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BL小説・風のゆくえには~新年がくる2

2019年01月04日 07時26分57秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切

前回投稿した『~新年がくる』で、慶君が落ち込んだままなのが気になったため、続きを追ってみました。

慶と浩介の高校時代の同級生、溝部視点でお送りします。



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『風のゆくえには~新年がくる2』


 1月3日。高校時代の同級生・渋谷慶と桜井浩介がうちに遊びにきた。お祝いを持って!

 はい。そうです。お祝いです。
 奴らと同じく高校時代の同級生・鈴木有希と、鈴木の息子の陽太と、オレが家族になったのは、1年9ヶ月ほど前のこと。

 そして、先月12月1日。無事、我が家に家族が増えたのです!

 この日はちょうど土曜日で、オレがはじめからずっと付き添えたので、鈴木は「陽太の出産の時よりも精神的にすごく楽だった」そうだ。いつもの3倍は「バカ」とか「ウルサイ」とか言われたけど、それで楽になったというのなら、言われた甲斐があったというものだ。

 名前は、鈴木と陽太と3人で考えた。

 オレが、祐太郎(ゆうたろう)
 鈴木が、有希(ゆき)
 息子が、陽太(ようた)

と、偶然、イニシャルが全員「Y」なので、「Y」の名前、というのを条件に考えに考えた結果、

『溝部よつ葉』

と、決めた。女の子らしい可愛い名前だ!

 生まれたては猿みたいだという話をよく聞くけれど、よつ葉はそんなことはなく、生まれた時から抜群に可愛かった。そして今やどんな辛口な奴であろうとも可愛いとしか言えない可愛さだ。


「確かにかわいい」
「鈴木さんに似てるね」
「溝部の要素がないな」
「だね」

 バカップルが揃ってうなずきあってるけれど、今日のオレは怒らない。鈴木に似た方が美人になることはオレが一番よく分かっているからだ。それに……

(こいつら……なんか変だな)

 会った時に感じた違和感は、時間がたつにつれ色濃くなっていく。

(ケンカでもしてんのか?)

 なんか遠慮しあってるというか……とにかくいつもと違う。


 気になることは、確かめないと気がすまない性分のオレ。

 桜井が、陽太の冬休みの宿題を見てくれるために陽太の部屋に行き(桜井は学校の先生なのだ)、鈴木がよつ葉の授乳のために鈴木の部屋にこもった隙に、渋谷にぶっちゃけて聞いてみた。

「お前ら、ケンカでもしてんの?」

 はじめは否定した渋谷だったけれど、オレが「いつものお前らと違うぞ?」としつこく聞いてみたところ、ポツポツと話し出した。

「今、仕事忙し過ぎて、あいつとの時間を取れなくて……」

 渋谷は普段、自分の話をしないので、こんな風に素直に話すのは大変珍しい。たぶん誰かに聞いてもらいたいという気持ちがあるのだろう。

「あいつは大丈夫って言ってくれてるけど、また無理させてるんじゃないかって思って……。かといって、仕事しないわけにはいかないし………」
「……………」

 ……………。アホらしい悩みだな。

 一瞬、「そりゃ、お前の考えすぎだ。いい大人が何いってんだよ」と、一刀両断に言い切りそうになったけれど、ギリギリ踏みとどまった。 

(「また」無理させてる?)

 その言葉に引っ掛かった。

「『また』って、前例があるってことか?」
「ああ……………うん」

 言いにくそうにうなずいた渋谷。

「前の時は、おれ、まったく気がつかなくて……。ある日突然……」
「キレた、とか?」
「まあ…………うん」
「……………」

 何となく、想像できた。桜井は尽くし体質な分、言いたいこともためこんでしまう感じがする………

「でも、今は大丈夫って言ってるんだよな?」
「うん………」
「……………」
「……………」

 だったら悩む必要ないだろ、と笑い飛ばしてやりたい気もするけれど、そんな雰囲気でもなくてオレも黙ってしまう。

(仕事が忙しい時、かあ……)

 自分に置き換えてみる。鈴木も仕事で数日帰ってこない、ということもあった。でも、特に心配にもならなかったのは、ちょくちょく連絡をくれたからだろうか(ただし、内容は陽太のことと家事のことばかりだけど)。

「お前、その仕事忙しい時って、桜井に連絡入れてる?」
「いや……しようかな、と思うんだけど、なかなか時間が取れなくて」
「でも、便所くらい行くだろ? って、超人渋谷は便所も行かねえのか?」
「なんだそりゃ」

 渋谷はようやく表情を崩して、首を振った。

「行くけど、すぐ戻らないととかで、電話かけたりメール打ったりする余裕は……」
「あ、そうか」

 その言葉で思い出した。渋谷はなぜか、かたくなにラインをやらないのだ。だからグループラインでやり取りするときは、桜井が2人分引き受けている。

 そうだ。ラインだライン。

「お前、ラインやれ」
「え」

 キョトンとした渋谷。

「ラインだったら簡単に連絡できるようになるから」
「…………」

 渋谷は目をパチパチさせたままだ。こいつホント美形だよな……と感心してしまう。あ、いや、感心してる場合じゃなかった。

「とにかくラインだライン」
「えー……メールと同じようなもんだろ」

「いや、全然違う。もっと簡単。ラインだったら、10秒あればスタンプ一個送れる。さすがに10秒くらい時間あるだろ」
「…………」

「他とやるのが嫌だったら、設定する時点でアドレス帳と同期させないようにすればいいだけの話だから」
「…………」

「とにかく、やってみろ。たぶんそれでお前の悩みは半減される」
「…………」

 渋谷は、ボソッと「意味わかんねえ」と言いつつも、コクリと肯いた。

「……やってみる」
「おお。そうしろそうしろ」

 そんなことを言っている間に、鈴木とよつ葉が戻ってきて、桜井と陽太も戻ってきたので、その話はそこで終わった。


 でも、その日の夜……
 渋谷から友達申請がきた。『ありがとう』というメッセージ付きで。


 これで悩みが解決できるかどうかは知らないけれど、たぶんすこしはマシになるんじゃないだろうか。

 桜井が渋谷に、自分が言ってもらいたいラブラブな言葉のスタンプをプレゼントしてる姿が目に浮かぶようだ……。今度二人に確認してみよう。



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お読みくださりありがとうございました!
5分遅刻失礼しましたっ。オチも何もない小話でm(__)m

次回火曜日もどうぞよろしくお願いいいたします。

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おかげさまでどうにか今日も更新できましたっ。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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