日記帳

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Book Review No.328「無人島に生きる十六人」/No.329「ジーキル博士とハイド氏」

2010-08-29 | 日々つれづれ
須川邦彦 著(新潮文庫)
<評価>
感動度:☆☆☆☆
知識度:☆☆☆☆
娯楽度:☆☆☆☆☆
難易度:☆☆

実際にあった漂流の体験談の聴き取りという形式をとった、事実版・十五少年漂流記といったところ。
明治時代の話だが、全く古さを感じさせない。
時代を感じさせるのは、漂流した十六人の明治男子たちの素晴らしい人間性。
明治の男たちはかくも気骨があったのかということに驚かされる。
元々子供向けの雑誌に掲載されていた連続ものだったようだが、ぜひ子供に読ませたくなる。

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スティーヴンソン 著(新潮文庫)
<評価>
感動度:☆☆☆
知識度:☆☆☆
娯楽度:☆☆
難易度:☆☆☆

「ジキルとハイド」と言えばことわざ化しているほどの名作だが、今までどういう話なのか正確にはよく知らなかった。
二重人格を主題に据えた小説というのは、本作が史上初なのだろうか?
150年以上も前の話だというのに全く古さを感じさせず、誰もが身につまされてしまうところがある。
自分の悪の部分の深淵を覗いてみたいという発想は、時代に関係なく誰も完全に否定できないということなんだろうな・・・。

Book Review No.327「美丘」

2010-08-17 | 読書
石田衣良 著(角川文庫)
<評価>
感動度:☆☆☆☆
知識度:☆☆☆
娯楽度:☆☆☆
難易度:☆☆

大学の先輩であり、今勢いに乗っている感のある作家、石田衣良だが、実はまだ一冊も読んだことがなかった。
本作もテレビドラマ化され、「不治の病に冒されたヒロインとの恋物語」というあまりにもベタな設定に「狙っている感」を感じて今まで手が伸びなかった。

・・・が、実際に読んでみると、確かにベタはベタだが、それなりに良かったと思う。
同系統で同じようにヒットした「セカチュー」に比べれば、等身大の大学生を描いており、まだ共感できる部分が多いと思う。
ただ、若干の不満としては、最後の場面がよく分からなかったということ。
あれは、読者の御想像にお任せするということ?
「ミリオンダラー・ベイビー」並みの挑戦をしろとは言わないが、ちょっとそこだけが残念。

Book Review No.326「寡黙なる巨人」

2010-08-17 | 読書
多田富雄 著(集英社文庫)
<評価>
感動度:☆☆☆
知識度:☆☆☆☆
娯楽度:☆
難易度:☆☆

著名な免疫学者であった著者が脳梗塞で倒れ、その後の後遺症に苦しみながらも障害者としての日常生活を送っていく過程を描いたノン・フィクション。
当然ながら非常に重たい話だが、病後の自分を「新しい人」の目覚めと悟り前向きに生きていく著者の姿に頭が下がる。

Book Review No.325「戦場のニーナ」

2010-08-07 | 読書
なかにし礼 著(講談社文庫)
<評価>
感動度:☆☆☆☆
知識度:☆☆☆☆
娯楽度:☆☆☆
難易度:☆☆☆

満州で生まれたロシア残留孤児の女性を主人公に、戦争の悲劇を描く満州生まれの著者ならではの作品。
正直、「ロシア残留孤児」という存在を知らなかったのだが、それを知っただけでも読んだ価値があったと思う。
「取材協力」のところに、ロシア残留孤児のニーナさんという記載があったが、名前まで同じにしているところからして、事実の部分がかなりあると思われる。

悲劇的な出生の主人公だが、その後の人生を彩る脇を固めるロシアの人々は完全な「悪人」という人はおらず、そのあたりにも作者のロシア人感が伺えるところ。

時代ごとに区切った章構成も読みやすく、作詞家でもある著者らしい美しい描写も多く、重いテーマながらも一気に読める。

しかし、メインテーマが戦争とそれに伴う残留孤児という悲劇であるなら、あけすけなラブシーンは必要なかったんじゃないかな・・・好みの問題だとは思うが・・・。

だからというわけではないが、非常に優れた作品だということは認めるものの、著者の作品で同系統の「赤い月」には及ばない。

Book Review No.324「スワンソング」

2010-08-01 | 読書
大崎善生 著(角川文庫)
<評価>
感動度:☆☆☆☆
知識度:☆☆
娯楽度:☆☆☆
難易度:☆☆

大崎善生の小説は、とにかく文章が美しい。
村上春樹は英訳したほうが真価を発揮しそうな文体だが、大崎善生は日本語でなければ・・・という文体。
本作も詩のような流れの大崎ワールドがいかんなく発揮されている。

しかし、内容的には非常に重い。
先日の「告白」に比べれば全く救いがないわけではないが、より現実的で有り得そうな設定だけに読んでいてより苦しい感じがしてくる。
2人の女性を不幸へと導いて行ってしまう主人公の行動に「もうちょっと何とかならんのか!」と一喝でもしたくなってしまう。(笑)