読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

貫井徳郎著「龍の墓」

2024-05-09 | 貫井 徳郎
VRツールが日常に浸透した舞台にした近未来警察小説。東京都町田市郊外で発見された身許不明の焼死体。町田署の女刑事・保田真萩は、警視庁捜査一課の南条とコンビを組んで聞き込みを開始するが、事件解決に繋がる有力な手がかりを掴めずにいた。そんな中、荒川区内で女性の変死体が発見される。その殺害状況が公表されるや、ネット上である噂が囁かれはじめた。「町田と荒川の殺人は、人気VRゲーム《ドラゴンズ・グレイブ》の中で発生する連続殺人の見立てではないのか?」一見、何の繋がりもないように思えた二つの事件だったが、やがてその噂を看過できなくなるような事態へと発展していく。ゲームの世界と現実世界がリンクして進行されるのだが、速水理帆という女による冤罪によって警察を辞めることになった瀧川が真相にたどり着くという展開。RPGゲームに馴染めがない人には理解しにくいかも。めがね型のVRゴーグルが主流でスマホを使う人は珍しい時代という近未来的な設定が面白い。
2023年11月双葉社刊 

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貫井徳郎著「紙の梟 ハーシュソサエティ」

2022-12-27 | 貫井 徳郎
「人を殺したら死刑」のルールある世界を描いた5つの連作物語。ここは、人を一人殺したら死刑になる世界。私たちは厳しい社会(ハーシュソサエティ=過酷な社会)に生きているのではないか?そんな思いに駆られたことはないだろうか。一度道を踏み外したら、二度と普通の生活を送ることができないのではないかという緊張感。過剰なまでの「正しさ」を要求される社会。人間の無意識を抑圧し、心の自由を奪う社会のいびつさを拡大し、白日の下にさらすのがこのシュミレーション小説である。恐ろしくて歪んだ世界に五つの物語が私たちを導く。被害者のデザイナーは目と指と舌を失った重症の姿で発見されたていた。彼はなぜこんな酷い目に遭ったのか?重傷だが殺されてはいないが――「見ざる、書かざる、言わざる」。電話圏外の孤絶した山間の別荘で起こった殺人。しかし、論理的に考えると犯人はこの男女6人の中にいないことになるのだが、正当防衛や殺人者をかばったらどうなるのか・・・「籠の中の鳥たち」。いじめによって自殺したらどうなるのか。頻発するいじめ。だが、ある日いじめの首謀者の中学生が殺害される。驚くべき犯人の動機は?・・・「レミングの群れ」。俺はあいつを許さない。姉を殺した犯人は死をもって裁かれるべきだからだ。大事な姉を姉の恋人に殺されたと思っている男の復讐譚・・・「猫は忘れない」。死刑を望んでいない被害者は遺族。作曲家の笠間耕介は、8ヶ月前からつき合って結婚を考えていた書店員の恋人を殺されます。犯人の供述から、恋人の意外な一面を知らされることになり、さらに刑事から、恋人か偽名を使っていて素性不明であることを聞いてショックを受けます。笠間はツイッターで恋人の情報を必死に求め、そして最後にたどり着いた場所にいたのは。・・・表題作「紙の梟」。死刑制度とかイジメとか罪の重さと罰の軽重、被害者や加害者に対するネットや世間の風評等、深く考えさせられました。重いテーマとミステリーが融和した物語ですが、死刑制度に関しての蘊蓄が繰り返される展開にはうんざり。
2022年7月文藝春秋社刊


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貫井徳郎著「邯鄲島遥かなり」下巻

2022-05-04 | 貫井 徳郎
戦後・平成編。感動の終幕へ、そして新たな始まりへ。一ノ屋の血を引く信介の獅子奮迅の活躍で、神生島は戦後の復興に歩み出した。それぞれに重荷や悩みを抱え、決断を迫られながらも、穏やかな営みが続くかに見えたが・・・思いがけず、島の暮しは一変する。
第14部 明日への航路・・・顔の半分に大火傷を負って復員したひ孫の信介が、本土との交通の途絶えた中で、帆船を使って本土に渡り、島に必要な物資を運び、連絡船の会社を再開させ、島の復興に貢献。信介と一緒に住む戦災孤児の勝利は、信介の幼なじみで、相思相愛の良子を結び付けようと奮闘するが・・・。第15部 野球小僧の詩・・・中学高校と島の野球部で活躍する玄孫の静雄の話。甲子園を目指して本土の予選を勝ち抜き、決勝戦へ。青春野球小説。第16部 一ノ屋の終わり・・・一ノ屋本家の跡取りなのに、同性愛志向の、女性を抱けない松人の苦難の人生。歌手になった同級生南野理香との友情。第17部 邯鄲の島遥かなり・・・イチマツから数えると公孫。静雄の娘で、平成直前の昭和65年1月生まれの育子の物語。島の火山噴火で全島民8千人全員の避難で、本土の高校、大学と進学、両親は復興した帰島。大学4の時に東日本大震災が起き、ボランティアに行く。本土の銀行に就職するが、ボランティアで知り合ったアルバイト青年ヨシアキと、同棲生活に入る。やがて、ヨシアキが神生島に熱烈な関心を示すようになり・・。島民は本土のことを〝くが〟と呼んでおり、島のはっきりした位置は不明だが、東京の離島・神生島に生きたある一族の150年の群像歴史ドラマ全17部全巻1700頁ほどの長編でしたがいろんなジャンルの混ざった連作で意外と長く感じず読了できました。一ノ屋の血を引く人も、引かない人も、自分の人生を一所懸命に生きてきた。そうした人々の連なりが歴史となるのだろう幕末から令和に至る日本の近代史の小説でした。
2021年10月新潮社刊


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貫井徳郎著「邯鄲の島遥かなり」中卷

2022-05-02 | 貫井 徳郎
戦中・戦争末期編。波乱の第二巻! 一ノ屋の流れを汲む一橋産業は隆盛を誇り、島の人々の暮らしも少しずつ豊かになっていた。初の男子普通選挙が行なわれ、曰くありげな少女が一橋家を訪れる。火口への投身心中の流行を奇貨に、本土からの観光客も増えた。そうした人々の営みと繁栄の裏側で、平和な島にも戦争が影を落とし始めていた。
第8部 第一回男子普通選挙・・・ただの会社員なのに、島のため政治家になろうと帝国議会議員選挙に立候補したイチマツ孫世代の孝太郎。対立候補の小学校教員との一騎討ちとなり、戸別訪問のお土産買収作戦がエスカレートしていき、住民の要求も上がっていく政治小説。第9部 ご落胤騒動始末・・・島で唯一の大会社一橋産業を創った平太の死後に、死んだ母親から平太の子だと言われたという九歳の女の子が東京から一人で島に来て、平太の屋敷に訪ねてくる。女の子には肘にイチマツ痣があった。第10部 人死島・・・島での心中がブームになって、年間100人以上の自殺者が出る。その後、幽霊がブームになって観光客が増えるが、実は・・・。一方で、島の造船所で軍用艦を作る計画が実現するがのちの島の空襲につながる。第11部 超能力対科学・・・予言予見透見のできるひ孫世代の超能力少女ハルのカルタ千里眼芸。第12部 勝ってくるぞと勇ましく・・・崖から落ちて片膝を痛めた孫世代の幸吉は杖なしでは歩けない。妹の友達の姉で本土出身の清楚な美少女高梨小百合に恋をする。膝のため徴兵検査に落ちるが、友人は出征して戦死する。母はこっそりと幸吉が死ななかったことがうれしいと告げるのだが。第13部 子供たち・・・孫世代で子供のいない雑貨屋おかみの征子から見た、いとこの子供たちの話。昆虫学者になる夢を持つ創平は幸運の象徴のタテハモドキを捕まえられないまま、出征する。征子は山でタテハモドキを捕まえようと奮闘し・・・。メイ子は幼い頃から男女同権を主張する女の子で、幼馴染みの大樹にままごとで母親役をさせている。学校の女教師にも男女同権を主張して、居残りとなってしまう。それでも出征する大樹から懇願されると夫婦に。1945年2月、造船所のある島は爆撃され、征子はメイ子たちと、火と熱風と煙の中を逃げ回るパニック小説。
2021年9月新潮社刊

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貫井徳郎著「邯鄲の島遥かなり」上卷

2022-04-18 | 貫井 徳郎
上中下巻の長編の上卷です。
東京の離島・神生島に生きたある一族の150年の大河ドラマ全17部の明治大正編。神生島 にイチマツが帰ってきた。神か仏のような人間離れした美貌の一ノ屋松造に、島の女 たちは例外なく魅入られていく。イチマツの子供には、みな体のどこかに同じ徴が あった。またその子供たちにも・・・。全17部の基本的には歴史小説だが、各章ごとにラブストリー・コミック小説・ユーモア小説・冒険物・人情物・パニック物・教養小説・スポーツ物・政治小説・フェミニズム小説・ジェンダー小説風と色々特色があり全1700頁長編であるが、楽しめて読めました。
上卷は明治維新から関東大震災後まで。イチマツから孫の世代まで。第1部 神の帰還・・・一ノ屋一族の当主イチマツが島に戻り、数多くの女性を愛人にして、13人の子供を作り、島を去っていく。イチマチが女性の体に接吻すると、そこが唇形の痣になり消えなくなる。この痣はイチマツの子孫に受け継がれ、この痣のあることがイチマツの子孫の証しとなる。第2部 人間万事塞翁が馬・・・息子の一人の平太が、本土で学問をして島に帰り、油工場を作り、日清日露を背景に発展していく。第3部 一ノ屋の後継者・・・息子の一人がくじ引きで当主に選ばれた晋松。女性にモテない苦悩と、洞窟冒険物語。第4部 「君死にたまふことなかれ」・・・娘で与謝野晶子信奉者の容子による島の女性の反戦教育が、次第にエスカレートして性交為拒否の煽動に至る。第5部 夢に取り憑かれた男・・・徳川ご用金探しの夢に取り憑かれた孫世代の小五郎。悲しいラブストーリー。第6部 お医者様でも草津の湯でも・・・孫世代清楚で美貌極致の鈴子を巡って、男子生徒たちが求婚合戦を繰り広げ、どんどんエスカレートして、存在自体が島の男を狂わせる物語。第7部 才能の使い道・・・芸術家才能のある孫世代の良太郎の未来選択。悲恋ロマンチック・ラブ。
2021年8月新潮社刊
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貫井徳郎著「悪の芽」

2021-07-04 | 貫井 徳郎
世間を震撼させた無差別大量殺傷事件。事件後、犯人は自らに火をつけ、絶叫しながら死んでいった。なぜアニコンで大量無差別殺人事件が発生したのか。小学生時代に、自分がいじめのきっかけを作ったからこの事件が発生したのか。無差別殺人の理由が分からず、自らの過去の行いを責める元同級生で銀行員の安達が辿り着いた、衝撃の真実とは・・・。41歳の無職の男性・斎木均。その斎木が小学生の時にいじめられるきっかけを作ったのは自分だと、エリート銀行員の安達が過去と向き合い斎木の動機を調べる。そんなつもりじゃなかった?いじめが原因で30年近く経ってから無差別殺人事件を起こすのか。いじめた側の論理は通じない。ただ『絶望』と言う一因は余りにもキツイ。苛めていた側の人間が大人になって思いっきりそれを痛感して苛まれるというのは、想像力の欠如や人間の善意・悪意など考えさせられたが犯行動機との因果関係を辿る物語は罪悪感のみの描写が多すぎて読後感はあまりよくなかった。
2021年2月角川書店刊
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貫井徳郎著「罪と祈り」

2020-08-28 | 貫井 徳郎
元警察官の濱中辰司が、隅田川で死んだ。当初は事故と思われたが、側頭部に殴られた痕がみつかった。真面目で正義感溢れる辰司が、なぜ殺されたのか?息子の濱中亮輔と幼馴染みで刑事の芦原賢剛は、人間関係を中心に死の謎を追い過去に関係があった人を訪ねる。亮輔は賢剛の父・芦原智士の自殺とのつながりを疑う。時を経て二人とも隅田川で死んだのだ。やがて、昭和の終わり大喪の礼の警備の手薄な時を利用した未解決小学生誘拐事件との関連が浮かぶ。辰司と智士、亮輔と賢剛、男たちの「絆」と「葛藤」を描いて、儚くも悲しい結末が辛い。しかし読んでいて心理描写や感情表現は読ませるのだが動機と犯罪の納得性、リアリィテーの欠如が気になり最後まで感情移入出来なかったのは残念。バブル期の理不尽な不動産会社の地上げや警察とヤクザの癒着など昭和生まれの自分は理解できたがバブル期未経験者には理解しづらいかも。
2019年9月実業之日本社刊
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雫井脩介著「犯人に告ぐ3 紅の影」

2020-06-19 | 貫井 徳郎
前作の続き。犯人逮捕から2週間たっても依然として行方の分からない「大日本誘拐団」の主犯格「リップマン」ことアワノ。神奈川県警特別捜査官の巻島史彦は、今度はネットテレビの「ネッテレ」特別番組に出演し、「リップマン」に向けて番組上での対話を呼びかける。だが、その背後で天才詐欺師アワノは次の犯罪を計画、思いもしない5千万円強奪の驚愕取引を計画していた。「ポリスマン」と呼ばれる捜査本部内の内通者の存在、そして警察組織の不協和音の中「リップマン」が仕掛けた大胆にして周到な犯罪計画にたいして、警察の威信と刑事の本分を天秤にかけ、巻島がTVで犯人に訴える「決して安らかに眠らせはしない。今夜は震えて眠れ」。「リップマン」のボス・「ワイズマン」の正体、アワノの生い立ちからの謎が明かされて、そしてラストまで畳みかけるような展開で続編4へ続くのだろう。前作から読んでないと登場人物が繋がらないのは仕方がないが前作との間が4年は空きすぎ。登場する女性の描き方にも疑問を感じた。
2019年8月双葉社刊

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貫井徳郎著「壁の男」

2018-05-17 | 貫井 徳郎

栃木県北東部に位置する町で民家の塀や壁にひたすら稚拙しか言いようのない絵を描く学習塾を営んでいた男、伊苅の「何故描くのか」という動機やそこに至る人物・人生をノンフィクションライターの鈴木が探っていくミステリードラマ。

犯罪など起きないが、人間の心や世界そのものがミステリーとなった哀しいながらも優しさと救いがある読後感のいい小説でした。

「才能の有無と、その人の価値は、まったく別の問題なの。才能があるからって、ただそれだけで人の価値が決まるわけじゃない。何をしたかがだいじなのよ」(P256)」

2016年10月文藝春秋刊

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貫井徳郎著「宿命と真実の炎」

2018-05-14 | 貫井 徳郎

西條シリーズ第2作目。『後悔と真実の色』続編。誠也とレイというカップルの仕業で白バイ警官が殺され、“警察官連続殺人事件"が発生する。程なく警視庁捜査一課九係が捜査に駆り出されるが、前作で卓抜した推理で名探偵の異名を取った西條輝司が「警視庁の威信を傷つけるスキャンダルで失脚し、警察を追われ」ため、そこで今回西條の代わりを務めるのが、所轄の女刑事高城理那。「陰でブス呼ばわりされている」アラサー女刑事。捜査に情熱的な名探偵であり、女性差別をしない九係・村越警部補と組んで真相に迫っていく。一方、西條は警備員からエリートの兄により転職、よく訪れる古書店主の相談に乗ったことから探偵役を務めることになり、かすかな再生の道のりも・・・幼い日に警察沙汰で離れ離れになった誠也とレイ。二人は大人になって再会して警察への復讐だけを生きる糧にしつつ復讐計画を着実に遂行する。一方、事故か他殺か判然としない警察官の連続死に、捜査本部は混迷。高城理那は、かつて“名探偵"を呼ばれた西條に相談を持ち掛ける。後半の意外な動機と思惑前作以上に面白かった。面白いキャラの登場人物たちと西城の続編を楽しみだ。2017年5月幻冬舎刊

『後悔と真実の色』https://blog.goo.ne.jp/sky7dddd/e/190416392cc8a65748fec7707313eb10

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貫井徳郎著「微笑む人」

2014-02-26 | 貫井 徳郎
エリート銀行員仁藤俊実が妻子を殺したは意外な理由だった。
そして事件はすべてのはじまりにすぎなかった。逮捕・拘留された安治川事件の犯人の仁藤は世間を騒がせ、ワイドショーでも連日報道された。
この事件に興味をもった小説家の「私」は、ノンフィクションとしてまとめるべく関係者の取材を始める。取材を進めると周辺の人物は一様に「仁藤はいい人」と語るが、一方で冷酷な一面もあるようだった。
さらに、仁藤の銀行の元同僚や大学時代の同級生らが不審な死を遂げていることが判明してくる。
仁藤は本当に殺人を犯しているのか、そして殺害のその理由とは・・・
終盤の意外な展開は問題の回答を読者にまる投げしたような結末でガッカリした。折角のそれまでのいろんな伏線が活かせないまま終わって残念。
「世間の人はみんなわかりやすいストーリーを求めてるんです。わからないのはいやなんです・・・
最終的に理解できる結末があるなんてフィクションの中だけですよ」(p270)
2012年8月実業之日本社刊
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貫井徳郎著「ドミノ倒し」

2014-01-25 | 貫井 徳郎
架空の市月影市を舞台に私立探偵事務所の十村が美女の依頼人からの依頼で捜査を始めるのだが・・・
「元彼の殺人容疑を晴らして欲しい」探偵・十村の元に舞いこんだ美女からの依頼。
しかし事件に触れると別の事件に行き当たり、さらなる別の事件を呼び起こす、芋づる式に掘り出される死体!死体!
このユーモア探偵小説読みやすいのだが、荒唐無稽なあらすじで貫井さんらしからぬ展開でドタバタな結末ラストも投げ出し状態。題名の為の辻褄あわせで、何だったんだというお粗末小説でした。
2013年6月東京創元社刊
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貫井徳郎著「新月譚」

2012-10-06 | 貫井 徳郎
好きになり愛した浮気男を取り戻す為に整形手術を受け外見を変えたり、男の関心を買うために小説家になり賞を取るまで努力する女の心の様を描いた小説。
八年前、突然絶筆し、現在、57歳になった作家・咲良怜花を、26歳の若い編集者・渡部敏明が訪ね、熱心に復活をすすめる。
やがて彼女は、半生を語り始める。なぜ、小説の作風が変わったのか。なぜ、突然、絶筆したのか。
そこで明かされたのは、ある男性木之内徹との出会いと恋愛の顛末であった。
主人公の和子(怜花)は作家として成功、名だたる賞を次々と受賞しながらも突然断筆をしている女。
整形手術して外見を変えてブスから美しくなったのに、まわりの人から疎まれるとか、その虚しさに気がつくシーンなど、スリリングに変わっていく彼女の心理や背景が気になって最後まで一気に読ませてくれた。
整形して復讐する女を描いた百田著「モンスター」のようなサスペンスやミステリーでもない呆気ない突然の終り方に失望感が残る。作中主人公が小説を書く苦労語るのは著者自身の愚痴かも。
整形して昔の顔を捨て新しい顔を手に入れた主人公は家族とその男以外は誰にも気付かれることなく賞を取り有名になるが、・・・・人は外見に惑わされる。その人だけが持っている面白さを見落とす。
「そうか、今日は新月なのか。星はいくつか瞬いているものの、夜空を照らす月の姿はない。どこかに行ってしまったわけでなく、確かにそこにあるはずなのに、見えない月。まるでわたしのようだと思った」(P470)
2012年4月 文藝春秋刊
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貫井徳郎著「灰色の虹」

2012-07-05 | 貫井 徳郎
冤罪被害者の物語。突然殺人者になってしまった男、江木雅史。
身に覚えのない殺人罪で有罪判決を受けた一人の青年の人生がどのように激変していくかを、強引に自白を迫った刑事、怜悧冷徹な検事、不誠実だった弁護士、裁いた裁判官の視点で語られる。
身に覚えのない殺人の罪。それが彼から仕事も家族も日常も奪い去った。
理不尽な運命、灰色に塗り込められた人生。彼は服役後復讐を決意する。ほかに道はなかった。七年前、冤罪を作り出した者たちが次々に殺されていく。
しかしひとりの刑事が被害者たちを繋ぐ、その関連を見出した。しかも江木は行方不明。
単純なストーリーを冤罪を作り出した側である一人一人の立場での物語が時系列をバラバラにして折り込み混ざわさって描かれている。
深く考えさせられる重いテーマで、読んでいて息苦しくなる感じですが最後まで読ませます。
意外な結末の予想は残念ながら付いてしまったし、結局真実が明らかにならずに終るラストに悔いが残りますが
自分ならどうするだろうか、もし自分の家族がと・・・考えさせられた小説でした。

2010年10月 新潮社刊
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貫井徳郎著「明日の空」

2010-06-24 | 貫井 徳郎
第一章の主人公は、十七歳までアメリカで生まれ育った〝エイミー〟こと真辺栄美。
高校三年で帰国、日本の風習になじめるかドキドキしながら高校に編入し、いろんな出来事に遭遇していく。
栄美は所謂帰国子女、両親は日本人ながらアメリカで生まれ育った為、高校3年にして初めて日本で暮らすことに。
父親から「自分から『アメリカはこうだった』みたいなことは、絶対に言っちゃ駄目だ。いいね」
「日本人は、みんな一緒なのが好きなんだ。ひとりだけ目立ったりするといじめられる。個人より集団が重んじられる社会なんだ」と
言われ不安だったが、クラスメイトは明るく親切で、栄美は新しい生活を楽しみ始める。
だが一つ奇妙なことが。気になる飛鳥部という背が高くてかっこ良く、頭もいいという男子と距離が縮まり、デートの約束をするようになるが、
なぜかいつも横槍が入ってすれ違いになるのだ。一体どうしてー?
第二章では、栄美は出てこないで、主人公はユージという男とアンディという黒人の話しになるが・・・。
そして第三章で、大学生になった栄美が再び出てきて、3つの話しがつながって行く。この章の最後で栄美は、第一章の疑問の真相を知ることになる。
ミステリー仕立ての青春物語。著者は第一章を書いた後、1冊のミステリーに仕立てる為に2章3章を書き足したような印象を受けました。
短いのすぐ読めてしまいます、手軽にどんでん返しのミステリーを味わえますので、再読すると著者の伏線があきらかになります。
2010年5月集英社刊
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