卵の割れ方‐縦か横か
5月15日付の朝日新聞有料記事は、アメリカ、マサチューセッツ工科大学大学(MIT)の研究チームによる、卵を落とす方向による割れ方の違いに関する実験結果について報じていた。
この結果は英科学誌「コミュニケーションズ・フィジックス」(https://doi.org/10.1038/S42005-025-02087-0 )に報告されている。
論文のサマリーをChatGPTに翻訳してもらった。
[若い学生たちに、建物などの構造物が衝撃にどう反応するかを教えるためによく行われる実験のひとつに「卵落としチャレンジ」があります。これは、一定の高さから卵を落としても割れないように、保護する仕組みを自分たちで工夫して作るというものです。
このとき、卵をどんな向きで落とすかによって、割れにくさが変わってくるのも重要なポイントです。
今回の研究では、「卵は縦向き(尖った方か丸い方を下にして)落とすのが一番強い」というよくある思い込みに対して、ちょっと待ったをかけました。
何百回もの実験と、いろいろなシミュレーションを行った結果、卵は縦向きよりも横向きにして落とした方が割れにくいということが、はっきりとわかりました。そして、その理由についても、誰でも納得できるような説明をしています。
この結果からわかるのは、「なんとなくそう思う」っていう常識に頼るのは危険だということ、そして、言葉をちゃんと使うことの大切さです。自然界にも人間の作るものにも「殻の構造」はよくあるので、今回の研究はそういった広い分野にも役立つかもしれません。]
実験では180個の鶏卵を使って、いろいろな高さから落下させ、縦方向と横方向に落とした場合の割れ方を比べた。その結果、予想に反して横方向に落とした方が割れにくかった。
例えば8ミリの高さから落とした時、縦方向に落とした場合は過半数の卵が割れたが、横方向では1割未満であった。
さらに、研究チームは60個の卵を使って、縦方向と横方向に押しつぶす実験を行った。
割れるのに必要な力の大きさには差がなかったが、横方向に押したときには、割れる前に卵がより圧縮できることが分かった。横向きでは力が吸収されるということだ。
この記事を書いた水戸部六美記者は、常識を覆す素晴らしいい実験結果だが、目玉焼きを作るときには横方向に割るという常識とは整合しないとして、研究チームに問い合わせている。
研究チームの一員から次の解答が寄せられた:「目玉焼きをつくるときの私たちの目的は、卵の中身を取り出すことです。卵を横に割ると、殻に大きな輪状の割れ目ができて、半分に分けて、中身を簡単に取り出せます。しかし、縦で割ると、卵の先端が複雑なクモの巣状のパターンで割れてしまい、中身を取り出しにくくなり、調理に不向きになります」しかし、 「例えば鍋で卵をゆでるとき、水に落ちる距離は短くても、注意しないと割れる音が聞こえて泡だった中身が水に逃げることがあります。研究結果から、鍋の底に横からあたる場合、この現象により耐性があるはずです」
世界最先端の科学技術研究をけん引するMITの研究者が、卵の割れ方について大真面目で取り組み、「世紀の大発見」を成し遂げ、その結果が調理上どのような意味を有するかについて誠実に答えていることに、わたしは腹を抱えながら、拍手を送るものである。
ちょっと残念なのは、MITに浅からぬ縁があり、昨年亡くなった義兄とこの話をして大笑いすることができないことである。
今年の2月28日のブログに紹介した、イタリアの研究チームによる「完璧なゆで卵」の研究結果については、わたし自身が追試を行って確かめたが、MITチームの結果については、240個の鶏卵を使うことには腰が引けるのでそのまま信用し、卵を持ち運ぶときは横向きにし、ゆで卵を作るときは横向きで鍋に落とすことにする。
マサチューセッツ工科大学。2014年撮影。
STOP WAR!
理解不能でしたが山人さんのブログにて理解する事ができました。研究の世界は奥行が深く検証には時間・忍耐は計りしれませんね。
>娘はmidomi yamamuraと言いますが、1度目の結婚を失敗して泣きながら... への返信
Midori Yamamuraさんのご著書、確認しました。大著ですね。草間彌生に関する新しい視点を提供していると高い評価を受けていました。日本語訳を出されるといいですね。
天野さん
こういう単純な問題に真剣に取り組むところに、科学の原点があるかもしれませんね。おかしくて笑ってしまいましたが、決して馬鹿にしてはいません。
>Midori Yamamuraさんのご著書、確認しました。大著ですね。草間彌生に... への返信
さすがに調べていただきありがとうございました。まだ日本語の本が向こうで買えなかった時に小野洋子の書いた本を買って送ってくれと言って来ました。たまたまその時に私が草間さんの自叙伝「無限の網」を読んでいたので、それを一緒に包みました。きっかけはそんなところかもしれません。
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