メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『画本厄除け詩集』(パロル舎)

2013-07-08 10:17:43 | 
『画本厄除け詩集』(パロル舎)
井伏鱒二/著 金井田英津子/画

金井田英津子さん×パロル舎による日本文学のシリーズはこれで全部かな?(もっと出して欲しかった
夏目漱石『夢十夜』
萩原朔太郎『猫町』
内田百間『冥途』

詩集ってことで、毎ページに詩にぴったりな金井田さん独特の昭和世界が広がっていて、これまたうっとりする
旧仮名づかいにフリガナが振ってないものも多くて、想像力逞しく読むと頭使うねv

 


【内容抜粋メモ】

「石地蔵」

風は冷たくて
もうせんから降りだした
大つぶな霰は ぱらぱらと
三角畑のだいこんの葉に降りそそぎ
そこの畦みちに立つ石地蔵は
悲しげに目をとぢ掌をひろげ
家を追い出された子供みたいだ
(よほど寒さうぢやないか)

お前は幾つぶもの霰を掌に受け
お前の耳たぶは凍傷(しもやけ)だらけだ
霰は ぱらぱらと
お前のおでこや肩に散り
お前の一張羅のよだれかけは
もうすつかり濡れてるよ


(ウチの近所にもお地蔵さんが立っていて、冬になると誰かがマフラーを首に巻いてあげている
 いつでも、なにかしらお供え物がしてあるし、立ち止まって拝む姿もたびたび見かける。
 そんなわたしも、前を通る時はいつも挨拶を(心の中で)している。
 あのお地蔵さんを思い浮かべた。


  


「寒夜母を思ふ」

(中略)

母者は性来ぐちつぽい
私を横着者だと申さるる
私に山をば愛せと申さるる
土地をば愛せと申さるる

(中略)

祖先を崇めよと申さるる
母者は性来のしわんばう
私に積立貯金せよと申さるる
お祖師様を拝めと申さるる
悲しいかなや母者びと


(昔から母親ってこんなもんなんだなあ


 


中盤は漢詩の訳詩。昔の文化人は本当にインテリだな。

ラストには、この本のタイトルの“厄除け”の意味が分かる詩がある。


「冬」~「拾遺抄より」
昔の人が云ふことに
詩を書けば風邪を引かぬ
僕はそれを妄信したい

(中略)

今年の寒さは格別だ
寒さが実力を持っている
僕は風邪を引きたくない
おまじなひには詩を書くことだ


  


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