原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

基本書か?予備校本か?~初学者の皆さんへ

2011-04-12 | 勉強法全般
今日は,先日の記録演習起案というものの講評講義。…裁判所や研修所ってのは,本当にビデオ(ドラマ?)を作るのが好きです。素材(問題)になった事件を,ドラマ仕立てにして解説するんですね。バーチャル修習生なるものまで登場し…。修習が始まって,何回こういったものを見たかなぁ?ガイダンスで民事訴訟手続に関するものを見て,家裁でも見たし…。検察庁で渡された裁判員裁判に関するものもあったなぁ。係長・山口六平太がどうのこうの,というタイトルで,これはアニメなんですかね。見てないから何とも言えませんが(笑)民事訴訟手続のやつはひどかったなぁ。台本棒読みで,映像や演出は,「昭和」の香りが…。ま,司法試験合格者(修習生)なんてのは,もともと文章を読んでいくのが苦にならない人の集まりなので,文章にしてもらった方が有意義だし,安上がりだと思うんですよね(笑)

夜は,はるばる静岡県富士市から両親が旅行に来ておりまして,食事。家業は学生服屋でして,この時期,入学式が終わって,ちょっと店を閉められる時期なんですよね。4月15日が両親の結婚記念日でして,毎年この時期に旅行をするのです。で,今年は私が広島にいるということで,広島へ。どうやら,広島が気に入った模様。

さて,表題の話です。この時期,法学部に入学した人,学部生で進級した人,LSに入学した人,法律学の初学者の方は,本を買う時期ですね。大学の生協でも本屋でも,基本書と予備校本が並んでいます。基本書を買おうと思っても,予備校本の誘惑に駆られ…,なんて経験をした人も多いのではないかと思います。

私は,予備校本を批判する気はありません。あれはあれで,情報をうまく整理してあって,有益だと思います。ただ,予備校本だけで勉強しようというのは誤りであると思います。予備校本だけでは,法律学の思考力は養われない,これが私見です。イメージ的に言うと,基本書は「ストーリー」「物語」で,予備校本は「箇条書き」といったところです。

箇条書き(あくまでイメージ)は,短時間に知識を整理するのには向いています。そういう目的で使うには非常に良いツールです。使い方を間違えないことが大切だと思います。

では,どうやって勉強していくのがいいかと言えば,基本書と予備校本を並行して使っていく,読み進めていく,という感じでしょうか。基本書→予備校本→基本書と,「3回し(まわし)」するくらいがいいでしょうか。

知識を整理するのが得意な人は予備校本を使う必要はないと思います。基本書だけで十分です。

LS時代になって以降,法曹を目指すうえで,勉強の仕方を誤るというのは,取り返しのつかないことになりました。かつての司法試験ならば,勉強の仕方を誤っても,それを修正して「苦節10年」で合格するということは多かった。しかし今は,受験する資格を奪われてしまいます。

魔法のような本,魔法のような勉強法なんてありません。必要な労力を割いて,必要な努力を重ねていくことが,法曹への最短ルートです。

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (匿名@LS3年)
2011-04-12 23:33:19
はじめまして。先生の講義は受講したことがないのですが、無料ガイダンスでお話を何度か聴かせていただきました。このブログではいつも勉強させてもらっています。
魔法のような本、魔法のような勉強法はないということ、大変共感します。

妻子ある身でLSに通っています。
それゆえ、そういった映像にかける予算があるなら給費制が継続されないかと強く思ってしまいます。
やはりこれは貸与制移行で決まりなのでしょうか。先生の見立てはいかがでしょうか。
先生のような方にLS生、受験生の声を代弁していただけたら心強く思います。

特に内容のないコメントでスミマセン…
返信する
Unknown (Unknown)
2011-04-13 16:54:16
こんにちは。いつもブログ楽しませていただいています。

先生のおっしゃるような、「予備校本だけでは,法律学の思考力は養われない」という話は時々耳にしますが、それはなぜなのでしょうか。予備校本にも制度趣旨や背景、学説の考え方や対立など、法的思考力を養うのに必要な要素は細かく記述されており、その点では基本書とは異ならないように思うのです。

ただ、基本書がストーリーであるという点は共感を覚えます。ストーリーであるがゆえに、基本書は読むのが全く苦ではありません。
返信する
Unknown (はら)
2011-04-13 18:03:23
匿名@LS3年生さんへ

政治情勢を云々する立場ではないですが,やはり貸与制移行は可能性として大きいと思います。政治に精通しているわけではない私の見立てですが…。

ただ,これは大きな問題です。LS在学中に20万円×12月×3年=720万円の借入れをしている人は多いと思います。これに修習貸与金が300万円だとすると,1000万円以上の借入れです。それもさることながら,法曹になるまでには多大な時間がかかります。LS3年,LS卒業から法曹になるまで最短で2年弱(3月LS卒業,9月合格,11月修習開始,翌12月に法曹資格取得)。

その意味で,特に,家族を持ってる人にとっては,法曹を目指すのは非現実的なのかもしれません。そういった理由でそもそも法曹への道を断念した人,司法試験に合格しても修習に行かなかった人を,私は何人も知っています。これではいけない,それは多言を要しないと思います。

他方で,新64期では貸与を申し込まなかった人が25%も存在したのも事実です。運用目的で申請した人もいるでしょうから,「要らない人」というのは,25%を超えるはず。

従前から主張しているように,私の考え方は,任意的修習制の導入。仮に,国家試験として二回試験が必要であったとしても,予備試験の考え方を導入すればよい。LSを経なくても受験資格を与えるように,二回試験にパスする力があるならば修習を経なくても法曹資格を与えればよい。

修習を義務的に実施するとしても,国選弁護制度と同じく,必要であれば給費する,こういう考え方もあり得ます。

貸与制になるとすれば,専念義務(アルバイトの禁止)はさすがに筋が通らないと思います。

いずれにせよ,合格率20%の状況の中でLS生,受験生が労力を割くというのは困難のはずです。

「自由の身」になったら,こうした「問題」については,しっかりと「代弁」しようと思っています。ですから,まずは匿名@LS3年生さんは確実に合格すべく,勉強に励んでください。ご家族もそれを望んでおられるはずですよね。

「俺は給料もらって修習して,もう法曹になったから,しーらない」なんてことは,少なくとも私は絶対に言いませんので。
返信する
Unknown (はら)
2011-04-13 18:20:37
Unknownさんへ

そうですね,「物語・ストーリー」と「箇条書き」というイメージがまさにその通りなのですが,作成される過程を考えればなんとなくわかります。

要するに,定評ある本の何冊かを「切り貼り」してしまうのですよね。そして,仮に私が作れと言われてもそうなんですが,当たり障りない記述を重ねていくんだと思います。

結果,どこに差が出るかといえば,「つまり」以下の記述と,行間です。

「○○である,つまり~。」の「~」の部分,これは圧倒的に基本書が長けている。この部分で「なるほど!」があるんです(経験上)。それから,行間にも差が出ます。一人の人間が体系性・一貫性を持って書いたものは,文脈から得るものが大きいのです。一般的に,1冊の本の文字数は予備校本の方が多く,基本書の方が少ないように思うのですが,体系的な理解度は基本書の方が高いということもままある,そういうことなんだと思います。

1人の人間がする講義と,一般的に言われている見解を多数人が紹介していく講義とで,どちらの方が一貫性があり,体系的理解ができるか,ということだと思うんですよね。

司法試験(特に論文)で問われることや,おそらく実務で必要になる思考力というのは,「ちまり」以下や,行間によるところが大きい,それがご指摘の点の理由なのではないかと思います。私も予備校本を読んでいたことがあるので経験上の話をすると,やっぱり予備校本だけでは「知らない」問題に出くわした時に対応が困難なんですよね。

さりとて,本文でも述べたように,整理,通説の確認にはこれ以上ないツールです。自分でノート作って整理していこうと思ったら,膨大な時間がかかりますので。また,予備校の講義で,その「つまり」以下や,行間を講師が補うなら,これまた非常に良いツールなんです。

であるからこそ,両者の特性を踏まえて,うまく「併用」していただきたいな,と思う次第です。

あ,答案添削をするときにも便利なツールでした(笑)
返信する

コメントを投稿