【私だけの学習メモ】 高校講座を視聴していない方には、何の事やらさっぱりわからない私だけの学習メモですので、全く読む必要はありません。
頑張って高校講座で勉強しました。
今日の教科は;
【物理基礎】 第16回 第1編 物体の運動とエネルギー 仕事を測る ~仕事の原理と仕事率~
仕事を測る ~仕事の原理と仕事率~
道具を使えば損する?得する?
ふたが固いビン
オープナーを使えば楽々!
ある日の物理(ものり)家の朝食です。
リコもノブナガも、ビンのふたが固くて開けられません。
そこでお母さんは、オープナーを持ってきました。
オープナーでしっかりとふたをつかんで回し、ビンを開けることができました。
父 「オープナーみたいな道具を使えば、簡単にできることって多いんだよね。」
母 「道具を使ったほうが、力が小さくてすむからお得よね。」
父 「でも果たして、それはどうかな?世の中そんなに甘くはないんだよね。」
母 「えっ、何その意味深な感じ。」
道具を使うと「距離」で損をする
オープナーは手に比べ移動距離が大きい
ふたを開けるオープナーを使うと、小さい力でも簡単に開けられますが、実は距離で損をしています。
赤い矢印は、ふたを開けるために移動させる距離です。
左は手で直接開けた場合、右はオープナーを使った場合です。
オープナーを使うと力は小さくて済みますが、移動する距離が大きくなってしまいます。
しかし、たったこれぐらいの差では実感がわかない人もいるかもしれません。
そこで、この差を実感するために、ちょっとしたゲームをすることになりました。
ノブナガの棒にはロープが結び付けられる
ロープを引くと距離が近づく
お父さんとノブナガは、それぞれ棒を持っています。
ノブナガの棒にはロープが結びつけられています。
そして、お父さんが持つ棒にロープを1回かけて、リコはロープを引っ張ります。
リコがロープを引っ張ると、お父さんとノブナガの距離が近づきます。
お父さんとノブナガは、それに対して全力で抵抗します。
リコがロープを引っ張って、お父さんとノブナガが足元の青い線よりも近づいたら、リコの勝ち。
お父さんとノブナガは、それに耐えることができたら勝ちです。
制限時間は10秒です。
お父さん・ノブナガVS.リコ
お父さん・ノブナガの勝ち!
母 「では、リコちゃんVS.ノブナガとお父さんチーム。レディー、ファイト!」
リコ 「だめ、全然勝てない。」
母 「ほら、やっぱり勝てないわよ!それに今の勝負が、力が小さくなっても距離が長くなると損しちゃうのと、どう関係があるわけ?」
父 「まだ続きがあるんだよ。今度は、紐を棒に通す回数を増やして、もう1回やろうか。」
紐を棒に通す回数を増やす
リコの勝利!
ロープを通す回数を増やして、再チャレンジです!
母 「何回やっても同じだと思うんだけど。もう1回勝負してみましょう。レディー、ゴー!」
リコ 「さっきよりもかるい!かるい!」
母 「リコちゃんの勝ち!!」
おもりを引き上げると5N
動滑車を使うと2.5N
リコがらくらく勝つことができたのは、動滑車の原理で説明することができます。
緑色のおもりを直接引き上げると、5Nの力で上がります。
動滑車を使って引き上げると、力は半分の2.5Nで上がります。
これは、2本のロープでおもりを引き上げ、力を分け合っているためです。
6本のロープで力を分け合う
5Nの約1/6
今度は、動滑車の数を3個にします。
このとき6本のロープで力を分け合っているので、直接おもりを引き上げたときの5Nの、約1/6となります。
ロープは6回通っている
1/6の力で引っ張っている
先ほどのゲームでは、棒にロープを6回通しています。
動滑車を3個使った実験と同じように、1/6の力でリコは引っ張ることができたため、らくらく勝つことができたのです。
リコは長い距離を引っ張っている
父 「さっきよりも小さい力ですんだでしょ。でも、ほら見てごらん、リコちゃんがたぐり寄せたひもの長さは、ずっと長くなっているよね。」
リコ 「たしかに、これだけ引っ張ってたんだ!」
▶仕事とは何だろう
距離は伸びるが小さい力ですむ
小さい力ですむが距離が長くなる
父 「滑車もそうだし、坂を使ってものを引き上げるときも、小さい力ですむんだ。ただ引っ張る距離は長くなるんだけどね。」
ノブナガ 「道具を使えば小さい力ですむけど、そのぶん距離は長くなる。どっちが得か、はっきりしないね。」
父 「はっきりさせるために、数値を測った実験をやってみたから、それを見てみよう!」
力学台車
直接持ち上げる、坂、動滑車
力学台車を「直接上に持ち上げる方法」「坂を使う方法」「動滑車を使う方法」という3つのパターンで実験を行います。
それぞれ力の大きさと距離は、どのようになるのでしょうか。
直接引き上げると0.1m
直接引き上げると10N
持ち上げるのはどの場合も、下の赤い線から上の赤い線までです(左写真)。
台車の高さの基準になるのは、赤い目印(左写真・黄色い丸)です。
直接引き上げた場合、距離は1マス2cmを5マスなので10cm、つまり0.1mになります。
このときの力の大きさは、10Nでした。
斜めに引き上げると4N
斜めに引き上げると0.25m
斜めに引き上げる場合も、引き上げる高さは先ほどと同じ0.1mです。
このときの力の大きさは4Nで、力の方向に動かした距離は0.25mでした。
動滑車を使うと0.2m
動滑車を使うと5N
動滑車を使った場合は、ロープを引き上げた距離は0.2m、力の大きさは5Nでした。
力学台車を使った実験結果
力と移動距離の積に意味がある
父 「さて、一番得だったのはどの場合かな?この実験結果から何か気づくことはあるかな?」
ノブナガ 「坂や滑車みたいに、道具を使えばやっぱり距離が長くなっているってことは再確認できたけど……ほかに何かある?」
リコ 「あっ!わかった!!かけ算!かけ算!!」
台車を上に持ち上げたときの力10Nと、移動距離0.1mをかけると、
10×0.1=1
と計算でき、答えは1になります。
同様に、斜面で台車を上げたときの力4Nと移動距離0.25mをかけると、
4×0.25=1
滑車の場合も、力5Nと移動距離0.2mをかけて、
5×0.2=1
となります。
このように、それぞれの場合の力と移動距離をかけると1になります。
かけ算の答えが全て等しくなるということは、力と移動距離の積に意味があるということです。
仕事W=Fx
力×移動距離=仕事
物体を一定の力で押して力の向きに移動させたとき、その物体に「仕事をした」と表現します。
先ほどの3つの実験では、「道具を使う」など手段が異なっていましたが、結果として台車を同じ場所に動かしたことから「同じ仕事をした」といいます。
同じ仕事をするとき、道具を用いて小さな力で仕事をすると動かす距離が長くなります。
直接台車を持ち上げても、斜面で引き上げても、動滑車を使って上げても、物理でいう仕事はすべて同じです。
つまり損得は無く、これを「仕事の原理」といいます。
Aさんが物体Bを一定の力F[N]で押して、力の向きに距離x[m]移動させたときの仕事Wの大きさは、
W=Fx
という式になり、力Fと距離xの積で表されます。
仕事の単位はJ(ジュール)を使い、1Nの力で1m移動させたときの仕事を1Jといいます。
母 「力と移動距離をかけ算してたのは、仕事を求めたってことだったのね。つまり、さっきの答えは1Jってことね。」
リコ 「あれ?もし一生懸命に力を加えても全然動かなかったら、仕事をしていないことになるの?」
父 「力がいくら大きくても、移動距離が0、つまり動かなかったらその積は0だから、仕事は0。つまり仕事はしていないということになるんだ。」
▶仕事の能率が良いのはどっち?
リコは20kgで3.5m
ノブナガは60kgで1.5m
父 「オープナーでビンのふたを開けたり、坂を使っておもりを運んで力を小さくしても、結局、仕事の量は変わらなかったよね。だけど、仕事をするなら能率よくしたいでしょ?そこで、ノブナガとリコにはある『仕事』をして、どっちが能率が良いか競争してもらおうかな。」
リコ 「え~何をする気なの?」
リコとノブナガには、ダンボール箱を引っ張ってゴールを目指してもらいます。
リコのダンボール箱は20kgで、引っぱる距離は3.5mです。
一方、ノブナガのダンボール箱は60kgで、引っぱる距離は1.5mです。
リコとノブナガの比較
ニュートン計り
母 「ちょっと待って!重さも距離も違うんじゃ、どっちがより『能率』よく仕事ができるかを比べられないでしょ。」
父 「さすがお母さん。比べる条件をそろえるのが基本だったよね。でも、まあ見てて。」
お母さんは2人がゴールするまでのタイムを、お父さんはニュートン計りを見て力を計測します。
リコが引っ張る
ノブナガが引っ張る
はじめはリコの番です。
引っ張り終えるまでにかかった時間は3秒、力は100Nでした。
次はノブナガです。
ダンボール箱の重さは、リコの3倍の60kgです。
引っ張り終えるまでにかかった時間は5秒、力は230Nでした。
実験結果
結果を整理してみます。
まず、リコとノブナガの二人がした仕事をそれぞれ求めてみます。
リコの場合
100[N]×3.5[m]=350[J]
ノブナガの場合
230[N]×1.5[m]=345[J]
母 「あれ二人とも、重さや距離は違うけど、ほぼ仕事量は一緒ってこと?」
父 「そういうことなんだ!」
ノブナガ 「この場合、どっちが能率が良いって言えるの?」
父 「そこで、大切になってくるのが、お母さんが計った時間なんだ。」
母 「リコは3秒、ノブナガは5秒。」
父 「同じ仕事をしても、それにかかる時間によって、仕事の能率は変わるということなんだ。一定の時間で、いくらの仕事をしたのか、その量で比べることができるんだ。」
▶仕事率の表し方
仕事量P=W/t
リコとノブナガの仕事率
1秒間あたりで比べる仕事の量を「仕事率」といい、
P=W/t
という式で表します。
この式からt秒間に、W[J]の仕事をしたときの仕事率Pが求められ、その単位は「W(ワット)」を用います。
父 「今回の場合、リコは350Jの仕事を3秒間で行ったので、仕事率はおよそ117W。ノブナガの場合は345Jの仕事を5秒間で行ったので、仕事率は69Wというところかな。」
母 「ということは、リコちゃんのほうがノブナガよりも仕事を能率よくできたってことになるわけ?」
ノブナガ 「ええ~あんなに頑張ったのに!」
父 「仕事率の単位『ワット』だけど、どこかで聞いたことないかな?電化製品によく『ワット』って書いてあるけど、あの表示の『ワット』なんだよ。たとえば、一般的な電子レンジは500Wぐらいあるんだけど、これは1秒間で500Jという意味なんだ。リコの仕事率は117W。ノブナガは69W、1秒間に直すと69Jだね。」
リコ 「電子レンジすごすぎる……。」
ノブナガ 「ぼくがあんなに苦労したのに、電子レンジで1秒温めるのに遠く及ばないなんて、ショックすぎる……。」
優しくケーキを出すお母さん
ノブナガ 「決めた!将来、誰よりも仕事のできる男、つまり能率よくこなせる男になってみせる!」
母 「その考えはすごく大事なことなんだけど、物理の仕事と、社会での仕事はまったく別のことだからね!」
~お父さんのひと言~
ピクリとも動かない巨大な岩も、道具を使えば動かすことができますよね。
どんな道具を使っても、同じ結果が得られるのであれば、そこには何か同じ物理量があるに違いないと考えて「仕事」という概念を生み出したわけです。
この新しい概念を生み出す発想、すばらしいと思いませんか?
ところで、いくら力を加えても動かすことが出来なければ、仕事をしたことにはならないんですよね。
でも、たとえ結果が出なくても、私たちは一生懸命に努力をして頑張った人には賞賛を与えるじゃないですか。
人生には、成功よりも失敗のほうがたくさんあるんです。
たくさんの失敗を乗り越えて、私たちの人生は進んでいきます。
失敗をしても、またやり直せばいいんです。
【ベーシックサイエンス】 第16回 雷の科学 ~静電気~
雷の科学 〜静電気〜
下敷きで立つ髪の毛
+と-の関係?
今回のテーマは「雷の科学」です。
夏に多い雷ですが、その正体は電気です。
なぜ雲の中で電気が生まれるのか、そのメカニズムに迫ります。
藤本 「雷は雲の中で生まれる電気ですが、みなさんのとても身近なところでも電気は生まれています。それは何かわかりますか?」
彩加 「静電気。」
藤本 「正解です。みんな小学生の頃、下敷きで頭をこすって髪の毛を立たせるという遊びをしませんでしたか?」
キュピトロン 「あー!やった!」
藤本 「これが皆さんご存じの静電気です。今、下敷きと僕の頭の間に電気が起きています。」
里奈 「髪の毛が下敷きにくっついた!」
田畑 「なぜ髪の毛がつくのでしょうか。」
二千翔 「+-の関係ですか?」
+と-のバランスが取れている状態
下敷きと髪の毛がくっつき合う
下敷きと髪の毛は、どちらも+と-の電気を持った粒子で出来ています。
普段は+と-のバランスが取れています。
ところが、髪の毛と下敷きをこすると下敷きに-の電気が移動して増え、髪の毛には+の電気が残ります。
その結果、+と-のバランスが崩れてしまいます。
そして、下敷きにたまった-の電気と、髪の毛の+の電気が引き合います。
こうして髪の毛と下敷きはくっつき合うのです。
里奈 「小学校の頃は普通に遊んでいただけのことも、深く考えてみると面白いです。」
田畑 「実は静電気を作る遊びをしていたことになりますね。」
彩加 「雷も同じということですか?」
藤本 「実は、雷も同じようにモノとモノとがこすり合わされて生まれているのです。」
▶雷の成り立ち
積乱雲
氷の粒
雷は、もくもくと大きくなる積乱雲の中で生まれます。
雲は空気中の水蒸気が冷やされて、氷の粒や水滴になって出来ています。
+と-の電気を帯びる
雲の上と下、地上の電気の関係
氷の粒などは、吹き上げる空気によって、浮かんだり沈んだりして動きます。
そして互いにぶつかりこすれ合った結果、バランスが崩れて+の電気、-の電気を帯びます。
雲の中では上の方に+の電気、下の方に-の電気がたまっていきます。
雲の下の方に-の電気がたまると、それに比べて地上は+になります。
落雷
10億ボルト
雲にたまった-の電気は、地上の+の電気との間で放電します。
これが「落雷」です。
雷はわずか一瞬ですが、そのパワーは最大で10億ボルトに達します。
▶雷を作る
静電気発生装置
2つの玉の間で放電
落雷から身を守るためには、雷の性質を知ることが大切です。
そこで、静電気発生装置を用意しました。
スイッチを入れると、大きな銀色の玉の中に静電気がたまっていきます。
装置の大きな玉に、上から小さな玉を近づけてみると、2つの玉の間で「バチッ」という音とともに放電が起こりました。
これは落雷と同じ仕組みで、大きな玉から小さな玉に落雷したことになります。
大きな玉に-の電気がたまったため、小さな玉の+の電気と引き合い、雷が生まれました。
▶雷の性質を知る
実験装置
静電気発生装置を雲に見立てた空き缶につなぐ
さらに、この装置を使って雷がどのような所に落ちやすいかを調べる実験を行いました。
静電気発生装置を雲に見立てた空き缶につなぎます。
ビルに見立てたアルミニウムのブロック
ビルへの放電
空き缶の下には、ビルに見立てたアルミニウムのブロックがあります。
静電気発生装置を動かし、空き缶に静電気をためます。
すると、アルミニウムのビルとの間で放電、つまり落雷が起こります。
高さの違うビル
雷はより高く、とがったものの先端に落ちやすい
次に、このビルの隣に高いビルを置いてみました。
すると、雷はより高いビルの方に落ちるようになります。
このことから、雷はより高いものに落ちやすいことが分かります。
次に、形を比べてみます。
雷が落ちているビルの隣に、先のとがったものを置きました。
すると、高さは同じでも、雷は先のとがった部分に落ちるようになります。
雷は、より高く、とがったものの先端に落ちやすいことが分かりました。
▶雷から身を守る
雷の落ちやすいもの
木の下に立つと危険
田畑 「さぁキュピトロンの3人は、身の回りでは何が危険なのか分かりましたか?」
彩加 「アンテナ?」
キュピトロンのアンテナは、確かに危険かもしれません。
私たちの身の回りのものでは 傘やテニスラケット、金属バットなど、とがっていて長いものを立てて持つのは危険です。
金属以外でも、たとえば高い木などは雷が落ちることがあります。
落ちた雷は人間にも向かって来るため、とても危険です。
避雷針
雷が地面に逃げていく
「高くてとがったものに落ちやすい」という雷の性質を利用したものが避雷針です。
避雷針に落ちた雷は、地面へと安全に逃げていきます。
▶金網のカゴへの落雷実験
実験装置
カゴに電気をあてる
ここで、ガリレオ先生こと、川村康文先生(東京理科大学教授)に詳しく解説していただきます。
スタジオに金網のカゴを用意しました。
雷のときに「この中に入れば大丈夫」ということを実験で確かめます。
静電気発生装置からケーブルを延長してつないだ棒の先には端子がついており、発生した静電気が放電できるようになっています。
金網のカゴの中に、彩加ちゃんが入り、実験開始です。
彩加ちゃんはカゴには絶対に触れないようにした上で、静電気を発生させます。
※専門家の指導のもと 安全に配慮して実験しています
河村先生が端子をカゴに近づけると、「バチバチ」と音を立ててカゴとの間に放電が起こりますが、中の彩加ちゃんは何ともない様子です。
彩加 「安全ですね。全然何ともなく、元気です。」
田畑 「先生、これはどういうことですか?」
川村先生 「金属製のカゴに雷が落ちた場合、その雷は金属の表面を伝わって地面に逃げていきます。だから雷は中へは入りません。」
彩加 「この中にいれば絶対安全ということですか。」
川村先生 「はい、安全です。」
落雷した車
里奈と二千翔と実験
このカゴと似たような条件にあるのが、自動車の中です。
金属に囲まれているため、雷は表面を伝わって地面へと逃げていきます。
最後に、二千翔ちゃんと里奈ちゃんもカゴの中に入って実験を行ってみました。
カゴに電気を流しても、二人は安全です。
【音楽1】
19 世紀、ヨーロッパの市民社会と共に発達を遂げたのが、いわゆる「ロマン派」の音楽です。今回は、「ロマン派」という概念について理解を深めながら、この時代の音楽を、きわめて小規模なピアノ作品と、そして重厚長大な管弦楽作品という2 つの世界の対比としてとらえます。
ロマン派という概念について
理解を深める
音楽におけるロマン派は、19 世紀ごろ、ドイツ、オーストリアを中心にして展開した音楽の様式を指しています。以前の「古典派」が、均整のとれた合理的な造形を持っていたのに対して、ロマン派はむしろ感情や主観を前面に出してゆく点に特徴があります。ロマン派の表現は、単に感情をダイレクトに出すというよりは、ある種の「距離感」を持っているのが面白いところです。
例えば、恋愛を語る場合にも、遠くにいる恋人への想い、あるいは好きな人との精神的な距離といった題材が好んで描かれるのです。ロマン派の音楽は、こうした微妙な感情のあやを表すために、音楽の形式や和音、そしてリズムといった側面が、古典派に比べると、はるかに複雑で自由なものになっていきました。この繊細さこそが、まずはロマン派音楽の最大の魅力です。
小規模なピアノ曲と
大規模な管弦楽曲の対比を考える
ロマン派の活躍した時代はちょうど市民社会の発展の時期にあたります。ハイドンやモーツァルトが、「サラリーマン」として、雇い主である王侯貴族の意向に沿って曲を作らなければいけなかったのとは対照的に、フランス革命以降、19 世紀の作曲家たちは、いわば「フリー」の作曲家として活躍しました。言いかえれば、自分の好きな曲を、自分の好きなときに書くことができるようになったといえます。
しかし、これは一方で「売れなければ生活できない」という厳しい道を選択することでもありました。ゆえに彼らは、一般にもわかりやすいピアノの小品の楽譜を出版する一方で、自分の理想を追求する大規模な管弦楽作品をも同時に手がけました。こうして、ロマン派においては、小規模なピアノ作品と大規模な管弦楽曲作品という2 つの極に、音楽が分化してゆきます。
大管弦楽を好んだ作曲家たちは、しばしばその作品の根底にストーリーを織り込みました。これを「標題音楽」と呼びます。つまりは単にソナタ形式とか3 部形式といった音楽的な論理だけではなく、ある人物の生涯や恋愛の行方を音で描いていくわけです。恋愛に挫折し、夢の中で恋人を殺してしまうというストーリーを持った、ベルリオーズの「幻想交響曲」はその代表的な例といえます。
ショパンからマーラーにいたる
ロマン派音楽を体験する
ショパンやリストのようにロマン派の作曲家には、ピアニストとしても活躍した人物が少なくありません。彼らは自らの演奏技術を誇示するために、華やかな技巧を持った作品を次々に作曲し、喝采を浴びました。
一方、19 世紀末に活躍したグスタフ・マーラーは、1時間以上もかかる交響曲を数多く作曲しました。「一千人の交響曲」という通称でも知られる、マーラーの「交響曲第8 番」は、まさにその名の通り、大規模なオーケストラと合唱、独唱、など総勢千人ほどを要するというとてつもない規模の交響曲で、まさにロマン派における「二極分化」の、もう1 つの巨大な極といえる楽曲です。
今回取り上げる楽曲
歌曲集「詩人の恋」から 美しい五月に シューマン作曲
無言歌第3巻から 第2曲「失われた幸福」 メンデルスゾーン作曲
幻想交響曲 作品14から 第4楽章「断頭台への行進」 ベルリオーズ作曲
エチュード 作品10第1 ショパン作曲
交響曲 第8番 変ホ長調 「一千人の交響曲」から 第1楽章 マーラー作曲
【地理】第8回 現代世界の系統地理的考察 【自然環境】編 世界の気候を見てみよう ⑷ ~変化に富む気候、寒冷な気候~
世界の気候を見てみよう ⑷
~変化に富む気候、寒冷な気候~
地新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんが、食材を並べていますが、どうやら今回の依頼に関係があるようです。
▶食材と風土の関係を知りたい
米、茶、オリーブ、チーズ。食材と風土の関係を知りたい。
日本の米、中国ユンナン(雲南)省のお茶、スペインのオリーブ、オランダのチーズに絞って調査する
「米、茶、オリーブ、チーズ、食材と風土の関係を知りたい」
これが今回の依頼です。
所長 「ちょっと漠然としてないか?」
さくら 「そうですよね。そこで、日本の米、中国ユンナン(雲南)省のお茶、スペインのオリーブ、オランダのチーズに絞って調査する事をすでに依頼主から許諾済みです。」
4つの地域はすべて温帯に属している
それでは、4つの地域、日本、中国・ユンナン省、スペイン、オランダを地図に並べて、ケッペンの気候区分図を加えてみましょう。
所長 「この4つの地域はすべて『温帯』に属しているな。そして温帯は4つの気候区に分けることができるんだ。」
日本は主に温暖湿潤気候区、中国ユンナン省は主に温暖冬季小雨気候区
スペインの地中海沿岸は地中海性気候区、そしてオランダは西岸海洋性気候区
所長 「日本は主に『温暖湿潤気候区』、中国ユンナン省は主に『温暖冬季少雨気候区』、スペインの地中海沿岸は『地中海性気候区』、そしてオランダは『西岸海洋性気候区』だ。」
さくら 「なるほど。食材と風土の関係は、それぞれの気候区分の特徴を調べればいいということですね。」
▶食材と風土の関係 温暖湿潤気候
日本では米が伝統的な主食
四季がはっきりしていて、たくさんの雨が降る
日本では米が伝統的な主食です。
実は稲作は日本の気候風土に関係が深いのです。
私たちの住む日本は、ほとんどが温帯の「温暖湿潤気候区」に属します。
その特徴は、四季がはっきりしていて、たくさんの雨が降ること。
稲作との関係を見ていきましょう。
新潟十日町市
温暖で雨が多い気候が向いていた
米の生産量日本一を誇る新潟県。
中でも十日町市は、魚沼産コシヒカリというブランド米を作ることで知られています。
この地域では冬に大量の雪が降ります。田んぼに引かれているのは
その雪どけ水です。
稲作には大量の水を必要としますが、降水量の多い日本は水が豊富です。
毎年5月頃、海からの湿った空気、季節風が日本に流れ込みます。
季節風や「梅雨前線(ばいうぜんせん)」の影響によって大量に降る雨は、稲の成長に欠かせません。
また、高温多湿な日本の夏は、元々熱帯の沼地に生息していた稲にとって最適な環境です。
温暖で雨が多い気候が向いていたため、日本に稲作の文化が根づいていったのです。
▶食材と風土の関係 温暖冬季少雨気候
ユンナン省プーアール
見渡す限りに広がる茶畑。
ユンナン(雲南)省プーアールは、「温暖冬季少雨気候区」に属します。
この辺りが世界のお茶の原産地と考えられています。
プーアール茶
天日で乾かすことで、お茶の葉は発酵していく
プーアール産のプーアール茶。
特徴はまろやかな口当たりと風味だといいます。
その秘密は、こうじ菌というカビを加えて発酵させることです。
天日で乾かすことで、お茶の葉は発酵していきます。
この発酵が、味にまろやかな風味を与えるのだといわれています。
大きな石の下に敷き、男たちが乗って30分ほど踏み、お茶は丸く平たい形になる
プーアールの夏は暑く、湿度が高いため霧の日が多くなります。
温暖多湿は発酵を促します。
発酵したお茶の葉を臼のような大きな石の下に敷き、男たちが乗って30分ほど踏み続けます。
やがてお茶は丸く平たい形になり、完成です。
完成したお茶の保存には乾燥した環境が最適です。
プーアールでは、冬に大陸側から乾燥した季節風が吹くため、雨が少なく、乾燥します。
これは、「温暖冬季少雨気候」の特徴です。
夏の温暖多湿と冬の乾燥を繰り返す気候が、お茶の発酵と保存に適していたのです。
▶温暖湿潤気候と温暖冬季少雨気候
チンホンと日本の新潟の雨温図
それではここで、プーアール近郊のチンホンと、日本の新潟の雨温図を見てみましょう。
さくら 「新潟は、夏は気温が高く、冬も降水があることがわかります。『温暖湿潤気候区』の特徴なんですね。チンホンの夏は暑くてよく雨が降るのに、冬は雨が少なく乾燥していることがわかります。それが、『温暖冬季少雨気候区』の特徴なんですね。」
それでは次に、ヨーロッパを見てみましょう。
アジアとの違いはあるのでしょうか?
所長 「アジアは季節風の影響が大きいんだけど、ヨーロッパは偏西風と海流の影響が大きいんだ。」
▶食材と風土の関係 地中海性気候
アンダルシア
オリーブオイル
オリーブ生産量世界一のスペイン。
オリーブ畑が広がるアンダルシア州は、「地中海性気候区」に属します。
オリーブの収穫では、オリーブを傷めないように、今も昔ながらの手で摘む方法で収穫しています。
このオリーブの実を搾って作るのが、オリーブオイルです。
スペイン料理には欠かせないオリーブオイル。
オリーブはイタリアやギリシャなど、地中海沿岸の国々で広く栽培されています。
亜熱帯高圧帯
亜熱帯高圧帯は夏のあいだ北上する
なぜ地中海沿岸でオリーブ栽培が盛んなのでしょうか?
赤道付近では、湿った空気が温められ、上昇しながら大量の雨を降らせます。
水分がなくなり、乾いた大気はアフリカの北部に下降します。
これが「亜熱帯高圧帯」です。
「亜熱帯高圧帯」は夏のあいだ北上するため、地中海沿岸は高温で乾燥します。
オリーブは乾燥に強い植物です。
夏に暑く、乾燥する気候が、オリーブの栽培に向いていたのです。
▶食材と風土の関係 西岸海洋性気候
アルクマール
ゴーダチーズ
次に「西岸海洋性気候区」のオランダを見てみましょう。
首都アムステルダムの近くにあるアルクマールは酪農が盛んな地域です。
この地域で作られているのがゴーダチーズ。
日本でもおなじみの、オランダを代表するチーズです。
チーズ市
広大な牧草地
アルクマールのチーズ市。
チーズを運ぶのは専門の男たち。
独特な荷台に載せて運びます。
取り引きされるのは周辺の農家から持ち込まれたチーズです。
チーズ作りはオランダの広大な牧草地が支えています。
ただ、この牧草地は最初からあったわけではありません。
オランダは国土の多くが海面下の湿地帯でした。
風車
風車の仕組み
ここを干拓するのに使われたのが風車です。
その仕組みを見てみましょう。
風車の回転で水車を動かします。
こうして低い場所から水をなくして、牧草地を作ったのです。
この風車を回した風が「偏西風」です。
偏西風、北大西洋海流、西岸海洋性気候
ヨーロッパには1年中、西から強い偏西風が吹いています。
この偏西風を利用したのです。
また、大西洋には北大西洋海流という暖流が流れています。
その上を偏西風が吹くため、オランダは緯度が高いわりに温暖で、降水量の季節変化も小さいのです。
これが「西岸海洋性気候」です。
この気候と、干拓によって作られた平たんで広大な牧草地が、酪農に向いていたのです。
東京の緯度に赤い線を入れると、オランダは北にあることがわかる
オランダの首都アムステルダムと札幌の雨温図
それではここで、オランダと日本の位置関係を確認しておきましょう。
東京の緯度に赤い線を入れると、オランダは北にあることがわかります。
所長 「オランダの首都アムステルダムと札幌の雨温図を比べてみると…。月平均気温を見ると、どうなってるかな?緯度が高いのにアムステルダムの方が温かいだろ?」
さくら 「いちばん寒い月にも氷点下にはならないんだ…。もっと寒いのかと思いました。」
所長 「暖流と偏西風の影響を受けるために、緯度のわりにオランダは温暖なんだよ。」
セビリアの雨温図
4つの雨温図を比べる
.
所長 「次にオリーブを作っていたスペインのアンダルシア州の州都、セビリアの雨温図だ。」
さくら 「セビリアはVの字になっています。夏に乾燥するんですね。」
所長 「うん、それが『地中海性気候区』の特徴なんだな。だから、乾燥に強いオリーブが栽培されるわけだ。さあ、ここで4つの場所を比べてみると、それぞれの特徴があるね。」
さくら 「はい、温帯といってもそれぞれの特徴が違うんですね。」
所長 「その特徴がわかれば、今回の依頼に対する答えもおのずと出てくるはずだ。」
▶食材と風土の関係は?
食材と風土の関係は? それぞれの食材は気候風土を生かして作られている
さくら 「日本のお米は、四季の変化が明瞭で年間を通して降水量がある『温暖湿潤気候区』。中国ユンナン省のお茶は、夏に雨が多く冬に乾燥する『温暖冬季少雨気候区』。スペイン地中海沿岸のオリーブは、夏に乾燥する『地中海性気候区』。そして、オランダのチーズは、偏西風と海流の影響を受ける『西岸海洋性気候区』。それぞれの食材は、それぞれの気候風土を生かして作られています。」
では、もっと寒いところではどんな食材を食べているのでしょうか?
引き続き調べてみましょう!
▶食材と風土の関係 亜寒帯
モスクワ
ボルシチ
まずは「亜寒帯」から見ていきましょう。
亜寒帯は「亜寒帯湿潤気候区」と「亜寒帯冬季少雨気候区」に分けられます。
ロシアの首都モスクワは、「亜寒帯湿潤気候区」に属します。
真冬の気温は氷点下20℃近くまで下がります。
ロシアの国民食ともいえるボルシチは、野菜と肉を煮込んだ真っ赤なスープです。
ビーツ
ボルシチが赤いのはビーツのため。
カブに似ていますが、実はほうれん草の仲間です。
ビーツは寒さに強い野菜で、ロシアでは春から夏に栽培しています。
「亜寒帯湿潤気候区」は1年を通して降水があり、短い夏は暑くなるために農業が可能なのです。
亜寒帯でも、もっと寒いところでは何を食べているのでしょうか?
オイミャコン
ストロガリーナ
北極圏近くにある村、オイミャコン。
北半球の最低気温、マイナス71.2℃を観測し、世界一寒い村といわれています。
冬場の平均気温はマイナス50℃にまで下がります。
釣り上げたばかりの魚も、わずか数十秒で凍ってしまいます。
この凍った魚をそのまま薄く削り取るのが、オイミャコンの郷土料理「ストロガリーナ」です。
タイガ
永久凍土
「タイガ」と呼ばれる針葉樹林。
ユーラシア大陸の北東部には「亜寒帯冬季少雨気候区」が分布します。
冬は大陸性の高気圧の影響で、降水量が少ないことが特徴です。
降水量が少ないのに広大な森林が広がっている理由は土壌にあります。
出てきたのは「永久凍土」。
しま模様のようにキラキラと光って見えるのは水分です。
地下に永久凍土があるおかげで、地表近くに水が蓄えられ、樹木が育つのです。
▶食材と風土の関係 寒帯
南極
グリーンランド
さらに寒い「寒帯」は「ツンドラ気候区」と「氷雪気候区」に分けられます。
「氷雪気候区」は南極とグリーンランドの内陸部に分布しています。
「氷雪気候区」では通常の人間生活を営むことはできません。
グリーンランドの沿岸部は「ツンドラ気候区」に属し、短い夏があります。
イヌイット
アザラシ
ここに住む先住民族イヌイットの人々は何を食べているのでしょうか?
しとめたのはアザラシ。
先祖代々狩猟を行って食料を調達してきました。
生肉には、たんぱく質だけでなくビタミンが多く含まれているため、野菜や果物がなくても健康を保つことができます。
厳しい環境の中で生き延びるための知恵なのです。
▶変化する気候
沼畑早苗先生
2万年前のヨーロッパと北アメリカの氷河の様子
所長 「ところで、気候は変化するということを聞いたことがあるか?」
さくら 「『異常気象』とかそういうことですか?」
それでは、研究所のブレーン・沼畑早苗先生に詳しく聞いてみましょう!
沼畑先生 「地球の気候を長期的にみると、『温暖化』と『寒冷化』を繰り返しているといわれているんですよ。これは、およそ2万年前のヨーロッパと北アメリカの氷河の様子です(右図)。全陸地面積のおよそ3割が氷河に覆われていました。このように氷河が拡大した時期を『氷期』といい、現在に最も近い氷期がこの2万年前になります。」
さくら 「そのあとは、暖かくなっていったということですよね。」
沼畑先生 「そういうわけでもないんですよ。2万年の間には今より暖かくなったことも、寒くなったこともあります。」
7000~6000年前の関東地方
沼畑先生 「この図は、縄文時代前期にあたる7000~6000年前の関東地方の海岸線を示したものです。」
さくら 「海が内陸の方まで入り込んできてますね。」
沼畑先生 「これは、『縄文海進(じょうもんかいしん)』と呼ばれています。海が陸の方に進んでいくので“海進”です。気候変動には地域差がありますが、日本では縄文時代前期にあたる7000~6000年前は気温が高く、海面は現在より2~3mほど高かったと考えられています。また、300~200年前の江戸時代には、『小氷期』と呼ばれる、現在より気温が低い時期もありました。このような長期的な気候変動には、太陽の活動や地球の自転・公転などの変化が深く関係しています。」
所長 「ところで、最近では人間活動も影響してるなんて言われていますよね?」
沼畑先生 「そのとおりです。日本でもこれまでとは違った現象が起きています。」
諏訪湖
御神渡り
長野県の諏訪湖では、厳しい冷え込みが続く冬に、珍しい現象が起きます。
それは、「御神渡り(おみわたり)」。
水面の氷が割れて高く盛り上がるのです。
地元では神様が湖を渡った跡だと言い伝えられてきました。
ところが、湖が全面凍結しない年もあり、御神渡りができない年もあるのです。
御神渡りができなかった回数のグラフ
気候の変化が伝統的な文化や生活に影響を及ぼしている
沼畑先生 「これは御神渡りができなかった回数を50年ごとにグラフ化したものです。17世紀から20世紀の前半までは、できなかったことは数えるほどでした。」
さくら 「でも、20世紀後半でいきなり増えていますね。」
沼畑先生 「ここに21世紀、2018年までのデータを加えてみましょう。わずか18年で12回も、できない年があったんですよ。」
さくら 「御神渡りができない年が増えてきているなんて、地球が温暖化していっている、ということでしょうか?」
沼畑先生 「そうですね。温暖化については、またの機会に説明したいと思いますが、気候の変化が、伝統的な文化や人々の生活に影響を及ぼしていると言えると思います。」
記録
天気: 晴れ
最高気温(℃)[前日差] 33℃[+6]
最低気温(℃)[前日差] 20℃[+2]
散歩人