何もかも時代のせいにしては、いけないんでしょうけど、この頃の日本は、ひどすぎるわね。
冬子さんが、マスターに語り始めた。
値上げ値上げが、毎月でしょ?
この間、スーパーに行って驚いたのよ!
卵が300円越えですよ。
サラダ油だって、500円近くに上がってましたよ。
年金は、上がるどころか、下がっているのに、食品や日用品は、上りぱなしですよ。
光熱費も上がるし、所得の多い方はいいんでしょうけど、年寄りは、死ねってことですかね?
私はまだ何とか一人でやっていけてますけど、老老介護やお一人で、親の介護をされている方の事件が、後を絶ちませんものね・・・。
「冬子さん世代だけじゃ有りませんよ。私だって、老後の事なんて、考えたくもないですよ。この間、市民税が、来たんですけど、又上がってましたよ。」
マスターも、冬子さんにコーヒーを運んできながら、ため息をついている。 ☕
でもね、この間テレビを見たら、美川憲一や、中尾ミエが喜寿のコンサートを開いたって話を聞きましてね、ちょっと元気がでましたよ。
あの方たちって、私より一つ下なのよと、冬子さんが言った。
元気の秘訣を聞かれた美川憲一が、お洒落をすることだって答えてらしたわ。
私も、歌が上手だったら、もう少し違った人生が、有ったかしらね?と、尋ねた。
吹き出しそうになりながらマスターが、「私は、有名人の冬子さんより、今のままの冬子さんが好きですよ。」と、言った。
冬子さんが、こんな時代でも、社会の片隅でもう少し頑張って生きてみましょうかねと、呟いた。