畑倉山の忘備録

日々気ままに

「もう天皇を引き込んではならない」(一水会顧問 鈴木邦男氏)

2018年08月14日 | 天皇
今の天皇は象徴であって政治的な力はない。でも、安倍政権は、集団的自衛権を認め、次は憲法改正をし、自衛隊を国軍にし、アメリカと一緒に海外派兵させようとしている。

こんな事態を一番憂慮しているのは天皇だろう。でも政治的立場がないからはっきりとは反対できない。パラオに行く。「憲法を守る」と発言する。こうしたことしか出来ない。「軍国主義化する安倍政権を叱ってほしい、“再び過去のあやまちを繰り返すな”と言ってほしい」と思う人もいるだろう。

でも、それも政治利用だ。憲法を改正して天皇を元首にしようと目論む自民党と同じだ。もう天皇を引き込んではならない。天皇を中心にまとまって戦争する時代に戻してはならない。国論が真っ二つになった時、天皇に判断をあおぐことになってはならない。そんな時代にあこがれを持ってはならない。

そのためにも過去の天皇依存の時代を冷静に知り、学び、反省すべきだ。

なぜ、これほどまでに国民は天皇に寄りかかり、頼ってきたのか。それでいい点もあったろうし、まずかったこともあっただろう。それを冷静に見るべきだ。そのことを知る上では、この本は一番の「教科書」になるだろう。その上で、天皇制をどうするか考えたらいい。

かつては「天皇制打倒」を言っていた勇ましい人たちがいた。天皇制こそが差別や諸悪の元凶だと言っていた。今はそんな人はいない。ほとんどがおだやかな形で天皇制を認めている。

だが(だからこそか)天皇擁護派の中で醜い争いを起こしている。「天皇、皇太子が“憲法を守る”というのは困る!」「女性天皇は認められない」「皇太子は、その地位を弟にゆずれ」といった批判だ。そして「自分たちは日本を愛し、皇室のことを真剣に考えている。だからこそ言うのだ」と主張する。

「愛国無罪」だ。なげかわしい。こんな自称・愛国者の個人攻撃・罵詈雑言よりは、かつての「天皇制打倒論者」の方がまだましだ。大きな政治的テーマがなくなり、内向きの、小さな、醜悪な論争に堕している。もう一度論争の質を上げよう。

そのためにも、この本は大きな問題提起になるだろう。歴史は、失敗も暗い面も含め、すべて認め、その上で、天皇制は日本に必要なのかどうか。それは堂々と論争したらいい。

増田都子『昭和天皇は戦争を選んだ!』社会批評社、2015年、鈴木邦男氏の「推薦文」より。