石井信平の 『オラが春』

古都鎌倉でコトにつけて記す酒・女・ブンガクのあれこれ。
「28歳、年の差結婚」が生み出す悲喜劇を軽いノリで語る。

王様気分

2009-04-30 22:11:06 | 雑談
県立がんセンターを退院後、肺の調子が必ずしもよくない。

今週月曜日に外来で診てもらった。血液検査とレントゲンで、肺気胸が完治していないことがわかった。

H先生は目下の体力状況を考えて、抗がん剤治療にはしばらく手をつけないことに決めた。

「ここまでの通院は大変でしょうから、鎌倉市内の病院をご紹介しましょう。」

きょう午前中は、その湘南記念病院の呼吸器科に行った。専門医が今までのデータをすべてチェックして、明確な現状説明をしてくれた。

リンパに転移したガンが呼吸器を圧迫している、とのこと。しかしオラはメゲない。

肺活量が減ったが、すべての行動を緩慢にすればしのげる。妻と買い物をしても、手さげの物さえもってあげられず、スマない。

妻曰く「いいのよ、あなたは今は、王様でいなさい」

ゆっくりとしか歩けない。


ゆっくりなら、歩いていい。

文化的食欲

2009-04-24 22:43:04 | 雑談
妻の実家で「ドン・ジョバンニ」をレーザー・ディスクで鑑賞。舞台と歌も素晴らしかったが、リッカルト・ムーティーの指揮もよかった。役者やのー。

こういう全力投球の芸術家をみると、オラは何をどう生きてきたのか、と自問する。

あと一つ、レナード・バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」を彼自身の指揮でレコーディング・リハーサルをしているドキュメンタリーを見た。

NYへ行きたい。メトロポリタン・オペラやカーネギーホールを回りたい。ついでにヤンキース・スタジアムで松井のプレーを見たい。

帰宅して、L.L.Beansのウォーキング・シューズのカタログを眺めて就寝。

シャバの実感

2009-04-23 22:19:41 | 雑談
昨夜は2週間ぶりの入浴。妻に背中を流してもらう。

「お客さん、いい身体してるね。どちらから?」妻の一言で、しみじみシャバの空気を実感する。

市議会議員選挙の真っ最中。狭い路地を選挙カーがひっきりなしに行き交って、候補者の名前を連呼するのみ。いとあじけなし。

中には「ホップ・ステップ・ジャンプの○○です」という訳のわからぬものもあり。

鎌倉市の財政赤字1000億円。利子だけで25億円が毎年消えている事実を君らはどうする気?

退院の日

2009-04-22 22:06:46 | 雑談
退院の許可おりる。2週間、パジャマ姿の病人でありつづけた。

病人は医者と看護婦の前で、「いい子」でいつづけた。自分を明け渡してしまう。体調が悪いと、「アーだ、コーだ」とこちらが訴える。その都度、それに対応する薬を処方して、食前食後に看護婦がもってくる。いやはや。

昼食をすませ、主治医の話をきき、さらばガンセンター。ナース室の前でズラリ並んだナース達20人ほどが車椅子のオラとそれを押す妻を見送ってくれた。破格の待遇だがこういうのがガンには効くのだよ。

大学の友人Jが病院前に待っててくれて、緑美しい横横道路をドライブ、鎌倉へ。

ナースの献身

2009-04-17 17:12:50 | 雑談
入院以来10日が過ぎた。体外から胸の穴に管を入れたままなので風呂に入れない。

「石井さん、お身体ふきましょか?」と看護婦さんは声をかけてくれるが、つい遠慮して妻の来るのを待つ。

妻はオラの遠慮を笑い「いいじゃないの、せっかくの本物コスプレナースが身体をふいてくれるなんて、貴重な経験よ」

きょうは妻の来院が遅れ、ナースに蒸しタオルで全身をふいてもらった。ヒマをもて余すナース(そんな人ここにいないが)より、忙しく献身的なナースの方が魅力的に見えるのはなぜだろう。

「名人、サインを願います」

2009-04-16 15:20:39 | 雑談
入院の身には世間は遠い。枕元のテレビと、家から届く新聞が頼りなり。

「NEWS」とは、「前代未聞」のことを教えてくれるものだとすれば、先週の「名人戦サイン事件」は面白すぎるニュースだった。

将棋名人戦を対局中の羽生名人に朝日新聞の契約記者が扇子を差し出してサインを乞うた。

事実は以上で、「朝日」もベタ1段で、それだけを伝えた。「社として本人に厳重注意した」

これはバッターボックスに立つイチローに近寄ってサインを頼むほどの珍事であり、「大ニュース」ではないのか。

そう思わずにはいられないほど、オラはこのニュースが気になり、詳細な続報を知りたかった。

NHKテレビだけが、この場面をニュースで取りあげたのはさすがだった。

観戦陣、最前列のくだんの記者が、何か云い乍ら名人に扇子を差し出し、一瞬たじろいだあと、名人がサインに応じていた。羽生にとっては、実はどうでもいいことだったのかもしれない。

問題は74歳だという取材記者である。「長いつきあいだったので、構わないと思った」と云ってるそうだ。犯罪ではないが、オラには出来ない恐しいことをやってくれた。

今さら彼にマナーやモラルを説く気もしない。実は全く新しい、常識破りの老人の登場を感じる。

「名人のサインなんて、あなたならいつだって手に入るじゃないですか。あの時、あの場でアクションに踏み切った、あなたの心の状態を教えて下さい。」

病人にあらず

2009-04-13 19:26:35 | 雑談
このたびの入院、前回入院と全く同じ部屋、同じベッドであった。この偶然は「吉」なのか「凶」なのか。

胸から体内に管をさし入れているので入浴不可。どこへ行くにも気胸のポンプの箱をひっぱって歩く。

食欲不振のため、三度の食事が五分粥。背筋をのばして両手を合わせて食すれば、禅僧の心境だ。

緊急入院

2009-04-08 18:01:50 | 雑談
昨日はあわただしい1日だった。突然、昼過ぎに神奈川県立がんセンターの主治医から直接電話がかかってきた。

「今、手元に届いたCTスキャンを見たら片肺が完全につぶれた状態です。これは息苦しいでしょう。すぐに自然気胸の治療にとりかかりたいので、入院してください。」

妻と一緒に入院支度をしてタクシーを呼ぶ。

処置は手術室ではなく入院ベッドで。珍しいのか若手医師ふたりが立会見学。

「部分麻酔した胸に穴をあけ、管を肺に入れます。つぶれた肺を空気でふくらまし、同時に、たまった水を外に出します。」

医師の解説は壊れたテントを緊急修理するようでおかしい。

というわけでまたまた入院に相成ったわけである。

指輪紛失・その後

2009-04-06 21:06:03 | 雑談
オラが結婚指輪を紛失した時の妻のリアクションは先日(4/3)書いた通り。「ま、いいんじゃないの」だった。

その後、妻が部屋に掃除機をかけていたら、偶然、床に落ちていたのを発見した。掃除機が吸い込む前で、よかった。

なくなっても、日々の暮しには困らない。発見されるのが掃除機のゴミの中からでは、心は傷つき「ま、いいんじゃない」ではすまない。

指輪とは不思議な物体である。

ポジティブ・キャラの書道家

2009-04-04 21:16:18 | 雑談
江の島に住む書道家の武田双雲氏が妻子を連れて鎌倉に来宅。

書道界ではどう見られているのかわからないが、今やメディアではひっぱりダコだ。NHKの大河ドラマ「天地人」のタイトル文字もこの人が書いた。

書道家というより、オラにとって武田君は人生の達人。30代前半だが学ぶところが一杯ある。態度も考え方も常にポジティブで明るい。

実にガン患者には有難い友人だ。前向きにしてくれる。

「信平さん、僕って実はすっごい心配性なんです」意外な一言にオラはびっくりした。「だけど、心配した99%のことは起こらないんですよね」

実は、彼は私がDJをやっていた頃、湘南ビーチFMに何度かゲストに呼んだ。まだ路上書道家として、Tシャツに文字を書いていて無名だった。

自分を信じるポジティブ・キャラが今の彼をつくった。

彼は色紙に「信」と筆太に書いてプレゼントしてくれた。