる。明かりの民具はその最たるものだった」。
 照明の最初期は、樹脂を含んだ松の根株と自然石を組み合わせた「肥松鉢(ひでまつ)」。ついで植物油を染ませた灯芯を燃やす「しそく」。徒然草に登場するが、平安から江戸まで長い。灯心と灯油を乗せた受け皿が登場すると、周辺に台や囲いを付けた。光源がろうそくになっても同じ。さまざまな燭台や行灯が工夫され、提灯が普及する。石油を使う灯火用具は、もう日本のものではないという。
「ときおり電気を消して、昔の灯火用具を暗い部屋に灯し、静かに酒を飲みます。原初の自然の炎と明かりが、同じ自然の一部である自分と調和し、揺らめく陰影とともに心の安らぎを与えてくれます」。そんな民具を集めた博物館は、北斎の絵で有名な長野県小布施にある。