ソムタムのリーガルマインド涵養の旅

中央大学法学部通信教育課程で学ぶソムタムの日記

何罪か?

2007-01-10 23:01:16 | 刑法
法律を勉強するようになって、新聞やニュースを聞くときに、
悪いヤツが逮捕されたという点だけではなく、何罪の疑いで逮捕されたのか、
起訴されたのかということもチェックするようになりました。

ははあ。こういう犯罪は○○罪で起訴するのか、なんて考えると興味深いです。

最近のニュースでも、少年にバイク等を利用したひったくりをさせていた暴力団員
の黒幕が逮捕されたとありましたけど、まず少年たちは窃盗罪で逮捕されていました。

ところがオートバイなんかを使ったひったくりは、被害者がバックを手放さなければ
転倒して大けがをする可能性もあるので、被害者の抵抗を抑圧して財物を強取した
とも評価できるんですね。事実、ひったくりで強盗罪の成立を認めた最高裁判例が
あります。

窃盗罪でも強盗罪でも逮捕することができるんですね。
でも、強盗罪は極めて刑が重い。だから、少年の場合窃盗として評価したのでは
ないかな、と。

只木先生の授業の中で、印象的な話がありました。
少年がバイクショップに立ち寄って、出来心で安い部品なんかを盗んでしまう。
見つかって、店主が「こら!ドロボウ!」と近寄ってくるのを思わずドンと
押して逃げようとしてしまう。そしたら、店主が転んでしまって、バイクショップ
みたいなところだから危険な工具とかあって、運悪く怪我しちゃう。

これ、立派な事後強盗罪だし、怪我しているので強盗致傷罪まで成立しちゃいます。
強盗致傷罪の刑は、無期または6年以上の懲役という極めて重いものです。
只木先生は言います。刑法の知識無く、この少年のケースを聞いたとき、
どのくらいの刑罰が適当だと思いますか?と。法学部で学び始めた学生による
答えは、せいぜい数ヶ月の懲役というラインが答えの相場だそうです。

こういうときは、事後強盗を成立させて強盗致傷罪を認めることはできる。出来る
けどやらない。この少年を長期にわたって刑務所に入れる意味はあるだろうか?
長期受刑者の大人の中に放り込まれて、牢名主的な人にいじめられ、、。

そこで、窃盗、傷害を別々に認めて併合罪にするんだと。
そうすると、刑の下限をいくらでも低くすることができる。そこが大事だと。

只木先生は言われます。検察官はただ犯人を立件すればいいんじゃない。
裁判官はただ犯人に有罪を宣告すれば済むんじゃない。
それぞれの行為を通じて、社会に何を実現しようとするのか、その意識を
しっかり持つべきだと。

ニュースで見かける犯罪名。何故、その犯罪として起訴されるのか、
ちょっと関心を持って見ると、興味深いものがあるなあと思います。

ああ、それにしても只木先生の授業、また何回でも受けたいなあ、、。
いい先生です、ホント。
(試験を何回でも受けたいの意味に非ず!)