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sky is blue

言わなければよかったのに日記

Syrup16g @日比谷野外大音楽堂

2004-10-10 18:05:19 | ライヴ
今年、3回目の野音。1回目は7月のエレカシで、2回目は9月のUA。エレカシのときは晴れで、UAのときは雷雨。そして今日は、Syrup16g(今さらですが「シロップ16グラム」と読みます)。

昨日だったら、台風に当たっていた。その台風が去り、予報では快晴になるはずだったのだけど、曇り空。雨がパラパラ降ったりやんだり、降るのか降らないのかどっちなんだ?みたいな曖昧な空模様。それが今のシロップに合っていた気がした。巷では、解散説や休止説が流れ、デビューしてから今までハイペースで活動してきたシロップが(1年にアルバム2枚くらいのペース)、この野音が終わったあとの予定が何もアナウンスされてない!だの、新作『delayedead』(昔の曲を再レコーディングした作品ではありますが)がコロムビアからではなく古巣の代沢レコード(インディーズ)からのリリース!なぜ?移籍?だの、何じゃりかんじゃり噂は流れているものの、公式には「第一期、完結」としか銘打たれてなく、どうなる?シロップ!みたいな空気が、シロップ周りでは流れていたわけなのですが、そんなシロップの世間的な雲行きと、本日の空模様とがとてもマッチしていたように思う。でも、騒いでいるのは周りだけで、当の本人達は、自分達の音楽を忠実に鳴らすだけって感じだった。まるで台風の目。やっぱ、今日の空模様は絶妙な演出になっていたんだ。ある意味、強運の持ち主かも…。

ライヴの方は、もう、「良かった」、この一言に尽きる。何も言うことありません。何も言えないって方が近いか。と言いつつ、書くんだけど、3時間近くもやってくれて、たっぷりとシロップを堪能できた。泣きそうになる瞬間あり、鳥肌立つ瞬間あり、汗かく瞬間あり(寒いのに)、空っぽになる瞬間あり…の3時間弱。「クロール」から始まって、MCもほとんどなくどんどんどんどん突き進んでいくのを見ながら、一杯曲やりたいんだな~と思った。やる曲やる曲、良い曲、良いアレンジ、良い詞。シロップ、凄い…。中盤、「翌日」「Sonic Disorder」「真空」「明日を落としても」などのそれこそ第一期シロップにとって欠かせない大事な曲を持ってけドロボー!並みに連発。「土曜日」とか「幽体離脱」とか初めて生で聴けた曲もあった。中畑大樹のドラミングはやっぱり凄い。一緒に行った友人も、シロップのことは詳しくないが、「凄いね」と言っていた。私が五十嵐隆(ヴォーカル&ギター)なら、絶対離したくない。五十嵐くんが作ったはずの曲を、どうしてあんな風に叩けるんだろう。そこにあるドラマや感情を、どうしてああも目に見えるぐらいに紡げるのだろう。自分が書いた(紡いだ)曲じゃないのに。

途中、不思議な瞬間が訪れた。「エビセン」という曲だった。じっくり聴き入っていた私は、なぜだか急に、この状況がとても可笑しくなった。なんで、こんな寒い中、みんな一箇所に集まって、一方向を向いて、あの4人が鳴らす音を一生懸命に聴いているんだろう。あそこに、この音に、何があるというのだろう。なんで、あの4人は演奏なんかしてるのだろう。なに、“冷たい子供の手を引く老人”のことや“しけちゃったエビセン”のことなんか歌ってんの? なんで歌なんか歌うの? そもそも歌ってなんなの? こんなこと、私達の生活になんの関係があるの? すごい可笑しかった。可笑しくて、苦しくて、愛おしかった。こんな風にライヴ中に思ったことは、たぶん、ない。これが<汚れなき 至上の調べ>ってやつなのか。シロップは、いつもこんな場所にいるのだろうか。なんで歌なんか歌うんだろう。何も役に立たないのに。何も変わらないのに。歌わずにいないと死んじゃうわけじゃないだろう。でも、歌いたい。いや、本当に歌いたいのか? 歌わずにいられない。いや、本当にそうか? そんな禅問答のような、自己否定や自己矛盾すれすれの世界を彷徨っているのだろうか。シロップに、ここらで休息が必要なのも分かる気がした。こんなにも「音楽」と向き合っているバンド、シロップのその世界を一瞬垣間見た気がして。「音楽」との向き合い方が半端じゃない。シロップは、恐ろしいバンドだな。

一体、何曲歌ったのだろう。30曲? 色んなノリの曲があるけれど、どれもが狂おしいほど美しい。そんな気がする。イジけてても、逆ギレしてても、美しい。そんな男、五十嵐。いや、普段の五十嵐くんがどんなだかは知らないけど、少なくとも「音楽」の中ではそうなんだろう。U2の「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」をやってくれた。とっても良かった。あと、「パープルムカデ」がむちゃくちゃ良かった。今まで聴いた中で一番良かった。歌う前に、「やっと歌いたいことが歌えたなと思えた曲」とか言ってた。<好きな言葉 何?><好きな人は 誰?><好きなことは何?><好きな事をやれ>という言葉と音を激烈に叩きつけてくる曲。<Sun will shine>~<三輪車>なんて風に韻を踏んでみせる曲。<戦場で死んだムカデ>は<むらさきの>な曲。やっぱ、分かんないよ、シロップ。やっぱ、分かんないよ、音楽。

最後、五十嵐くんが「シロップは解散するわけじゃないんで、音楽はこれからもやっていこうと思ってるんで、もし良かったら、付き合っていただけるのなら、これからもよろしくお願いします」と言った。そのとき、大樹くんも立ち上がってお辞儀をしていた。そして、本日最後の曲、「Reborn」。

ライヴ中、色々思い出したりもした。初めてシロップのライヴに行ったのは……やめておこう。「シロップは解散するわけじゃないんで」。そうだね。これからもよろしく。シロップ。そして、音楽。


Maroon5 @渋谷公会堂

2004-09-29 22:20:01 | ライヴ
前日の夜、友達から「一枚余っちゃったんだけど行かない?」という電話をもらって、急遽行ってきました。「最近気になるアーティスト【洋楽編】」でも名前を挙げたマルーン5の来日公演。初来日の初日です。今回、東京だけホールで、あとはライヴハウスらしい。

いやぁ、カッコ良かったですよ。やっぱり「外人」ってカッコ良いですよね。こう書くとひがみ根性丸出し日本人って感じで嫌なんですけど、やっぱ、カッコ良いんですよ。私にとっては、まさしく彼らは正真正銘の「洋楽」なんだなぁと思い知らされました。しかもアメリカ。やっぱり、アメリカ人にしか出せないグルーヴ感、日本人にしか出せないグルーヴ感ってあると思います。ここ最近私は、自らの精神状態も関係してか、割とジメッとした、殺伐とした音楽を好んで聴いていたのですが(苦笑)、彼らのカラッとした陽性のグルーヴには、嫉妬心すら抱くほどでした。

まぁ、外人にだってジメジメとした音を鳴らす人はいますし、日本人にだってカラッとした音を鳴らす人はいます。なんだけど、私の中では、洋楽、特にアメリカっていうと、ジメッとした自分にはないカラッとした感じと言いますか、そんな解放感を感じてしまうことが比較的多いんですよね。ただ単に言葉も違うし、自分と違う国のものってだけで、私自身が解放されるからってだけかも知れませんが。海外旅行に行ったときの妙な解放感みたいな。そんな感じ。

で、彼らは、そういった意味では、私にとっては「洋楽中の洋楽(特にアメリカ)」と言ったところでしょうか。と言っても、私、アメリカの音楽に全然詳しくないので、間違ったこと言ってるかも知れないんですが(笑)、まぁ、要は、カラッとしてるってことですよ。いや、人種問題や銃社会など、アメリカが抱えている闇ってのは、日本のそれよりもずっとヘヴィーに見えたりもするのですが、なんかね~、日本人みたいにウジウジしてないんですよ(笑)。ま、ウジウジもしてられないくらい切迫してるとも言えますが。

しかし、彼ら自身は、「洋楽」だの「アメリカ」だのといった枠組はどうでも良いといった感じで、そこらへんが小気味良い。というか憎たらしい。彼らの音楽に対する眼差しは、そんなせせこましいものではなかったらしい。「アメリカ産」であることにこだわって、狭く窮屈になり、出口を見つけられなくなって、風通しの悪い音楽になってしまうのではなく、R&Bも、ソウルも、ファンクも、ロックも、その音楽的な懐の深さでもって吸収し、噛み砕き、無邪気に鳴らされるブルース。これでこそ洋楽!というかアメリカ! と、またアメリカに詳しくない私が言っちゃうかって感じですけど(笑)、まぁ、島国ニッポンとは違いまっせ!という感じですよ、はい。本人は意識せずともね。

音楽のジャンルに「ミクスチャー」なんて呼ばれるものがありますが、アメリカという国はそれこそ本当に国自体が「ミクスチャー」なわけですからね。周りを海に囲まれてるからか、必死に風穴を開けようとすることで独自のグルーヴを生むことの多い日本人ブルースに対して、こう、なんて言うんですかね、もう風穴が開いてる感じがするんですよね。その上で自分達の音を鳴らしているからカッコ良い。さっきも言ったようにアメリカが抱える闇ってのは、日本とは比較にならないくらいヘヴィーなのかも知れないんですけど(その分、光も強烈なんでしょうね)、やっぱ、なんかウジウジしてない(笑)。

そんな要素もあって、かつ、私の精神状態もありつつ、ジメジメしてたり殺伐としてたりする音楽ばっか聴いてたもんで、ちょっと心や体がついていけるかな~って心配だったんですが、逆にね、泣きそうになってしまいました。彼らの音楽がとても「優しく」て。彼らの方から手を差し伸べてくれたような。終盤、ヴォーカルのアダム・レヴィーンがタオルを頭に巻いたとき、何だか上手く説明がつかないけど、ああ、向こうから近づいてきてくれたって思えたんだよねぇ。優しくて、そして、あたたかかった。彼らの音楽をこんなにも「ポップ」たらしめてる所以は、これかなって思ってしまいました。さっき、海外旅行に行ったときの解放感を例に出して、そう言った意味では、彼らは私に「洋楽」を感じさせてくれる存在だと言ったけど(簡単に言っちゃうと、外国~アメリカに行った気分にさせてくれるというか)、こちらから飛行機に乗って行くまでもなく、向こうから来てくれたって感じかな。実際、物理的にも向こうから来てくれたわけだから当たり前っちゃ当たり前ですけど(笑)、精神的にもって意味でね。

息もつかせぬ展開でどんどんどんどん進んでいくから、おいおいアルバム1枚しか出てないし、これじゃあ早く終わっちゃうよ~と思ってたら、本当に早く終わっちゃった。アンコール含めて約1時間。しかも「ディス・ラヴ」や「ハーダー・トゥ・ブリーズ」、「シー・ウィル・ビィ・ラヴド」なんかのヒット曲も、最後に取っておくとか、もったいぶってココで!って感じでもなく、中盤で惜しげもなくどんどん披露。これもまた、彼らの小気味の良さや無邪気さが出てて良かった。もったいないとも思うけれど、彼らにはそれがよく似合っていたと思う。気前良いな~と思いつつも、彼らからしてみれば、ただただキッチリやることやって帰ってったって感じなんだろうなとも思う。バンドのまとまりも良く、アダムの声も良かった。動きもチャーミング。キーボードのジェシー・カーマイケルも面白い動きをする。カツラ被ったり、キーボードを台から外したり。ドラムのライアン・デューシックは怪我のため不参加、サポートドラマーだったらしい。そんなことも知らず、観てました(汗)。最後は、そのライアンが出てきて1曲歌った(AC/DCの「ハイウェイ・トゥ・ヘル」のカヴァー)。サポートドラマーは退散、ドラムはヴォーカルのアダムが叩く。怪我だから仕様がないのだとしても、担当パートを軽々変えることができちゃうところもまた憎い(本人からしてみれば軽々じゃなかったかも知れないけど、軽々に見えちゃうんだよ、これが)。

このバンド、引き出しあると思うし、今後どうとでも転がれるなぁって思った。あと、「最近気になるアーティスト【洋楽編】」でも書いたけど、リスナーを選ばないというか、R&B好きな人も、ファンク好きな人も、ヒッポホップ好きな人も、ロック好きな人も好きになれる、そんな貴重なバンドになり得るんじゃないかなぁって、やっぱり思った。ただ、その分、行き先が定まらず道に迷ったり、コアなファンが付きにくかったり、悪戦苦闘する部分も多いと思うけど。

そうそう、ビートルズの「アイ・ウォント・ユー」を少しやってくれた。この曲、セクシーだったのねぇ(今ごろ気付くな!)。いやいや、なかなか似合ってたかも。フルコーラス聴いてみたかったね。そうすりゃ、時間もかせげただろうしね(笑)。(注:この曲のオリジナルは7分44秒)

最後に、チケット譲ってくれた友達、ありがとー!


UA @日比谷野外大音楽堂

2004-09-04 13:45:43 | ライヴ
“水の女”にもほどがあるよ。何も雷まで呼ばなくったって良いじゃん。いやいや、ごめんなさい。私、雷、大の苦手なんです。そのため、これからいざ入場!ってところまで来たにも関わらず、ひるんでしまいました。意気地なしの私は、引き返して会場近くで雨宿りをすることに。ごめんなさい、本当に雷ダメなんです。一瞬、本気で帰ろうかと思った。ついさっきまで雨降ってなかったのにぃ。最新アルバムのタイトルは『SUN』なのにぃ。

しばらく様子を見るも、本当は入場したい。けど、ゴロピカドンには勝てないのが悲しいところ。いっそ中止に……と思っていたら、どよめく声。やりよりましたUA。出てきよりましたUA。すげー。ちょっと、こちとら合羽着ててもビショビショよ。さっき空、赤くなってたよ。えー、UAすごい…。

聴こえてきたのは、おそらく「そんな空には踊る馬」。こんな空でも馬は踊るんだろうか…。ライヴはすぐそこでやってるはずなんだけど、やはりここからじゃ聴きとりづらい。遠い、遠いよUA。それでも容赦なく降り続ける雨、進み続ける時間。ああ、私の好きな「ロマンス」らしき音が。ま、待ってよUA。ん、<心が空に震えてる 遠い遠い遠いところで>、そっか、私のことを歌っててくれたのか(笑)。それから何曲か進み、雨もおさまってきた。いや、雨は良いのよ。雷さえなければ…。でも、雷もおさまってきた。そこで、友達の「行く」の一声に助けられ(ありがとう、あなたの声がなければいつ入ってたことやら)、いざ会場へ。

会場に着いたときは、ちょうど「波動」が始まってたところだったと思う。でも、「おっ、これは…」とまでは思うんだけど、それが「波動」だと分かったのは大分あとになってから。やっとの思いで席に辿り着き、ステージを見た瞬間、「ああ、来て良かった」と思ってしまうのは、一体これ何でなんでしょう。綺麗…。雨よけのテントさえ、最初から用意されていたセットだと思ってしまう。暗い空の下、照明に照らされたステージは、何だか暖かくて、みんなでキャンプファイヤーを囲んでいるみたいにも見えた。

それからはアッと言う間で、何が何だかよく分からなかった。ただ、UAが目の前にいて、歌を歌っていて、私はそれを聴いていて…ということだけは分かった。たぶん。自分の席で感じる雨の強さより、ステージ前の照明に照らし出された雨のラインの方が強いように見えた。そして、UAはすごく綺麗で、とても楽しそうだった。時折ぴょんぴょん跳ねて、雄叫びをあげて、ひらひら舞って、本当に楽しそうだった。

「ファティマとセミラ」の前に、モロッコで子供達にプールに連れてってもらった話をしてくれた(10kmも先にある子供達がプールと呼ぶそれは、滝の下にある赤茶色した小さい滝壷だった)。映画『水の女』にも主演し、自他ともに認める(?)雨女であるUAは、この雨のことを「楽しみにしすぎた~」と言っていた。「ごめん」とも言ってたかな。いやぁ、この大雨がUAの楽しみにしすぎた気持ちなら嬉しいよ(雷は怖いけど)。面白いなぁ。「魚座なので」らしい。「みんな、大丈夫?」と声もかけてくれた。いやいや、私達は合羽着てどんなみっともない格好しても良いんだけど、UAこそステージ衣装だし、雨思いっきり当たってるし大丈夫?だよ。でもすごく楽しそうで。あんなに楽しそうなUAは初めて見たかも知れない。とても嬉しい。

UAは、ライヴで大胆にアレンジを変えてくる。デビュー時からライヴを体験しているわけじゃないけど、この頃どんどんどんどん大胆になってきてる気がする。CDと同じなのはほとんどなく、しばらく何の歌だか分からないことも多い。UAだって作品として出している以上、CDの音源だって気に入って作っているに決まっているのだが、こうもライヴでアレンジを変えてくるのは何故なんだろう。しかも、ジャムっていうかインプロヴィゼーションっていうか、曲として成り立っているのが、そしてちゃんと歌えているのが不思議なときすらある。それなのに、童謡のように聴こえてしまうときがある。童謡っていうのは、生まれて初めて触れる「うた」であることが多く、単純明快なのが多いはず。なのに、だ。この難解な構成のはずの音楽が、童謡のように聴こえてくるのは何故なんだろう。

私達が生まれて初めて「うた」に触れたとき、そこには、メロディーとか和音とかリズムとかAメロとかサビとかジャンルとか……、そういうんじゃなく、ただただ「うた」だけが目の前に広がってはいなかっただろうか。その「うた」の前では、もはや歌詞の意味さえ消え失せて、ただただ「うた」だけがあったような気がする。UAがそんな風に歌っているからなのだろうか。少なくとも、今日のセットリストに「マーチングマーチ」や「ひらいたひらいた」などの童謡が入っていても、ほとんど違和感はなかったと思う(というか、聴きたかった。『ドレミノテレビ』で歌ってるんだし)。CDとがらりと変えたジャムセッションのようなアレンジは、UAの中に、メロディーや構成、もしかしたら歌詞の意味からさえも解放されて「うた」と向き合いたい、もういっそ「うた」になってしまいたい!ぐらいの気持ちがあるから、なのかも知れない。

でも、ギリギリのところでやっぱり「うた」にはなり切れない。「スカートの砂」も「閃光」もすごく良かった。UAの歌詞には、グッとくるところが必ずと言って良いほど一箇所はある。で、そのときなの。「うた」になり切れないUAが出てくるのは。目の前に広がる世界=「うた」の中から、それは突然、唐突に顔を出し、思いがけず“私がここにいる”ことを教えてくれる。それが具体的にどこでどうだとかは言わないが、UAのライヴに行ったことがある人なら、おそらく誰もが体験する貴重な瞬間だと私は思っている。

ライヴも終盤に近づき、『SUN』の中でも私が特に好きな「踊る鳥と金の雨」を歌ってくれた。<君の心に浮かぶ そんな素敵なこと 全部叶えるために 体の船にのってるよ>。こんな言葉を本当に響かせてしまうなんて。最後の<La La La Ha>のところでは、ほんとに「うた」になってた。「Lightning」だって、<目と目が合うために生まれた>だなんて、本当にそう思わせてしまうのだから、やっぱりUAは素敵だ。

バンドメンバーが一旦下がり、そのまま「水色」をアカペラで歌ってくれた。UAの歌がこの東京の空にどこまでも届いていくような、東京の街がUAの歌に包まれていくような、そんな気がした。自然も似合うけど、東京も似合うじゃない。「水色」を歌い終えたあとぐらいからだろうか、また雨が強くなってきた。そりゃ、雨も降るわ。ワケも分からずそう思った。「太陽ぬ落てぃまぐれ節」(島唄かな)では、なんぼなんでもってぐらい降ってきて、本気で雨乞いの歌かと思った。テントから水がドバシャーって垂れ落ちたときは、思わず吹き出してしまった。でもね、雨に濡れながら歌うUAはとても色っぽかったです。歌い終わったあと、「今のは酷かったな」って笑ってたけど。そして、「次でラストです。あと一曲歌うんで、そしたら、みんな、帰りましょう」って言ったのが可愛かった。帰る場所があるって幸せだね。最後は「雲がちぎれる時」。「もう雲ちぎれてるけどな」って言ってた。歌い終わったあとも、「みんな、気を付けて帰ってね。葛根湯とか飲んで暖かくして寝てね」って。

雷には参ったけど、こんな大雨の中だからこそ、“水の女”UAをより深く感じられたような気がする。ありがとう。こんな空でも、馬は躍るね。そして私は、ここにいるね。帰らなくて良かったぁ。


VINTAGE 2004

2004-08-18 23:13:06 | ライヴ
8/16~19の4日間に渡って行われた『VINTAGE 2004』(うち17日はextra)。私は8/18@渋谷AXに行きました(あ、extraも)。出演バンドは、Syrup16g/ストレイテナー/スピッツ/THE BACK HORN。ひたちなかでは、シロップと被ってて観れなかったスピッツ、自分が行く日じゃない日(8/6)に出てたので観れなかったバックホーンが観れて、で、シロップも観れるという私的に美味しいイベント。ちなみに、ライヴ前に、せっかく渋谷に行くのだからと、映画『リヴ・フォーエヴァー』(これについては後日)を観てきました。

ちょうど段差があって観やすい位置を確保。出演順は、バックホーン→ストレイテナー→シロップ→スピッツとのこと。「平日の18時開演というのにこんなに集まってくれて…」と司会の人。始まります。

(1) THE BACK HORN
最新アルバム『イキルサイノウ』がなかなか良かったので楽しみにしてました。2003年2月にエレカシの“BATTLE ON FRIDAY”ツアーの対バン相手として観て以来。その時はまだ『イキルサイノウ』は発売されてなかった。予想通り、パワフルっちゅうか、なんか、全員ヴォーカルみたいだなって思った。ヴォーカルはもちろん、ギター、ベース、ドラムも歌ってる。コーラスをしているという意味ではありません。ギターが、ベースが、ドラムが、歌っているんです。それぞれがそれぞれの音で、曲の中にドラマを描き出し、何かを語りかけてくるんです。だから多分、いや確実に、うるさいバンドです。そんな中でも「夢の花」「未来」と続けて披露された2曲は、4つの声がそれぞれ歌う混沌の中にありながら、その4つの声が収束して同じ方向を射す一筋の光のようで、染みました。「夢の花」では、いつもハンドマイクのイメージがあったヴォーカルの山田将司が、ギターを手にして歌いました。なんか優しい感じ。最後の<でぃでぃでぃ ららら>が良い。最後は「光の結晶」で、光をもう一度ぶちまけるようにして退散。欲を言えば、映画『CASSHERN』の挿入歌「レクイエム」を生で聴いてみたかったな。あのまさしく“歌っている”ギター・リフを聴いてみたかったです。

(2) ストレイテナー
ぜんぜん音を聴いたことなかったのですが、疾走感と高揚感って感じでしょうか。たぶん日本語で歌ってるんだろうけど、英語っぽく聴こえる。「ロックインジャパンに出たんですけど、スピッツ最高でした!」とヴォーカル。ってことはシロップは観なかったのね?とイジワルく考えてみる(笑)。「だから皆もそういう夏の思い出を作ってください」というオチ。うーん、どうしても一辺倒に聴こえてしまう。疾走感と高揚感は分かるんだけどね。

(3) Syrup16g
今日はどんなセットリストで来るのかしら…。いや、同時期のイベントと言えど、セットリストが読めないんです、シロップって。登場するなり、イスに座りアコギを手にする五十嵐。1曲目「Your eyes closed」でいきなりしっとり。演奏後のMCでも「盛り上げなくちゃいけない時間帯なのに、しんみりでスミマセン。反省は後でしますけど」とか言ってた。反省なんてしないで、してやったり!とか思ってそう。いや、私がそう思ったのか(笑)。続く「I・N・M」も「希望」も、それぐらいこの意外なしっとりモードが良かった。夏の終わりにもってこいって感じで。歌声も歌詞もよく届いてきたし、“歌”をしっかり聴かせてくれて、何より楽曲そのものが良いんだなぁと改めて実感。五十嵐くん自身、今改めて“歌”と向き合いたいモードなのだろうか。単純に飽きっぽいだけだったりして。
そして立ち上がりエレキに持ち替えて、再びMC。「10階に住んでるんですけど、ベランダに蝉が来て3日間もいたんです。『お前まだいたのか!』と突っ込みを入れたら、最後にビビビッと何か言い残して彼は去っていきました。そんな僕の友達に捧げます」と<サナギは蝶になった>と歌う「変態」。ここからはアッパーモード。次の「真空」、まとまりと共に加速力が増してて、ひたちなかでもカッコ良かったけどやっぱりカッコ良かった。『delayedead』が本当楽しみ。そして「リアル」。ちょっと、やっぱ、カッコ良いんですけど(すべての言葉しっぽ巻いちゃって、こうとしか言えない…)。でも、ひたちなかで聴こえた合唱は聴こえなかった。ひたちなかで私が聴いたのは幻?(笑)
そして再びイスに座ってアコギを手にすると「さっきの蝉の話、ここでしようと思ってたのに間違えた」と言って最後の曲「ハミングバード」。あ、そうか。そう言えばこの曲、歌詞に<セミ>が出てくるね。ううーん、アコギでしっとりや、鋭い切れ味でゾクゾクなど、シロップの多様性を見せられたな。ひたちなかでは揺れてる感じとか書きましたけど、やっぱり自信ついてきたのかなって思えた。余裕すら感じたし、今日のシロップはなんか頼もしかった。

(4) スピッツ
やっぱりさすがのステージ。冒頭から「メモリーズ」「涙がキラリ☆」、良いねー。
しか~し、ここでなんとエレカシのカバー「悲しみの果て」! イントロ聴いたとき、冗談かと思った。いや、正宗さんが正座して聴くほどエレカシを好きなのは知っていたけどさ。まさかここでカバーをやっちゃうとは。聴いた話によると、ひたちなかでは吉川晃司の「モニカ」をカバーしたそうだし、カバーは割と恒例? ううーん、でもな、でもな、エレカシはバリバリの(?)現役だしな(吉川晃司もだけど)。でも、「悲しみの果て」だったから良かったのかな。もう、エレカシの手を離れて曲だけで一人歩きしちゃってるような曲なのかな。イマイチ私は客観的に見れないけど。確かに、「悲しみの果て」じゃなくて、「ファイティングマン」とかやられたら、そりゃあ…。百歩譲って、季節がら「暑中見舞 -憂鬱な午後-」でもちょっと…。でも、やった勇気は買いましょう!(笑) とか言っちゃって、その時は喜んでたくせにね(笑)。今はこうして後になって日記を書いてるから言えてるだけであって、その時はやっぱ、この曲を前にしちゃったら、喜ぶしかなかったし。やっぱり曲の力か。違う人が歌うことによって、改めて曲の力を確認することができるし、その曲の違った表情を見ることができるし(正宗さんの「悲しみの果て」はゴツゴツしてませんでした!)、また、カバーするアーティストの力量も計れるし(正宗さんはウマかった!)。その後、「『悲しみの果て』やったら使い果たしちゃって…」みたいなこと言ってたし、演奏も歌もバッチリだったし、許すとするか(笑)。しかしねー、スピッツもそうだけど、シロップもエレカシ好きは有名だし、ストレイテナーもトリビュートアルバム(『花男』)に参加してたし(もちろんシロップも)、バックホーンもこの間の野音に来てたっていう噂だし、メジャーからマイナーまで、エレカシ好きのアーティスト多し! 日本の音楽界に与えた影響大? しかし、五十嵐くんも言ってたけど、フォロワーは存在しないんだよねぇ。「唯一無二、誰も触れる事の出来ない孤高なる魂」(By五十嵐)か。それは果たしてファンのひいき目だろうか、それとも…。オッと、話がズレてしまう。
続いて「俺のすべて」、この曲好き。軽やかにちょっとダルそうにちょっと乱暴にタンバリンを叩きながら歌う正宗氏(そこがちとセクシー)、サビで皆も手を上げて手拍子。やっぱり人気あるなー。そしてそれを受け止める器も兼ね備えている。さすがです。このへんでさっき飲んだお酒が良い具合にまわってきたぁ。スピッツの生歌聴いて、酔っ払って、踊る。最高ですね☆ ベースの田村明浩さんは、左端から右端まで動き回るんですね。よくジャンプしてたし。田村さんと言えば、石田ショーキチ、黒沢健一等と共に、MOTORWORKSなるバンドを始めたんですが、こちらも要チェックです。黒沢健一と言えば、L⇔R。L⇔R、大好きでしたから。アッと、また話がズレてしまう。お酒がまわってきたみたい(笑)。
そして、「ハヤテ」「スターゲイザー」等をやり、「8823」「夢追い虫」と私の好きな曲をやってくれて終了。しかし、アンコールもやってくれました、「空も飛べるはず」。いやぁ、さすがのステージでした。「俺と一緒の時間を過ごそうぜ」とかMCも気がきいてて。正宗さんの声も、本当、CDのあの声でした。

一言で言うと「楽しかったー!」かな。
クレイジーケンバンドの剣さん風に言わせて下さい。
「イイネ!イイネ!イイ~ネ!」


VINTAGE 2004 extra -NEW AGE VINTAGE ROCK-

2004-08-17 14:21:06 | ライヴ
『VINTAGE 2004』のチケットを提示すれば入れるということで、タイトルのイベント@渋谷AXに行ってまいりました。タイトルからも分かる通り、新人バンドがたくさん出て(チケットに書いてあるだけで7バンド。合間にDJあり)、15時開場・開演という長丁場。フラ~っと行ってまいりました。名前だけ知ってて、ちょっと観てみたいなってバンドもいたし、無料だし。と言っても、長丁場は辛いので遅れて入場。会場に着いたのが17時ぐらいだったかな。私が入ったときは、THE LOCAL ARTが演奏しておりました。

★THE LOCAL ART
感情の洪水。ドラム・ヴォーカルなので、ドラムセットがドーンと中央前にあって、それだけで目を引きます。空いた空間をギターの2人が思いのままに動き回る。歌はヴォーカルに任せて、ステージ上を動き回り、思いの全てをギターにぶつけてました。洪水のように押し寄せる感情が強力で、全部同じような曲に聴こえてしまう。それだけ感情が圧倒的だったのだと思うし、全体を支配していたのだと思う。その感情の洪水に自らが飲み込まれてしまわないように、あるいは飲み込まれることに自覚的になったとき、もっともっと化けるのかも知れないなぁ。ツインギターを生かした、2人が交互に短いリフを鳴らす最後の曲なんかは、ちょっとそこを突破しかけているとは思った。MCが熱い、というか、クサイ。聴いてるコチラが恥ずかしくなってしまう。

★sports
スピリチュアライズドのSEで登場。若い!小さい! THE LOCAL ARTが感情の洪水なら、sportsは音の洪水でしょうか。THE LOCAL ARTは4人なのに対して、sportsは3人なんですけどね。自分達の思い描く音・世界を何とか自分達なりに表現しようとしている姿勢が伝わってきました。打ち込みを用いた「Sports Wear」が心地良かった。音源聴いたことあるから馴染みがあったってのもあるかも知れないけど。ギターに歪みを効かせたり、ダンスミュージック的アプローチをしてたり、音の響きや空間、展開にも意識的で凝ったサウンド作りが好きなのかなっと思わせるのだけど、何気にメロディが良いんですよね。だから、もっとヴォーカルと歌詞が聴こえてきたら良かったかも。ただ、このバンド、まだまだやりたいことが色々あるんだろうなっという新人らしさを感じさせてくれました。次のシングルのタイトルが「Super Sonic」だそうで、ネーミングのセンスもなかなか面白そう。

★キャプテンストライダム
なにこのバンド…。ちょっと興味あったんですが、なんなの…。まるで掴めない。理由(ワケ)が分からない。この人達が音楽を、ロックをやる理由が。いや、理由なんてなくたって良いし、私もいちいち理由が分かって音楽を聴いているわけじゃないんだけど…。ドラムの人が終始笑顔、その笑顔がなんか不敵。ロックを笑い飛ばしながらも、ロックからも笑い飛ばされてるみたいな。真剣にやっているんだろうけど、冗談にも見える。縁日のお化け屋敷みたいな。MCも面白い。ちょっとスネオヘアーを思い出しました。自ら「最大のヒット曲」とか言っちゃうし。ヴォーカルが、絵馬とか七夕の短冊に書いてある願い事で面白いと思ったものを書き留めるのが趣味らしく、それを発表するのがライヴの恒例行事みたい。今日発表してくれた中の一つ、「SMAPが売れますように…」。「これ以上?」と自ら突っ込み。なんか、その人の裏にある様々なドラマが垣間見れて面白いんだって。きっと面白いことはそこら中に転がっていて、それを拾い上げどう料理するかはその人次第。このバンドは、それをいちいち拾い上げてコロコロ転がしては皆に見せたいんだろうな。理由(ワケ)を分かった気になって楽しむことはできる。でも、分かった気にならなくちゃ(理由がなくちゃ)楽しむことはできないの?と頭を叩かれた気分。分かった気になったまま過ぎていきがちな日常に一石を投じる、ポッと生れ落ちてしまったかのような天然ロック。もっとちゃんと聴いてみたい。理由(ワケ)はきっと……神のみぞ知る(God Only Knows)。

★bonobos
パーカッションが良いですね~。この日私が観たバンドの中では一番貫禄というか頼りがいがあったかな。最後、朝本浩文プロデュースという新曲をやるときに、「良い歌なので」と言っていたのが印象的だった。レゲエやダブ等をこなし、インストでもアピールできそうなバンドなのだけど、伝えたいのは“歌”なんだなーと勝手に納得。

★つばき
本日トリ。sports同様、若い!小さい! なんかまだ、何かに憧れているんだろうなって感じが否めない。<憧れに追いつけない 追い越せない>って歌ってたし。でも、最初は多くの人がそうだろうし、形から入るのも全然アリだよね。ただ、渋谷AXという会場はまだまだ彼らには大きいのかもなって感じた。もっと狭い会場で観たら、また印象も違ったんだろうな。ただ、小細工なんかせずに真っ直ぐに“歌”を届けようとしているのは伝わってきました。そしてまた、“歌”を伝えることの難しさを痛感しました。サウンドやアレンジを聴かせたりすることはある程度できても、“歌”を聴かせるっていうのは、シンプルであるが故にごまかしも効かないし、一番難しいことなんじゃないかなと。

★DJ
本日のイベント、合間にDJタイムあり。ステージ向かって左側のスタンディングエリアに設置されたDJセットにて、何人かのミュージシャンがDJをしてくれました。私が観た(聴いた)のは、小井出永(THE JERRY LEE PHANTOM)/伊藤真一(SPARTA LOCALS)/永谷喬夫(SURFACE)。小井出永は、ビースティ・ボーイズやジェット、SPARTA LOCALSもかけてました。いやぁ、良いなぁ、こういう会場で大音量で自分の好きな音楽をかけられるのって。私もやってみたいなぁ。私がDJ…、似合わないー! でも、良いなぁ。この環境だけで、2~3割増しで曲が魅力的に響きそう。私のお気に入りのCD達も、こういうところで大音量でかけてもらいたいに違いない!

というわけで、本日のイベント、長丁場だったので足が疲れた&お腹空きましたけど、なかなか面白かったです。お客さんの観る姿勢がいつもと違ってて。一部のファンは通常のライヴのように観ているんですけど、そうじゃないお客さん(=ほとんどのお客さん)は、このバンドはどういうバンドなんだろう…って注意深くアンテナをピンと張ってる感じがあって、演奏するバンドの方にもお客さんの方にも緊張感がありました。初対面ならでは、新人バンド大会ならでは、ですね。
ではでは、明日もAX。