畑倉山の忘備録

日々気ままに

「天皇を人民に売りつけなければいけない」

2019年01月27日 | 天皇
マーク・ゲイン『ニッポン日記』
1946年7月2日 東京

ワシントンからの最高機密指令・・・・ この指令は去る4月半ばにSWINCC (国務、陸軍、海軍協調委員会)からマックアーサー元帥宛に発せられたもので、・・・・ワシントンからの命令の主旨は次のとおりである。

「米国は究極においては日本における共和政体の樹立に賛成するものではあるが、日本国民自身は明白に天皇制を支持している。したがって、マックアーサー元帥は、立憲君主制の発展並に天皇制の維持について日本国民を援助するよう指示される。天皇制に対する直接の加撃は民主的要素を弱め、反対に共産主義並に軍国主義の両極端を強化する。故に総司令官は、天皇の世望をひろめかつ人間化することを極秘裡に援助するよう命令される。以上のことは日本国民に感知されてはならない。」

さるアメリカの将官・・・・はこう説いている。「広告をしなければいけない。天皇を人民に売りつけなければいけない」

われわれが勝利をえた直後の時期には、日本国民をわれわれの命令に服従させるために裕仁を方便として利用する必要があったかもしれない。しかし今度の命令は、方便の領域をはるかに超えて、長期にわたる最高政策の性格をもつものであって、とまれ私には非民主主義的なーーはやり文句を使えばーー非アメリカ的な印象を与える。

(マーク・ゲイン『ニッポン日記』ちくま学芸文庫、1998年)

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(わたしのコメント)昭和天皇は昭和21年から29年にかけて全国各地を旅行して回った。全行程は3万3000キロ、東京・ロサンゼルス間を2往復する勘定で、一日平均200キロの強行軍だったという。この旅行には御召列車や御料車(メルセデス・ベンツ・770)が使われたが、どれだけ費用がかかったかは不明である。この旅行がマッカーサーのサポートのもとで行われたことは言うまでもない。

マーク・ゲインはアメリカの新聞社『シカゴ・サン』の東京支局長として占領下の日本を取材した。『ニッポン日記』の原書は1948年に、その翻訳本は1951年に出版された。紹介した文庫本は1963年に出版された翻訳第2版を文庫化したものです。