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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

湊かなえ著「人間標本」

2025-04-02 | ま行
イヤミスの女王のグロテスクな猟奇事件。「人間も一番美しい時に標本にできればいいのに・・・」蝶が恋しい。蝶のことだけを考えながら生きていきたい。蝶の目に映る世界を欲した蝶の権威と言われた大学教授の私は、ある日天啓を受ける。あの美しい少年たちは蝶なのだ。その輝きは標本になっても色あせることはないだろう。五体目の標本が完成した時には大きな達成感を得たが、再び飢餓感が膨れ上がる。今こそ最高傑作を完成させるべきだ。果たしてそれは誰の標本か。・・・幼い時からその成長を目に焼き付けてきた息子至(いたる)の姿もまた、蝶として私の目に映ったのだった。・・・美術にも絵にも蝶にも興味がないので何度も視点を変えて殺害シーンを読まされて、最後のドン伝返しを読んでもストーリー自体にリアル感が感じられない展開と、おまけに面会室でのポルトガル語での会話。異常な母娘関係、父子関係も理解できなかった。息子の最後の一文が救いか?確かに嫌な気分の読了。
2023年12月KADOKAWA刊
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森沢明夫著「桜は散っても」

2025-03-01 | ま行
感動の家族小説。自然災害が引き裂いた家族だがその絆を再びつないだ桜と紫花菜とは。趣味の釣りをきっかけに、週末を桑畑村で過ごすようになった忠彦。現地でできた親友の浩之をはじめ、温かな人々や美しい自然に囲まれた桑畑村は、彼にとって「第二の故郷」と呼べるほどの場所だった。しかし、数年後、自身が勤める建設会社が桑畑村でリゾート開発を進めていることを知る。その事実を知った忠彦は浩之に会いに桑畑村へ向かうが、そこで人生を揺るがす出来事に遭遇してしまう。その日を境に、忠彦と家族の運命は大きく変わり出していき・・・不器用ながらも自分の信念を貫いた男と、その家族の絆を描いた感動の物語。6人の視点から語られています。話の中では、自然の美しさが丹念に描かれていて、思い出の場所の記憶とともにふわりと頭の中に浮かび上がるようでリアルで繊細な描写です。元妻の視点からすれば、元夫は完全に記憶から消したいいほどの存在にも関わらず、元夫の生き方、自己満足を受け入れ、良い思い出としてお思い直せと言われているようで、読んでいて何ともやるせない気持ちがして納得が行かない部分もあるが涙もろくなった私的には感動の家族物語でした。
2024年12月幻冬舎刊
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森沢明夫著「さやかの寿司」

2025-02-17 | ま行
海辺の町のひなビタ商店街にある「江戸前夕凪寿司」という小さなお店を中心に繰り広げられる感動物語。母の納骨を終えた作田まひろ(22)は、「別れ」を受け入れるため、幼い日に母と一度だけ訪れた寿司店にやってきた。「江戸前夕凪寿司」という小さなお店。意を決して暖簾をくぐるも、ランチ営業はちょうど終わったところだった。がっかりしたまひろだったが「ちょっと、お客さぁん」と若い女性の綿飴みたいな声に呼び止められ、まかないの海鮮丼をいただくことに。「さやかさん」と呼ばれる声の主は、ふんわりした見た目とは裏腹に、丁寧な「仕事」をする凄腕の寿司職人で・・・。かっての大将伊助さん、店員の未來ちゃん、常連さん、個性豊かな面々が登場する心温まる素敵な物語でした。
「自分から身体の向きを変えて・・・するとずっと逆風だった強い海風が、わたしたちの背中を押しはじめた。これは順風だ。要するに、自分がどちらを向いて生きるかで、凍えるような逆風も“追い風”に変えることができる」(P268)
『人生の中からなるべくMUSTをなるべく消して、むしろもっと「いい道があるかも」って考えながら行動すること。従来の狭い価値観で自分を縛らないで、頭も心も身体も、なるべくのびのびと「自由」にしておくこと』(P136)
2024年9月角川春樹事務所刊



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宮本輝著「よき時を思う」

2025-02-11 | ま行
東小金井にある、中国風四合院造りの建物から始まる。家主である三沢平馬は、夜になり、近くの欅の森の木が囁く言葉を聴いている。そこに、四合院の建物の一角を借りている金井綾乃が帰宅してくる。綾乃は三十歳、海運会社の経理部署で働いている。彼女は帰宅して、祖母の徳子に墨書で手紙を書く。綾乃の手紙に、徳子は朱を入れて、返してくる。九十歳になる祖母の徳子が、孫の世代に対して、未だに大きな影響を与えていることを知る。徳子は、戦後ながらく教職に携わってきた。彼女は、教え子たちに、そして周囲の人に大きな影響を与えてきた。徳子は、なぜ出征が決まった青年と結婚したのか?夫の戦死後、なぜ数年間も婚家にとどまったのか?そしてなぜ、九十歳の記念に晩餐会を開くことにしたのか?孫の綾乃は祖母の生涯を辿り、秘められた苦難と情熱を知る。徳子の生き方、溢れるばかりの知識や教養が人格を貫いている様子が挿話を挟みながら描かれる。よき時、それはかつての栄光ではなく、光あふれる未来のこと。いつか、愛する者たちを招いて晩餐会をと九十歳の記念に祖母の徳子が計画した、一流のフレンチシェフと一流の食材が織りなす、豪華絢爛な晩餐会。子どもたち、孫たちはそれぞれの思いを胸にその日を迎える。一人の命が、今ここに在ることの奇跡が胸に響く感動物語です。普通の生活者の自分から見ると上流社会に属する幸せそうな金井一家の豪華な食事風景と薀蓄にはちょっとうんざりしたが、個性豊かな登場人物描写と徳子おばあちゃんには感服。徳子おばあちゃんが自分のお気に入りを身内それぞれに生前贈与するくだりは面白いと思った。
2023年1月集英社刊


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森沢明夫著「ロールキャベツ」

2024-08-21 | ま行
夢も趣味もない大学2年生の夏川誠(マック)をかえたのは、ただ椅子に座るだけの遊び「チェアリング」の仲間たちだった。青春起業小説です。チェアリングとは椅子を持ち歩いて、好きな場所でくつろぐこと。
◆夏川誠・・・趣味なし夢なし、やりたいことも特になし。就活しない大学二年生には思わぬ才能があった。
◆王丸玲奈(パン子)・・・ミュージシャンになってステージで飛び跳ねたい!だけどできない事情が。
◆上村風香・・・夢は農家レストランの経営。場所は絶対あの場所と決めている。
◆長沢智也(ミリオン)・・・大学生にして投資家。ミリオネアを目指すようになった理由とは。
 ◆奈良京太郎(マスター)・・・喫茶店のオーナーを目指して修業中。実家の病院はどうしても継ぎたくない。
「生まれ変わるなら、生きているうちに」(P389)「自分の人生の脚本は、自分の手で書き換える」(P397)「いまのわたしは人生で最強なのよ。・・・いまの自分こそが、過去から見たらいちばん人生経験豊富で、未来から見たらいちばん若々しい」(P98)「人生は小説と違って、特に何も起きない。ありふれた人生を生きて、人生を終える。特別な事は滅多に起こらない あっても過ぎて仕舞えばたいしたことでは無かったと言える事が多いのかも」「やるかやらないのかで生きていく」(P348)「大事な人には本心を伝えた方がええ」「他人じゃなくて、自分と勝負しながら未来を切り開いていく。」「失敗ができなきゃ、成長もできない。」ほっこりできる優しい小説でした。
2023年5月徳間書店刊


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松本清張著「閉じた海―社会派推理レアコレクション」

2024-07-07 | ま行
平成4年(92年)死去の「社会派推理の祖」と称された作家。財閥系に伍して業界の中堅までのポジションに至った損保会社の戦後の混乱期に阿漕な手段まで駆使して成り上がった男たちの裏の顔を描いた話。損保会社の独裁社長の長年の秘書が、海外出張先で海に転落死。大学同窓生で、別会社での左遷直前に拾ってもらった主人公が出張直前の酒の席での彼の言動を思い出して不審を感じ・・・表題作(1973年)。無尽会社から発祥して地域の有力金融機関の地位にある相互銀行の裏の顔を暴くようなストーリー・・・「よごれた虹」(1962年)。他に短編、元警察官の冤罪がらみの・・・「雨」(1966年)の3編と資料編・社会派推理とは何か対談エッセイ・インタビューが収録されている。死んで暫くたつのに新刊出る作家は流石。どの作品も未完の感が強いが「上から見ないで底辺からみあげること。・・・まず疑ってかかるという姿勢」(P294)作家姿勢が解る作品でした。
2024年4月中央公論新社刊

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麻宮好著「母子月 神の音に翔ぶ」

2024-04-09 | ま行
時代劇ミステリー。江戸市村座の公演中に毒殺された歌舞伎の立女形の初代瀬川路京。あれから34年、女形の歌舞伎役者・二代目瀬川路京は人気低迷に足掻いていた。天に授けられた舞の拍子「神の音」が聞こえなくなっていたのだ。路京は座元と帳元の強い勧めもあり、現状打破のため、因縁の演目を打つことに。師匠の初代路京が舞台上で殺され、さらに瀬川家が散り散りになったきっかけの「母子月」だ。当時子役として自分も出演した因縁の公演を前にして、初代殺しを疑われた者たちが集まってくる。真の下手人は誰なのか?初代はなぜ殺されてしまったのか?終幕に明かされる真相に感動の嵐が・・・。特異な厳しい世界でもある歌舞伎の世界・芝居小屋の様子が詳しく描かれて面白い。過去の回想シーンが何度も挿入され登場人物の幼称名が結びつかず読むことに苦労したが、歌舞伎界主人公を陰ひなたで見守る、初代路京の息子の心の機微な描写がいい。
「何かを選ぶってことは、何かを捨てることだろう。」(P295)
2024年1月小学館刊
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湊かなえ著「残照の頂 続山女日記」

2024-01-03 | ま行
シリーズ第2弾。女性を主人公にした山岳ミステリー。
「通過したつらい日々は、つらかったと認めればいい。たいへんだったと口に出せばいい。そこを乗り越えた自分を素直にねぎらえばいい。そこから、次の目的地を探せばいい。」亡き夫に対して後悔を抱く女性と、人生の選択に迷いが生じる会社員。亡き夫の謎と元カレ再会・・・「後立山連峰」。失踪した仲間と、ともに登る仲間への、特別な思いを胸に秘める音大生たちの三角関係。表題「残照の頂」の意味が・・・・「北アルプス表銀座」娘の夢を応援できない母親と、母を説得したい山岳部の女子大生。親との進路相談。・・・「立山・剱岳」。大学卒業後に様々な困難に遭遇し、登山はおろか友人関係さえも疎遠になっていた女性二人が、コロナ禍を乗り越え再び登山を始める、30年ぶりの登山をかつての山仲間と報告し合う疎遠だった友との文通。・・・「武奈ヶ岳・安達太良山」。日々の思いを噛み締めながら、一歩一歩、山を登る女たち。頂から見える景色は、過去の自分を肯定し、未来へ導いてくれる。人生と山と、リンクさせてほろっとさせてくれる素敵な話で、また続編が読みたい。武奈は昨年に、安達太良除き他の山も過去に登ったことのある山ばかりだったので当時のことを思い出しながら読んだ。著者の山を愛している目線が心地好い。
2021年11月幻冬舎刊

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未須本有生著「天空の密室」

2023-12-26 | ま行
著者は東京大学工学部航空学科卒で、大手メーカーで航空機の設計に携わった経験があり現フリーのデザイナー。「令和X年クルマが東京の空を飛ぶ」。空飛ぶ車『エアモービル』研究開発の光と影をえぐる本格ミステリー。自動車部品メーカー・モービルリライアントは、下請け体質からの脱却を図るべく新規事業を立ち上げ、さらなる発展を期して航空業界へと進出した。ドローンを進化させた1人乗り飛行体・エアモービルの開発に乗り出す。試行錯誤の末、試作3号機は公海上での飛行試験までこぎつけたが・・・。湾岸の高層オフィスビルの屋上にバラバラ死体が入ったスーツケースが置かれていた事件が発生。その場所へは警備システムが完備した屋内非常階段を上がるか、ヘリコプターで空からアクセスするしか方法がない。だがいずれもその形跡がなく、死体がどうやって運ばれたか特定できないまま捜査は難航する。役人の保身や嫌がらせが原因で新規の分野の開発が遅れるっていうことがあるとは。資金集め、国交省との交渉など、様々な工程を経て『空飛ぶクルマ』の完成を目指す開発物語の展開なのだが、はじめからある程度犯人は解ってしまうようにしむけているが、最後に意外な人物が名乗り出るというひと工夫されているミステリーでした。
2022年5月南雲堂刊
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宮部みゆき著「ぼんぼん彩句」

2023-11-28 | ま行
12句の俳句をヒントに書かれた12の短編集。著者の洞察力と鑑賞力で俳句仲間の句からのインスピレーションで12の俳句から紡ぎだした作品。社会派からホラー、SFに至るまで、あらゆるジャンルの短編が秘められた玉手箱。短編だから落ちがないのや消化不良の物もあるが思いもしない展開でう~んと唸る作品ばかり。酷い母親やら、危険な男、のっぺらぼうの妖怪などちょっとミステリーホラーが多かった。冬になっても枯れない不気味なゴーヤの話は、赤い種を食べてしまいそうで、背筋が寒い気持ちで読みました。『枯れ向日葵呼んで振り向く奴がいる』『冬晴れの遠出の先の野辺送り』がよかった。俳句をもとに、こんなに想像力豊かに作品を貢ぐなんてさすがです。
2023年4月KADOKAWA刊

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宮部みゆき著「子宝舟 きたきた捕物帳㈡」

2023-03-19 | ま行
シリーズ第2弾。江戸深川の富勘長屋に住み、小物を入れる文庫を売りつつ岡っ引き修業に励む北一が、風呂屋の釜焚きなのに、なぜかめっぽう強い相棒・喜多次の力を借りながら、不可解な事件を解決していく物語。江戸で噂の、「持つ者は子宝に恵まれる」という宝船の絵。しかし、赤子を失ったある家の宝船の絵から、なぜか弁財天が消えたという。時を置かずして、北一もよく知る弁当屋の一家三人が殺される。現場で怪しげな女を目撃した北一は、検視の与力・栗山の命を受け、事件の真相に迫っていく。北一の文庫づくりを手伝っている、欅屋敷の「若」や用人の青海新兵衛、そして末三じいさん。岡っ引き見習いとしての北一を応援している、亡き千吉親分のおかみさんや大親分の政五郎、政五郎の元配下で昔の事件のことをくまなく記憶している通称「おでこ」たちの協力によって難事件に挑む挿入された挿絵にほっこり気分のミステリー捕物帳物語。
PHP研究所刊


 
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宮部みゆき著「きたきた捕物帖」

2023-02-01 | ま行
痛快時代劇ミステリー。舞台は江戸深川。いまだ下っ端で、岡っ引きの見習いでしかない16歳の北一は、亡くなった千吉親分の本業だった本や小間物を入れる箱を売る商売・文庫売りで生計を立てている。やがて自前の文庫をつくり、売ることができる日を夢見て・・・。物語は、ちょっと気弱な主人公・北一が、やがて相棒となる喜多次と出逢い、親分のおかみさんや周りの人たちの協力を得て、事件や不思議な出来事を解き明かしつつ、成長していく物語。北一が住んでいるのは、『桜ほうさら』の主人公・笙之介が住んでいた富勘長屋。いきなり育ての親というか、保護者を失った主人公、おかみさんとの絡みが謎解きのあれこれ、訳ありな喜多次という相棒得て今後の展開と、成長譚としても楽しみだ。登場人物の着物の柄や着こなし、立ち居振る舞いまでが感じられて、心がほっこりで読みやすい。あどけない雰囲気が可愛らしく挿絵もありほっとするページ。今の社会に漂う閉塞感を吹き飛ばしてくれる時代劇だ。続きが楽しみだ。
2020年6月PHP研究所刊

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真山仁著「レインメーカー」

2023-01-06 | ま行
弁護士の執念を描いた法廷サスペンス。アメリカの法曹界では、訴訟で大儲けする弁護士を「レインメーカー」と呼ぶらしい。
「法律を知らないと不幸になる」と医師の側に立ち、法律問題や医療過誤訴訟を闘っている異能の弁護士・雨守誠に、ある日総合病院から依頼が入った。2歳の一人息子を急死させた野々村喬一•結子夫妻が父で県会議長である喬太郎に唆され医療訴訟を起こす。その医療過誤で訴えられた、病院と医師を弁護してほしいというのだ。救えなかったら医師が悪いのか?自身の信念に基づき、雨守は医療現場の矛盾や不条理に斬り込んでいく・・・。「彼らを支援するのは、つまらない訴訟で潰されることなく医療活動を続けてもっと多くの患者さんを救って欲しいからだ」「医療技術が進歩すると、やがて、救えない命なんてなくなるかもしれない。但し、回復のために時間も人も、手間がかかる。それによって医療従事者の負担は拡大していくのよね、そのバランスが歪なの。だから、これは日本の医療制度の根本的な問題だと思う。」(P173)医療訴訟の背後でむりやり医療過誤を作り出そうとする弁護士。医師を守ろうとする弁護士。原告の背後には蠢く政治家。新聞記者は表裏の真相をあばけるか。病院を高値で売却しようとしている勢力も。それぞれの立場やいろんな思惑が絡んで描かれていて面白かった。
2021年10月幻冬舎刊
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湊かなえ著「ドキュメント」

2022-12-14 | ま行
高校部活小説。中学時代に陸上で全国大会を目指していた町田圭祐は、交通事故に遭い高校では放送部に入ることに。圭祐を誘った正也、久米さんたちと放送コンテストのラジオドラマ部門で全国大会準決勝まで進むも、惜しくも決勝には行けなかった。三年生引退後、圭祐らは新たにテレビドキュメント部門の題材としてドローンを駆使して陸上部を撮影していく。やがて映像の中に、煙草を持って陸上部の部室から出てくる同級生の良太の姿が発見された。圭祐が真実を探っていくと、計画を企てた意外な人物が明らかになって・・・。人と人。対面でのコミュニケーションがむずかしくなった今だからこそ、
 「"伝える"って何だ?」のテーマは面白いのだが、区切り方とか文章的構成と人間関係・ストーリーが丁寧でなく難しいので解りにくい。登場人物の心情や心理の描き方は丁寧でいつもの通りなのだが、青春物としてはワクワク感が薄いし、ミステリを期待していたがそれもハズレで湊作品としてはガッカリ感が残る 。
2021年3月角川書店刊


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森沢明夫著「本が紡いだ五つの奇跡」

2022-03-20 | ま行
仕事がなかなかうまくいかない女性編集者の最後のチャレンジで実現した新作小説。それは小説家の涼元マサミが書き上げた、知性と優しさ、遊び心と友情、飛びぬけた行動力を武器に理不尽や不条理に立ち向かっていく少女の物語。その小説が人々を、気持ちを奇跡のように紡いでいく。本が生まれて、読者へとつながる。第一話 編集者・津山奈緒の章から、小説家・涼元マサミ、デザイナー・青山哲也、 書店員・白川心美、読者・唐田一成の章まで本に関わった五人の奇跡のオムニバス物語。立場や環境の違いがあれども、それぞれの人たちの本に対する温かな気持ちは伝わってくる。多くの人間が感銘を受け影響され、新たな行動を起こし、縁を紡いでいく。そんな素敵な感動物語でした。いろいろ気になったセリフを記録します。「いつでも、何があっても、君は一人じゃない。たとえ、大切な人と会えなくなる日が来たとしても、心はちゃんと寄り添っているし、想いは君とつながっている」(P155) 
「わたしの人生は、雨宿りをする場所じゃない。土砂降りのなかに飛び込んで、ずぶ濡れを楽しみながら、思い切り遊ぶ場所なんだよ。あなただって、本当はそうしたいんでしょ?」(P223)
「あなたは、つながっているから大丈夫。だから安心して。思い切って、あなたらしく生きてね」(P234)
「人生の選択肢には正解なんてないけど、でも、いつか、その選択が正解だったって、胸を張れるように生きること。そういう生き方こそがきっと正解なんだってさ。」(P302)「若い頃ってのは、迷いに迷うのが正解なんだよ。ああでもなかった、こうでもなかった、次はこうしてみようって、なるべくたくさんの失敗と修正を繰り返すんだ。そうやってきた奴だけが、いずれ経験豊富な頼り甲斐のある大人になれるんだからな」(P304)
「過去を大切にすることも大事だけれど、いまと未来を大切にしないと、いつかそのかこまで否定することになるよ」(P336)
2021年9月講談社刊

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