読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

北見崇史著「出 航」

2020-01-16 | か行

2019年第39回横溝正史ミステリ&ホラー大賞優秀賞受賞作。受賞時の題名は「血の配達屋さん」。禁断の書「根腐れ蜜柑」。突然出奔した母河合静子を探し出すため、私は北国の漁師町独鈷路戸へと向かった。一週間に1本のバスに乗り遅れた私は偶然、おんぼろディーゼルのネコバスに乗せてもらいトッコロへ。そこは、動物の死骸があちらこちらに散逸し、生々しい匂いが一面に充満した町だった。犬猫の死骸だらけの窪地に落ち、奇妙な老人たちに助けられた私。彼らは、太古の昔に繁栄した種族の、魔術めいた技術が記された特殊な本を手に入れるために自分を助けたのだという。ようやく見つかった母は、血塗られた船を造っていた。私を追って来た恋人三咲や妹の沙希たちは、母が造った船に次々と呑み込まれていく・・・。

動物のゾンビやグロテスクな描写が連続するホラーだが何が言いたいのか不明の駄作。リアル感も社会風刺も中途半端でなんでこれが大賞なのか疑問の読後感でした。

201910月KADOKAWA刊

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黒川博行著「泥濘」

2019-05-26 | か行

建設コンサルタント二宮啓之とイケイケ経済ヤクザの桑原保彦の疫病神シリーズ。今回の標的は警察OBが作る自称・親睦団体「警慈会」。巧妙な手口で老人ホームを乗っ取ってその時手に入れた「介護の待機者名簿」を利用したオレオレ詐欺や保険不正請求。老人を喰い物にする腐りきった警察OBに二人は挑み、その裏稼業を取り仕切る暴力団事務所に乗り込むが、争いになり二宮は逃げ遅れ拉致されてしまう。やがて桑原も銃撃を受け心肺停止の病院送りになってしまう。

「脅し?わしは値踏みをしてるだけや。おまえがどれほどのワルか、をな」

「社会のダニが一人前のことをいうやないか。ダニはダニらしいに、女のヒモになるか、シャブの売人でもしてくうたらどうや」

「わしはダニかい」「ダニはいいすぎた。クズや、おまえは」(本分より)

警察OBのドンを相手に一歩も引かない二人。どんでん返しに次ぐドンデン返しのスピード感がいい。チャカリしぶとく自分の分け前を獲得する二宮。大阪弁のボケとツッコミの掛け合い漫才が抜群に面白く、筋の展開のテンポも読みやすかった。

20186月文藝春秋社刊

 

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樹木希林著「一切なりゆき~樹木希林のことば~」

2019-05-01 | か行

「求めすぎない。欲なんてきりなくあるんですから」2018年、惜しまれながら世を去った名女優・樹木希林が、生と死、演技、男と女について語ったことばの数々を取り上げた、ユーモアと洞察に満ちた、樹木流生き方のエッセンス集。

「モノを持たない、買わないという生活は、いいですよ」「人の人生に、人の命にどれだけ自分が多く添えるか」「欲や執着があると、それが弱みになって、人がつけこみやすくなる」「子供は飾りの材料にしないほうがいい」「アンチエイジングというのもどうかと思います」「人間でも一回、ダメになった人が好き」「もう人生、上等じゃないって、いつも思っている」「女は強くていいんです」「つつましくて色っぽいというのが女の最高の色気」「最期は娘に上出来! と言ってもらいたい」

「おごらず、他人(ひと)と比べず、面白がって、平気に生きればいい」という母の言葉を紹介する・・・内田也哉子(喪主代理の挨拶)、樹木希林年譜・出典記事一覧。内田裕也氏とラブラブだった頃の写真、娘夫婦と一緒の家族写真、他ドラマ出演の写真等載せてあり、どの写真の表情もいい表情。2003年 左目を網膜剥離で失明。2005年 乳がん、2013年 全身がん、という病歴も凄いが、事務所もマネージャーも持たず独りで女優業をこなす一方都内に複数不動産を所有し賃貸経営もしていたとはとても、成り行きに生きたとは思えないしたたかさを感じた。

201812月文春新書

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小西晴彦著「モンスター」

2019-03-13 | か行

「神の声を聞く 選ばれし者の 使命とは」35年間高校教師だった人が書いたミステリー小説。北海道の道東、長閑な町の寄別高校の校長宅が燃え火災現場から校長の遺体が発見された。解剖の結果事故死でなく何者かによる他殺後の火事とされた。寒別署刑事課係長村雨と加賀巡査が捜査を開始する。やがて辿り着いた、殺人犯の悲しい生い立ち。なぜ殺人を犯すのか。「あなたはどのように育ち、誰に愛され、誰に愛されなかった。そして誰を愛そうとした。あなたは何と言った。あなたの最後の言葉は何だったのだ。」・・・そして、哀しくも救いのラスト。

至る処で神の存在、悪の存在、神と悪の沈黙、神の試練、神の愛など神学的哲学的命題語られる。また、道警、道教委を揺るがした裏金問題、高校の教育現場の教師の過酷な現実、苦悩と喜び、定数外教員など高校の現状が語られ理想の教師像が語られる。

「これから自分はどこへ行くのだろう。どこへ行くべきなのだろう。歳を経て得たもの失ったもの、これから何を得て何を失うのだろう。生きることはとても難しく簡単な人生などない。だから生きていくしかない。生きた先に何が見えるのかそれは生きることでしかわからない。」(P308)

2019年2月ロギカ書房刊

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川上途行著「ナースコール!こちら蓮田市リハビリテーション病院」

2019-01-26 | か行

リハビリテーション科医師が書いたお仕事・青春小説。埼玉県のリハビリテーション病院で働く南玲子はやる気に欠ける看護師2年目。新しく赴任してきた若い医師小塚太一に、「リハビリってどんな意味?」と問いかけられて答えられずいた。リハビリテーションというものがどのようなものか、患者や家族、リハビリ関連職種の想いが小説を通してリアルに描かれている。医師と療法士と看護師と患者、チーム医療の中で成長していく玲子だったのだが。・・・・爽やかで新しい医療小説、リハビリは「人が人を治療する」こと。リハビリ病院が他の病院とちょっと違うことが良く分かった。

「体が動く状態で死んでいく人もいれば、少しずつ動かなくなって死んでいく人もいる。・・・突然体が動かなくなる人もいれば、体より先に意識が薄れていく人もいる・・・選べないんだな。でも選べないことがあれば、選べることもある。・・・だったら、自分の選べることを見つめて生きていける方がいいかもしれんな。どんなときであっても」(P292)。

2017年7月ポプラ社刊

「ナースコール!戦う蓮田市リハビリ病院の涙と夜明け」は病院の3年後を描いたこの本の続編。https://blog.goo.ne.jp/sky7dddd/e/7bd3f6705a4e7e1ce3c00f8d11d57ebd

 

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黒川博行著「後妻業」

2018-12-07 | か行

欲に首までつかった人々が奔走する群像ドラマ「色で老人を喰う」裏稼業を描く戦慄の犯罪小説を一気読み。妻に先立たれ、結婚相談所で出会った二十二歳歳下の小夜子と同居を始めた老人・中瀬耕造は、脳梗塞で倒れ一命を取り留めたものの意識不明の重体になりその後死亡。その裏で、実は小夜子と結婚相談所を経営する柏木は結託、耕造の財産を手に入れるべく、周到な計画で遺産は全て小夜子の計画を立てていた。後妻におさまった小夜子から公式証書遺言状を見せられた娘の中瀬朋美は、遺産は全て小夜子に渡り遺族には一切残らないと知らされる。父の死に疑念を抱く耕造の娘・尚子と朋美は、弁護士の守屋に相談。弁護士から小夜子の身辺調査を依頼された興信所の探偵元大阪府警のマル暴担当刑事だった本多は恐るべき小夜子の“後妻業”の手口と実態を調べ上げるのだが・・・。

結婚相談所の男と、結婚したパートナーと、死別を繰り返す女につきまとう黒い疑惑。現実に起こった関西の青酸カリ連続殺人事件や木嶋佳苗事件など類似事件で起こった現実の方が、凄いような気する。2016年大竹しのぶ・豊川悦司で映画化されたが見落としたのでDVDでも借りてみてみたい。

20148月文芸春秋社刊

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小杉健治著「最 期」

2018-11-27 | か行

鶴見京介弁護士シリーズ第9作。鶴見は、ホームレス殺害容疑をかけられた岩田の弁護を引き受けた。ホームレスの岩田貞夫は、荒川で仲間の男性を撲殺したとして逮捕されたが、無罪を主張。弁護にあたる鶴見は、被告の無実を信じ裁判に臨む。だが、裁判員裁判の裁判員に選ばれてこの裁判に臨んでいた貝原は、45年前四日市市で起こった四日市公害裁判で見た船尾哲三と疑っていた。やがて被告を知っていたという人物が現れ、身分詐称疑惑が浮上。岩田は否定するが、不審を抱いた鶴見は彼が何者かを突き止めようと、調査を始める・・・。そこには男が隠し続けた半世紀前の悲劇が隠されていた。

公害裁判の裏に隠れた一人の壮絶な人生を描いたミステリー。今は綺麗な青空が見られる三重県四日市市公害被害者を救済するために巨大な敵と闘った公害裁判闘争の歴史を垣間見た感じ。

20185月刊 集英社文庫

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川上途行著「ナースコール! 戦う蓮田市リハビリ病院の涙と夜明け」

2018-10-21 | か行

現役医師が描くリハビリ病院ストーリー。前作「ナースコール!こちら蓮田市リハビリステーション病院」の続編。医師と療法士と看護師と患者、チーム医療の中で成長していく人間模様。爽やな医療小説

5年目に入り中堅看護師の立場になった南玲子。チーム体制が整ってきた病院に、プロ意識が高く技術もある若い女性療法士の大迫まひろが入職し、さまざまな摩擦がおこり始めた。良いチームとは何かについて悩む玲子や深沢朱理・黒木さおりたちは、それぞれの葛藤をへて医師小塚太一共々また一歩前進するのだった。リハビリに対する思い、考え方を通じて、個人個人の生き方が表現されていて、リハビリの世界や仕事に考えさせられました。

「変化を恐れないこと。組織というのは、ある意味では決まりごととか、決まった人間関係で成り立っているし、それが最適化された形なんだけど、ずっと同じ形ではやっていけない。取り巻く環境だって変化していくし、各個人だって変化していく・・・今が良い形で、ずっと信じてきた形でも、明日のために変われるマインドがある組織は強いよ。しなやかで、どんな風が吹いても、それを受けて大きな力にかえられる。」(p151

「相手の人生に踏み込むこということは、自分の人間性を見せるということです。(p167

「現在はますます、戦う人を戦わない人が揶揄する時代です。賢い人はそれに気づいて、避け始めています。それでも、・・・・何かのために舞台に上がろうとする人が好きですし、そういう人が減ってしまうことは本当に恐ろしいことだと思っています。」(p195

 20189月ポプラ社刊

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鏑木蓮著「疑 薬」

2018-04-24 | か行

東大阪で居酒屋「二歩」を営む育ての父・誠一、母の怜子と3人で明るく暮らしていた生稲怜花。「母親の失明の原因を知りたくないか」ある日、「なにわ新報社」の雑誌記者の矢島から不穏な誘いを受けたのだ。11年前、高熱で生死の境をさまよった母は、入院先の三品病院で新型抗インフルエンザ薬を処方され、なんとか一命を取り留めたものの、視力を失ってしまったのだ。「怜子の失明の原因を調べている」という・矢島から新聞の切り抜きを手渡された怜花。そこには、三品病院系列の老人ホーム「なごみ苑」でインフルエンザ患者2名が死亡したとの報道が。「お母ちゃんの目が見えへんようになったんは、新薬のせいなのか、副作用なのか、医療ミスなのか。」閉ざした過去と向き合い、真相を追う怜花・・・。

怜花のキャラが浅慮なのに賢明で且つ善良であると勘違いしてるような困ったちゃんキャラで他の登場者も善悪が不鮮明、後半の伏線のためにそうしているのだろうが中途半端で展開も遅く何故かイライラして読み進めにくかった。医療製薬分野や治験のことも理解しにくかった。

「その道しかないこと嘆くより,それをしかないことを歓びに変える努力をしてきたかと。何もかも揃っていることはいいことですが、それに感謝できなければ何もつかめない。自分に残った感覚にこれしかないという愛おしさと感謝の気持ちが強いから、そこを磨いたんだ・・・」(P312)

20175月講談社刊

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黒川博行著「果鋭」

2017-11-15 | か行

元刑事の堀内・伊達の名コンビがマトにかけたのはパチンコ業界。

出玉の遠隔操作、極道顔負けの集金力、警察との癒着等々、我欲にまみれた20兆円産業の闇が明らかにされます。
堀内信也、40歳。元々は大阪府警の刑事だが、恐喝が監察にばれて依願退職。不動産業界に拾われるも、暴力団と揉めて腹と尻を刺され、生死の境をさまよい、左下肢の障害が残り、歩行に杖が欠かせなくなり、シノギはなくなり、女にも逃げられた。救ったのは府警時代の相棒、伊達誠一。伊達は脅迫を受けたパチンコホールのオーナーを助けるため、堀内に協力を求めてきた。パチンコ業界、そこには暴力団、警察も入り乱れ、私腹を肥やそうとする輩がうごめいていた。二人は競売屋・ヒラヤマ総業の調査員の肩書で、金になるネタを掴んだら食いついて離さない意気で堀内は己の再生も賭け、伊達とともに危険に身をさらしながら関西を東奔西走。

あ・うんの呼吸でのタッグが小気味好いテンポの関西弁の会話と展開で一気読みでした。2017年3月幻冬舎刊

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幸田真音著「大暴落ガラ」

2017-06-22 | か行

前作「スケープゴート」の続編。大学教授から金融大臣、官房長官となった三崎皓子だったが総理が倒れて・・・与党・明正党の総裁選で惜敗しながら、野党議員の投票により日本初の女性総理大臣となった皓子。党の重鎮議員の反対で組閣もままならない。そんななか、危機管理官より、「秩父に大雨が降っており、このままでは荒川が決壊、都心が水に沈む可能性がある」との情報が入る。さらに追い打ちをかけるように、台風八号と九号が発生。皓子は日本では例がない「緊急事態宣言」を提案するが、経済の停滞を理由に閣内で反対の声が上がる。あかね銀行のディーリングルームではその頃、「ガラだ! 大暴落だ! 」絶叫が響いていた。一瞬でドル円相場が20円も飛び、159円をつけたのだ。東京都心を直撃する大規模な自然災害、ゼロ金利政策を続ける日銀への信用不安。いつ現実のものとなってもおかしくない二つの危機に襲われた日本を、皓子は初の女性総理大臣として立ち向かうことに・・・。

際限なく続く異次元金融緩和に慣れて機能麻痺した国債市場と無節操な財政運営が秘めている差し迫った危険さに対する警鐘。何かのショックでこれが一気に顕在化する問題を描いているのだがその解決方法があまりにも私的人間関係に依りすぎて安直さにガッカリ。テーマが大きいわりに深堀されてなく人間描写も薄い。近い将来女性首相が誕生するかは今の現状を見るとまだまだ感がるがテーマとしては面白かった。

20173月中央公論新社 

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北林一光著「シャッター・マウンテン」

2017-05-12 | か行

癌で亡くなった著者の遺作ホラーサスペンス。北アルプス漆沢渓谷。麓に続く道で土砂崩れが起き、登山客らはホテルと山荘に閉じ込められた。子どもを亡くした過去を持つ夫婦、出動要請を受けたヘリコプター、山を知り尽くした男たち等の前に。虫や鳥が大量発生、幽霊が目撃される中、ついに死者が発見された。やがて明らかになる秘められた陰惨な暗い過去が、さらなる怪異を呼び起こすのだった。

自然開発、在日韓国人への差別、亡くした子へのやり切れない思い、夫婦の亀裂。どれもが伏線となり、次々と発生する怪奇現象、笑う少女、絶滅した筈の未知の動物の来襲、土石流、立て続けに起きる殺人事件。

想像力を掻きてない表現が多くあまり「怖い」と感じる暇がない展開で読みすすめると登場人物が次々と亡くなりめちゃくちゃな感じでどう収束するんだろうという心配な感じが強くどん疲労感が増す感じで終わってしまった。ワープロに残された未完の遺作の感じが濃く残念だった。

2013年2月角川書店

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谺健二著「ケムール・ミステリー」

2017-02-16 | か行

ウルトラマンに登場する怪人ケムール人を生み出した孤高の天才作家、成田亨。彼に魅せられた男、大手製薬会社の創業一族が建築したが建てた屋敷は、まさに怪物の異形で覆われていた。そこで起こる連続密室死。自殺にしか見えないのだったが・・・。屋敷の離れで起こる連続「自殺」と失踪事件。彼らは皆、引きこもりの若者だった。人目を避けるケムール人のお面マスクを被ったままという奇矯な行動をとった挙句に、密室状況で次々と不審死を遂げていくという密室の死と符合。彼らの身に何が起こっていたのか。

イラストレーターの多舞津知秋、レトロ玩具店「夢想郷」店主鴉原がこの謎解きに挑む。氷姫智耶、若菜遼 市猪真紀など特異な名前の主役を含めた登場人物たちがなじめなかった。読んでいてからくりは想像できたが仕掛けの大掛かりさとリアルさ欠如、ケムール芸術の解りぬくさで興味半減なミステリーだった。唯一うつ病薬の薬害、薬品業界への切り込みがもっと深ければ社会派ミステリーになったのに。後半のドンデン返しもある程度予想できた。

2016年3月原書房刊

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角幡唯介著「漂流」

2016-12-24 | か行

沖縄のマグロ漁師本村実氏の生涯に二度わたって漂流して今なお行方不明ということに惹き付けられて人間の生き方を沖縄・グアム・フィリピンにも渡って取材しノンフィクションにまとめあげた物語。奇跡の生還から8年。マグロ漁師を再び海に向かわせたものは何だったのか? 1994年冬、沖縄のマグロ漁師・本村実は、フィリピン人らと共に救命筏で37日間の漂流の後、「奇跡の生還」を遂げた。だが8年後、本村は再び出港し二度と戻らなかった。九死に一生を得たにもかかわらず、なぜ再び海に出たのかをミステリー風に掘り下げたルポドキュメント。

極楽浄土を求めて船出した補陀落僧と島の神・ウラセリクタメナウ、戦後の密貿易やダイナマイト密漁、沈没船といったキーワードとともに語られる佐良浜の郷土史・海洋文化、その風土に育まれ、何かに誘われるように海へ漕ぎだした男の後ろ姿を浮かび上がらせる。「死」と隣り合わせの「生」を自明のものとして受容する漁師たちの死生観。壮絶に生きた一人の漁師の人生に触れることが出来たスケールのでっかい物語でした。

20168月新潮社刊

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京極夏彦著「ヒトでなし 金剛界の章」

2016-07-09 | か行
有名作家でもある京極氏の小説は今回が初めての経験。友人の是非ともという推薦で読んでみました。
心が感情が壊れてしまった男の話。理屈も倫理も因果も呑み込む。この本は、「ヒトでなし」の「ヒトでなし」による「ヒトでなし」のための
経典とある。娘を亡くし、職も失い、妻にも捨てられた。
俺は、ヒトで なしなんだそうだ。そう呟く男のもとに、一人また一人と破綻者たちが吸い寄せられてくる。
金も、暴力も、死も、罪も。主人公の回りに、IT長者になったが今は危ない筋からの借金取りに追われている高校時代の友人荻野。
大金を相続したものの人間関係に嫌気がさして自殺しようとする女塚本、ついカッとして恩人を殺してしまう頭の悪い少年鍋谷、
リストカットを繰り返す女由里、少女連続殺人犯の男日野などが現れ、「ヒトでなし」の尾田慎吾に触れ、何かを得ていく。
「ヒトを辞めたら、何になれる」かが主人公の独白と会話によって展開される。
セリフ回し会話が淡々と繰り返されて行間の空間が多いのでページは多いがサクサク読めるのだが哲学的な言い回しもあるが
仏教史観で宗教者誕生?
2015年10月新潮社刊
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