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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

安萬純一著「不可解事件請負人火垂柚葉」

2025-07-31 | あ行
助かる寸前で無言のまま自らから墜落死した男。充分な食料がありながら一人きりで脱水死した麻薬取締官。連続する不可解な事件に挑む謎めいた女探偵。探偵火垂柚葉と助手の油杵島はある日、団地の10階に人がぶら下がっているという情報を得て駆けつけるが不可解な表情を浮かべた男は近づいた油杵島たちの目前で自ら転落死してしまう。・・・刑事でもない探偵が警察官と一緒に行動したり、謎の依頼人甲羅魏警部など設定がかなり無茶苦茶だし、火垂と実妹菊井刑事の家族関係の話も絡んで話が錯綜して展開。やたら人が出て来るが個々のキャラ設定不足、人間関係がややこしくイマイチ不明。謎ばかり残る結末にスッキリ読了出来ず。付録に 「本格ミステリーを書きたい人のためのトリック作成法!」がついてるが作家になる気がない人には小説のアイデアが生まれる過程の参考程度になるかも。
2025年5月南雲堂刊
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大倉崇裕著「犬が知っている」

2025-06-12 | あ行
警察病院のファァシリティドックの活躍を描く5つの連作推理小説。
癒やしのゴールデン・リトリバーのファシリティー犬「ピーボ」とわけあり警察官笠間巡査部長が知られざる重大事件を鮮やかに解決する。
ピーボは警察病院の小児病棟に常勤して患者の治療計画にも介入するのだが、実は密命を帯びていて。特別病棟に入院する受刑者と接し、彼らから事件の秘密や真犯人の情報などを聞き出すこと。死を前にした犯罪者はピーボに癒やされ、語り出すのだった。
コンビを組むハンドラーで総務課勤務の笠門巡査部長は捜査を開始する。警察機関が犬を自白に使っている、というちょっと怖い設定だが面白い。
犬好き読者にはたまらないのでは。犬は賢い。
2024年1月双葉社刊
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逸木裕著「世界の終わりのためのミステリ」

2025-04-22 | あ行
近未来FS小説。人間の意識を半永久的に持続可能な人工身体にコピーしたヒューマノイド=〈カティス〉が生まれた近未来。「カティス」の女性・ミチが目覚めると、世界から人類は消失していた。搭載された〈安全機構〉により自殺はできず、誰もいない世界で孤独な時間を生き続けることに絶望していた彼女は、少年の姿をした「カティス」のアミと出会う。「人類消失の謎」の解決を目指すと語る彼に誘われ、ミチは失われた人間の頃の記憶と永遠に続く時間を生き続ける意味を探す旅を始める・・・。人間が生き続ける意味を問う終末旅行ミステリー。主人公が彷徨の最中に出会う、同じ世界に存在する同類の隣人たち。彼らが見せる微かな違和感。その謎=他者に踏み込む恐ろしさや苦さに冷や汗が伝うと同時に、謎自体の不可思議さに強く引き込まれます。人間が出て来ず、ヒューマノイドしか出て来ないのに人間とは何か。淡々として閉塞的で、終末世界が持つどことないノスタルジー。生きることと謎との繋がりを,改めて思い知ることになり他者との交流と謎解きの交差から生まれる鮮やかな感情の奔流が、ほっとするような温かさが滲み出す、しっとりとしたミステリー小説でした。
2023年6月星海社刊

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浅田次郎著「完本 神坐す山の物語」

2025-04-16 | あ行
同名双葉文庫2017年版7編に「赤い絆」「お狐様の話」と書き下ろし「山揺らぐ」「長いあとがき あるいは神上りましし諸人の話」の11篇の短編集。奥多摩の御嶽山にある神官屋敷。少年だった著者が聞いた、母方の実家である奥多摩の神社で伯母の怪談めいた夜語り。切なさにほろりと涙が出る連作短編集。学生と女郎の悲しき心中話・・・「赤い絆」。霊山として知られる御嶽山の験力に頼って連れて来られたフランス人形のような少女には恐ろしきお狐が憑いていて・・・「お狐様の話」。関東大震災が起きた、御嶽山にも不穏な風評被害・・・「山揺らぐ」。御岳山全体の神的な世界が日常の出来事として描かれる。いかにも本当にありそうな、ファンタジーというにはリアル。言葉でなく心を通わせていた神官の伯父が死んだ時に別れを告げに現れる・・・「神上りまし伯父」。失踪した部下を捜索しに宿坊にきた砲兵団は実は戦場で一人を除いて全滅していた・・・「兵隊宿」。肝試しの時に励ましてくれた少年は幼くして亡くなった伯父だった・・・「見知らぬ少年」。熊野行くという山伏が百日行の果てに・・・「聖」。老狐と春子の結末が優しく切ない・・・「天井裏の春子」。破れた三度笠に尻端折りの客には狐憑きの・・・「宵宮の客」。伊勢湾台風の夜に、カムロ伯母のこと・・・「天狗の嫁」。神々、山伏、幽霊、天狗、座敷わらし、神隠し、それらは怖いけれど、思わず惹きこまれるものばかりの物語でした。 2024年6月双葉社刊  
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逸木裕著「四重奏」

2025-04-13 | あ行
ミステリー音楽小説。チェリストの黛由佳が自宅で放火事件に巻き込まれて死んだ。かつて音大時代に由佳の自由奔放な演奏に魅了され、彼女への思いを秘めていたチェリストの坂下英紀は、火神の異名をもつ孤高のチェリスト鵜崎顕に傾倒し、「鵜崎四重奏団」で活動していた彼女の突然の死にショックを受ける。演奏家としての自分の才能に自信をなくしている英紀にとって、音楽は求めれば求めるほど遠ざかっていく世界だ。同じように苦しんでいた由佳の死に不審を感じた英紀は、「鵜崎四重奏団」のオーディションを受け、クラシックの演奏に独特の解釈を持つ鵜崎に近づき、由佳の死の真相を知ろうとする。音楽に携わる人間たちの夢と才能と挫折、演奏家たちの秘密に迫る。「人は人を本当に理解できるのか?」「演奏とは何なのか?」「評論家の評価は本当に正しいのか?」「錯覚なのではないか?」「音楽とは錯覚と模倣、演技力だと」持論を展開する鵜崎に反感と同時に共感しつつまた鵜崎の解釈に爽快感を感じる坂下。しかし同時に演奏する立場から見ると、自分を否定されたような気がしてしまうのだ。音大を出て、音楽だけでは食っていけない多くの演奏家たちの一人として、漫画喫茶でバイトしながらチェロを細々と続けつつ由佳の死の真相を知るため、鵜崎に近づく。音楽の専門的な話と過去にさかのぼる展開に読み難さを感じたが、音楽家が芸術性と現実の生活との間で苦悩する様子が現実的で理解できる。音楽をめぐる人間ドラマとして読み応えがあった。異常に均一な演奏でカリスマ的な人気を持つ鵜崎が異色。クラシックという特殊な世界がミステリー性を引き立てる。また、聴衆と演者間の「錯覚」という心理的齟齬をテーマに展開されているのも面白いしチェリストでありながら探偵もどきの行動をするも面白かった。
「言葉は不自由なものだろ。そんなもので書かれた小説なんて、不完全にしかなりえない。何度も何度も繰り返し読まないと、何が書いてあるかなんて判らんのよ。音楽も」(P282)
2023年12月光文社刊


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逸木裕著「風を彩る怪物」 

2025-04-01 | あ行
オルガンビルダーという特殊な仕事、それに関わる周囲の人々の音楽小説。主人公は19歳の音大志望のフルート奏者名波陽菜と同じ19歳の権威あるパイプオルガン職人芦原幹の娘芦原朋子。困難を前にして目標を見失いかけていた2人が、必死でオルガン作りに向き合おうとするなかで、刺激し合い、確固とした進むべき道を見出していきます。二人がパイプオルガン制作で様々な人と出会い、自らの進む道を見つけていく。音大受験に失敗した陽菜は自信を取り戻すため、姉の亜希の住む自然豊かな田舎・奥瀬見に来ていた。フルートの練習中に出会ったのは、オルガン制作者の芦原幹・朋子親子。やがて朋子とパイプオルガンの音づくりを手伝うことに。だが、次第にオルガンに惹かれた陽菜はこのままフルートを続けるべきか迷ってしまう。中途半端な姿に朋子は苛立ちを募らせ、二人は衝突を繰り返す。そんな中、朋子に思いもよらぬ困難が押し寄せる。朋子の母はオルガン奏者だったが、オルガンの演奏中にオルガンの下敷きになって死んだのだ。そして、父の幹も亡くなった。それでも朋子は絶望に打ちひしがれながら、オルガン制作を続けるか葛藤し、父と一緒に作っていたオルガンを完成させる決心をする。やがて朋子は音の「怪物」を探しに風雨の森の中に入っていくのだが・・・テーマは一貫して「音」。自然界に存在する音の世界と、パイプオルガンという人工物の奏でる音の織りなすドラマ。ラスト向け一挙に伏線が回収される様は、ミステリーのごとくとても爽快。目標を見失いかけていた2人が、必死でオルガン作りに向き合おうとするなかで、刺激し合い、確固とした進むべき道を見出していきますが、それを邪魔する出来事も起き果たしてオルガンを完成させることはできるのか。クラシュック音楽や音の話は難しいが感動の展開で一気読みでした。
2022年6月祥伝社刊 
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逸木裕著「祝祭の子」

2025-01-18 | あ行
2014年山梨県のある村にあった宗教団体コミューンで起きた大量虐殺事件。首謀したのは石黒望。彼女は幼い頃から軍事教練で鍛え洗脳してきた5人の少年少女を33人の殺人の実行役としたのだ。驚く事件に世間は震撼したが5人は年齢故に罰せられることがなかった。殺人を犯し生き残った子供は「生存者」と呼ばれ、その存在は多くの議論を呼んだ。時が経ち、生存者の一人わかばは警察に唯一逃亡していた石黒の遺体が発見されたと聞かされるが、その後何者かに自分も襲われる。共に暮らした仲間と14年目に再会するが彼らもまた被害に遭っていた。そんな過去と向き合いながら、襲い掛かる謎の刺客と対峙するサスペンス。大人になり、一般社会でひっそりと暮らしていた彼ら「生存者」の日常が突然崩されていく。SNSで身元をバラされ、次々とナイフで襲撃される。手口から相手は素人ではなさそうだ。敵は誰なのか。彼ら5人は生き残れるのか。主犯者の動機も、過去の契機も、一応書かれてはいるが納得できるものではないし、荒唐無稽な展開は不満だが、だからといって、まるで面白くないことはなくアクションミステリーゲームに引き込まれた如く、アクションシーンを想像しつつ、バイオレンスの映画の如く500頁楽しめた。後半小さなドンデン返しがセットされているが後味の爽快感は皆無。
「正義の本質とは、同質性の追求だ。正義によって染め上げられた社会では、異質なものは生き残ることは出来ない、正義を掲げる集団は、自分たちを同じ色に染めようとする。<お前は本当に正義なのか>と問い、答えられなければ排除されるだろう。すでに内ゲバがはじまっているのは、その証左だ。人は、そんなことでは結びつけない。・・・支配・被支配によってのみ、人は結び付けられるかも」(P100)
2022年8月双葉社刊




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逸木裕著「五つの季節に探偵は」

2024-12-31 | あ行
2022年第75回日本推理作家協会賞〈短編部門〉受賞作。 「人の本性を暴かずにはいられない」探偵が出会った、魅惑的な5つの謎。高校二年生の榊原みどりは、同級生から「担任の弱みを握ってほしい」と依頼される。担任を尾行したみどりはやがて、隠された“人の本性”を見ることに喜びを覚えて・・・「イミテーション・ガールズ」。探偵事務所に就職したみどりは、旅先である女性から〈指揮者〉と〈ピアノ売り〉の逸話を聞かされる。そこに贖罪の意識を感じ取ったみどりは、彼女の話に含まれた秘密に気づいてしまう・・・「スケーターズ・ワルツ」。香道の教室で起きた龍涎香をめぐる盗難事件・・・・「龍の残り香」。リベンジポルノの被害者妹の兄からの依頼で別れた恋人の行方を探す・・・「ゴーストの雫」他に「開錠の音が」。「世間など関係なく、自分のルールを作ってそれに従って生きている人間」が最強だと思っている主人公は、必然的にそのような強い人間でもあるため、探偵活動を生きがいとしてライフワークとしている。高校・大学・探偵新人時代・女性探偵課の課長として16年間のエピソードが描かれている。そこまで暴かなくてもというシーンもあるが小さな意外な謎解きが心地好い。
2022年1月KADOKAWA刊   


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逸木裕著「彼女が探偵でなければ」

2024-12-28 | あ行
森田みどりは、高校時代に探偵の真似事をして以来、人の「本性」を見抜きたくなるという性格で謎事に執着して生きてきた。気づけば二児の母となり、父が経営する探偵社サカキ・エージェンシーでは女性探偵課で部下を育てる立場に。時計職人の父を亡くした高校生・・・「時の子」、千里眼を持つという高校生・・・「縞馬のコード」、父を殺す計画をノートに綴る中学生の少年・・・「陸橋の向こう側」。クルド人問題・・・「太陽は引き裂かれて」、陶芸作家だった母と娘の物語・・・「探偵の子」。小学生、中学生、男子高校生の行動から生まれた疑問を中心に物語が進行。どの子供も、かなり一般的ではない考えを持ち普通ではない行動をする。そして、その理由・謎をみどりがときあかしていく。子どもたちをめぐる謎にのめり込むうちに彼女は、真実に囚われて人を傷つけてきた自らの探偵人生と向き合っていくことに。痛切で美しい短編全5編。安易に結論ありきで調査するのではなく、自分が納得するまで調べ上げる。結果、本当の真実が見えてくるが、それはその真実は知りたくなかったことであっても。前作「五つの季節に探偵は」の続編にあたるらしい。前作より4年たった2022年夏~2024年夏の出来事。未読の為早速図書館で探してみます。2024年9月角川書店刊



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麻生幾著「ピースキーパー SST海上保安庁特殊警備隊」

2024-12-08 | あ行
四方を海囲まれた日本。日本の危機は海からやって来る。今まで、海上保安庁が機密保持のために長らく秘匿してきた実在の隠密部隊スペシャルフォース「SST」の活躍を描いた海洋アクション小説。沖ノ鳥島沖で、中国の密猟船が突然自爆して海に沈む。さらに大量破壊兵器の調達に関わる男がクルーザーから謎の失踪を遂げ、数百名の乗客を載せたカーフェリーの爆破予告と、やがて豪華客船がシージャックされた報告が届く。この一連の出来事が一つに繋がった時、・・・。未曾有の危機に立ち向かう海上保安庁の特殊部隊「SST」を待ち受けていたのは、想像を絶する国際的陰謀だった。この国の取り巻く国際情勢は中国、ロシア、朝鮮、台湾、米軍と複雑化、開戦の大義を与えない為軍隊である自衛隊が対応できない事案を国交省管轄の海保が担当する設定は納得が行く設定ではあるが。特殊な言葉が飛び交う軍事作戦さながらの展開は登場人物の人物描写が中途半端で感情移入できず大きな感動にはなりませんでした。
「軍はピースキーパーにはなり得ません。それどころか戦争を導く。ゆえに我々、ピースキーパーたるSSTしかありえません」(P235)
2024年9月幻冬舎刊


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五十嵐貴久著「鋼の絆 ギンイチ消防士神谷夏美」

2024-11-08 | あ行
パニック小説『炎の塔』『波濤の城』『命の砦』につづく神谷夏美シリーズ第4弾。夏美のギンイチ移動の前日談。近年予想される首都直下地震に備えて設立された銀座第一消防署。日本中の精鋭を揃える最強の消防軍団だ。今回、新隊員を選抜するため、全国からエース級の若手30名が3カ月間の研修に招集された。メンバーのうち女性はふたり。そのひとりが神谷夏美だった。体力も技能も劣る夏美がなぜ選ばれたのか? 脱落率は91%。一歩間違えれば、自分の命だけでなく仲間の命も奪いかねない極限状態の中、鬼教官の容赦ない訓練についていけない夏美は、研修生たちに一刻も早く辞めろと迫られる。課せられがた最終設問「海で母親と恋人とボートに乗っている、突然海が荒れ、二人が同時にボートから落ちた、どちらか一人しか救えない、お前ならどうする」の質問にどう答えるのが正解か?そんな中、大規模なマンション火災が起こり夏美たちにも出動命令が・・・
結末結果が解っている展開だったが落ちこぼれの夏美どうやってクリアーしたのか、中々面白く読めた。
2023年11月祥伝社刊
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数多久遠著「有事 台湾海峡」

2024-10-07 | あ行
元航空自衛隊員の著者が書いた超リアル軍事サスペンス。 大陸に接した台湾領=金門・馬祖諸島(台湾有事の際の最初に狙われる地区)―その時日本は、重要影響事態から⇒存立危機事態⇒武力攻撃事態まで踏み切れるか。新安保法制下、戦火は回避できるのか。
202X年春、中国国家主席が「金門・馬祖は中国の安全保障上の脅威」と発言、対岸に戦力を集結させ始めた――!防衛担当内閣官房参与の蓮田は、首相から衆院の解散について意見を求められた。アメリカ大統領選の今年、解散が重なれば、日米の政治的空白を突いて、中国が軍事行動に出る可能性を懸念するも、首相は解散を断行。はたして中国はそれを好機と動き出したのだ。大陸に最短で数キロに接する金門・馬祖諸島は、第二次大戦後、台湾領として死守され、以降、複数回の交戦を経て、現在は緊張緩和が図られていた。だが、邦人救出に向かった空自機と中国軍戦闘機との接触事案が発生する。
 首相と蓮田らは、新たに整備された平和安全法制に基づき、重要影響事態、存立危機事態、そして武力攻撃事態の対応を協議。事態は刻々と緊迫の度を増し、一触即発の危機が迫っていた。・・・群像ドラマだが、人間ドラマ不在の展開で航空自衛隊の戦略が中心は難しかった。国内の在日スパイの中国人たちが送電線切断や列車脱線などのインフラ攻撃やデモ等国内混乱を仕掛けるシーンもあるがリアル感がなかった。
2024年8月祥伝社刊 
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麻生幾著「リアル 日本有事」

2024-09-01 | あ行
「台湾有事の時、最初に狙われるのは沖縄だ」〝おそるべき日本の危機〟を描く軍事小説。日本有事のリアルなストーリー。中国人民解放軍が台湾周辺の海域で今までにない規模で演習を開始した。台湾侵攻が急迫していると分析した日本政府は、〝台湾戦争〟の勃発後に日本が巻き込まれた場合を想定し、アメリカ軍の作戦をいかに支援していくべきかの検討を開始した。その事前準備として石垣島と与那国島への陸上自衛隊の事前配置を急ぐ決断をした矢先日本を嘲笑うかのように、中国特殊部隊は宮古島をはじめとする先島諸島に徐々に浸透、破壊工作を始めようと・・・。やがて台湾有事の予兆に対応しようとする日本だったが、様々な想いが錯綜する中、日本はリアル(戦争)に突入することになる。政治と自衛隊の覚悟、そして絶望的な現場に投入される兵士。前半は、やや政治的・自衛隊の制服系の話が先行するのだが、外人で構成された中国傭兵部隊の上陸、中ごろあたりから日本の恐ろしくもお寒い現実が明らかになっていく。数千の小型ドローンを使った攻撃,海底通信網切断、偽情報サイバー情報攻撃があり。そして最終盤は涙なくしては読めない白兵戦、空中戦、海中戦、情報戦・・・。完全な群像劇で主人公不在の感情移入しにくい展開だったが在り得る現実と頼りにならない在日米軍、有事には姿を現し攪乱するだろう人民解放軍の侵入スパイたち、北方四島に集結する露軍。露・ウクライナの戦争のニュースを見るにつけ一般人は何も出来そうもない現実に恐怖を覚えた。
2024年3月角川春樹事務所刊


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五十嵐貴久著「マーダーハウス」

2024-08-01 | あ行
サイコミステリー。大学合格を機に住居を探していた藤崎理佐は、偶然シェアハウス「サニーハウス鎌倉」を見つける。そこは少しバス停から遠いがセレブの別荘のような豪華な外見と設備、格安な家賃と好条件ばかり。すぐに住むことを決め、暮らしはじめ充実した日々を送っていたが、同居人が行方不明になったり立て続けに事故死する。前半はシェアハウスの素晴らしさや、人間関係が難しさや気まずさ、元々人間関係が得意ではない人には合わないという欠点など、そんなシェアハウス独特の日常の環境と人間ドラマが展開されるのだが、徐々の不協和音からの戦慄と恐怖が!不安を抱いた理佐は高校時代の友人に相談するが・・・。プロローグで犯行現場と犯人が登場するので、誰かが犯人だと推理しながら読み進めたが途中検討を付けたがそして誰もいなくなった展開で、シェアハウスという設定や人間ドラマが、全て真相に繋がっていたと予想外の結末のバットエンド。
2019年3月実業本社刊


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五十嵐貴久著「スカーレット・レター」

2024-07-20 | あ行
ホラーミステリー。麻視出版の文芸編集者の春川澄香は、スランプに陥った新人作家の山科和美と打ち合わせのために作家の実家岩手県に行くことから物語は始まります。新幹線、岩手銀嶺鉄道、車と半日かけてやっとたどり着き、和美の実家の温泉宿の部屋で一息ついていると赤い封筒が目に入る。中に入っていた便箋を読むと歓迎の言葉が綴られていた。
その時、窓に何かがぶつかる音が。おそるおそる確認してみるとカラスがぶつかり、血を流していた。それをきっかけとするように老人の幻影が現れ、何かを訴えようとしてきたのだ。
 やがて、不思議な現象、和美の友人の不審死、ベストセラー作家の失踪等が・・・。全ての真相が暴かれた時、澄香が町を訪れた本当の理由が明らかになる展開。作家と編集者の関係がありきたり、起こる気味の悪い現象も、登場人物もリアル感がなく興味が持てないのは、後で解かることだが主人公と和美の家族が全員異能・異常者のせいだった。家族写真の日付2003年なのに銀嶺鉄道は2014年開業だし時代のつじつまが合わないのもよくわからないし、閉ざされた田舎の異常な宗教・習慣、死者と形だけ婚姻させる冥婚、死者の口寄せイタコなどオカルチックな展開についていけませんでした。
2023年3月実業之日本社刊
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