畑倉山の忘備録

日々気ままに

劣化ウラン弾

2017年10月09日 | 核・原発

劣化ウラン、別名ウラン238(238U)は、発電用原子炉の廃棄物である。この物質は戦車砲の砲弾や巡航ミサイルのような発射体に使われる。鉛の1.7倍も密度が高く、飛翔しながら燃焼し、装甲板を易々と貫通するが、衝突時に分解して蒸発するからである。そのせいで、予想もつかない形で破壊を齎す可能性を秘めているのだ。

アメリカ軍の戦車が発射する砲弾には、それぞれ3から10ポンド(約1.4から4.5kg)の劣化ウランが含まれている。そうした弾頭は放射性降下物の多い「汚い爆弾」と本質的に同じであり、一つ一つは特に放射性があるわけではないが、重大な疫病と先天的欠損症を大量に引き起こす可能性があるのではないかと疑われている。

1991年、アメリカ軍はクウェートとイラクで94万4000発もの劣化ウラン弾を発射した。国防総省は戦場に最低でも320メートルトンの劣化ウランを残してきたことを認めている。湾岸戦争の従軍者に関する或る調査では、彼らの子供が目の欠損や血液感染、呼吸器の問題、くっついた指といった重い障害を抱えて生まれる可能性が高いと報告されている。

(チャルマーズ・ジョンソン『アメリカ帝国の悲劇』文藝春秋、2004年)

 


米国防総省の海外資産

2017年10月09日 | 天皇

A. 事実関係:
米国防総省がこのほど公表した「2015会計年度・基地構造報告」によれば、米軍の海外基地の中で、米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)が資産価値で1位になりました。米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)がこれに次ぎます。また、在日米軍基地が上位10位のうち6基地を占めています。これらは米政府が絶対に手放したくない「海外資産」であり、日本が世界でも異常な「米軍基地国家」であることをあらためて示しています。

同報告書は会計年度ごとに米議会に提出されており、15年度版は14年9月末現在の数値をまとめています。資産評価額は基地内の施設件数や床面積、インフラなどで算定しており、地価は含まれていません。日本は毎年「思いやり予算」で基地内の施設を新設・改修しているため、必然的に評価額が上がることになります。

また、在日米軍基地の資産評価総額は618億7300万ドル(7兆4248億円、1ドル=120円)で、在外米軍基地の総資産額のうち、約4割を占めています。基地の件数・面積で上回るドイツの405億2140万ドル(4兆8626億円)を大きく上回っています。数年前までは、資産価値でもドイツが上回っていました。

報告書によれば、海外基地の件数は513で前年度比63件のマイナスです。1990年代以降では、ほぼ半減しています。

米国が第2次世界大戦から今日にいたる70数年にわたって、他の主権国家にこれだけの数の基地を維持しているのは、人類史上でも特異な状況です。

各国の主権意識の高まりや戦略環境の変化に伴い、在外基地の縮小傾向は今後も続くと見られます。それでも日本でほとんど変化がないのは、「抑止力」の名の下、米軍駐留に固執する日本政府の責任が重大です。在日米軍再編計画の下、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設など、総額3兆円とも言われる、最新鋭の基地建設が、日本国民の税金で進められています。

在外米軍基地資産価値・各国別比率(単位100万ドル)

1 日本      61873
2 ドイツ     40521
3 韓国      15180
4 イタリア     9340
5 英国       7345
  その他     24188

表:在外米軍基地の資産価値・上位10位(単位100万ドル)

1 嘉手納         7508
2 横須賀         7432
3 クラーフェンベア(独) 6544
4 三沢          6125
5 横田          5741
6 ラムステイン(独)   4398
7 グアンタナモ(キューバ)3695
8 ディエゴガルシア(英) 3659
9 瑞慶覧         3604
10 岩国          3599

2015年10月5日(月)赤旗(WEB版)

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B. 評価:
如何に日本が米軍基地となっているかは明白である。

ドイツは基地閉鎖によって相当低下している。

主要基地が、日独伊と旧枢軸国に集中しているのは興味深い。そのことは、これら諸国では。容認する勢力が育てられてきたことをしめしている。

米国は自国の国際戦略のために日本に基地を置いている。したがって協定上、基地経費は米軍が支払うことになっている。それがいつのまにか、「日本防衛のため」に論理をすり替え、日本が多額の基地経費を負担。ドイツでもこんなみっともない状況ではない。

(孫崎享のつぶやき)


昭和天皇と沖縄

2017年10月05日 | 天皇
戦後、われわれは「天皇は象徴で政治に関与しない」と思ってきました。しかし昭和天皇は戦後の日米関係の核心に深く関与しています。

先に憲法の話をしました。ここで第二次大戦後の日米関係を構築するうえで、昭和天皇がどのように関与したか、ふれておく必要があると思います。

日本国憲法では、第一条で「天皇は日本国の象徴である」、第四条で「天皇はこの憲法の定める国事に関する行為のみを行ない、国政に関する権能を有しない」としています。

私も大学で憲法を学びました。天皇は政治に直接関与しないと教わりました。しかし、歴史を見るとちがうのです。戦後の歴史、とくに日米関係では私たちが思っている以上に天皇が政治に関与しているのです。

一九七九年、進藤栄一・筑波大学助教授(当時)が、米国の公文書館から驚くべき文書を発掘し、雑誌『世界』に「分割された領土」という論文を発表しました。米国側に保管されていたその文書とは、終戦後、昭和天皇の側近となった元外交官の寺崎英成が、GHQ側に接触して伝えた沖縄に関する極秘メッセージです。まず読んでみてください。

「マッカーサー元帥のための覚書(一九四七年九月二〇日)(マッカーサー司令部政治顧問シーボルト)

天皇の顧問、寺崎英成氏が、沖縄の将来に関する天皇の考えを私に伝える目的で、時日をあらかじめ約束したうえで訪ねてきた。寺崎氏は、米国が沖縄その他の琉球諸島の軍事占領を継続するよう天皇が希望していると、言明した。(略)

さらに天皇は、沖縄(および必要とされる他の諸島)に対する米国の軍事占領は、日本に主権を残したままでの長期租借——二五年ないし五〇年、あるいはそれ以上——の擬制(フィクション)にもとづいてなされるべきだと考えている」

「えーっ」と驚かれたかもしれません。私もはじめてこの文書を読んだときは本当に驚きました。ここで昭和天皇はGHQ側に対して、「沖縄を半永久的に軍事占領していてほしい」と伝えているのです。そしてさらに驚くべきことに、実は沖縄の現実はいまでも基本的にこの昭和天皇の要望通りになっているのです。昭和天皇は戦後の日米関係を構築するうえで、ここまで深く直接かかわっていました。

進藤教授はこの「天皇メッセージ」という、戦後史そのものをくつがえすような歴史的事実を発掘・発表したのですから、本来、大変な反応があってよいはずです。憲法学者や政治学者、さらに新聞、雑誌は、この論文について大論争をくりひろげなければおかしい。(略)

「ところが日本の新聞や学界は、全くの黙殺でした」

「不都合な事実には反論しない。あたかもそれがなんの意味も持たないように黙殺する」

それが戦後の日本のメディアや学会の典型的な対応なのです。

(孫崎享『戦後史の正体』創元社、2012年)