『斬(ざん)』

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驚愕!?はまちおじさん

2007年03月10日 | ネタ
 「ひゃー、お腹いっぱい。最後に好きなの1皿だけ選んで食べようっと!」
 回転寿司で、最後の一品をどれにしようかと至福のひと時を過ごしていた。
 「最後ははまちにでもしよっかな」
 と思ってたところに、その男は現れた。

 年のころは50代か、奥さんらしい女性と一緒だった。オレはカウンターに座っていたのだが、その夫婦(ということにしておく)は、同じカウンターの丁度上流(寿司が流れ出てくるところを源流とする)に当たる部分に腰をかけた。

 回転寿司というのは、おおよそ同じネタが数皿続くようになっている。マグロならマグロが、イクラならイクラといった具合に。でも、たまたま、ネタ切れというか食べつくされていて、ネタが一周しても無い場合がある。もしくは、干からびて年季の入った誰も手をつけなさそうなモノが回っている状況であったりする。そんなときにリクエストすると、握りたてをリクエスト皿に載せて回すと共に、同じネタをまとめて数皿分作って一般にも流すことが多い。オレが最後に待っていたはまちは、丁度そんなリクエスト前に近い状況だった。

 話をその夫婦に戻す。おっちゃんは、しばらく回転するネタを眺めていたが、なかなか皿を取らない。丁度上流に居るので、否が応でも目に付いてしまう。

 なかなかはまちが回ってこなくて痺れを切らしかけたオレは、リクエストではまちを頼もうかと思った。けれど、それほどはまちにこだわっていた訳でもないので、他のネタを見ながらもうしばらく別に何か良いネタが来ないか、待ってみようかと思っていた。

 そしたら、痺れを切らしたのは、おっちゃんのほうだった。いきなりリクエストで「はまち2つ」である。

 そのリクエスト皿が回ってくると、それに伴って、すこし後にはまちが数皿流れてきた。丁度上流部は向かい側の前を通って、折り返してくるので、何が来るのかよくわかる。

 おお、これはいい。新鮮なはまちが来そうだ!と待ち構えていたら、他にもはまち待ちが結構居たらしく、6皿近くあったはまちは、1皿減り、また1皿減りとなった。しかし、折り返してくれば来るのだから、数あるはまちから選り好みする楽しみは減っても、握りたてはまちには、ありつけるだろうと思っていた。

 そこへ、例のおっちゃん夫婦である。さっき2皿リクエストしたにも関わらず、おっちゃんが2皿取った。さらに連れの女性も1皿取った。そのおっちゃん一人でそれを全て食べた。6貫全て。オレのところには、それまで上流で消費されたようで1皿も届かないではないか。

 何てことだ!今更「はまち1つ」とはリクエストしにくい。すでに合計8皿分さっき作ったばっかりだ。流石に握る側も「またはまちか!さっき流したばかりだろう!」とリクエストした者を、心の中で恨むに違いない。そんな状況で、とても頼む勇気など無い。

 仕方なく別の皿を物色し、無難に握りたてと思しきエビが数皿流れてきたので、その中から1皿取って食べていた。

 そしたら、横から「はまち2つ!」とリクエストする声が聞こえるではないか!

 誰だ?

 それは直ぐに分かった。聞き覚えのあるさっき聞いたばかりの声だ。そうあのおっちゃんがまたはまちを頼んでいる。信じられない!

 オレが食べ終えて一服していると、はまちがリクエスト皿で2皿、向かい側から通り過ぎて行く。その後に、やっぱりはまちが数皿続くが今度は少な目の4皿である。

 おっちゃんは、リクエスト皿を取り、連れの女性が、また1皿とった。

 もうはまちを美味しく食べる余裕が無いオレの目の前に、無情にもはまちが流れてくる。それを恨めしく目で追い、通り過ぎた後、おっちゃんの方に目をやった。おっちゃんの席に積まれた皿は、合計8皿。結局、はまちしか食べてない。

 回転寿司にきて、一品のみを食べに来るってどんな客だよ?

 と、思いながらオレはその場を後にした。