福谷章子のまちづくり

さまざまな役割を持ちながら暮らす中で、日々出会い触れ合う人々、街、文化、自然、出来事についてつづります。

涙しながら髪を剃る  虐待と表裏の非行の現実

2010年06月27日 | 子育て子育ち

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鎌取コミュニティセンターで、泉谷中学校区青少年育成委員会が後援している講演会に参加しました。主催はおゆみ野まちづくり協議会。

テーマは「犯罪や非行を通して見えてくること~地域で考えるこどもの健全育成」

講師は八街少年院院長の只川晃一さん。

地域で何ができるか、育成委員会には何ができるか、考えてみたくて参加しました。

          

少年院は全国で52か所で収容率は50%くらい。八街少年院は約30%です。

少年犯罪は全体としては少なくなっています。しかし、感情のコントロールができない、無目的、被虐待経験のある子が犯罪集団に巻き込まれていく傾向は強くなっていて、少年院を退院後に社会の片隅でひっそり過ごす少年たちがいる、ということを地域のみなさんに知ってほしい。

P1030183_2 八街少年院は、半数は中卒。しかし、潜在的な能力を持っている子どもがたくさんいて、本人がそれに気づいていません。まずは自分がしてきたことの反省をしっかりさせ、自らの力に気付かせ、希望を持たせることが少年院としての役割です。

そのために少年院では規則正しい生活をする。

そして職員が少年たちに対して親や兄弟のように関わり、疑似家庭のような集団となって社会や大人に対する信頼を取りもどす。

その後、さまざまな資格取得をさせ、社会で自立していけるように準備をします。

農業体験では、作物栽培を通して命に対する畏敬を感じることもある。

スポーツを通じて基礎体力をつける。

近隣の高校と練習試合をすることも・・・と、八街市は市をあげて少年院を支援してくれています。

しかし、片やマスコミ初め社会の少年たちに対する視線は厳しくなっているのではないか、と指摘されました

       

少年院に入ってくると、まず頭を丸刈りにする。

すると、見えないものが見えてくる。18歳の少年は、頭の中が傷だらけ。継母にカミソリで斬られたと明るく言う・・・。

「僕は彼の頭を剃りながら涙が止まらなかった・・・」と、只川院長。

少年院には厳しい現実があり、殉職者もいる。一方、昨年問題になったような職員の暴力事件もある。

職員としては、常に自分の子どもだったらどう向き合うか自問し続ける。

ある少年は中学校1年生の時に卒業証書をあげるからもう学校には来なくてよいと言われた。

それだけのことをしている子だが、この子たちは10年後20年後には成人して社会の一員として地域の仲間として、私たちと一緒に生きていく

そういうことに思いをはせ、遠い将来の彼らに対して、大人として何を準備するかを考えたいし、みなさんもぜひとも考えてほしい・・・。

以上が、只川院長のメッセージでした。

      

熱心に聞いていた会場からも質問が出ました。

【Q】 少年院退院の条件は?

少年院退院の条件は、定期的に評価をして判断している。

基本的には、対人関係、被害者への慰謝や意識の変化がどうかで、監察官面接など第三者の評価もする。

保護者との関係や家庭環境の改善も社会復帰の条件で、これは一般的な少年院。

再犯率が高いところは、実は半数が帰れる家庭が無い。虐待の問題もある。

【Q】 退院後の受け入れ先は?

幼い時に虐待を受けた子どもは、間違いなくその報復を親に向ける。

どうしても引き取り先のない子は、職員の繋がりで就職先を探し、頼み込むこともある。

絶対に大丈夫かと問われれば、自信半分不安半分であるが頼み込んで立ち直りを支えていくしかない。

【Q】 保護司の数が足りないのでは?

保護司は準国家公務員として全国に5万人くらいいる。

行政の枠を超えて支えていければいいが、矯正と立ち直り支援との連携はうまくできていない。今後の課題だと考えている。

         

講演会終了後、緑区の事務所で何人かの方とお話をしました。

どの地域にも、施設から戻ってきた子どもたちは生活していますが、ともすると他人事。

むしろ、地域から排除しよういという傾向さえあります。

それでは、家庭から放棄された彼らは二重の虐待を受けることになります。

幸いなことに、彼らの居場所を作りたい、何か一緒に活動がしたいという人たちが増えつつあります。

彼らと付き合いながら、夏祭りには何か一緒にやろういう提案も持ちあがっています。

青少年育成委員会としても、保護者がしっかり見守っている大勢の子どもたち対象の事業を今までどおり行いながらも、今後は、家族的サポートも無く困っている一握りの子どもたちとともに何ができるか、具体的な一歩を踏み出す時期でしょう。

行き着くところは、自立援助ホームを作っていくことだろうと思いますが、これは、行政と連携しなければ、うまくいかないでしょう。

只川院長も指摘していたように、矯正と立ち直り支援との連携が必要なのではないかと感じていますが、まずは出来ることから始めよう・・・です。

      


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