心揺さぶる結末に息を呑む、圧巻の警察ミステリー3編。「真実を見抜き、罪を償わせる。」たった、それだけそれだけのことが、なぜこんなにも難しい。マンションの一室で発生したある殺人事件の現場に向かった、県警捜査一課の和泉光輝。そこで出会った女性警官・瀬良朝陽の第一印象は、簡単に言えば「最悪」だった。しかし、上の命令で瀬良とタッグを組み殺人事件を捜査することになり、和泉は彼女の類い稀な観察力を知ることになる。二人の懸命な捜査により、事件のかたちは徐々に輪郭を現していくが、待ち受けていたのは「正しい刑罰」の在り方を問う、予想外の真相だった。和泉と瀬良が立ち向かった最初の事件・・・「イージー・ケース」。事件に関する証言を頑なに拒み続ける黙秘の容疑者の謎を追う・・・「ノー・リプライ」、子供の居場所は?解決の糸口が見えない誘拐事件を描いた・・・「ホワイト・ポートレイト」。見えている真相に違和感。真実が分からない。犯人が語っていないこと、裏側が暴かれていく。でも警察が求めるものは真実なのか正義なのか。予想外でやるせない結末。主人公聴取能力に優れ、取調官を期待される若手和泉の相方のキャラはあまり明らかにならないが、クール美人でコミュニティ障害、背が高く人当たりは良くないが、洞察力に優れ「職質の女神」と言われる鋭い観察力で和泉を助ける。イライラさせられるコンビだが面白い。事情聴取等に重点を置き、真実を手繰り寄せるまでのその行程を丁寧に重厚に描かれ読み応えがあった。いかに相手の心を読み心開かせるか、それは頭脳戦でもあり心理戦。鋭い観察眼が射抜いた心、怒り、やるせなさが渦巻き対峙する取り調べ室の空気感にはリアル感あり緊張感を感じる。そして真実に辿り着くまでの刑事たちの姿もとても印象的だった。先輩たちの人生、和泉や世良の過去など徐々に解かるラストを迎えてもっと続きが読みたいと思った。
2024年11月集英社刊