石井信平の 『オラが春』

古都鎌倉でコトにつけて記す酒・女・ブンガクのあれこれ。
「28歳、年の差結婚」が生み出す悲喜劇を軽いノリで語る。

抗ガン剤・シュールな光景

2009-01-27 15:24:06 | 雑談
昨日は朝7時に家を出て、タクシーで県立がんセンターへ。支払い9000円。今の体調ではラッシュの電車には乗れない。

血液検査の後、医者と面談。白血球は3100で、全体に数値は良し。深刻な食欲不振を訴えたが「あ、それはよくあることですから」と軽くあしらわれた。

外来治療室で3回目の抗ガン点滴、3時間。同病の患者30人あまりがリクライニングシートで、ずらり並んで抗ガン剤投与の風景は壮観。

「抗ガン剤が実際に効いているのは患者の2割。実は8割は免疫力を奪われ悪化している。つまり殺されている」というまじめな議論あり。とするなら、眼前の光景は相当にシュールだなー。

オラもその光景に加わって横たわり、タラーリと落ちるしずくを見つめていた。本日の抗ガン剤、お値段は30万円ナリ。

希望への一歩

2009-01-22 22:27:21 | 雑談
去年の夏、体重は90キロあった。いま、67キロ。自分の努力ではここまで減らせない。

食欲がなく、食べる量が激減した。食べることが歓喜と希望の行為ではなく、苦痛になってしまった。それは人生の風景が変わってしまうほどの変化だ。

「この先に」あるのは自分の衰弱なのだろうか? この当たり前に見える疑問に取り憑かれるとヤバイ。

コロンブスは水平線の向こうに何を見ていたのだろう?

体力維持のためにウォーキングを心掛けている。歩くのにも、いやいや「ノルマ」としてするのと、この歩行は「希望」への一歩であると思うのとは、天と地の違いがあるだろう。

私は希望に向かって歩きたいのである。


ネガティブ・スパイラル

2009-01-21 13:17:14 | 雑談
抗ガン剤の影響か体調悪く、ブログを書くことが「遠い日の出来事」に思えた。やれない、できない、のスパイラルに陥ってしまった。

友人には電話でつい、弱音をこぼしてしまった。

あらゆる病気がそうであろうが、自分から治そう・治ろうという気持でいないと、「受け身」になってどんどん後退して行くのがわかる。それが怖い。

医者が何とかしてくれる、妻が何だか頑張ってくれている、という滑稽な「人任せ」状態ではダメだなー。



若い激励

2009-01-12 18:35:51 | 雑談
実は血液検査の結果が良く、退院OKが出た。そして立教大学の授業に出た。

2度も休講して、今年初めてであり、レポート回収や期末テストもやらないと学生に単位もあげられない。出ようか出まいか、朝青龍の心境であったが・・・。

出て、学生に会えたのはよかった。病気体験も話をした。闘病で考えた「エロスとタナトス」の話も。

終わって、女子学生がひとり来て「先生、頑張ってください。実は私もガンです。子宮径がんです」と言った。

王様病

2009-01-06 17:35:11 | 雑談
いよいよ第2回目の抗がん剤、投与開始。

副作用も、請求書も怖い。1回ウン十万円と聞いている。がん制圧のためだと「歓迎」する気分に切り換えるには、相当なハイ・テンションが必要だ。


点滴のしずくを下から眺めていると、そのけなげな「落ちっぷり」が次第にいとしく見える。「頼んだぞ」の心境。

妻に云わせるとがんは「王様病」で昨日食べられたものが、きょうは全く受けつけない。嘔吐感で、食事は何も食べられない場合もある。

夕方、A病棟の高層階に日没を見にゆく。落ちてゆく太陽が雲のふちを金色に染めて、美しい。景色のバリエーションは、どんなものでも受け入れられて飽きない。

常に気分を切り替えないとやっていられない病気である。


毛髪問題

2009-01-05 18:14:16 | 雑談
昨日、深刻げに書いた「毛髪問題」は妻に不評だ。

抗がん剤で脱毛は当り前のこと。殊更に書くことでもない、という。

まあ、話題にこと欠いて、というところ、なきにしもあらず。

妻曰く「半年ぐらい出家する、と思えばいいのよ。髪のことなんてどうでもよくなるから」

髪の門出

2009-01-04 18:22:01 | 雑談
「派遣切り」にあった沢山の人々が、日比谷公園の寒風から、厚労省の講堂に一時的避難して年を越したという。

入院生活に何の不満があろう。温かいベッドに3食付きだ。

メゲるのは、今や髪の毛がゴッソリと抜けること。抗ガン剤の自然な副作用で、クスリが「効いてる」証拠である。それでも、朝目覚めて、枕一面に毛が散りつもっているのを直視するのは、相当に自分の精神力が試される。

毛髪に金銭的な価値はゼロだけど、この「喪失感」は何だろう。これが女性の場合、いかばかりであろうか。

 正月や髪の門出を祝いけり
 

義父倒れる

2009-01-01 18:32:10 | 雑談
元日の朝、A病棟の高層階に富士山を見に行く。

朝食には黒豆、伊達巻、紅白のかまぼこがついた。昼食には雑煮。

堀田善衛著『方丈記私記』を読む。

こんな「驚くべき」本は滅多にない。東京大空襲の日本と平安末期の、ともに「亡び」の時空を描いて「日本の本質」は何かを問い返す見事な文章力!

妻の父が今朝、体調急変。救急車で病院に運ばれた由。

午後、年賀状とドリップ・コーヒーを持って妻が来院。「なんか、お祓いしてもらわなくちゃね」と明るく云う。