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羽花山人日記

徒然なるままに

ヘラルボニー

2022-10-21 17:00:18 | 日記

ヘラルボニー

昨年の12月11日のブログで,障害者のアートを商品化し,健常者と対等な関係の自立を目指す,ヘラルボニーという会社についての記事を書いた。

今週の『AERA』に,このヘラルボニーの社長と副社長を務める双子の兄弟,松田文登さん,崇弥さん(いずれも31歳)の紹介記事が出ていた。

ヘラルボニーは,二人の障害者の兄の翔太さんが自由帳に書いていた言葉で,格別の意味はない。三人の兄弟は仲良く暮らしていたが,中学生になって翔太さんが差別を受け,それにショックを受けて,二人は外では兄さんのことを隠すようになる。

二人は大学を卒業し社会人になるが,2016年の夏に転機が訪れる。お盆で盛岡に帰省した崇弥さんが,母親に連れられて花巻市の「るんびにい美術館」を訪れ,障碍者のアート作品を見てその素晴らしさに衝撃を受ける。障害者だから支援するというのではなく,純粋なアートとして評価できないかと考える。

崇弥さんは文登さんを呼び出し,「MUKU」というブランドを立ち上げ,るんびにい美術館に作品をネクタイにするという企画を提案し,障害者の作品=安いという概念を覆すために,プリントではなく,シルク織りの最高品質のネクタイを作ることを考える。この困難な織りを引き受けてくれる工房と巡り合い,超高級感のある4種類のネクタイを100本作り,売り歩く。これがマスコミの注目を引き,NHKのドキュメンタリー番組で放映される。

そんな二人に,自分のお腹にいる子供がダウン症だと知った女の人からメールが届く。彼女は生むかどうか迷っていたが,ドキュメンタリーを見て,生む決意をしたという。そして残っていた4本のネクタイを購入してくれる。

二人は,母とその子の人生に関与したことに責任の重さを感じると同時に,小さなプロジェクトでも社会には求めてくれる人がいるということに気づく。

崇弥さんは文登さんに,「自分は会社を辞めるからお前も辞めろ。人生をかけてやりたいことはこれだ」と電話する。そして,2018年に株式会社ヘラルボニーを立ち上げる。最初は数人だったが,現在は社員数30名になるまで成長した。

この会社の業務は,障害者のアート作品を売り込んでいろいろなものに使ってもらうということで,注目を浴びたのが工事現場の板囲いの壁にアート作品を掲出するというプロジェクトだ。鯖の缶詰から高級ホテルのスイートルームまで,障害者のアートは進出し,コカ・コーラ,JR東日本,JAL,丸井などそうそうたる企業とのコラボが実現している。

営業の方針はあくまで作家ファーストで,クライアントの要望でも作家が承諾しなければお断りする。

作家の家族から,「作品がグッズになったときに,初めて息子を誇らしく思った」との手紙をもらったことがある。「ただ支援するのではなく,自尊感情を損なわないように,本人が得意なことで報酬がもらえる仕組みを作ることが重要」と文登さんは言う。

「障害者でなく,一人の作家として社会に認知される景色を作られたことがすごくうれしかった。」「障害は欠落ではないという思想を拡張していきたい」と崇弥さんは言う。

ここまでのサクセスストーリーには,二人の思想と行動力と同時に,幸運もあっただろう。異彩を放つ能力を持った障害者だから,このようなことが実現できた,ということもあるかもしれない。しかし,障害者を憐れみの対象として見るのではなく,対等な個人として付き合うというこの二人の考え方は重要である。

ヘラルボニー頑張れ。

 

夜明け前

自宅ベランダから撮影

 

STOP WAR!

コメント (3)
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