寒くなったねと言いながら、加藤のおじいちゃんが、少し背をかがめて、店に入って来た。
手にした湯気の出ている紙袋を、マスターに渡した。
「来る途中のスーパーで、焼き芋、買ってきたから、みんなで食べようよ」と言った。
「ご馳走様です。」と、お礼を言った後、棚から志野の大皿を、取ると、綺麗に洗ってから、アツアツの、焼き芋を、並べた。
「焼き芋も、こんな皿に盛ると、見栄えが良いね。」と、加藤のおじいちゃんが、褒めた。
店の隅に、見慣れぬ二人連れの客がいたが、冬子さんの姿は、ない。
マスターが、察して、そろそろ、冬子さん、いらっしゃるんじゃないですかと、言った。
加藤のおじいちゃんが、☕を飲みながら、焼き芋を食べ始めた頃、ドアが開いて、冬子さんが、入って来た。
挨拶も、そこそこに、首に巻いたストールを外しながら、「あら、丁度よい所に、来たみたい」と、言って、カウンターに置かれた、焼き芋の皿を、嬉しそうに、見ている。
加藤のおじいちゃんが、「冬子さんに食べさせたくて、買って来たんだよ」と、声をかけた。
冬子さんは、マスターの出してくれたおしぼりで、手を拭くと、焼き芋を、美味しそうに、食べ始めた。
☕を一口飲んだ後、「でも、昔は、焼き芋屋さんが、焼き~いもって言いながら、軽トラで
売りに来てたのに、今は、スーパーで、売るようになって、時代が変わったんだなって、しみじみ思うわ」と、言った。
加藤のおじいちゃんも、「昔は、良かったよね。焼き芋、買いに行くと、これ、一つおまけしとくなんて、言ってくれてさ・・・。」
冬子さんが、「今は、おまけどころか、焼き芋にだって、消費税が、付きますよ」と、嘆いた。