イヤミスの女王のグロテスクな猟奇事件。「人間も一番美しい時に標本にできればいいのに・・・」蝶が恋しい。蝶のことだけを考えながら生きていきたい。蝶の目に映る世界を欲した蝶の権威と言われた大学教授の私は、ある日天啓を受ける。あの美しい少年たちは蝶なのだ。その輝きは標本になっても色あせることはないだろう。五体目の標本が完成した時には大きな達成感を得たが、再び飢餓感が膨れ上がる。今こそ最高傑作を完成させるべきだ。果たしてそれは誰の標本か。・・・幼い時からその成長を目に焼き付けてきた息子至(いたる)の姿もまた、蝶として私の目に映ったのだった。・・・美術にも絵にも蝶にも興味がないので何度も視点を変えて殺害シーンを読まされて、最後のドン伝返しを読んでもストーリー自体にリアル感が感じられない展開と、おまけに面会室でのポルトガル語での会話。異常な母娘関係、父子関係も理解できなかった。息子の最後の一文が救いか?確かに嫌な気分の読了。
2023年12月KADOKAWA刊