読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

山本甲士著「ひかりの魔女 さっちゃんの巻」

2023-08-07 | 山本甲士・恩田陸
スーパーお婆ちゃんシリーズ第3弾。巻き込まれ型小説の著者が負の連鎖を断ち切り正の連鎖の生き方とものの考え方が学べる痛快物語。重ノ木さちは、フリースクールに通う小学五年生の女の子。不登校の小中学生が通うその施設に、ある日突然、ボランティアスタッフとして真崎ひかりと名乗る謎のおばあちゃんがやってきた。作務衣に割烹着姿、手ぬぐいを姉さんかぶりした、見た目はちょっと変なおばあちゃんだったが、彼女の笑顔と「優しいうそ」で、バラバラだった子ども達の雰囲気が少しずつ変わり、さちやその家族の気持ちにも徐々に変化が・・・。第1作で85歳だったひかりばぁちゃんあれから3年位経っているから88歳以上の年齢だがらいたって元気だ。さっちゃん小5年生でもそんなにインターネットを使いこなしているのかとビックリした。馬は道交法では軽車両なんだ。読んでいて「立禅」や「ネガティブトレーニング」「筋トレの効果的仕方」を思わず検索してしまった。
痛快で幸せを運ぶスーパーおばあちゃん小説の続編期待。
2022年10月双葉文庫刊
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山本甲士著「ひかりの魔女 にゅうめんの巻」

2023-08-05 | 山本甲士・恩田陸
スーパーお婆ちゃんシリーズ第2弾。亡き祖父の後を継ぎ、しがない喫茶店「Cバード」を営む二十代の独身女性、結衣のところに祖父を訪ねて来た真崎ひかり・・・「春」。社内クーデターによって会社を追われた元社長東郷丈志は派遣家政婦のピンチヒッターであらわれたひかりばあちゃんの料理に出会う・・・「夏」
 倒産寸前の町工場を営む二組の夫婦、軒先に犬の散歩で雨宿りの中のひかりばあちゃんと遭遇・・・「秋」。ラーメン店を潰したバツイチ男湯崎弘司が、ワンボックスカーの車上暮らしで・・・「冬」。閉塞感を抱えながら暮らす彼らが出会った謎の老女真崎ひかりとの出会いによって少しずつ人生が変わっていく。80を超えたおばあちゃん『真崎先生』が繰り出すミラクルの数々。優しい言葉をかけてくれる彼女の不思議な人脈と優しい嘘によって巻き起こす幸せの物語。痛快にしてほっこり兎に角、面白くて一気読み。

2019年双葉文庫刊

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恩田睦著「錆びた太陽」

2022-02-07 | 山本甲士・恩田陸
ブラックユーモアSF近未来小説。恐ろしくもおかしな世界。ゾンビとロボット達と一緒の汚染地域での物語。「最後の事故」(原発事故らしい)で、人間が立ち入れなくなった地域をパトロールしているロボット「ウルトラ・エイト」。彼らの居住区に、ある日、人間が現れた。国税庁から来たという20代の女性・財護徳子。人間である彼女の命令に従わざるを得ないロボットたち。人間は一人だけ、他はロボット、ゾンビ、巨大化した猫という特殊な設定。原発を廃止しようとしない日本政府に業を煮やした環境テロリストが各地の原発を爆破、国土の2割以上が汚染地域になってしまい、それからさらに4世代を経て2050年も過ぎたのに、制限地域が足かせとなって経済成長は望めず、人口は5千万に減少、いまだに汚染地域の処置は終わらない・・・という状況の日本です。人が立ち入れないためどうなっているのかわからない地域も多く、遺伝子変異した奇妙な動物も生息しているらしい、中にはおかしな形で放射能に適応した一見ゾンビのように見える人間が群れで生き延びているという情報もあるとか。連絡に齟齬があったようで、来るということも聞いていない、それに、生殖能力のある若い女性が放射能汚染地域に入ることなどありえない、ロボットたちは怪しみながらも、ロボット三原則に基づいて人間を守るために彼女と行動を共にします。使用済み核燃料保管をめぐる政府と海外企業の癒着などありえそうな裏話など荒唐無稽の中にリアル感も風刺の効いた不思議なSF小説でした。
2017年3月朝日新聞出版刊
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山本甲士著「つめ」

2016-12-29 | 山本甲士・恩田陸

主人公は、フードコートのうどん屋のパート従業員の真野朱音、家族は単身赴任中の夫とその連れ子の息子小学生の裕也と暮らす30代。

子供会の渉外担当として尾花公園に面したフェンスに南郷宅の家のイバラの棘が巻き付いて子供が何人もケガして危険なので剪定のお願いにいくことになるが、南郷不二美は50代後半の人暮らしでデッカイドーベルマンの犬を飼っており気難しいと評判が・・・・。

平凡な市民がトラブルに巻き込まれていくという「巻き込まれ型小説」の最新作。

ご近所のモンスターとのバトルとガンジーを尊敬する非暴力主義の息子が学校でのイジメをどう解決するか、義理の息子との距離をどう縮めていくのか、やられたらやり返せ主義の朱音との展開が面白い。義理の息子の裕也君が素晴らしい。

著者らしい身体の鍛え方も参考になった。201610月小学館刊

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山本甲士著「銀幕の神々」

2015-06-03 | 山本甲士・恩田陸
63歳になった岩瀬修は、今ではオフィス用品の配送する会社の専務だ。1960年代に黄金期を迎えた、高倉健さんたちの東映の任侠映画の名作には、昔夢中になったことがあった。
初めて観たのは中二のとき、すぐに高倉健のファンになった。
映画を観たいために家業の飲み屋を手伝うようになり、よく立ち飲みに来る周囲からはヤクザと煙たがられている中間のおっちゃんと仲良くなる。
そして、心臓が悪い従姉妹の弥生が、近くの県立病院に入院してきた。
学校に通えない弥生のために、修はプリントなどを届けに行くようになった。
弥生は、優秀で本好き、しかも絵を描くのが抜群に上手い。ケンカもしながら、親しくなっていく。
やがて任侠映画と、二人の出会い・高校時代経て、修は東京の大学へと人生の荒波に漕ぎ出し始める・・・。
任侠映画に、そして主人公達に夢中になった青春時代。たかが娯楽映画だったが、そうではなかった。
あの頃の出会いがあって、今の自分がいることを、切ないエピソードとともに回想する任侠映画にまつわる忘れられない思い出。
学園紛争を体験した同時代の主人公に感情移入して読み終えた。ヤクザ映画ここでいう任侠映画はあまり見ていないが出会いの運命は感じることができた。
「運命というものはあるものだと思った。・・・結婚には失敗したが、夢中になって打ち込める仕事と出会うことができた。そう、すべては運命だった。後にならないとそうだとは気づかないけれど。」(P316)
2015年1月 小学館刊
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山本甲士著「ひかりの魔女」

2015-05-16 | 山本甲士・恩田陸
伯父さんの急死により伯父さんと同居していた85歳のひかりばあちゃんを引き取ることになった真崎一家と
祖母のお世話係を引き受けた宅浪中の光一が体験したばあちゃんの痛快人間関係術。
いつも姉さん被りの割烹着姿のちょっと変わったひかりおばあちゃんの作るご飯や料理は絶品、昔書道教室で教えていたとかで
熱烈なファンの教え子が6人もいたりとかとにかく不思議な祖母にいつしか光一も問題を抱えていた家族も助けられていく。
日常生活で忘れがちな大切なことや生きていくうえでの基本的なことなど質素で堅実な生活の中の幸せのヒントを
教えてくれるユーモア小説です。
ひかりバぁちゃんのやっていた「立禅」なんかやってみようかな・・・。 読み終わって幸せな気分にさせてくれる物語です。
「当たり前のことを丁寧にやればそれなりの結果がもたらされる、だから大切なところで手を抜いてはならない。・・・知り合いとの関係を大切にし、毎日しっかりと身体を使う。」(P224)
2014年3月双葉社刊
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山本甲士著「俺は駄目じゃない」

2013-07-03 | 山本甲士・恩田陸
久しぶりの「巻き込まれ型」小説。
35歳の名井等は普段から「余計なことにはかかわらない方がいい」ということを信条に生活する小心者。
そんな彼が会社の営業途中に下着泥棒の容疑者として誤認逮捕され、その結果会社からは首を切られる。
そして取材を受けた新聞記者から紹介された「警察を見守る市民の会」という団体から頼まれ、一連の経緯をブログにつづることに。
誤認逮捕の経緯を書いたブログ「俺は何もやってません」は予想外の共感と反響を呼び、権力の横暴さに抗する象徴として名井自身も注目を浴びいつしかちょっとしたヒーローになる。
しかし、有名になったばかりに、謎の嫌がらせや、襲撃事件に遭い、あげく、指名手配犯から協力を頼まれちゃったり。
やっぱり、「なんでこうなるんだ」ということばかりだけど、予想外の話が舞い込み始める・・・。
騒動に巻き込まれて人生が大きく変わってしまう可能性は、誰にでもあるだろう。
名井の駄目人生が良い風に転がって人生が広がっていくラストの暗示で読後感もよかった。
作中の俳優「佐々岡ただし」はどう見ても藤岡弘とダブルが著者の
山本甲士 / もの書き生活のURL

 http://blogs.yahoo.co.jp/mtbook54/11506360.html

でも認めているので想像通りだ。
ロードワークとトレーニングは著者の実生活かな。意外な襲撃事件の犯人は予想外だがちょっと無理ぽい印象。
2013年5月双葉社刊

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山本 甲士著「戻る男」

2010-10-07 | 山本甲士・恩田陸
一発大きく当てたものの後の作品が中々書けない作家・新居に届いた過去へのタイムスリップ体験の案内状。
うさん臭いと思いつつ詐欺だと疑いつつも、新居にはいじめられっ子だったこと、女に手痛くふられたことなど、やり直したい過去の記憶を修正する為
小説のネタになるとその話しに乗る事に。
チョット変ったタイムスリップ小説です。
主人公の新井はお金を払って試したら大成功、自分の心の古傷になっていた過去を修正して自らの過去を変えて新しい自分を手に入れるのだが・・・。
意外な結末を迎えるが、さわやかなストーリーで読みやすいし読後感もいい。
自分にとっても過去とは何かということも考えさせられた。 戻る方法論よりも過去
に戻って何をしたいのかに重点置いたSFぽいがミステリー小説でもある感じ。
「いろいろ失敗したからこそ、今の自分がいるんですよ。壁を乗り越えたっていうのは、人間の勲章みたいなものじゃないか」(254P)
「人間、よっぽど取り返しがつかないことをしでかさない限り、過去を変える必要はないんだ。
・・・やるべきことは過去とどう向き合うかなんだ。そのときがあったからこそ今がある。」(261P)
2010年6月中央公論社刊
コメント (2)
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山本甲士著「ひなた弁当」

2010-02-21 | 山本甲士・恩田陸
中堅の住宅販売会社の人員整理でリストラにあい50歳直前で弁当販売をはじめた主人公、
芦溝良郎のつくる弁当は「ほのぼのとしていて、それでいて生きる力を感じさせてくれる「ひなた弁当」だった。
芦溝良郎は、社内野球大会で常務の頭部へ投球を当ててしまった翌日、27年間勤めた
「王崎ホーム」からリストラを宣告されてしまう。
そして出向先として斡旋された人材派遣会社では、仕事をするどころか自分が派遣社員として登録される始末。
妻からは、隣近所や娘の手前出勤しているふりをするように命じられる。そんなある日、絶望する49歳無職の男に、一つのアイディアが、「どんぐりって食べられるんだよな」。
「食べるものがただで手に入れば、生きていくのにそれほど金は必要ではないかも」と。
それから次々に勉強し、野草、川でとれる魚、うなぎなど、その辺にあるものを収穫し、おいしく食べられる工夫をしていく。
あげくは、それらをお弁当にして売り出すことに。 気まずかった妻や予備校に通う娘とも距離が縮まり、いろいろな人との出会いで、
彼自身他か周りの人たちにも変化をもたらしていきます。
人との絆、人に必要とされること、仕事、楽しむこと、シンプルな生活、自然との共存。
人生で大切なことってなにかを教えてくれます。
巻き込まれ小説で有名な著者が書いた「あたりー魚心」の姉妹編とも呼べるリストラにあったお父さん達にエールを贈る痛快作。

2009年11月中央公論新社刊
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山本 甲士著「ばす bass」

2009-10-17 | 山本甲士・恩田陸
ブラックバスが日本在来種の減少の一因だからと駆除しなければならないという意見、
一方でスポーツフィッシングとしての愛好家らとの、擁護派VS駆除派で論争も起きているそんなバス釣りに関する連作短編が7編。
バスをめぐる話し、池に落ちているルアーで楽に商売ができないかと考えた食堂の息子、
バス釣り人を悪者にする映像を撮るために奮闘するプロデューサー、
キャッチアンドリリース禁止のバス駆除派の票を気にしている市議会議員、バスも結構美味しいというホームレス等々。
ブラックバス騒動の周辺で地味に人生を狂わされた人々を描くシニカル・ユーモア。
人間の浅はかさが招いた不運、バス論争の中味をさぐりながら実は人間の愚かさを皮肉たっぷりに描いた釣りファンでなくとも楽しめる一作です。
2008年9月 双葉社刊
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山本甲士著「 ノーペイン・ノーゲイン」

2009-09-27 | 山本甲士・恩田陸
「 ノーペイン、ノーゲイン」=(痛みなくして、前進はなし)
平成8年第16回横溝正史・優秀作受賞作。
スポーツクラブのインストラクター経験を有する著者の初受賞作でもあります。
鍵屋の八戸虎男が狙ったフィトネスクラブの事務所からの
深夜忍び込んでの窃盗の完全犯罪は20万円余入りの手提げ金庫だけだった。
しかし、何故か後日420万円の盗難事件と新聞に報じらていた。
事務所の誰かが400万円くすねてると気づいた虎男は・・・
斬新なアイデアと奇抜なトリックで描かれたミステリー小説。
完全犯罪の泥棒小説かなと読み始めたが意外な展開に引き込まれました。
ウェイトトレーニングの理論が書かれていて面白いし、被害者、犯人、探偵役と一人称形式で語られているのも珍しい感じ。

2000年 角川書店刊
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山本 甲士著「わらの人」

2009-09-25 | 山本甲士・恩田陸
髪形変えて「変身」する6つの連作短編集。
会社や家庭で言いたいことも言えず、仲間や上司からいいように使われている人たちが主人公ですが、陰の主役が「理髪店」の女主人。
この店主の人懐こい人柄と気持ち良い仕事ぶり巧みなマッサージにいつしかウトウト。
その寝入りばなに店主は囁きます「あなたに一番似合う髪形にしますから、私に任せて」と。
ある女性は短髪にされてコワーい眉毛(「眉の巻」)に、おじいちゃんは丸刈りに(「花の巻」)されたり。
それらの主人公は新しい髪形に戸惑いつつも、性格に積極性が現れ、いやみな上司に諫言したり、
先輩の見栄を見破ったりと・・・。
本人も周囲も戸惑うが、その髪形が事件を呼ぶ。
自分で思っても見なかった面が、髪型を変えるという行為によって初めて引き出されるという人間の面白さを
ユーモラスに綴った爽快、痛快、感動の連作短篇集。
気弱で温厚な性格の主人公が、登山研修でリーダーを任されたことをきっかけに変わっていく様子・・・「犬の巻」。
空き巣に入られたOLの話し・・・「守の巻」他に「黒の巻」「道の巻」
こんな理髪店近所にないかなぁ~
いえ、けっして変身したいわけではないですが。

2006年11月文藝春秋刊
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山本甲士著「風はねじれて 探偵稼業」

2009-09-11 | 山本甲士・恩田陸
『あした砕けるー探偵稼業』から続く探偵稼業シリーズの3作目。
北九州市の門司港で探偵業を営む御倉学・・・モットーは無駄だと思える仕事でも、プロのプライドを掛けて全力で臨むこと。
しかし、依頼人の部下や家来にはならないというスタンスを貫くこだわりの探偵でもある。
県内有数の学校法人の理事長から依頼があった。
理事でもある娘の運転する車が、ホストを乗せホテルから出てきたところ、若者を撥ねてしまったというのだ。
教育関係者にとって命とりになりかねないスキャンダルを葬り去るために、その若者実は「当たり屋」の弱みをつかんでくれという。
同じ頃、北九州市に本社を置く食品会社へ脅迫文が送られ、カップ麺に毒物が混入されるという事件が世間を震撼させていた。
御倉は「当たり屋」の部屋から、脅迫文の下書きを発見し、調査は思わぬ方向へと進んでいく・・・。
身体にいい食事、プロテインを飲み身体を鍛える為のトレーニングを欠かさず肉体のケアーに勤めるキャラの御倉探偵は面白かった。

2000年04月 C・novels 中央公論新社刊
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恩田 陸 著「木漏れ日に泳ぐ魚 」

2009-07-31 | 山本甲士・恩田陸
二人の間柄は?ある男とは?なぜ別れなくてはならないのか?
これからどうするのか? いろんな疑問が涌いてきて読み人を小説の世界に引き込む序盤の書き込みは流石。
一組の男女が迎えた最後の夜。彼らの別れの晩に、酒を酌み交わしながら、
過去に起こったあるできごと(ある男の死)について話をする、さらに章ごとに男と女の視点が入れ替わりそれぞれの思惑を語る。
やがて夜が明けて、この物語が終わる頃に、このできごとのひとつの可能性としての真相が浮かび上がってくる設定。
『やっぱり死は生きるということの無数の選択肢の中の一つなんだよ・・・死は生の一部分なんじゃないかな』
『朝というのは人を正気、全てを日常に引き戻す。
数時間前に重大に思えたことがちっぽけなものになり、妖しく輝いて見えたものが安っぽく色褪せて見える。 』 (本文より)
緊張感みなぎる心理戦と謎解きの物語
運命と幼いころの記憶、愛と葛藤が絡み合う、読み終わって空虚感の漂うミステリーでした。
2007年 中央公論社 刊 

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恩田陸著「 ブラザー・サン シスター・ムーン 」

2009-07-14 | 山本甲士・恩田陸
『ねえ、覚えてる? 空から蛇が落ちてきたあの夏の日のことを、三人で観たブラザー・サン シスター・ムーン』
――高校時代の課外授業の一環で偶然知り合い、
同じ大学に進んだ三人。
そして大学時代に楡崎綾音が小説を書くことに、戸崎衛が音楽サークルに、箱崎一が映画の道に進む
本と映画と音楽・・・それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。
全3章のうち各人の一人ひとりの話がそれぞれ各1章で、おのおの淡々と時間が
過ぎた記憶を描いただけの何もない物語。
あまりのもサラリとした著者の学生時代の思い出話で、読む人には何も残らないのが残念。
この作者は何冊か読んだが私的には当たり外れのブレが多い作家です。
これははずれ。

2009年1月河出書房新社 刊
コメント (2)
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