読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

幸田真音著「人工知能」

2020-07-26 | 幸田真音
サスペンス小説。自動運転車のテスト中の人身事故が連続して起きる。主人公は中学生の頃から悪さばかりしてきて、いつも行き当たりばったりの人生を送ってきた、新谷凱。彼が、唯一興味を持てたものは「人工知能」の世界だった。携帯電話会社でのアルバイトや電気機器メーカーでの企画開発などを経て、AIに携わる仕事に就いた凱。その会社で彼は、自動運転技術が搭載された試験中の車が、人を轢いたという事件の捜査に協力することになる。 日本の置かれた自動運転車を含めた AI研究の現状、一つのシステムに人工知能を組み込むことの現実的な困難さや、システムの安全性という観点での日本の脆弱性など普段あまり考えたことがなかったことを教えられたが、謎解きの部分ではイメージ・リコグニション(画像認識)に関わる人物の登場で展開が予想出来てしまった。
2019年3月PHP研究所刊
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幸田真音著「天 稟」

2020-07-10 | 幸田真音
山種証券創設者で山種美術館を作った山崎種二の人生を軸に、現代に通底する日本経済の危機を描いた、著者作家生活25年記念作品の歴史経済小説。明治41年(1908)、15歳で東京の回米問屋へ奉公に出た山崎種二はやがて金融街・兜町を代表するまでになる証券会社を設立し、「売りの山種」として経済界にその名を轟かせる存在になる。天性の相場観と経験を頼りに、日本の経済復興に尽くした男の人生の物語。関東大震災、二・二六事件を皮切りにした経済統制。太平洋戦争敗戦よっての経済は崩壊。国民生活に最悪の負担を強いた、戦後財政の実情が描かれていて興味深かった。戦後のインフレ・通貨切り替えなど財政破たんした日本経済を如何にして復興させたのか教訓にするべきことも多いと思った。種二が息子に金の使い方について言う「金というものは。使うときと使い方でこそ、使う人間の値打ちが決まる。」(P545)「天稟」とは天から授かった資質。生まれつき備わっているすぐれた才能。横山大観・河合玉堂、マッカーサー・若き日の池田隼人、福田赳夫・大平正芳など歴史上有名な人物も登場して楽しめた。
2020年3月KADOKAWA刊
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幸田真音著「エスケープゴート」

2016-06-24 | 幸田真音
知名度があるがため政権奪還を狙う明正党の「選挙の顔」に担がれ、民間人出身の金融大臣に就いた経済学者の三崎皓子。
政治に縁がなかった彼女が政治家に転身して権力、欲望、嫉妬が渦巻く永田町で待っているのは男たちの罠か、それとも・・・。
初の女性総理誕生なるか?
京都の選挙区からの立候補し当選・いきなり官房長官就任そして初の女性総理を目指す荒唐無稽気味の展開。
経済小説の著者らしく、リアルで詳細な政界内の人間関係や選挙活動、大臣としての問題解決手腕などが描かれていて
面白いのだが、素人同然の晧子が総理大臣を始めとした政界の波に飲まれていく中でめげずに活躍していくのはリアル感に欠ける。
出来過ぎの家族のサポートや認知症の母親の介護問題を抱えた姉との確執や、永田町の男尊女卑、
政界内の権力争いは突っ込み不足だし、昔の恋人らしいTV局の矢木沢との関係も中途半端だったのは残念。
現実の日本初の女性首相は女性議員の数から見るのまだまだの感じがしますが・・・。
2014年10月中央公論新社刊
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幸田真音著「ナナフシ」

2016-02-13 | 幸田真音
ファンドマネジャーとして活躍していた深尾真司は、2008年に起きた世界的な金融危機に見舞われ離婚・家族など全てを失い、
今はコンビニの雇われ店長として働いていた。
ある日コンビニで、彩弓と名乗る行き倒れの女を助ける。
トラブルの種を抱え辟易とする深尾だが、不思議な昆虫「ナナフシ」のような細い肢体と切なさを持つ彩弓に亡くなった自分の娘の姿を重ね、
彼女の面倒を見ようとする。
彩弓は将来を嘱望されたバイオリニストだったが、病を抱え、右手の神経を失おうとしていた。
「もう、目の前で大切な人を失いたくない」と自らの全てと引き換えにでも彩弓の命と右手を救おうとした深尾は、
高額な治療費を稼ぐためかつて憎しみさえも抱いた金融市場に、ふたたび身を委ねることを決意する。
人は何度でも蘇生する。ナナフシのように。」誇りを無くした男と、夢を失った少女。
愛情を注ぎ合う親子のような二人が、傷付きながらも再生していく様を描いた奇跡の人間ドラマの
はずだったがどうも設定の無理さが随所に目立ち入り込めなかったのが残念。
2015年3月文藝春秋刊
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幸田真音著「ランウェイ」

2012-02-10 | 幸田真音
「ランウェイ」とは、ファッションショーなどで、客席にせり出した通路状の舞台のこと。
ファッション業界を舞台に描かれた仕事と恋とのサクセスストーリー。
有名ファションブランドのバイヤーからセレクトショップのバイヤーにそひて自分のファッションブランドのプロデューサーへと。店のセールス・スタッフからバイヤーに抜擢された柏木真昼。
イタリアミラノに初めて先輩に同行しながら買い付けに行き確かな手応えを感じ帰国した。
さらなる飛躍を胸に2度目のミラノへ向かった彼女に、思いもよらぬ人生の選択肢が突き付けられる。
「洋服が好き! 情熱(パッション)は人生の新たな扉を開ける」
先輩バイヤー、元カレ、セレクト・ショップのやり手バイヤー、イタリア人の恋人、それぞれの思惑が交差、絡まって、主人公の運命は何処へ。
ファッション業界の内情が詳しく語られ面白かった。
著者が2004年から2011年まで7年かかってその時々の経済情勢の変化も背景にして書かれている点。
逆境やチャンスや出会いをものにしてのし上がっていく真昼の人生を応援しながら600ページ一気に読めました。
残念なのは真昼の人との幸運な出会いが業とらしいのと、ご都合主義的展開でリアル感が欠如は否めない。
ステップアップしていく為の人生の秘訣が詰まっています。

2011年9月 集英社刊
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幸田真音著「財務省の階段」

2012-02-04 | 幸田真音
著者初めての書いたという経済ホラー短編が6つ収録。
財務省で自殺を図った官僚が遺したノートには昭和初期の経済政策が綴られていた。
メモの謎を解こうと地下室へ向かった上司が見たものは、検証が許されなかったこの国の暗部だった表題作「財務省の階段」他。
代議士の秘書が見つけた「議事堂の穴」、日銀本店内の「日本銀行の壁」、メガバンク資金証券部の「金融市場の窓」、民放の女性キャスターの体験「ニュースの枠」、国会内政権与党の「幹事長室の扉」。
経済財政政策、マスコミに対する痛烈な皮肉を込めた小説。
財務省のほか、国会議事堂、日本銀行、マスコミ、金融市場を舞台に、日本経済の裏側に巣喰う魑魅魍魎の正体に迫る。
そんなに怖くないホラー小説というより都市伝説に近いかなぁ。

2011年11月角川書店刊
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幸田 真音著「舶来屋」

2011-06-11 | 幸田真音
エルメス、グッチをはじめ数々の高級品を初めて日本に紹介した「サンモトヤマ」創業者・茂登山長市郎。
戦後の闇市から出発し日本にブランド・ビジネスを確立した男、昭和の商人の半生記。主人公「茂里谷」が若い二人に語り聞かせながらストーリーが進む。
戦時下の兵隊で行った天津で出会った、西洋の一流品。
その圧倒的な輝きは、東京の焼け野原に戻っても長市郎の胸から去らなかった。
実話に基づいているのでその半生が波乱万丈で魅力的で面白くて飽きない。
偶然蠍に噛まれてこん睡状態に陥ったため全滅した部隊から離れて命拾いした太平洋戦争での経験、闇屋として大儲けしていく過程、何度押しかけてびくともしなかったグッチとの取引が始った瞬間、闇ドルでの大量の買付に目をつけられ、税関で逮捕されたこと、ショップ・イン・ショップの発想で商売、やがてメーカーの直接販売でグッチが、エルメスが返還したこと。
ブランドビジネスを育て上げるまでの痛快で心にしみる一代記です。
著者らしく戦後の経済史がやさしく学べるのもうれしい。
『失敗というのは、こっちがもう無理だとあきらめたときに本当の失敗になるんだよ。・・・こっちがあきらめてしまわなかったら、失敗にはならない。・・・途中ということだ。』(P248)
『人間、一度どん底を味わうと、本当に大切なものが見えてくる。周囲の人の懐の深さも、毎日の暮らしのありがたさもね。その気になれば案外我慢強いこともだ。反省はいくらでもしたらいい。失敗から学ぶことは、成功から学ぶことよりずっと多いからね。・・・だけど、公開はしなくてもいい。後悔なんか、してもなんにも生まないから』(P290)

2009年7月 新潮社刊
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幸田真音著「傷」

2009-11-16 | 幸田真音
TVドラマ化されたこともある原作。
芹沢は、NY出張の折り高校時代の友人明石と卒業以来ばったり遭い、
次の日夜中その友人明石からホテルに助けを求めるFAXが・・・しかし会うこと躊躇う内に帰国。
そして、友人の自殺の報道に自責の念にとらわれた芹沢Vはその死に疑惑を持つ。 友人のNYでの生活にス-と呼ばれる女の影が・・・・
エピロ-グで「傷」の意味が明らかにされる。
「傷だらけになりながらそれでも追い求め続けた答えとは・・・」
「自分の傷を自分でディスククロ-ズすることで前に進 もうとしている。」
経済小説且つミステリ-小説です。
「問題ばかりのシステムかもしれない」と日本の今の経済現状に鋭くせまり、
「矛盾だらけと解かっていてもなんともならない・・・ しかし、この国で生きていかなくてはならない。」のだからと作者の思いが・・・
1998年文藝春秋刊
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幸田真音 著「周極星 」

2009-03-12 | 幸田真音
周極星とはある観測地点から見た場合、「極」のまわりを回り、一日中沈まない
恒星。
中国というひとつの「極」の引力に引き寄せられるように集った人間たちの
熱いドラマです。
リーマンショック以前北京五輪や、上海万博を控えて経済発展・膨張する
巨大市場・中国の先端を行く混沌の濁流渦巻く新天地上海を舞台にして展開される。
若き26歳の日本人ファンドマネージャー織田一樹、老獪な昭和五洋銀行の
支店長倉津謙介、日本人を父に持つ美貌の中国系投資会社社長
胡夏淋のそれぞれの思惑が運命が一点で交差したときに・・・
日本人と中国人の間でアイデンティティが揺れ動く若者二人を中心とした
欲望渦巻く中国上海を舞台に描かれた経済小説。
今の中国の一端を開間見るつもりで楽しめます。
2006年  中央公論新社 刊
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幸田真音著「CC: カーボンコピー」

2009-01-24 | 幸田真音
「cc:」とは本来英文タイプで文面を打つとき写しを発送する相手の数だけカーボン・ペーパーを挟んでオニオン・スキンとも呼ばれる半透明の洋紙と一緒にタイプを打ったことからきているが今は電子メールでこの覧に記入したアドレスに同じ内容のメールが送信されること。本来の受信者には同内容のメールが転送されたことが通知される機能の一つことをいう。
主人公は広告代理店で働く、バツイチ山里香純41歳。年下の妻帯の恋人である生命保険会社の広報担当、広崎研吾を助けるため保険金不払い問題に対処する広告プロジェクトを手がけお詫び広告のCMを作成して放送するが、その結果思わぬ波紋が社会に広がり、私生活にも、勤める広告代理店の会社の社長であり元夫の男性にも押し寄せ・・・。
この3人の三角関係に、仕事上のかけひきが絡んで恋愛兼経済小説になっている。
『メールを多用する時代になったことと、収益効率を口にしすぎた結果、大事ななにかを切り捨てさせ、息苦しさばかり強要していたかもしれない。』
『メールのやり取りだけでことを済ませたり、むやみに「CC:」の機能使って、報告の作業や時間を節約したり、・・・人間同士のコミニケーションを削り、粗末にしてきたのは・・・』と本当の意思疎通の大切さを警鐘する。
2008年11月刊 中央公論新社刊

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幸田真音著「 投資アドバイザ-有利子」

2008-12-17 | 幸田真音
月刊雑誌「投資相談」に連載された「ライク・ア・ヴァ-ジン」を改題。
主人公の財前有利子は中堅の証券会社ふたば証券に勤める個人投資家向けのアドバイザー。
「私が 担当するからには、絶対損はさせたくない」という信念をもち、
時々顧客と喧嘩になることもあるという一本気な女性だ。
そんな有利子が出会ったさまざまな人間たちには2500万円を1週間で倍にしてほしいと訴える老人(第1章「プット・オプション」)、退職金を投機につぎ込み破滅していくリストラ男(第2章「デイ・トレーダー」)、「お客なんてみんな馬鹿」と豪語する外資系証券会社の女性管理職(第3章「ヘッドハンティング」)。
そんな彼らの悲喜劇を横軸に、そして敏腕トレーダー坂上との恋の行方を絡めながら、物語が進行につれて明らかとなっていく有利子の意外な過去を縦軸にして物語はスピーディーに展開していく。
経済小説としてはもとより、独身女性の揺れる心の内を描いたものとしても楽しめる。
巻頭から、夜間オフィスでの恋人との情事場面からはじまる展開に・・・・。
誰でも気軽に読める経済小説です。
そして自然に金融やマ-ケット市場の世界を覗き見るのことが出来ます。
未曾有の大不況の昨今もっと経済を勉強する必要があるかもしれません。
2002年 角川書店刊 角川文庫

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幸田真音著「 eの悲劇 」

2008-12-16 | 幸田真音
「e」とはeコマース(電子商取引)に代表される新しい経済を象徴するように、
e からはじまる文字が配されたビジネスのこと。
外資系の証券会社で大きな損失を出した失敗がもとで会社を辞め妻子とも
別れた50過ぎの警備保障会社のガードマン「篠山孝男」の物語。
4篇の物語がそれぞれ経済小説ともサスペンス風に書かれており
当時大騒ぎして今では懐かしい Y2K問題を
からめて扱った「2000年のシグナル」 など面白い。
昔、NHKのTVドラマ 「男たちの旅路?」のようで哀愁漂うガードマンがいい。
2001年 講談社刊


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幸田真音著「 ニューヨーク・ウーマン・ストリー」

2008-12-05 | 幸田真音
陽が落ちると、ミッド・タウンにはもうひとつの世界が始まる。
すきのないビジネス・スーツから柔らかいドレスに着替えて。
マンハッタンで働き、そして輝きつづけたいと願う女性たちの物語。
経済小説の中にサスペンスとニューヨークの雰囲気を織り交ぜながら展開する
娯楽作品です。
主人公は、作者自身のことを書いたのかと思われるような女性作家が
N.Yに取材旅行中を舞台に事件に巻き込まれた友人夫婦を助ける為に活躍する物語。
1997年 浩気社 刊
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幸田真音 著「藍色のベンチャー 」

2008-10-16 | 幸田真音
激動の幕末期に、歴史に翻弄されて、短くも数奇な運命をたどった幻の窯、
湖東焼を起こした絹屋半兵衛、留津夫婦の物語。
彦根藩藩主井伊直弼の生涯とクロスオーバーさせながら、古手呉服商から
磁器焼き物に魅せられて窯を築きやがて、釜が藩に召し上げられてからも、
湖東焼の技術向上に心砕いた感動の近江商人の一代記。
2003年 新潮社刊 著者初の時代劇小説。
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幸田真音著「日銀券」

2008-10-04 | 幸田真音
日銀の政策委員・中井昭夫はアフリカ旅行中に美貌の女性と
出会い一夜を過すが、2ヶ月後再会した時はなんと彼女・芦川笙子は
新任してきた日銀副総裁だった。
ドル・ユーロの間で衰弱する円。
果てしなく続くゼロ金利政策。
アメリカ依存の日本に冷水を浴びせる痛快経済小説。
2004年新潮社

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