日記帳

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Book Review No.320「東京島」

2010-06-27 | 読書
桐野夏生 著(新潮文庫)
<評価>
感動度:☆☆☆
知識度:☆☆
娯楽度:☆☆☆
難易度:☆☆☆

大学の大先輩、桐野夏生の代表作と言えば「グロテスク」。
これは相当な衝撃だったけど、それに比べると最新作の本作はちょっとインパクトに欠けるか?
「負のエネルギーの十五少年漂流記」と言った感じで、登場人物に前向きなことを考えている人がほとんどいない。
それはそれで人間というものの本質を突いているのかもしれないけど、私としては小説にここまでのドロドロ感を求めてはいないというか・・・。
そして、終盤の島からの脱出、エピローグあたりは、いささか強引な感も否めない。
非現実的な話なら、非現実的な話なりに前向きにまとめても良かった気もする。
まあ、あえてそうはしないのが桐野流なんだと思うけど。

Book Review No.319「ハプスブルク家」

2010-06-20 | 読書
江村 洋 著(講談社文庫)
<評価>
感動度:☆☆☆
知識度:☆☆☆☆☆
娯楽度:☆☆☆
難易度:☆☆☆

もう20年も前に書かれた著作だが、歴史が相手だけに古さは感じさせない。
それなりに骨太で読み応えがあるが、かと言って小難しくなく、西洋史を体系的に勉強したことのない私にはちょうど良かった。

冷戦収束後、急にハプスブルク関係の書籍が増えてきたのは、旅行先として中欧が身近になってきたことと、複雑な民族関係を有するこの地域を束ねてきた王朝を再評価する動きが出てきたことの両面があると思うが、その後者の面が非常によく分かる。

しかし、こういう話を読むとまた中欧に行きたくなりますなー。

Book Review No.318「下流社会」

2010-06-16 | 読書
三浦 展 著(光文社文庫)
<評価>
感動度:☆
知識度:☆☆☆☆
娯楽度:☆☆
難易度:☆☆☆☆

随分話題になった著作だったと記憶しているが、発行は2005年。
いつの間にやらもう5年も前の話ですか・・・。
古本屋で100円になっていたので、今更ながら手にとってみた。

賛否両論がある著作だが、本作をきっかけに「上流・下流」という言い方がはやったのは確かだろう。
そういえば、「勝ち組・負け組」という言い方もこの頃の話か?

やたらデータの引用が多く(その母数が少なくて説得力に乏しいのが難点)、読みにくいのは否めないが、社会に対する問題提起としてはおもしろい。
つっこみたくなるような内容も多いが、「なるほど」と頷けるような内容もまた多く、賛否両論なのが頷ける。

それにしても、こういう本を読むと、我が子の行く末を思わずにはいられませんなあ。

Book Review No.317「春の夢」

2010-06-12 | 読書
宮本 輝 著(文春文庫)
<評価>
感動度:☆☆☆☆
知識度:☆☆☆
娯楽度:☆☆☆☆
難易度:☆☆☆

大阪、恵まれない境遇の主人公、青春群像、ハッピーエンドというほどではないけど心地良い読後感・・・いかにも宮本輝らしい要素に溢れた一冊。
新刊として積まれていたのでてっきり新作だと思っていたら、30年近く前の発表作だった。
それでいて古さは全く感じない。

ストーリーとしては、奇をてらったところはほとんどない。
唯一非現実的なのは、本作のキーポイントとも言うべき蜥蜴のキンちゃんだけ。
それでいて作中に引き込まれてしまうのが、宮本ワールドなんだろうな。


Book Review No.316「女の幸福」

2010-06-08 | 読書
平岩弓枝 著(文春文庫)
<評価>
感動度:☆☆☆☆
知識度:☆☆☆
娯楽度:☆☆☆
難易度:☆☆☆

著者の「女~」シリーズの一つ。
「女の顔」は鮮烈かつ清冽な印象だったが、本作も抑え気味ながらも心地良い読後感を与えてくれる。
仕事で疲れた帰りの電車内で読むには、こういう話がいいなあ。

世界ふれあい街歩き

2010-06-05 | 旅行
金曜夜10時からNHK総合で放映している世界ふれあい街歩きという番組がなかなかおもしろいです。

金曜の22時なんて、以前は仕事しているか飲んでるかでほとんど家にいない時間でしたが、最近は若をお風呂に入れて寝かしつけるとだいたいこのぐらいの時間。
夕飯を食べながら一週間の疲れを癒しつつ見るのにちょうどよい番組です。

旅行系の番組はよくあるところですが、この番組は余計なタレント等の登場人物が一切ないのがいいです。
ナレーションはタレントですが姿はなく、登場するのは街の市井の人々だけ。
当然番組だから演出はあるんでしょうが、実に自然なカメラワークです。

ちなみに、先週は中国のハルビン。
卒業旅行で3日間滞在した町だけに、懐かしかった・・・。
すっかり垢抜けた印象でしたが、中央大街はそんなに変わってないかな?

今週はスロベニアのリュブリャナ。
中欧好きの私としては、スロベニア、クロアチアあたりは非常に興味のあるところです。
途中で止めちゃったけど、後でビデオでゆっくり見よう。

Book Review No.315「向日葵の咲かない夏」

2010-06-04 | 読書
道尾秀介 著(新潮文庫)
<評価>
感動度:☆
知識度:☆☆
娯楽度:☆☆☆
難易度:☆☆☆☆

率直に言ってこういう話は苦手。
主人公を含め、登場人物に感情移入できない、共感できない、読後感が悪い、救いがないetc・・・。
と言いながらも一気に読ませてしまう迫力はある。
結局何が本当だったのかよく分からないけど、もう一度読み返してみる気にはなれないな・・・。

Book Review No.314「凍りついた香り」

2010-06-01 | 読書
小川洋子 著(幻冬社文庫)
<評価>
感動度:☆☆☆☆
知識度:☆☆☆☆
娯楽度:☆☆☆
難易度:☆☆☆☆

作家と言うのは文筆業だから、当然のことながら文系が多い。
その中にあって、異彩を放つ「理系小説」とも言うべき作品を連発する小川洋子。
早大一文卒後2年後には結婚というキャリアのどこに理系的要素があるのか分からないが、「博士の愛した数式」を筆頭に数学を効果的に使った小説が抜群にうまい。

この「凍りついた香り」も数学に調香にと理系的要素がふんだんに盛り込まれているが、その一方で非常に詩的で美しい文章の小説でもある。
特に現実と非現実が入り混じった感じのプラハの描写は素晴らしい。
言葉の通じないジェニャックと主人公の気持ちの通わせ合いも良かった。

繊細で穏やかでちょっと不思議で・・・いろんな要素が詰まった一冊。