石井信平の 『オラが春』

古都鎌倉でコトにつけて記す酒・女・ブンガクのあれこれ。
「28歳、年の差結婚」が生み出す悲喜劇を軽いノリで語る。

新しい表現を感じた夜

2007-10-11 22:04:08 | 社会
昨夜は、有楽町の外国人記者クラブで、グレゴリー・ハードリー氏の「出版記念講演会」に行ってきた。あちらでは ”Book Break" という名称とスタイルのイベントだ。

 本は「Field of Spears」(竹槍の里に)。副題は「The Last Mission of the Jordan Crew」。

 昭和20年7月20日、敗戦の1ヶ月前に新潟を空襲したB29戦略爆撃機が墜落した。ゴ-ドン・ジョーダン機長以下12人の飛行士に、その後何が起こったかを徹底取材したドキュメントた。

 一冊の本が、著者自身によってかくも静かに、しかし情熱をもってプレゼンされたのは驚きだった。

 パソコンのパワーポイントを使いながら、あくまで熱意がスキルを支配して、語り、朗読、フットノート、データ、取材エピソードによる劇的構成。

 それは、パソコンと声を使った、新しい表現の可能性を示唆し、囃子方はいないのに、「能」を見ているような思いになった。

(動画ゆっくりと)
  テニヤン基地を離陸するB29、
  上信越の図面を断ち切って引かれた飛行ルート、
  漆黒の新潟上空を照らすサーチライト、
  B29の隔壁が開いて、ゆっくりと地上に落下する焼夷弾のひとつ、ひとつ

(語り)
  原爆の2倍の巨費を投じて開発されたB29に
  「真珠湾」の意趣返しとして乗り込む
Gordon Jordan を隊長としたパイロット12人のプロフィール
  
  「爆撃は、『ミルクを配達する』ような作業でした。
  終われば帰還して、基地のベッドで眠りこけるはずでした」

数千機製造されたB29のうち、あの夜、新潟に炎上墜落した
たった一機を待ち受けていた運命
著者の調査とインタビューによって初めて明かされた
地上に降ったパイロットたちの心情

  「パラシュートで脱出したパイロットにとって
  降下するひとときはだけは、
  束の間の平和な時間でした」

平和を裏切る、累々たる地上の焼死体。
得物を持って待ち受けた村人たちの行動と、出会いの真相。
リンチと連行の果てに、一夜限りで済まなかった、
双方を悩ませたトラウマの実相。

 日米双方に取材し、「それならば」と死者が蘇り、一冊の本の紹介を超えて「歴史」が垣間見えた夜であった。


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