畑倉山の忘備録

日々気ままに

天皇中心の支配体制はつづく

2019年01月27日 | 天皇

アメリカの日本研究の第一人者、ジョン・W・ダワー(マサチューセッツ工科大学教授)は、第二次世界大戦におけるドイツでの欧米人捕虜死亡率は4%であったのにくらべ、日本では30%前後にも達したことをあげ、欧米では日本は「ドイツよりも残虐な敵」であったという感覚が強い。にもかかわらず「日本は、戦争について世界を納得させるほど正直に語れる政治家を一人も輩出できなかった」と指摘した(『朝日新聞』1995年6月11日)。

 

どうして日本はこうなったのか。それは日本が敗戦後、一貫して天皇の戦争責任を追及することをしてこなかったことに最も根源的な理由がある。イタリアでは決起したイタリア人自身の手によって独裁者、ムッソリーニは処刑され、戦争に終止符がうたれた。ドイツでは、独裁者、ヒットラーは東西から攻め入った連合軍の猛攻のなかで自殺し、ドイツの敗北が決まった。

 

イタリア・ドイツの敗北にくらべて日本の特徴は、降伏の唯一条件が「国体の護持」、すなわち天皇制の温存であった。これを、日本を事実上単独占領したアメリカが支持したのである。従って敗戦後も旧支配層内部の勢力交代があっただけで、天皇・皇族・重臣・官僚の全体系が従来のまま中央政権としての統一を保ち、アメリカ占領軍に従属しながら日本の政府として国民を支配しつづけたのである。

 

戦前の天皇制の専制支配は修正されたが、天皇を中心とした旧支配体制は、一時、軍事力を失っただけで、ほとんど崩壞せずに残ったのである。こうして天皇の戦争責任は免責され、そのことによって、日本では第二次世界大戦前の軍国主義思想が温存され、侵略戦争を正当化し「謝罪しない日本」という醜い体質が今日まで続く大きな原因となった。

 

(中塚明『歴史の偽造をただす』高文研、1997年)

 

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(わたしのコメント)日本では高学歴のエリートや高給取りのサラリーマン、専門職の人々にいわゆる「尊皇」論者がおおい。日本には天皇が必要だというわけである。現状に満足しており、支配層の教育や情報操作(いわゆる洗脳)の優等生であり、支配者の価値観に染まり、固定観念を疑わないのである。現状に満足している人々はそれで良いとして、そんな境遇にない庶民が支配者の価値観に付き合う必要はないのである。

 

一時、軍事力を失った日本の支配層・財閥は、今や世界有数の軍事力を回復している。安倍晋三は日本の最強の実力者なのか。安倍は日本の支配層・財閥の傀儡にすぎない。明仁天皇が安倍に一人抵抗しているというのはメディアの情報操作である。われわれ庶民はメディアでは報じられない天皇の実像、その人となりや考え方を何一つ知らないのである。