日記帳

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Book Review No.337「永遠の0(ゼロ)」

2010-11-27 | 読書
百田尚樹 著(講談社)

<評価>
感動度:☆☆☆☆☆
知識度:☆☆☆☆☆
娯楽度:☆
難易度:☆☆☆

今年も残すところあと1か月少々となったが、2010年に読んだ本BEST1は、本作であることはまず間違いない。
久しぶりに素直に「感動した。」と言える小説に出会った感がある。

特攻隊で命を落とした祖父の足跡を、その孫たちが探る・・・という展開で話は進んでいく。
つまり、「永遠のゼロ」の「ゼロ」は、零戦の「ゼロ」である。
主人公は実質的には亡くなった祖父で、多くの語り手たちの手によってその実像に迫っていく。
読者としては、結末が予め示されている中で読み進めていくことになるため、後半にいけばいくほどあまりに魅力的な祖父の人物像に「何とかならなかったのか」というもどかしい思いに包まれることになる。
一人の語り手につき、一章という展開で、その一章一章が独立した一つの物語として成立するぐらいの中身の濃さのため、読んでいる最中は「ヘタに孫たちを出して、現代の話なんか出す必要はなかったのでは?」と思っていたが、最終章で意外などんでん返しがあり、すべてが氷解するということになる。

小説としてのストーリー展開、ノンフィクションを思わせるような精緻な調査等、すべてが秀逸である。
戦後生まれの作者がよくこれだけのものを書けたなということに驚嘆してしまう。


ドラマ「秘密」にはまっております。

2010-11-20 | 日々つれづれ
久々にテレビドラマにはまっております。
テレ朝で金曜日23:15からの「秘密」

金曜日の夜って子どもが生まれる前は仕事してるか飲んでるかで家にいるなんてことはほとんどなかったんですが、今はこの時間なら基本的に家にいてお風呂も寝かしつけもすべて終わってのんびりしている時間なのでちょうどいいのです。

「秘密」・・・原作は2年前に読みましたが、ジャンルとしてはミステリーになるんですかね?
有り得ない話だけど、ファンタジーって感じではないし・・・。
とにかくラストが大どん返しで衝撃的でした。
今6話まで終わった段階では登場人物の年齢等に違いはあるものの、大筋としては原作を倣っているのでラストも同じ展開なのかな?

結末を知っているにもかかわらずはまってしまうのは、何といっても主役の志田未来ちゃんと佐々木蔵之助さんの演技の秀逸さでしょう。

未来ちゃんは凄いですね。
17歳で「38歳の母親の魂が宿った娘」という設定をあれだけ違和感なくこなしてしまうとは・・・。
子役として有名なので知ってはいましたが、実に素晴らしい。
ただ、子役として名声を得た人たちは大人になって路線が微妙になっている人が多いのもまた事実なので(安達祐実とか奥菜恵とかね・・・)方向性を誤らないでほしいですね。

一方の蔵之助さん。
こちらも名優として名が知られた存在ですが、実にいいです。
特に表情で語る演技が素晴らしい。
固まるシーンとか、目を見張るシーンとか。
こちらも原作のイメージピッタリです。

それにしても、東野圭吾の作品ってどれだけ映像化されているんでしょうか?
舞台が外国とか僻地とかでなく、天変地異も起こらず、わりと日常の中の物語でありながら、スピード感があり、どんでん返しがあり・・・とドラマ・映画化しやすい作品が多い気がします。
というより、初めて東野作品を読んだのは手紙だったかガリレオだったかよく覚えていませんが、「ドラマみたいな小説だな・・・。」という印象を持ったし。

さて、今後ドラマ「秘密」は原作に忠実に進むのか、それとも違った展開にするのか、はなきんの夜の注目にしたいです。

Book Review No.336「でいごの花の下に」

2010-11-14 | 読書
池永 陽 著(集英社文庫)

<評価>
感動度:☆☆☆☆
知識度:☆☆☆☆
娯楽度:☆
難易度:☆☆

沖縄戦を背景にした「純愛小説」ということだが、「純愛」というにはあまりにも暗く、凄絶な話が多い。
著者は沖縄出身というわけではなく、そうであるのにとてもよく沖縄のことを理解しているなという感じがあるが、やはり本土出身者ゆえの若干の押しつけがましさみたいなものを感じたのは私だけだろうか?
あまりにも沖縄戦と現代を強引に結び付けすぎている感があった。

とは言え、一貫して救いがない展開でありながらも最後は希望が持てる終わり方で終わる。
主人公の行動といい、亡くなった恋人の行動といい、必ずしも共感できないが、そう思われることを想定しながら描かれている感もある。
作者としては問題提起の意味合いが強い小説なのかもしれない。


Book Review No.335「「怖い絵」で人間を読む」

2010-11-14 | 読書
中野京子 著(NHK出版)

<評価>
感動度:☆☆☆☆
知識度:☆☆☆☆☆
娯楽度:☆☆☆☆
難易度:☆☆☆

およそ絵画に造詣が深いとは言い難い私にとって、絵画が主題を主題としている本を手に取るというのは非常に珍しいことだが、ちょっと立ち読みして思わず購入してしまった。
1,100円と値が張るにもかかわらず。

「人間を読む」と銘打っているだけに、絵画の手法等の話はそこそこに専ら絵の背景や歴史、登場人物像などに重点が置かれている。
軽妙な語り口の文体と資料の豊富さもあいまって、絵画に関心がなくてもおもしろく読み進めることができる。
海外の有名美術館に行く前に必読の著と言えるかもしれない。