負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

お彼岸の落日を利用して浄土を再現する寺がある

2005年03月19日 | 詞花日暦
阿弥陀三尊立像の配置と印を結ぶ手は、
左右が逆になっている
――浄土寺パンフレット

 太陽が真西に沈む春分の日を選んで、兵庫県の加古川をさかのぼり、小野市・極楽山浄土寺にたどり着いた。播東平野は水田が広がっているが、東寄りの小高い丘に寺はあった。鎌倉時代初期、源平の戦禍で焼失した奈良東大寺の再建拠点として建立されたという。
 堂宇は西側を背にして国宝「浄土堂」。堂内中央に阿弥陀如来像、右に勢至菩薩、左が観世音菩薩。通常の配置と左右が逆で、印を結ぶ手も逆になる。圧巻は西側の蔀戸を開け、夕日の光芒が差し込むいっとき。このお彼岸の一日、真西に沈む太陽の光が堂内と仏を金色に染め上げる。さながら落日を見て浄土を祈る心(日観想)が、目前に菩薩来迎図を再現した光景である。
 仏像の配置などが逆になっているのはなぜか。おそらく仏前に座す人々が、おのずから菩薩来迎と一体になる錯覚を誘うためではないか。太陽の運行を正確に掌握し、信仰の場に取り入れたのと同じように、人の心理も計算に入れていたのかもしれない。