8つのSF短編集。長年一緒に暮らしてきたロボットと若い娘の、最後の挨拶。・・・表題作「さよならの儀式」。
養父母のもとで暮らしていた主人公の二葉。しかし二葉が16歳のとき、養母の死によって「グランドホーム」という施設に戻されること。虐待を受ける子供とその親を救済する奇蹟の法律「マザー法」でも、救いきれないものはある。・・・「母の法律」。
主人公の藤川達三は、散歩中に奇妙な光景を目にする。少年が防犯カメラを壊そうとしているのだ。果たして少年の目的は、孤独な老人の日常に迫る侵略者の影。・・・「戦闘員」
45歳のわたしの前に、中学生のワタシが現れた。・・・「やっぱり、タイムスリップしちゃってる! 」・・・「わたしとワタシ」。
高校生の主人公・深山秋乃は、10歳違いの妹・春美と母親と3人で暮らしている。春美が突然不調を訴え、通常の学校生活が送れなくなってしまった原因は?妹が体調を崩したのも、駅の無差別殺傷事件も、みんな「おともだち」のせい?・・・「星に願いを」
千川調査事務所に寺嶋という男が、息子・和己の相談に来た。和己が妙なものを見たというので、その調査を依頼するためだ。依頼人の話によれば、ネット上で元〈少年A〉は、人間を超えた存在になっていた。・・・「聖痕」。
明治日本の小さな漁村に、海の向こうから「屍者」のトムさんがやってきた。フランケンシュタイン博士の作ったものは・・・「海神の裔」。
隔絶された町「ザ・タウン」の保安官のところへ、チコという助手がやってきた。パトロール中、保安官の無線が鳴った。「誘拐事件発生です」なぜいつも道を間違ってしまうのか・・・「保安官の明日」。
親子の救済、老人の覚醒、30年前の自分との出会い、仲良しロボットとの別れ、無差別殺傷事件の真相、別の人生の模索。なぜこの殺人がおきたのか、なぜ監視社会がこれほど進むのか、人とロボットは共存可能なのか、そんな疑問への回答が宇宙人の存在だった等々、読後感は短すぎて暗い面白みのない短編集だった。
2019年7月河出書房新社刊