負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

浮世絵に登場するビードロは医学部勤務の技師が再興した

2005年03月25日 | 詞花日暦
一筋縄ではいきません。片手間で
作れるものではありませんでした
――小川勝男(ガラス細工師)

 九州の福岡では、空港でもデパートでも売っている。細く長い吹き口から空気を送ると、「ポッペン」と音を鳴らすガラス細工である。ビードロ、シャンポン、チャンポンなどと呼ばれる。江戸時代、歌麿の浮世絵にも登場した。いまではなつかしい九州の土産品である。
 伝来は長崎経由で中国から。かつては日本のどこでも見られたが、江戸末期から姿を消した。再興したのは、昭和初期から九大医学部に勤務する小川勝男。生化学の実験に用いるガラス製品をつくっていた。実際につくり始めると、一筋縄ではいかなかったという。
 思い立ってから十数年、昭和四十六年に本格的に取り組んだ。素材に硬質ガラスを選び、吹きガラス工法で膨らませる。先端の音を出す薄膜の部分がむずかしい。音の良し悪しがここで決まる。「飽きもせずよく同じものをつくっていると誰もふしぎに思う。やればやるだけ克服すべき奥深さがあるから」。モノづくりを忘れた日本人は、この奥深さを忘れた。