メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

岡本太郎@アートシーン

2020-09-19 16:16:53 | アート&イベント
「作家別」カテゴリー内「岡本太郎」に追加します



川崎市岡本太郎美術館









1996年に亡くなった岡本は、所蔵していた作品のほとんどを生まれ育った川崎市に寄贈
美術館には彼の作品が約2000点所蔵されています

川崎市岡本太郎美術館












しかしコロナの影響で緊急事態宣言が出された4月~5月
美術館は閉館を余儀なくされました

岡本作品が今の時代に果たす意味は何なのか
学芸員の大杉さんは深く考えたと言います





大杉さん:
今回のコロナの件で言えば
まさにこの時に我々が知るべき作品であり、言葉がたくさんあるんじゃないか
それは今だからこそ美術館は伝えなければいけない









(太郎さんならコロナ自体「馬鹿馬鹿しい」と一刀両断してくれそう


岡本太郎の美術館なんだから
ここで閉めたら名が廃れるんじゃないか

岡本太郎だから最後の最後まで開館して
多くの人にいろんなメッセージを残すべきじゃないかという話もしてたんですけれども
閉館しなきゃいけないというジレンマですよね

誰もいない展示室の空間を見ていると
なんとかこれを紹介できないだろうかということは考えていた


美術館はインターネット上にバーチャルリアリティ空間を構築
岡本太郎の作品を広く世界に向けて公開することにしました

(これは見なきゃ
 太陽の塔の中もこうして見せてくれればいいのになあ







大杉さん:
人間の心の支えと言いますか
これを絶えず保ってくれるのは芸術の力だと思います

コロナで閉館しなきゃいけないっていうのもつらかったけれども
VR を取り入れて美術館の空間を皆さんにネット上で見てもらうという
新しいきっかけに巡り会えたかなと思っています


かつて岡本のアトリエだった東京青山にある岡本太郎記念館










岡本太郎記念館「生命の樹」展@青山


緊急事態宣言を受けた取り組みはここでも行われていました
閉館中には企画展で展示予定だった岡本の作品を Twitter で発信







(それは知らなかった!
 これからは美術館も変わらなきゃね
 シェアする時代


岡本芸術に対する思いも紹介されています

「黒い太陽」
芸術は人間の生命にとって欠くことのできない絶対的な必要物





「クリマ」





岡本太郎は芸術というのは何か特別なものではない
我々の身近に存在しているもの
絶えず共同しているものが本当の芸術だと



「犬」







「こどもの樹」





(一つ一つのユニークな顔を見ていると思わず笑顔がこぼれる
 カラフルで大胆な色使いもエネルギーがもらえる



「呼ぶ 赤い手、青い手」
岡本は大衆が身近に感じられるような作品を作り続けました









「天に舞う」






「ノン」







彼の思想はインターネット上からパブリックアートまで
私たちの身の回りで息づいているのです


岡本は漫画家の父、小説家の母のもと川崎に生まれ育ちました
19歳の頃パリに移り住み、そこでピカソなどに傾倒して前衛芸術の道を進んでいきます






「傷ましき腕」







しかし第二次世界大戦が始まり、パリはナチスドイツに占領されます
日本に戻って岡本も戦争の渦に飲み込まれていきます

(この兵隊姿の写真は見たことがない
 太郎さんにとって戦争ほど不条理なものはなかったろうな










中国戦線と駆り出され、4年間の軍隊生活を経験
戦争末期、アメリカ軍は広島と長崎に原爆を投下
このことを後の作品に強い影響を及ぼすことになります






岡本が感じ取った戦争の実像がモチーフとして色濃く表れている「明日の神話」
辛い時代を乗り越えた先に輝く明るい未来を描く壮大な絵巻物です






大杉さん:
最初に見てもらいたいのは絵の右側なんです
右側の下には北京環礁の水爆実験で被爆した船がある






その上には広島、長崎に落とされた原爆のキノコ雲が描かれているんです
これは原水爆の悲劇なんです

そして真ん中にあるのが燃え盛る骸骨






目を左側に向けると、本当に幸せに憩う人間が
頬杖をついて語り合っている絵が描かれているんです






つまりあの絵では、原水爆の悲劇を
生の力が乗り越えて社会というものを作ったんだよ
これを岡本はメッセージとして伝えたかった


岡本はこの絵を元にオリンピックを控えたメキシコのホテルに巨大な壁画を作りました














メキシコの人にとって骸骨というのは
死の象徴であると同時に生の象徴でもあるんです

死が生に変わるエネルギーというのは交渉の力、笑える力
それを象徴してるのがあの燃え盛る骸骨なんです
骸骨がバーっと爆発している


メキシコで作られた巨大壁画は、今、東京渋谷の駅構内に展示されている





(戻ってきてよかったけれども
 岡本太郎の「明日の神話」
 そしてこの物語を知っている人
 目に留める人はどれくらいいるだろうか?
 みんな忙しいんだ


横幅30m
通勤や通学で駅を利用する多くの人が目にします







岡本:
僕がなぜ壁画を作りたいかと言うと
一般大衆に見られるもんだと

モニュメントもそうだけれども
びた一文払わなくても
まるで自分の持っているもの
自分のものであるかのように気楽に見られる
自分が見てやってるんだっていう喜びを感じながら一体化する良さがある


大杉さん:
岡本太郎は、あの悲劇をけして過去のものにしてはいけない
あれがあったから、乗り越えたから今の社会があるんだ
そういう意味で、今だからこそ皆さんに見てもらいたい作品だと思っている



太陽の塔
岡本が「明日の神話」と同時期に手掛けていたもの
それが大阪万博の「太陽の塔」でした
日本古来のアニミズムにも大きな影響を受けた岡本は
3年がかりでこの作品を作り上げました













(今回は縄文時代のことは言わないの?
 この熱い集中力とお茶目な感じがやっぱりみやじくんと似てるよね


高さ70m
太陽の塔はパビリオンの屋根を突き抜けるように設置されました









岡本は塔の内部にも自身の思いを込めた

「ひと」
地下部分の展示室に展示されたのは過去の世界






「いのり」
太古の叡智を表現し、人間がいかに文明を築いてきたのかを表した







「生命の樹」
さらに地上部分には生命の進化の過程を展示しました






大杉さん:
岡本太郎の芸術の根底に流れているテーマっていうのは
人間の持つ生命力、生きる力なんですよね
生命の進化とともに未来の世界に上がっていく人間の生命力
何かを乗り越える力
それを貫いて立っているのがあの太陽の塔なわけなんです


岡本は芸術が持つ力をこう語っています






岡本:
自然に挑み
自然と戦い
そして自然と溶け合い
自然を逆に生かす
という自然と人間が一体になるところに
本当の神聖感があって

全身を爆発させても生きていくという
それが文化であり、芸術であり、生き方である


(一言一言がしみるねえ
 これは永久保存版だわ


そんな岡本の芸術に対する思想は
作品を通して人々に根付いていきました

太陽の塔は今意外な役割を担っています


コロナ禍の大阪において感染状況を表す信号としての役割





大杉さん:
太郎さんは絶対に自分の作品に何をするんだってことを言わないと思います
ニヤッと笑うんじゃないかと思いますよ

これは生命讃歌の塔だと思います
人間だけではないすべての生命が持っている生命のエネルギー
これを讃えているのがあの塔だと思っています






困難な時代を切り抜け、その苦悩を未来へのステップに展じようと葛藤した岡本
岡本が残した作品や力強い言葉は
死後20年以上経った今も若者を中心とした多くの人に影響を与えています






大杉さん:
現代の若い人たちってなんだかんだやっぱり
自分らしく生きたいという思いを強く持っていると思うんです

岡本太郎の言葉というのが琴線に触れて
気持ちを活性化してくれる





太郎さんの言葉で僕が好きなのは「乗り越える」ということ
暗い社会を明るくできるのは、今現代に生きている我々しかできないんですよ
乗り越えることで次の新しい社会が生まれるわけです
だから岡本さんは乗り越えるという言葉をメッセージとして伝えてくれています


現在、川崎市岡本太郎美術館では
太陽の塔が出来上がるまでを追った資料を展示しています

(今は開いているのか?








追。
まったくの余談だが、都市伝説で「大阪万博2025」開催の話が出ていた
太郎さんがいない今、1回目を超えるインパクトは出せないのでは?
オリンピック同様、税金の無駄遣いにならなきゃいいけど






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