Book Review No.291「和宮様御留」

有吉佐和子　著（講談社文庫）

＜評価＞
感動度：☆☆☆☆☆
知識度：☆☆☆☆
娯楽度：☆☆☆
難易度：☆☆☆☆

「複合汚染」、「恍惚の人」、「紀ノ川」・・・
有吉佐和子の著作は、読後感が強烈な作品が多いが、本作もその例に漏れず強烈だった。

「大奥」やら「篤姫」やらの影響でやたらとこの時代が有名になった感があるが、私が生まれた年に発表された本作はそれらのテレビドラマとは一線を画す。

和宮が入れ替わった・・・という設定は突飛な思いつきかと思いきや、あとがきを見る限りそれなりの裏付けもあってのことらしい。
京言葉や当時の公家の様子など、「よくこれだけ細かく調べたな・・・。」と感心するほどディテールに凝っており、歴史文学としても十分読める。

しかし、作者が最も書きたかったのは、歴史でも仮説でもなく時代の流れに弄ばれる人々だろう。
主人公の末路には無常感に堪えない。

今年読んだ中では、今のところ最高傑作。