畑倉山の忘備録

日々気ままに

戦前の財閥(4)

2019年01月27日 | 天皇
外地における勢力拡張と併行して、財閥は国内生活に対する支配を強化していった。これはきわめて巧妙な方法で行なわれた。その一つは、「統制組合」で、これは原料、信用、各工場への生産割当を統制する機関であった。

各種統制組合は財閥によって支配され、財閥はその権力を利用して小企業家を押し出してしまった。政府部内の財閥の友人たちは、新しい工場開設の許可は「能率的な」会社、すなわち財閥のものに限って与えられるようにとくに気を配った。

そして軍需省が設置され、特定の会社が「軍需会社」に指定されると、財閥は利益の保証、特定の法律の適用免除、労働者徴用および賃率決定の権利を与えられた。四人の軍需大臣のうち二人までが三井の出身だったことも、べつに驚くには当らない。

最初の機会において、労働組合は解散され、これに代って「産業報国会」が結成されたことも、同様に驚くに当らないことであろう。そして政府は、「労働は国家に対する国民の義務であり、国家に労力を提供するのは名誉であり、・・・・・上長の命に従う服従精神と労働者間の協力精神は昂揚されなければならない」と声明した。

(マーク・ゲイン『ニッポン日記』ちくま学芸文庫、1998年)