我々はかくのごとき日本の悲劇が、岩倉、大久保、伊藤たちの情報独占と歴史偽造の延長であり、その当然の結果であったことを指摘しなければならない。
わかりやすくいえば、明治維新は孝明天皇父子を暗殺してその死屍のうえに築かれたものであり、その犯人であった元老たちが歴史を偽造して事件を隠蔽したために、日本国の進路には常に孝明天皇の呪いが影をおとしたのである。このことは我々も、我々の子孫も常に心に銘記しなければならない。
かくのごとく歪みきった維新を礼賛し、明治を聖代だといってその延長上に現代の繁栄を考えようとする錯誤は是正されなければならない。朝鮮国の王妃であった閔妃を虐殺し、屍姦して、その国土を略取するという不法行為を、それで合法的であったなどという政治家は歴史を理解していないのである。たしかに閔妃は朝鮮民族のために理想的な王妃とはいえなかったが、そんな他国のことはどうでもいいのである。日本に内政干渉する権利はなかったではないか。
従軍慰安婦の問題にしてもこの閔妃屍姦事件と同列であって、要するに、天皇制のもとで差別され奴隷扱いにされた日本人が帝国主義戦争に参入して、アジア人を差別してついに奴隷のごとく扱ったことが問題なのである。
(鹿島曻『裏切られた三人の天皇』新国民社、1997年)