時代が悪い   207

2023-06-09 16:20:30 | 小説

何もかも時代のせいにしては、いけないんでしょうけど、この頃の日本は、ひどすぎるわね。

冬子さんが、マスターに語り始めた。

値上げ値上げが、毎月でしょ?

この間、スーパーに行って驚いたのよ!

卵が300円越えですよ。

サラダ油だって、500円近くに上がってましたよ。

年金は、上がるどころか、下がっているのに、食品や日用品は、上りぱなしですよ。

光熱費も上がるし、所得の多い方はいいんでしょうけど、年寄りは、死ねってことですかね?

私はまだ何とか一人でやっていけてますけど、老老介護やお一人で、親の介護をされている方の事件が、後を絶ちませんものね・・・。

「冬子さん世代だけじゃ有りませんよ。私だって、老後の事なんて、考えたくもないですよ。この間、市民税が、来たんですけど、又上がってましたよ。」

マスターも、冬子さんにコーヒーを運んできながら、ため息をついている。  ☕

でもね、この間テレビを見たら、美川憲一や、中尾ミエが喜寿のコンサートを開いたって話を聞きましてね、ちょっと元気がでましたよ。     

あの方たちって、私より一つ下なのよと、冬子さんが言った。

元気の秘訣を聞かれた美川憲一が、お洒落をすることだって答えてらしたわ。

私も、歌が上手だったら、もう少し違った人生が、有ったかしらね?と、尋ねた。

吹き出しそうになりながらマスターが、「私は、有名人の冬子さんより、今のままの冬子さんが好きですよ。」と、言った。

冬子さんが、こんな時代でも、社会の片隅でもう少し頑張って生きてみましょうかねと、呟いた。

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