原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

合格に必要な条件の1つとしての,文章表現力

2011-07-12 | 勉強法全般
今日は,顧問先からの相談(個人情報保護法関連)への回答書を起案し,売買代金請求事件の第1回口頭弁論期日(被告が答弁書不提出・欠席のため終結→次回判決),法律相談への対応→示談書の起案,損害賠償請求事件の準備書面の起案,こんな一日でありました。個人情報保護法,行政法の短答でちょろっと出ますね。しっかり勉強している受験生は少ないと思うのですが,実務的にはかなり重要です。企業・学校・医療機関等を顧問に持っていると,「これは開示していいのでしょうか?」という相談がわりと頻繁に来ます。電話で相談が来た場合は,即答が要求されることもあります。私もいい機会だから勉強させてもらっているのですが,結構,奥が深いです,個人情報保護法。それから,今日は,顧問契約を締結するという場面にも立ち会い,顧問契約締結上の注意点なども教授していただきました。固定収入となる顧問料は魅力だが不安に感じたら断れ,が顧問契約締結の鉄則だそうです。

さて,今日は上記のとおり,回答書やら示談書やら準備書面やらの起案の多い一日だったわけですが,それがために,法律家にとっての文章表現力の重要性を感じる一日でした。法廷等でのプレゼン能力も重要であることには間違いないのですが,それ以上に,そして,法律家の中心的な仕事は書面の作成・書面による主張です。法律家が作る書面を挙げればキリがない。示談書だってそうだし,契約書だってそうだし,起訴状も,準備書面も,判決書も。これらをしっかりと起案できなければ,法律家として仕事をすることはできません。

こういった事情から,司法試験でも,文章表現力が採点要素に挙がっているのだと思います。これにどれくらいの配点があるのかは何とも言えないところですが,再現答案や答練の採点をしていると,「高得点者・合格者は一般的に言って文章表現力に長けている,低得点者・不合格者は一般的に言って文章表現力に劣る」ということに気付きます。高得点者・合格者の答案は,正しい日本語で,簡明に,法律家としてふさわしい表現で書かれております。低得点者・不合格者は,その逆であることが多いです。

どうして,このような相関関係が生ずるのか。正しい日本語で書けるかどうかというのは,さすがに司法試験を受験しようとする人でそれができない人は少ないでしょうし,法律の力とは関連しないところなので,ここは相関関係にさほど影響を与えないところだと思います(ただ,答練を採点していると基本的な日本語の力に疑問を感ずる答案に少なからず出会ってしまう)。ですから,相関関係を生じさせる要因は,「法律家としてふさわしい文章を」「簡明に」書けるか,というとことにあると思います。この点については,私見ですが,「法的文章をよく読むか否か」にかかっていると思います。

要するに,法律家が読んで容易に理解できる表現で書けているか,ということです。ご存知の通り,法律家の世界には「方言」があります。法律家が好んで使う表現,例えば,主観的だとか補充的(性)だとか社会通念上相当だとか,こういったワードでなく,センテンスでも考えられると思います。こういった「方言」を,適切に使いこなして,法律家の頭にすっと入っていく表現ができるかどうかが,答案を含む法的文章を「簡明に」「法律家としてふさわしく」書けるかどうか,の一要因をなしていると思います。

そして,こういった力を身に付けるにはどうすればいいかは,法的文章をよく読んで,知らず知らずのうちにそれをマスターしていけるか,ということに尽きると思います。判例の原文,基本書などプロの法律家が書いた文章をよく読んで,「盗む」ものなのでしょう。

ですから,こういった意味からも,判例をの原文を読むことや,基本書を読むことなどを疎かにしてはいけません。特に,現役のLS生の方は,よく肝に銘じてくださいね。そういう日々の蓄積が,意外と大きな差を生むものです。

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