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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

山田宗樹著「鑑定」

2025-05-16 | や・ら・わ行
精神科医・葛西幸太郎は、市長選の候補者に対する殺人未遂および放火の実行犯・犬崎理志の精神鑑定を担当していた。犯行を淡々と語る犬崎に、葛西はある違和感を抱く。精神状態が安定しすぎている犬崎の中に、本来の自我を麻痺させ、代わりに彼の精神を支配している「何か」が存在するのではないか。葛西が疑いを深める中、全国各地で不可解な動機による傷害・殺人事件が起こりはじめる・・・。メンタルを安定させる機械「エモコン」(エモションコントローラー)によるマインドコントロールの恐怖や、未知の精神的寄生ウイルスという考え方、設定は面白い。無差別殺人、個人テロなど精神的な不安定さを感じさせる現代の世相も織り込みながら、「夢の国のために」と事件を繰り返す別人格に乗っ取られたような犯罪者たちとこころの問題との関連の結末は解らないままあやふやのまま終わるのは消化不良気味の読了感でした。
2024年9月角川春樹事務所刊
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吉田修一著「罪名一万年愛す」

2025-03-06 | や・ら・わ行
ミステリーでもありファンタジー風小説。高度成長期45年前平凡な主婦が失踪する。東京の有名なレストランのウェイトレスは梅田丸百貨店の社長と会っていたと証言するが未解決のままであった。横浜で探偵業を営む遠刈田蘭平のもとに、一風変わった依頼が舞い込む。九州を中心にデパートで財をなした有名一族の三代目・梅田豊大から、ある宝石を探してほしいという。宝石の名は「一万年愛す」。25カラット以上のルビーで、時価35億円ともいわれる。蘭平は長崎の九十九島の一つでおこなわれる、創業者・梅田壮吾の米寿の祝いに訪れることになった。豊大の両親などの梅田家一族と、45年前の捜査担当した元警部の坂巻といった面々と梅田翁を祝うため、豪邸で一夜を過ごすことになった蘭平。だがその夜、梅田翁は手紙を残して失踪してしまう。東京の主婦と福岡の梅田翁。なんの接点もない2人がやがて絡み合う。明かされる日本の戦後の混乱期に起きた出来事。絶海の孤島に大型台風によって密封された登場人物たちの前からの失踪という謎仕立て。45年前の女性失踪事件との関連、私室に残されたDVD3作品「飢餓海峡」「砂の器」「人間の証明」。これは感動の愛の物語なのか。しかし違和感抱きながら読み進めて残念な方向に極まった作品と思います。ミステリーとして、意外性のない「意外な展開」、鬼気迫る状況のはずが緊張感に乏しい、読み心地が悪い結末とご都合主義に残念な読後感でした。
2024年10月角川書店刊
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薬丸岳著「籠の中のふたり」 

2025-02-04 | や・ら・わ行
恋人に去られ父親を亡くしたばかりの弁護士・村瀬快彦は傷害致死事件を起こし服役中の従兄弟の蓮見亮介の身元引受人となり、釈放後に二人は川越の家で暮らし始める。小学6年生のときに母親が自殺し、それ以来、他人と深く関わるのを避けてきた快彦だったが、明るくてお調子者の亮介と交流することで人として変化成長していく。だが、ある日、母が結婚する前に父親の安彦に送った手紙を見つけ、母は結婚前に快彦を妊娠していて、快彦に知られてはならない秘密を抱えていた衝撃の事実を知る。やがて、その出生の秘密は亮介の傷害致死事件とも繋がっていた。他人と触れ合うことの喜びと難しさ、人殺しの罪と贖罪。つらい過去を背負った二人が共に暮らすことで成長し、全ての過去と罪を受け入れ、本当の友達になれるのか・・・。母親の自殺、亮介の父親の失踪、そして亮介の犯罪そのものの真相とは。展開が予測できてしまう点もあるが、実は二人とも自分に厳しく、他人を思いやれる人達。これから先、決して平坦な道ではないだろうが、籠から抜け出し、助け合いながらささやかな人生が予想される結末は感動物語でした。 2024年7月双葉社刊 
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中山七里著「こちら航空警察」

2024-11-22 | や・ら・わ行
空港警察や空港で働く人たちが関わることになる様々な事件が起き、新しく就任した仁志村署長が中心となって解決していくストーリー。全5話、成田空港でグランドスタッフ=空港業務スタッフとして働く蓮見咲良は人気芸人の帰国を知り、芸能人を間近で見れることにワクワクする。しかし、ゲートに現れた人気芸人・瀬戸は空港警察に先月から着任したばかりの仁志村賢作署長に身柄を確保されてしまう。普段から、「役立たず」と陰で言われている空港警察の行動に驚く咲良。何と瀬戸には麻薬密輸の容疑が掛かっているらしい。しかし、瀬戸の身体には麻薬犬もTDS(検査機器)もX線も金属探知機も反応を示さなかった。とんでもない濡れ衣だと瀬戸は激昂するが、仁志村は意外なモノに着目し、瀬戸を追い詰め始める。・・・「セレブリティ」。他に「ATB」「イミグレーション」最後の「エマージェンシーランディング」と「テロリズム」はつながっている。普段通過点でしかない空港での、搭乗口でのトラブル、管制塔での事件、どれも知らないことばかりで興味深い話。最後は軽いドン伝返しの展開でスッキリ読了。蓮見咲良のように署長の生活や個性の深堀があればもっと感情移入出来たのに残念だが、十分面白かった。
2023年11月角川書店刊

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薬丸岳著「最後の祈り」

2024-11-19 | や・ら・わ行
東京に住む牧師の保阪宗佑は、娘を暴漢に殺された。妊娠中だった娘を含む四人を惨殺し、死刑判決に「サンキュー」と高笑いした犯人石原亮平。無償の千葉刑務所の教誨師であった宗佑は、石原受刑者が入る確定死刑囚の東京拘置所で精神的救済をする教誨師として犯人と対面できないかと模索し、ついに希望を叶える。今までは人を救うために祈ってきたのに、復讐のために犯人を地獄へ突き落としたい。煩悶する宗佑と、罪の意識のかけらもない犯人。死刑執行の日が迫るなか、二人の対話が始まる。「死刑になりたいから人を殺した」「誰でもいいから人を殺したかった」世間で無敵の人と呼ばれる凶悪犯には心がないのか動機なき殺人の闇に迫る、重厚な人間ドラマです。大変重たいテーマの作品です。「罪を憎んで人を憎まず」、実際に愛する人を殺されたら、そうすることはできるのか? この究極の問いを突き付けられた主人公。偶然宗佑の企みに気付いた拘置所の刑務官小泉の視点と死刑囚の視点でその葛藤も描かれ死刑執行まで切なさと怒りと・・・一気に読まされました。
2023年4月KADOKAWA刊

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柚月裕子著「合理的にあり得ない 上水流涼子の究明2」

2024-05-19 | や・ら・わ行
シリーズ第2弾。上水流エージェンシーの美人探偵・上水流涼子が、頭脳明晰・貴山伸彦を助手に、今回も知略と美貌を武器に、難事件をズバッと解決する。「物理的にあり得ない」「論理的にあり得ない」「立場的にあり得ない」
の3つの連作短編。
レッドリストの動物密輸、親子の秘密、子供の親権、LGBT,友の自殺に責任を感じ壊れてしまった者への救済の物語。
一筋尚に行きそうにない難しい問題を全て都合よく上手く行き過ぎる感があるのが人情溢れる読みやすい展開で直ぐ読めた。

2023年3月講談社刊。
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柚月裕子著「教誨」

2024-04-13 | や・ら・わ行
主人公は吉沢香澄33歳。長く勤めていた会計事務所の退職と他への転職が決まりその合間の休みをどうしようかと思っていた矢先、小学生のころ一度だけ会話をしたことがある
母静江の従姪の死刑囚三原響子の遺骨と遺品を東京拘置所に貰い受けに行くところから始まる。幼女二人を殺害した女性死刑囚が最期に遺した言葉・・・「約束は守ったよ、褒めて」響子は十年前、我が子も含む女児二人を殺めたとされた。香純は、響子の遺骨を
三原家の墓におさめてもらうため、菩提寺がある青森県相野町を単身訪れる。香純は、響子が最期に遺した言葉の真意を探るため、事件を知る関係者と面会を重ねてゆく・・・
2006年の秋田児童連続殺害事件をモデルに書かれた話らしい。「響子が犯人であることは事実だ。だが、事実と真実は違う。・・・なかにこそ響子が起こした事件の真実がある」(P301)祖母と母と娘の負の連鎖、小作人と地主の関係が続くような親戚関係田舎の窮屈さ、男達の無責任さに無性に腹が立った読後感でした。だが何故そんな田舎に帰りたかったのかが理解できなかった。
2022年11月小学館刊

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吉田修一著「永遠と横道世之介」下

2024-02-21 | や・ら・わ行
上巻では2007年の9月から翌2008年の2月までが、そして下巻では引き続き2008年8月までの半年間が描かれます。湘南のカフェ店員に一目惚れ、相手をふり向かせたくてサーフィンを始めた「ドーミー吉祥寺の南」の下宿人谷尻くん。その恋を応援する傍らで、最愛の人「二千花」と過ごした日々を幾度となく反芻する世之介です。春から夏へ。相変わらずのんびりと季節が移ろう中、後輩カメラマンのエバと咲子カップルには新しい命を授かり、世之介は「名付け親」をお願いされる。ところが咲子の容態が一転し・・・。最終章で15年後が書かれています。やがて運命の日がやってくる。大切な人に、今すぐ「好き」と伝えたくなる、心ふるえる結末が。世之介は頼りなくお調子者だけど、そばにいるとホッとする。そんななんでもない一日のような存在、それが横道世之介です。世之介の他人との関わり方がとても魅力的です。だから周囲の人も生き生きと描き出されています。大地震・火事・津波、事件の現実。特別なことではない日常がとても大切ということを改めて感じさせてくれた物語でした。「誰かのことを思える。そんな心の余裕が何よりも贅沢なものに見えたのだ。自分ではなく。誰かのことを思えるということが、どれほど恵まれていて、贅沢なことなのか。」(P234)「人生は一人で使うには長い、その余りを誰かのために使えたら贅沢だ。」
2023年3月毎日新聞社刊

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吉田修一著「永遠と横道世之介」上 

2024-02-17 | や・ら・わ行
シリーズ第3弾。2009年発表の『横道世之介』では、大学進学のために故郷長崎から上京した彼の1年間が、そして2019年続編の『続・横道世之介』(文庫化に際して『おかえり横道世之介』に改題)では、卒業後にアルバイト暮らしを送っている24歳のころの世之介が描かれました。今回の上巻では2007年9月から2008年2月までの半年間が書かれています。2007年39歳になったカメラマン・横道世之介が暮らすのは、東京郊外に建つ下宿「ドーミー吉祥寺の南」。元芸者の祖母が始めた下宿を切り盛りするあけみちゃん、最古参の元芸人の営業マン礼二さん、書店員の大福さん、大学生の谷尻くんらと「ゆるーっ」と暮らす毎日に、修学旅行に同行して記念写真を撮る仕事で知己を得た武藤先生から唐突に頼まれて引きこもりの息子一歩が入居することになって・・・。また、かつて横領罪で業界を追われた先輩と久方ぶりの再会を果たし、新たに写真の仕事を任されるようになります。下宿仲間たちと繰り広げる、温かくてしょっぱい人間ドラマです。一癖も二癖もある個性豊かな登場人物たちが世之介と触れ合いますが大きく激しく人生の方針転換を求められるというほどの波乱万丈のことは起こりません。新たな人間関係によって、ゆっくり、ほんのわずかにだけ人生が動いていく、そんなどこにでもありそうな展開です。「どんな人生だったらいいのか?」と尋ねられた世之介がこう言います。「俺だったら、こう思いたいかなー。『あー、いっぱい笑った。あー、いっぱい働いた。いっぱいサボって、そんでもって、いっぱい生きたなー』って」(P346)
「この世で一番大切なのはリラックスしていることですよ」
2023年5月毎日新聞社刊


 


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薬丸岳著「刑事弁護人」

2023-10-22 | や・ら・わ行
ホストを殺した女刑事。無実を信じて奔走する若き弁護士・持月凛子。しかし、その証言は全て嘘だった。凶悪事件の犯人に、果たして弁護士は必要なのか。「弁護士の使命と苦悩」を描いたミステリーサスペンス。父親は人権派弁護士であったが、極悪人を弁護することを逆恨みした被害者の身内に殺されてしまったという過去がある刑事弁護に使命感を抱く持月凛子が当番弁護士に指名されたのは、埼玉県警の現役女性警察官・垂水涼香が起こした加納怜治ホスト殺人事件。凛子は同じ事務所の元刑事の変わり者西大輔と弁護に当たるが、加害者に虚偽の供述をされた挙げ句の果て、弁護士解任を通告されてしまう。一方、西は事件の真相に辿りつつあった。経験の浅い女性弁護人、クセモノ感ある元刑事の弁護人、”殺人犯”の現職刑事と、登場人物が魅力的でそのこと自体がミステリーな展開。犯人の女刑事が何かを隠していることは最初から明らかで、それを少しずつ暴いていく展開は面白かった。「相手の言うことが真実だと思えなければ、本当の弁護なんかできやしない。」という西弁護士が影の主役だね。納得できない点も多々あるが重いテーマだが考えさせられた。「罪を犯した者に自分がやってしまったことを深く考えさせ、事件と向き合わせ、二度とこのような過ちを起こさないよう諭せるのは、被疑者や被告人の言葉に必死になって耳を傾けた、最も身近にいる弁護人だけ」(P497)
2022年3月新潮社刊
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柚月裕子著「ミカエルの鼓動」

2023-10-01 | や・ら・わ行
ロボット手術を題材に病院の権力をめぐる争いが絡め医療の在り方、命の意味を問う人間ドラマ。北海道中央大学病院で、手術支援ロボット「ミカエル」を推進する心臓外科医・西條泰巳。そこへ、ドイツ帰りの天才医師・真木一義が現れ、西條の目の前で「ミカエル」を用いない手術を、とてつもない速さで完遂する。あるとき、難病の少年白石航の治療方針をめぐって、二人は対立。「ミカエル」を用いた最先端医療か、従来の術式による開胸手術か。そんな中、西條を慕っていた若手医師が、自らの命を絶った。大学病院の闇を暴こうとするフリーライターの黒沢巧は、「ミカエルは人を救う天使じゃない。偽物だ」と西條に迫るのだった・・・・。二人の医師が衝突しあいながら、患者の命を救うためには何が最善かを考えつつ執刀する手術シーンは、緊迫感と臨場感にあふれています。西條の挫折と再起が書かれているのだが感情移入しにくい主人公で最後まで馴染めなかった。
「普通って何?健康でも手が不自由な人はいる・・・身体が健康でも心が傷ついている人もいる・・・走るのが苦手でも泳ぐのが得意だったり・・・この世の中にはいろんな人がいる。同じ人はいない。みんな違う。人と違うから普通じゃないなんてことはない」(P339)
2021年10月文藝春秋社刊

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米澤穂信著「栞と嘘の季節」

2023-08-27 | や・ら・わ行
青春ミステリーシリーズ第2弾。猛毒の栞をめぐる、幾重もの嘘。高校で図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門。ある放課後、図書室の返却本の中に押し花の栞が挟まっているのに気づく。小さくかわいらしいその花は――猛毒のトリカブトだった。持ち主を捜す中で、ふたりは校舎裏でトリカブトが栽培されているのを発見する。そして、ついに男性教師が中毒で救急搬送されてしまった。誰が教師を殺そうとしたのか。次は誰が狙われるのか・・・。「その栞は自分のものだ」と嘘をついて近づいてきた同学年の女子・瀬野とともに、ふたりは真相を追う。堀川と松倉は、張り紙をして持ち主を探そうとするのだが・・・。栞を作製した女子生徒、それを持っていた生徒、いずれも秘密が多く、最後まで謎は明かされることなく謎のまま。人には知られたくない事実だろうということは想像出来る。また、堀川と松倉もお互いに黙っていることが多く、家族状況や家の場所すらも知らない。だから、彼らは自分たちを友人だとは思っていない不思議な関係の友情だ。まどろこしい展開で最後まで馴染めず如何にか読了。ビターな青春物だが好みではない。
2022年11月集英社刊
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柚月裕子著「月下のサクラ」

2023-05-11 | や・ら・わ行
森口泉の活躍する「朽ちないサクラ」続編。森口泉は25歳で県警の事務職~警察学校~交番勤務~交通課~33歳で刑事へなり、事件現場で収集した情報を解析・プロファイリングをし、解決へと導く機動分析係を志望していたものの、実技試験に失敗する。しかし、係長・黒瀬の強い推薦により、一転無事配属されることになる。鍛えて取得した優れた記憶力を買われたものだったが、特別扱い「スペシャル捜査官」=「スペカン」だとメンバーからは揶揄されてしまう始末。泉は早速当て逃げ事件の捜査を始める。そんな折、署内会計課の金庫から約一億円が盗まれていることが発覚した。メンバー総出で捜査を開始するが、犯行は内部の者である線が濃厚で、やがて殺人事件へと発展してしまう・・・。女刑事の記憶力と上司係長との信頼関係で上部組織に挑む展開。「捜査支援分析センター」の新人としてオンラインで容疑者を尾行する刑事たちと、刻々と変わる監視カメラ映像を追って、追って、追いまくる様子は考えただけで気の遠くなる話です。後半
犯人追い詰めるすぐばれそうな小さな盗聴器だけで女一人臨む無謀さは理解できなかったが一気読みできた面白い作品でした。
2021年5月徳間書店刊

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米澤穂信著「黒牢城」

2023-03-12 | や・ら・わ行
本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重の謀反を諌めるために有岡城に乗り込んだ織田方の軍師・黒田官兵衛が、土牢に囚われるところから語られる歴史ミステリ。村重は、城内で起きる難事件に翻弄されて、動揺する部下・人心を落ち着かせるため、土牢の囚人官兵衛に謎を解くよう求める。事件の裏には何が潜むのか。次々に起こる怪奇な事件を官兵衛が助言を与えてそれをヒントに領主の村重が解決する歴史ミステリです。連作で語られる4つの事件が次々に解決してスッキリするのですが、舞台は籠城の中で登場人物ほぼ全員が疑心暗鬼に陥っています。信長軍によって包囲され、明日をも知れぬ運命に囚われた人々の狂気と理性の間でおきた事件だからでしょうか。知られている史実を基に、個々の事件に想像力を駆使した歴史ミステリ。後半明らかになる牢から村重を操っていたことがわかる官兵衛はやっぱり切れ者です。戦国武将の視点ではなく歴史上一向一揆として語られる一向宗宗徒の民の側からの見方や精神性が描かれているのも面白い。信長よりも長く生き茶人として有岡落城から7年後天寿を全うした村重の生き様も面白かった。
2021年6月KADOKAWA刊

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柚月裕子著「チョウセンアサガオの咲く夏」

2023-02-11 | や・ら・わ行
11編の短編ミステリ集。美しい花には毒がある。献身的に母の介護を続ける娘の楽しみとは、代理ミュンヘハウゼン症候群・・・「表題作・チョウセンアサガオの咲く夏」
「佐方貞人」シリーズスピンオフ短編・・佐方検事の米崎地検刑事部の事務官増田陽二の話・・・「ヒーロー」。
瞽女の話が二つ・・・「泣き虫の鈴」「影にそう」。
パラオ・ペリリュー島で・・・ 「サクラ・サクラ」。
どっちがどっち・・・「お薬増やしておきますね」
異母兄弟・・・「初孫」
編集者に渡した原稿は・・・「原稿取り」
ネットで人気、猫顔に整形する・・・「愛しのルナ」
自分より男を選んだ母。それでも母は母・・・「泣く猫」
イヤミやハタ坊も登場・・・「黙れおそ松」。
長編小説の方が好きだが短編も
これはちょっとと思われるものや棘のあるものまでバラエティーに富んだグッと詰まった人間ドラマでした。個人的には瞽女の話が一番良かった。

2022年4月角川書店刊
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