【私だけの学習メモ】 高校講座を視聴していない方には、何の事やらさっぱりわからない私だけの学習メモですので、全く読む必要はありません。
今日の教科は;
頑張って高校講座で勉強しました。
【物理基礎】 第14回 第1編 物体の運動とエネルギー 液体や気体から受ける力 ~浮力~
液体や気体から受ける力 ~浮力~
空気の力が鍋のふたを押し付けている
空気は温まると膨張し、冷えると収縮する
お父さんとお母さん、そしてノブナガが朝の散歩から帰ってきました。
そこに、リコもようやく起きてきました。
リコ 「お母さん、お腹すいた~!」
母 「ちゃんと、出かける前に昨日のおでんを温めておいたの。おでんって、一日おいた方がおいしくなるでしょ。あれ、開かない。鍋のふた、開かないんだけど!?」
ノブナガ 「え、なんで?ホントだ~。」
母 「お父さん!どうなってるの、これ?」
父 「それはね、鍋が冷えたからだよね。そのために、空気の力が鍋のふたをぐっと押しつけてるんだね。」
母 「え、どういうこと?」
空気は温まると膨張し、冷えると収縮します。
鍋を温めたときには、鍋の中の空気が外に出てしまいます。
そしてふたがきちんとしまっていると、空気が鍋の中に入ってこられなくなります。
すると外からの空気の力がふたを押しつけて、鍋の中の力よりも強くなり、ふたが取れなくなるのです。
母 「え~。じゃ、どうしたらいいの?」
父 「もう一度、温めてみればいいんじゃないかな。」
リコ 「でも、空気の力って、そんなに強いの?」
父 「そうだよ。それじゃあ、空気の力がどれくらい強いのか、実験で確かめてみようか。」
▶空気の力を実感しよう!
アルミニウム缶を加熱する
加熱した缶を冷やすとへこむ
350mlのアルミニウムの空き缶を使って実験します。
缶に水を少々入れ、炎で温めます。
加熱をやめてふたをし、この缶を冷やしてみると、缶は勢いよく潰れました。
空気の圧力は缶の中も外も同じ
缶の中で水を沸騰させると中の空気を追い出す
外の空気の圧力で缶がつぶれる
なぜ、アルミ缶は潰れてしまったのでしょうか。
もともと空気の圧力は、缶の外でも中でも同じでした(左図)。
しかし、缶の中で水を沸騰させると大量の水蒸気が発生し、中の空気を追い出してしまいます(中図)。
缶にふたをして冷やすと、水蒸気が水に戻り体積が小さくなります(右図)。
缶の中には空気がほとんど無いので、圧力がとても小さくなり、外の空気の圧力で缶がつぶれてしまいました。
地上での空気の圧力
10cm四方の面積の上には100kg
地上での空気の圧力は1cm2あたり10Nほどになります。
これは、1cm2あたりに1kgの物が乗っているのと同じ状態です。
これは、10cm四方の面積であれば、100kgのものが乗っているのと同じということになります。
母 「じゃあ、私の頭の上とか肩の上にも、そんなに重いものが本当は乗っかっているってことなの?最近、なんか肩こりがひどいな~っていうのは、もしかしてそのせいもあるの?」
リコ 「お母さん、違う、違う。そんな力、ちっとも感じないよ。」
父 「そう、感じないよね。そんなにすごい空気の圧力がかかっているのに、なんで感じないのかというと、手のひらの上からも空気の圧力がかかっているんだけど、下からも同じだけの空気の圧力がかかっているわけだ。だからつり合っているんだよ。」
母 「そしたら手がつぶれちゃうじゃない。」
父 「じゃあ、なぜつぶれないか?それは体の中、たとえば手の中からも、大気圧と同じ力で押し返しているからなんだ。」
大気圧は地球の重力が大気を引っ張ることによって生まれる
高い山の上は大気圧が小さい(気圧が低い)
父 「空気が生み出す圧力のことを『大気圧』というんだけど、大気圧はどうして生まれるか、わかるかな?」
ノブナガ 「空気の重さってこと?」
父 「そう。つまり大気圧は地球の重力が大気を引っ張ることによって生まれるわけなんだよ。たとえば、高い山に登ると気圧が低いのは、なんとなく知っているんじゃないかな。それは、高い山の上の空気は少ないから、大気圧も小さい。山のふもとでは、この上にたくさんの空気があるね。したがって、ふもとの方が大気圧は大きいということになるんだね。」
リコ 「大気圧の違いってそういうことだったんだ。」
▶水圧の大きさは?
水圧
発泡スチロール容器を沈めたらどうなる?
父 「実は、大気圧と同じように、地球の重力が生み出す圧力が他にもあるんだよ。それは、地球上に大量にある水の中の圧力……。」
ノブナガ 「あ、それ水圧だ!」
父 「そう!水は空気よりも密度がずっと大きいから、水圧は大気圧よりずっと大きくなるんだよ。特に深海になると、ものすごい圧力がかかるんだ。」
ノブナガ 「潜水艦は、大きな水圧に耐える構造になっているんだよね。」
父 「そうだよ。では、ここで問題!この発泡スチロールの容器を水深1000mに沈めたら、水圧によってどうなるでしょうか?」
ノブナガ 「上から海水の重さがかかるわけだから……。」
リコ 「ぺちゃんこになって平らに潰れちゃう?」
父 「なるほどね。どうなるのか実際に調べてみよう!」
海洋研究開発機構
実験装置で容器に水圧をかける
深海の調査を行っている海洋研究開発機構で実験をお願いしました。
はじめに、深海の圧力を再現できる実験装置に水を入れます。
次に、発泡スチロールの容器を水の中に固定します。
高い水圧がかかると、この容器は一体どうなるのでしょうか。
水深100m
水深500m
水深1000m
少しずつ水圧を大きくしていきます。
左の写真は水深100mと同じ水圧です。
水圧を上げていくと、容器がみるみる小さくなっていきます。
さらに水圧を上げていき、水深500m、そして水深1000mの水圧まで達しました。
容器の形はほとんど変わりませんが、全体が、ずいぶん小さく縮んでしまいました。
水圧を加えると小さく縮む
母 「すご~い、まるで何かいきなり、ミニチュアになったみたい。」
ノブナガ 「どうしてぺちゃんこに潰れるんじゃなくて、全体的に小さくなっちゃうの?」
父 「それを説明しましょう。」
水圧は上からのしかかっている水の重さ?
水圧は物体のあらゆる面から垂直にはたらく
水圧について、「水の重さが上からのしかかっている」というイメージを持っている人が多いかもしれません(左写真)。
リコもこのイメージを持っていたため、先ほどの実験でコップが上から押し潰されると予想しました。
しかし実際には、水圧は物体のすべての方向から、物体の表面に垂直に圧力がはたらきます。
そのため、物体に水圧を加えると全体として縮んでしまいます。
母 「大気圧が上からかかるだけじゃないのと同じってことなのね。」
父 「そうだね。それじゃあ、今度は水深と水圧の関係を調べる実験をやってみよう。」
▶水圧と水深の関係
水圧観察器
お父さんが実験のために用意したのは水圧観察器です。
筒の両側に薄いゴムが張ってあります。
これを水中に入れて観察しますが、筒の中はホースで外とつながっているので、常に大気圧です。
水深が深いと水圧が大きい
水深の深さによって上にある水の量は違うので水圧も変わる
父 「じゃあ、これを水槽に入れてみるよ。よく見ててね。膜がどうなるかだね。」
ノブナガ 「両側のゴムがへこんでる。」
父 「水圧がかかっているってことだよね。じゃあ、これを上に動かしてみるね。」
リコ 「へこみが少しずつ元に戻った。」
父 「水槽の上の方では水圧が小さくて、下の方では水圧が大きいということだよね。」
母 「ああ、そうだよね。だって、深海になればなるほど水圧は大きくなるんだもんね。」
水深が深いところでは、上に大量の水があるので、水圧は大きくなります。
しかし、水深の浅いところでは、上にある水の量は少ないので、水圧は小さくなります。
▶水圧クイズ
水のタワー
水のタワーに水圧観察器を入れる
ここで、お父さんから「水圧クイズ」です!
水槽には、中にぎっしりと水がつまった “水のタワー” が入っています。
水圧観察器を水のタワーの下から入れ、タワーの上の方まで持っていきます。
すると、水圧観察器のゴムの膜はどうなるでしょうか。
1.ゴムの膜は、へこむ。
2.変わらない。
3.かえって膨らんでしまう。
母 「え~っ!まったくわからないけど、じゃあ、あえて絶対ありえなさそうな、3番の膨らんじゃう。」
リコ 「じゃあ、へこむ。」
ノブナガ 「僕もへこむと思う。」
父 「さて、どれが大胆な答えなのか、はたまた変わらないのか。水圧観察器を入れるよ。さあ、どうなるかな?」
水槽から水のタワーに水圧観察器を入れる
水のタワーに入れた水圧観察器はふくらむ
観察器をタワーの下から入れ、徐々に上へ持ち上げていくと、膜が膨らんできました。
お母さん、見事正解です!
水面の大気圧と水圧はつり合う
膜が大気圧で押されて膨らむ
なぜ、膜は膨らんだのでしょうか?
この水槽で、水面にかかる大気圧と水の圧力はつり合っています。
タワーの中でも水面の高さの水圧は大気圧と同じはずです。
しかし、タワーの上に行くほど水の量が少なくなるので、水圧は小さくなります。
ここに水圧観察器を入れたので、ゴムの膜は内側から大気圧で押されて膨らんだというわけです。
▶浮力って何?
浮力って何?
水圧観察器の下の膜の方が上より大きくへこむ
父 「ところで、水圧と関係が深い力に『浮力』があるんだよね。聞いたことあるでしょ。」
母 「浮力って、お風呂とかプールで体が軽くなる感じ?」
リコ 「あと、船が水に浮くのも浮力かな。」
父 「その浮力って、どうして生まれるかわかるかな?」
母 「どうしてって言われてもね……。」
父 「それじゃ、先ほどの水圧観察器を使って調べてみよう。今度は、縦にして水槽に入れてみるよ。それぞれの膜がどうなるのかよく見ててね。」
ノブナガ 「下の膜の方が、上よりも大きくへこんでる。」
リコ 「上よりも下の方が水圧が大きいってこと?」
水の深さが少し違うだけで水圧は変わります。
浅い所と深い所の水圧の差によって生まれるのが浮力です。
物体の体積が大きい方が浮力は大きくなります。
▶銀と銀めっきを見分けるには?
同じ重さのスプーン
純銀製のスプーンを見分けるには?
浮力についての最終問題です。
同じ重さのスプーンがありますが、片方は銀めっきで、もう片方は純銀製です。
どちらが純銀製かを見分けるには、どうしたらいいでしょうか。
アルキメデス
金属は種類によって密度が異なる
母 「叩いてみて、音の響きを聞き分けるとか。」
ノブナガ 「確か、アルキメデスは、金の王冠と偽物の王冠を見分けるために水に入れてみたんじゃない?」
父 「じゃあ、どうして水の中に入れたのかはわかるかな?」
ノブナガ 「それは……わかんない!」
リコ 「この流れから言うと、浮力が関係あるんじゃない?」
父 「リコちゃん、勘がいいよね。金属は種類によって密度、つまり同じ体積あたりの重さが違うんだ。ということは、銀のスプーンと、鉄を銀めっきしたスプーンの場合、同じ重さだったら、鉄を銀めっきした方が密度が小さいので体積は大きくなる。もちろん、体積を測って比べてもいいんだけど、実は体積はほんのわずかしか違わないんだ。そこで浮力を使えば……。」
ノブナガ 「体積が大きいってことは……。」
リコ 「浮力も大きい!」
父 「その通り!じゃあ、やってみようか。」
てんびんでスプーンがつり合っている
銀めっきの方が体積が大きいので浮力も大きい
父 「このつり合っているてんびんを、水槽に入れていきますよ。すると……右側のスプーンが上にあがったよ。」
リコ 「じゃあ、そっちが銀めっきだね!」
ノブナガ 「同じ重さでも、銀より銀めっきの方が体積が大きいから、浮力も大きいってことだね!」
父 「そういうことだよ。見た目でごまかされないためにも物理は役に立つんだよ。」
~お父さんのひと言~
空気のような存在とよく言いますよね。
大気圧は、とても大きな値なんです。
1m四方に10tもの空気が乗っかっているのと同じなんですよ。
しかし、この圧力は、あらゆる方向からずっと均等に、私たちが生まれながらに受けている力ですから、ほとんど意識しませんよね。
さっきの缶のように内部の空気を排除してみて、はじめて大気圧のその強大さに気付くわけです。
しかもこの大気圧は、わずかでも上に行けば小さくなります。
このわずかな気圧差に支えられて、ヘリウム風船は空に浮かんでいるんですよね。
私たちはいつもいろいろな圧力に包まれていますが、その中には気付かないうちに、私たちを支えてくれる力もあるのです。
【ベーシックサイエンス】第2回 さまざまな地図と地理的技能 【地図の活用と地域調査】編 地図を使って調べてみよう
どうして? ボールの空中浮遊 ~力のつり合い~
吹き玉で遊ぶ里奈
机の上の果物が動かない仕組み
懐かしいおもちゃで遊ぶキュピトロンの3人。
今回のテーマはこのおもちゃ “吹き玉” と関係があるようです。
藤本 「吹き玉のボールが浮いているとき、ボールには、いろいろな力がはたらいています。今日は、“力のつり合い” について考えていきたいと思います。」
物体に力がはたらいているのに、その物体が動かないのは、どのようなときでしょうか。
机の上の果物を例に考えてみます。
果物には重力が下向きにはたらいています。
それでも果物が動かないのは、重力とつり合う上向きの力が机から果物に対してはたらいているからです。
では、吹き玉の場合はどうでしょうか。
今回は、吹き玉を使って、力のつり合いを考えていきましょう。
▶2力のつり合い
一人で荷物を持ち上げる
今回は特に、重力とつりあう力を考えていきます。
キュピトロンの3人の前に赤い荷物が用意されています。
二千翔ちゃんがそれを上へ持ち上げると、荷物は動かず止まっています。
このとき、荷物にはたらく力は下向きの重力です。
同時に、上向きに持ち上げる力もはたらきます。
荷物が動かないとき、「重力」と「上向きに持ち上げる力」の大きさは等しくなります。
▶3力のつり合い
二人で荷物を持ち上げる
吹き玉を斜めに吹くと?
次は、彩加ちゃんと里奈ちゃんの2人が、お互いに荷物を斜めに引っ張って持ち上げてみました。
今回も荷物は持ち上がると、動かず止まっています。
つまり荷物が動かないとき、2人の力と、荷物の重力はつり合っています。
2人の力を2辺とする平行四辺形の対角線の力で、荷物を持ち上げているのです。
この対角線の力を「合力」といいます。
ここで問題です。
先ほど、吹き玉を真っすぐに吹くと、ボールは浮きました。
では、斜めにした状態で吹くと、ボールはどうなるでしょうか。
キュピトロン 「落ちてしまうと思う。」
彩加 「真っすぐ吹いたときは、息がちゃんと当たっていたけど、傾けるとちゃんと当たらなくなる。だから、下に重力で落ちてしまうと思う。」
さっそく実験して確かめてみました。
▶どうして? ボールの空中浮遊
巨大送風機
方向を変える筒
長さ9m、重さ5.6tの大きな送風機を用意しました。
これで、猛烈な台風並みの風を出すことができます。
方向を変える筒を使って、風を上向きにします。
ボール
ボールを上からクレーンでつるす
全体像
ボールにするのは20kgのダンベルをプラスチックの球に入れたもので、直径は90cmあります。
送風機の風で飛んでいかないよう、クレーンで、上からロープで吊るします。
それでは実験開始です。
ボールが浮き始める
風を強めるとさらに浮く
風が出始めると、ボールは次第に浮いていきます。
さらに風を強くしていくと、ボールは高く浮かび上がりました。
斜めに浮いたボール
ここから、送風口の筒をゆっくり傾けて、風の当たる向きを斜めにしていきます。
しかし、かなり傾けても、ボールは浮いたままです。
吹き玉で、斜めにしてもボールは浮いたまま落ちないということが分かりました。
送風機とボール
重力(赤色矢印)
風の上向きに働く力(緑色矢印)
なぜボールは落ちなかったのでしょうか。
図を使って考えてみます。
黒いボート上の、左下にあるものが送風機、中央にあるものがボールとします。
赤色の矢印で示すように、ボールには下向きに重力がはたらいています。
同時に、送風機の生み出す風の影響を受けて、緑色の矢印で示すような右斜め上方向への力もはたらいています。
しかし、ボールは右へ落ちることはありませんでした。
合力と重力
左向きの力(黄緑色の矢印)
実は このときボールには、黄緑色の矢印で示すような左向きの力がはたらいています。
この力と、風による力の2つには合力が生まれます。
つまり、黄緑色の矢印と、緑色の矢印で作る平行四辺形の対角線に、ピンク色の矢印で表されます。
この合力と重力がつり合ったとき、ボールは浮いたまま宙にとどまります。
このため、ボールは飛んでいったり、落ちたりしなかったのです。
彩加 「でも、何で左向きの力(黄緑色の矢印)が発生したんですか?」
▶なぜボールに左向きの力がはたらくの?
球の真ん中に風を当てる
球の上側に風を当てる
ここで、ガリレオ先生こと、川村康文先生(東京理科大学教授)に詳しく解説していただきました。
ボールに左向きの力がはたらいた理由を、考えてみます。
黄色い発泡スチロールの球に針金を通し、上下に自由に動くような実験器具を用意しました。
まず、この球の真ん中に送風機で風を当ててみますが、球は動きませんでした。
次に、球の少し上側に風を当ててみました。
すると、球は徐々に上方向へ上がっていきました。
これは、ボールの上側の空気の方が下側と比べて速く流れるためです。
このような丸い物体の両側で風の速さが違うとき、物体には、風が速い方に引き寄せられる力がはたらきます(右写真)。
球の上側の方風の方が速くなる
合力により空中にとどまる球
風の向きを斜めにした場合、ボールは重力によって、風の流れの中心よりも少し下側にずれます。
すると、風はボールの上側を速く流れます。
このため、ボールには流れが速い上側に引き寄せられる力(右写真-黄緑色の矢印)がはたらき、空中にとどまるのです。
川村先生 「実は、これを利用しているのがボールを使った球技です。野球の変化球や、サッカーでカーブをつけてボールを蹴ったり、バレーのサーブなどがそうです。」
キュピトロン 「そうだったんだ。」
川村先生 「今度、そういうスポーツを観るときには、この力を考えながら観て下さい。そうすると、リケジョ間違いなしです。」
キュピトロン 「がんばります!」
スタジオ風景
最後に斜めにボールを浮かす実験をやってみました。
見事大成功です。
【地理】第2回 さまざまな地図と地理的技能 【地図の活用と地域調査】編 地図を使って調べてみよう
第2回 さまざまな地図と地理的技能
【地図の活用と地域調査】編
地図を使って調べてみよう
地理監修:明治大学非常勤講師 田代 博
学習ポイント
地図を使って調べてみよう
石原良純さん 籠谷さくらさん
ここは、「フィルドストン研究所」。
所長を勤めるのは石原 良純さん。
籠谷(こもりや)さくらさんは研究所の新人所員です。
さて、今回はどんな依頼が舞い込んだのでしょうか?
▶大和町商店街 直線道路のワケは?
大和町商店街は真っ直ぐ
横浜市中区の大和町商店街が、長い直線道路なのはなぜ?
所長 「ちょっとちょっと、これを見てくれ。」
さくら 「ん?大和町商店街?確かに、真っ直ぐ!」
真っ直ぐな道自体は珍しくありませんが、大和町商店街の場合は600mの真っ直ぐな道の周りに、曲がりくねった道があります。
なぜ、ここだけ真っ直ぐなのでしょうか?
今回の依頼は、「横浜市中区の大和町商店街が、長い直線道路なのはなぜ?」です。
さくら 「え?こんな依頼、どうやって解決したらいいんですか?」
所長 「そんなの、実際に現場に行ってフィールドワークする以外にないんだよ。すでに強力な助っ人が行ってるから、さくら君、早速、横浜に飛んでくれたまえ!」
さくら 「わかりました、行ってきます!」
▶フィールドワークに必要なもの
田代博先生
助っ人は研究所のブレーン・田代 博先生!
田代先生 「今日は、大和町商店街、そこを調べるっていうことなんですけど、せっかくだから横浜の街とか港も調べてみましょう。そうするとね、手がかりが得られるかもわからないので。」
それでは、フィールドワークの持ち物の確認をしましょう。
まず一番大事なのは、地図。
さくら君が持ってきたのは、5万分の1の地形図です。
5万分の1の地形図
2万5千分の1の地形図
1万分の1の地形図
5万分の1の地形図(左図)は、広い範囲を見ることには適していますが、街歩きに使うには、少し大ざっぱすぎます。
道などが、もう少し詳しくなっている2万5千分の1の地形図(中図)もありますが、今回は1軒1軒の建物の形まで書いてある1万分の1の地形図を使います。
国土地理院が発行している地形図には、用途に応じていろいろな縮尺のものがあります。
カメラ
コンパス
スマホ
そのほかに必要な持ち物は、カメラ。
方位を確認するためのコンパス、筆記用具などです。
田代先生 「今は、紙の地図も大事なんだけど、スマホ。これがあれば、地図もカメラもコンパスも、あるいは記録もできますよね。」
便利なスマホですが、バッテリーが切れたら使えません。
広い範囲が見やすい紙の地図などもしっかり用意しましょう。
さくら 「それでは、さっそく調査開始ですね、レッツゴー!」
▶現地を歩く前に事前調査
調査する場所について本やインターネット、役所、博物館などで調べる
田代先生 「あ、ちょっと待って!いきなり歩き始めるんじゃなくて、事前の準備が大事です。たとえば、どういう場所なのかっていうことを、本とかインターネットとか、あるいは役所とか博物館。そんなところで調べる準備です。」
今回は、横浜の歴史についてさまざまな資料を集めて展示している、横浜開港資料館で情報を入手します。
横浜開港資料館 西川武臣さん
役所や博物館を訪ねるときは、事前の連絡を忘れずに。
今回は、副館長の西川武臣さんに、お話を伺うことができました。
西川さん 「横浜の地名の由来っていうのは、ご存知ですか?」
さくら 「由来ですか? 知らない、ですけど…。」
西川さん 「江戸時代、このあたりは砂浜だったんですね。その砂浜のあるところに、横浜村という村があったんです。」
元々は海だったが、土砂がたまって横に長い砂浜ができた
西川さん 「その砂浜が、横に長かったもんですから…。」
さくら 「横に?え、横に長い浜があったから横浜ってことですか?」
西川さん 「はい、いろんな説があるんですけれどもね、その説が一番有力な説として、いま伝わっています。」
横浜村は、家が100軒ほどの小さな村でしたが、江戸時代の終わり、ある事件をきっかけに大きく発展していきます。
コンテナ取扱貨物量上位10港ランキング
1858年に、幕府が外国と日米修好通商条約を結び、その貿易をする場所に横浜が選ばれることになります。
その後、横浜は日本最大の貿易都市になっていきます。
西川さん 「これが、2015年段階の日本のいろんな港の取扱量を示したものなんですね。いまだに横浜というのは、全国第2位。世界の港を全部合わせても35位という、そういった貿易量を誇っているということになります。」
主題図
自然環境や社会環境に関わる情報を、地域的に整理したものを「地理情報」といいます。
西川さんが見せてくれた図のように、気候・土壌・人口分布など、特定の地理情報について重点的に表現した地図を、「主題図」といいます。
今後、みなさんは、さまざまな主題図を目にすることでしょう。
▶地図を使って調べてみよう
開港当時の波止場へ
さて、横浜開港資料館を後にした田代先生とさくら君は、開港当時の波止場の方へ向かいます。
田代先生 「この先が、さっきお話があった、港だった、海だったんですけども、昔の地図があるんですよ。それを、ちょっと見比べてみましょう。」
明治時代のはじめに作られた海図
現在の地図と比べてみる
これは、明治時代のはじめに作られた海図(左図)。
海の中に書かれている数字は、水深を表しています。
これを、現在の地図と比べてみましょう(右図)。
さくら君は、波止場の形に注目しました。
さくら 「なんか一緒じゃないですか? 似てませんか?」
昔は海だった
今は埋め立てられているあたり
田代先生 「よく気がつきました。この波止場ね。ほら、昔の地図だと左側あたりにかけて、海でしょ、新しい地図だと海じゃない。埋め立てがいかに進んだか、どんどん変わっていくから、それに応じて更新されて新しくなっていくわけです。」
田代先生 「だから、『地図は、タイムマシンだ。』という言い方ができる。今となっては復元できない昔の様子が、ちゃんと地図を見ることによって確認できるし。大和町の道路がどうだったっていう、真っ直ぐだったその秘密も、古い地図を見るとわかるかもしれない。」
郵便局と病院
四角にちょんちょんと出ている地図記号は何?
ここで、フィールドワークをするときのポイント。
土地利用や建物などを表す「地図記号」を確認しながら歩きましょう。
田代先生「たとえば今、ここにシルク博物館って書いてありますよね。地図記号が2つありません?こっちは郵便局。あともうひとつは、病院。それとね、この四角にちょんちょんと出ているような記号。これ、何だと思いますか?」
高塔
この地図記号は、高塔を表します。
さくら「高い塔って言えば、横浜ですよね?マリンタワー!」
田代先生「正解!」
横浜マリンタワー
フィールドワークのポイントを、もうひとつ。
見晴らしのよい所から、歩くルートを確認しましょう。
横浜マリンタワーの展望台が初体験のさくら君は、かなり興奮気味です。
道や公園などを対応させてよく観察する
目的地の大和町はこのあたり
道や公園などを対応させてよく観察すれば、地図だけでは読み取りにくい土地の起伏もよくわかります。
ちなみに、目的地の大和町は、この矢印のあたり。
1982年のスケッチと見比べる
ここで田代先生がとっておきの資料を取り出します。
田代先生 「昔、横浜市が出していた広報誌なんです。マリンタワー展望台、360度の展望スケッチ。ちょっとこれ見てください。そこの茶色の建物、ちゃんとありますよね。で、ここは谷戸坂(やとざか)っていう。」
当時、高速道路は建設中
スケッチが描かれたのは1982年。
今とは違うところもずいぶんあります。
手前の高速道路は、ちょうど建設中でした。
田代先生 「古い地図もそうですけど、こういう資料があると、やっぱり楽しいですよね。」
実は、このスケッチを描いたのは、田代先生。
これにはさくら君もびっくり。
中華街
その後、2人は大和町商店街に向かいつつ、横浜の街を観察して歩きました。
有名な中華街は、前の通りからゆるやかな下り坂になっています。
実は、この通りのあたりが、元々あった横に長い浜。
中華街は、埋め立て地なので、少し下がっています。
電柱がない
次に向かったのは、元町商店街。
お洒落な店が多く、歩道も広くて歩きやすそう。
1本隣(右)の道と比べると…、電柱がありません。
この道は、景観をよくするために、電柱の地中化を進めています。
こうした理由でも、街は変わっていくんですね。
左右で階段5段分違う
三角点
そして、マリンタワーから見た谷戸坂。
等高線を読むと、およそ200m進むうちに、
標高が20m上がっていることが分かります。
坂の途中にある家は、左右で階段5段分も高さに違いができていました。
ちなみに、谷戸坂に沿って位置する「港の見える丘公園」の中には、「三角点」を示す地図記号がありました。
▶大和町商店街 直線道路のワケは?
大和町商店街
そして、ついに目的地、大和町商店街に到着。
さくら 「めっちゃ真っ直ぐじゃないですか!うわぁ!」
行けども行けども、真っ直ぐな一本道が続きます。
南東側は、8mほどの高台
北西側にも10m以上の高台
しばらく歩くと、両側の家が途切れて、見通せる場所がありました。
南東側は、8mほどの高台が迫っています。
北西側にも10m以上の高台があり、この道一帯が谷になっていることがわかります。
ひとつ隣の道は曲がっている
さらに、ひとつ隣の道を見てみると…。
さくら 「全然違います!なんでこんなに曲がってるんですか?」
田代先生 「丘陵地に沿って、曲がっているのがむしろ自然なの。自然の地形だから。」
直線道路はどうやら人工的なもの
この直線道路、どうやら人工的なもののようですが、一体いつ、誰が、何のために作ったのでしょうか?
さくら君、誰かに聞いてみることを思いつきました。
田代先生 「どういう人に聞けばいいと思う?」
さくら 「えっと、ここに長く住んでいる方とか…。」
田代先生 「そうそう、ですよね。」
長沢博幸さん
外国人向けの射撃場
このあたりの歴史に詳しい、郷土史家の長沢博幸さんにお話を伺います。
長沢さん 「ここから見える大和町は、江戸時代は全部、一面水田でした。それで、幕末の開港後、ある施設が作られました。この写真ですね。」
その施設とは、射撃場。
イギリス軍の要請で、外国人向けの射撃場が作られました。
明治時代の陸軍の地図
射撃場と大和町商店街の位置が一致
射撃場があったことは明治時代の陸軍の地図にも書かれています(左図)。
新旧2つの地図を重ねると…射撃場と大和町商店街の位置が、ぴたりと一致しました(右図)。
三方が丘で囲まれていて、かつ直線が取れるところ
さくら 「なんで、ここに射撃場を作ろうと思ったんですか、昔の人は?」
長沢さん 「現在の港が見える丘公園に、イギリス軍が駐屯していたんです。その駐屯地から近くて、三方が丘で囲まれていて、かつ直線が取れるところで、ここにしたのかと思います。」
丘があれば、弾がはずれた場合でも大丈夫だと考えたんですね。
その後、国がこの射撃場を収容し、最終的には民間に払い下げます。
そして払い下げを受けたうちの1人に、日本で初めてワイシャツを作った人がいました。
長沢さん 「で、このあたりを整地して、企業城下町としたわけです。」
道路を中心に工場や従業員の住宅が建てられた
長沢さんによると、その時にこの直線道路ができたということです。
長沢さん 「ワイシャツ屋の名前が、大和屋さんというんですね。それで、のちにここが大和町となったわけです。」
第2次世界大戦の空襲で、大和町も焼け野原になりました。
戦後、残った道を中心に復興し、現在にいたっているのです。
同じ地域の調査でも、テーマによっていろいろなことを調べることができる
事前調査をして実際に現地を歩いて話を聞くと、地域への理解が深まる
田代先生 「テーマを変えれば、同じ地域でも、もっと地形のことを中心とかね、いろいろ調べることができると思うんです。いろんな資料を調べて、現地に行って話を聞いて、そうすると地域のことがよりよくわかると思うので、ぜひ今日の経験をほかの地域でも生かしてもらいたいと思います。」
▶現地調査の報告
長い砂浜があったから横浜。幕末に開港し世界有数の貿易港に成長。
外国人向け射撃場。のちに大和屋の企業城下町となり直線道路ができた。
それでは、さくら君の調査報告です。
まずは、横浜の名前の由来。
「元々、横に長い砂浜があったから横浜」という説が有力です。
そこが、幕末に開港して、今では世界有数の貿易港に成長しました。
そんな中、三方を丘に囲まれた土地に、外国人向けの射撃場が作られます。
そこが、のちに大和屋というワイシャツ屋の企業城下町となり、この時に直線道路ができました。
そして、戦後、現在の商店街になったといわれています。
それでは次回もお楽しみに!
記録
天気: 雨後曇
最高気温(℃)[前日差] 24℃[+3]
最低気温(℃)[前日差] 17℃[+2]
散歩人